クローズアップ現代 メニューへ移動 メインコンテンツへ移動
2019年5月9日(木)

密着!大谷翔平 二刀流復活への道

密着!大谷翔平 二刀流復活への道

昨シーズンオフ、右肘の手術に踏み切った大谷翔平。手術から7か月、打者として復帰した。オフからエンジェルスのスタッフとともに、打者としてレベルアップをはかりながら、投手として復帰を目指すという前代未聞の復帰プランを実行してきた。スタジオに落合博満さんを招き復帰直後の打者・大谷翔平を徹底分析。打者として試合に出ながら、投手としてのリハビリをどう両立するのか、中日の監督を務めた経験から多角的に解析。大谷翔平二刀流復活への展望を占う。

出演者

  • 落合博満さん (中日ドラゴンズ元監督)
  • 武田真一 (キャスター)

独自取材!前代未聞の“二刀流復帰プログラム”

去年の秋の手術から7か月余り。大谷選手は、どのような過程を経て復帰に至ったのか。前代未聞の二刀流復帰計画はチームが主導して作られたとされていますが、練習の多くは非公開。秘密のベールに包まれています。本人にリハビリのことを質問しても…。

大谷翔平選手
「今のところは順調にきている。」
「問題ないです。」

大谷選手と同じひじを手術し、共にリハビリを行った同僚のヒーニー投手です。二刀流のリハビリは投手だけをしている自分のプログラムとは大きく異なると明かしました。

ヒーニー選手
「自分がグラウンドにいる時、大谷はトレーニングルームにいた。僕と状況があまりにも違うので、理解できないよ。」

私たちは、極秘メニューの一端をつかもうと、2月のキャンプから公開練習や大谷選手の動向をつぶさに取材。更に関係者への情報取材も行い、復帰までの詳細な道のりを記録しました。

2月8日、キャンプ地で素振りを再開した大谷選手。しばらくはボールを打たず、素振りとウエイトトレーニングを非公開で行っていました。

キャッチボールを再開したのは、1か月後の3月8日。最初は6メートルの距離で20球。3日後は9メートルで10球。そして12メートルで35球。距離や球数は厳密に管理されていました。打撃と投球を同時に行う前代未聞のプログラム。リハビリは慎重に進められているように見えました。

大谷選手の復帰プランは通常のケースとどう違うのか。去年の秋に行った手術は、側副じん帯を再建する、通称「トミー・ジョン手術」です。損傷したひじのじん帯を補強するため、骨に数か所の穴を開け、手首のけんなどを移植します。
これまで100例以上、トミー・ジョン手術を執刀した、馬見塚尚孝さんです。

術後、復帰までにかかる一般的な期間は、打者であれば半年ほど。投手は最低1年だといいます。今回、大谷選手のリハビリは、医師やトレーナーが通常より用心深くなっていることがうかがえると指摘しました。

馬見塚尚孝さん
「本人の評価、医療者の評価、コーチングスタッフの評価、3つオッケーで次のステップにいくようなことをやっているのではないか。ピッチャーとしてもバッターとしても、一流の選手のトミー・ジョン手術をするというのは、アメリカでも、そうそうあることではない。アメリカのドクターも悩みながら今回のプログラムを考えているのでは。」

特殊な二刀流復帰への道筋。エンジェルスのオースマス監督も、その難しさを語っていました。

オースマス監督
「打撃と投球、別のものを同時にやる難しさがある。投手・大谷の将来性を考えると、一気に練習はさせられないんだ。」

そこまで慎重になるリスクとはどのようなものか。ボールを投げ始めて1週間。力を入れずに投げているように見えた練習のあと、ある場面に出くわしました。

トレーナー
「もっと注意して。」

リハビリのトレーナーが「球が速い」「山なりに投げろ」と指導していたのです。医師の馬見塚さんは、トミー・ジョン手術を受けた投手の最大のリスクは、早い時期に力を入れ過ぎることだといいます。骨にけんが定着し、手術前と同様の働きをするようになるまでには1年近くかかるとされるからです。

馬見塚さん
「この時期は(投げる)強さのほうが心配なんですよ(球)数よりも。早く始めると、せっかく再建したものが、また痛んでしまうことが考えられる。」

一方、投げることに比べ、ひじへの負担が少ない打撃練習。キャンプの当初行っていた素振りと並行して、大谷選手はボールに目を慣らす練習を始めました。

更に、非公開でティーバッティングやトスバッティングなど段階的に負荷を上げボールを打つ練習に進んでいました。

この時期、ボールを打つことに不安はないのか。プロ野球、元巨人の野手、脇谷亮太さんです。

大谷選手と同じ右投げ左打ちで、トミー・ジョン手術を受け、復帰。その後、7年にわたって現役を続けました。脇谷さんは手術のあと、しばらくの間は痛みから逃れることができなかったといいます。

元巨人 脇谷亮太さん
「ずっと痛いですよね。その痛みは例えろといわれても、なった人でないと分からないのかなと。」

中でも、ひじを無理に伸ばす動きは、痛みが消えたあとも気になってしかたがなかったといいます。

脇谷さん
「変化球で抜かれて肘が伸びたあと、最後片手1本になるが、それでも三振したくないので、自分の腕を最大限に伸ばすけど、1回やってしまうと、伸ばすのが怖いので。」

リスクと向き合いながらリハビリを続けていた大谷選手。その後も、ボールを打つ姿は一切公開されないままでした。姿を捉えることができたのは、球場の片隅。黙々と体幹のトレーニングに励んでいました。

“二刀流復帰プログラム”打撃フォームに変化が

シーズン開幕後の4月。初めて公開された打撃練習は、全力でボールを打つフリーバッティングでした。

33スイング中、柵越えが9本。快音を響かせ、ひじへの不安は一切ないように見えました。
大谷選手はリハビリの間に打撃の改造に取り組んだのでは、と指摘するのは、動作解析の第一人者、川村卓さんです。

筑波大学体育専門学 准教授 川村卓さん
「よりバッティングフォームがメジャー流になった感じがすごくします。」

川村さんが気付いたのは、両足の幅とテイクバックの位置。今年(2019年)のフォームは去年と比べ、スタンスは広く、テイクバックのトップがより後ろに引いた状態になっています。その姿勢から、ケガをしていない左腕を前に押し出すようにスイングするフォームに変わりつつあるといいます。

川村さん
「“ラウンチボジション”とよく言うが、打ち出す体勢を作っておいて、そこから、そのままいくような打ち方。よくメジャーの選手がやるが、押していくという、バットのヘッドをそのままグンとぶつけていくようなイメージ。」

大谷選手はリハビリをしながら、打者としてより成長する方法を模索していたと、川村さんは考えています。

川村さん
「ケガでのリハビリ期間を、さらに自分がステップアップするための期間というふうに捉えてやっているのでは。」

復帰のあと、打席に立ったのは延べ9回。ヒットはなく、三振が4つと、今のところ結果は出ていません。対戦した相手は、去年打ちあぐねた左投手がほとんどでした。ただ、大谷選手は、今日の試合の打席に前向きな兆候があったと話していました。

大谷選手
「タイミングは徐々に良くなっている。ただファウルになっているものが結構多いので、自分の中で捉えたと思ってもそうなる部分が多い。早く(ヒットを)1本打ちたいという気持ちを抑えながら、やるべきことをしっかりできるかが大事だと思う。」

手術の影響は? “オレ流”落合博満が斬る!

ゲスト 落合博満さん(中日ドラゴンズ元監督)

武田:「タイミングは合っているが、ファウルになってしまう」。この言葉、どういうふうにお聞きになりましたか?

落合さん:今までは、練習を積んで、ゲームをやって、公式戦でしょ。今回は、練習をやって、すぐゲームですから、感覚的に元に戻せっていうほうが無理です。

武田:実戦形式のバッティング練習をかなりやってきていますが。

落合さん:それはある意味、死に球ですから。真剣勝負じゃありませんから。ある程度、こういうボールを放ってくれとか、いろんなことを言いながらでもやっていけるだろうし。結果を求められない練習と、結果を出さなきゃいけない試合の違い。気の入れ方が変わります。

武田:そういう状態で、なぜ、いきなり実戦なんでしょうか?

落合さん:バッター・大谷というよりも、ピッチャー・大谷を見据えての、1年間でどういう状況で物事を進めていけばいいっていう1つのステップなんだろうと思います。

武田:綿密な計算のもとになされている。

落合さん:日本の野球の考え方とは、大谷選手の場合は多少違うと思います。

武田:ひじの手術の前と後で、大谷選手の打撃のフォームに変化がありました。落合さんはどういう点にお気付きですか?

落合さん:私は、こっち(手術前のフォーム)のほうが好きです。

武田:どういうところが?

落合さん:顔の位置が違うんです。ピッチャーを見る角度が違う。普通に見れば、こっち(手術前)は両方の目でピッチャーを見ている感じ。こっち(手術後)は、はすから見てる。だから、肩を入れた分、テイクバックを後ろにした分だけ、手じゃなくて肩が入ってしまう。だから(手術前のフォームは)ここ(首の下)に隙間があるでしょ。(手術後のフォームは)ここ(首の下)に隙間がないでしょ。これの違いだと思います。

武田:こうなると、どうなるんですか?

落合さん:もう1回バットを振る時に反動が欲しくなるので、あおっちゃう。これ(手術前のフォーム)だったら、振ろうと思えば、前にバットが出てくるんだろうけれど、これ(手術後のフォーム)は出づらいです。

武田:準備期間の映像の中で、落合さんが理想的だと思うフォームもあったそうですけれども、その映像がこれですね。

落合さん:これ最高にいい。なぜ、この練習の打ち方をゲームでやらないのか。1回、バットを肩に当てて上にいくでしょ。予備動作があるの。間が取れる。右の肩がそんな中に入っていかないでしょ?

目の前の視界があるんです。ところが、肩が入ることによって、目の前の空間がなくなってしまう。この打ち方ができるんだったら、ゲームでこれをやれば結果は出ると思います。

武田:ただ、VTRにもあったように、大谷選手は、最短距離でボールに向かっていくような、左手を押すようなフォームに変えてきているんじゃないかということでしたけれども、なぜ、実戦でこういうフォームを取り入れないんでしょうか?

落合さん:物足らないんだと思う。力量感を求めるのであれば、もっと引きたい。

武田:力量感って、どういうことですか?

落合さん:自分はバットを振っているんだっていう自己満足をしようと思えば、もっと強く振りたいとなるのは、人間みんなそう考えるんです。だから、よくゲームで「あれ?打ったつもりないんだけれど、えらいボールが飛んでホームランになった」というのがあるでしょ。あれは、本人は気付いていないんだけれども、力が抜けて、バットの先がポンッと走ってくれた打ち方なんです。ややもすると人間は、力いっぱい振って、スタンドの向こうへ打ちたいっていう感情が出てきちゃう。

武田:じゃあ、大谷選手も、手術から7か月ぶりに復帰して、やっぱり打ちたいという思いはあるんでしょうか?

落合さん:力負けしたくないっていうのもあるだろうしね。

武田:それが、左肩が中に入ってしまうフォームに出ているんじゃないかと。

落合さん:それと、ひじの状態がどうかですよ。一番簡単な言い方をすると、バッターはバットを持っているでしょ。このバットの重みを使ってバットって振れるんです。ところがピッチャーっていうのは、自分の手で、指でボールを持っていますから、これを投げるのには全身を使わなきゃいけない。だから、長いバットを持っているのと、小さいボールを持っているのとでは、体の使い方に違いはあると思います。

武田:ということは、今はバッターとして試合に出ていますけれども、同時にピッチャーとしてのリハビリも続けているわけですよね。その影響がバッティングにも、今の段階では出ているというふうにご覧になっている?

落合さん:それもあるかもしれません。これは本人でなければ分からないけれども、本人は絶対「痛い」「かゆい」は言わないはずです。バッターは痛くてもバットを振れるんです。自分でどの角度だったら体に痛みが出てこないか、そういう場所をバッターは探すんです。でも、ピッチャーは自分で投げなきゃいけないから、ここから投げたら痛いけれども、ここから投げたら痛くないっていう。

じゃあ大谷選手、ここからボールを放れます?ここになるまでリハビリするでしょ。これがバッターとピッチャーの最大の違いだと思います。

武田:先ほど予備動作とおっしゃいましたけれども、肩にポンと当てるのは何がいいんですか?

落合さん:1回下がって、肩が上がって、手首が上に上がってくるでしょ。

そうすると、上がっていくことによって、バットを上から振ってこれる。でも、これがそのままだと、大谷選手の肩のラインって下がりますよね。下がって上からバットを出そうと思っても無理なの。やっぱり肩の延長線でバットを出そうとしますから。それと、野球をやっているころから、ボールは近くへ近くへ呼び込んできて、しっかり見て振らなきゃいけないですよっていう、それがどこかで邪魔しているのかも分からない。でも、これは打席の数をこなしていく間に、対応力はすごいものがありますから、徐々に変わっていくと思います。

武田:変わっていく。そうなんですね。

落合さん:並外れた対応能力はあります。

武田:じゃあ、まだ最初の一歩を踏み出しただけということでしょうか?

落合さん:そうやって考えてください。だって、野球やってないんですから。急にゲームいくぞって言われたので。ちょっと長い目で見てやりましょうよ。

投球フォームに変化が 新たな“境地”へ

二刀流復活に向けた、大谷選手のプログラム。打者として試合に出場しながら、来シーズン、投手としての復帰を目指しています。手術後、投球練習を再開してから10日余りたった3月20日。大谷選手は投球フォームの見直しに、投手コーチと共に取り組んでいました。コーチが繰り返し指導するのは、ひじからではなく、手首から先に上げる動きです。

昨シーズンの大谷選手。投球の際、ひじが先に上がっていました。
数多くのトミー・ジョン手術を執刀し、負担のかからない投球フォームに詳しい医師の馬見塚尚孝さんです。

馬見塚さん
「コーチから『こういうふうに上げたほうがいいよ』と。『こういうふうじゃなくて』と習っている。」

去年までの、ひじから先に上げるフォームでは、腕を更にひねり上げる動作が必要になるため、より負荷がかかると指摘します。

馬見塚さん
「(大谷選手は)肩を内側にひねって上げる選手なんですね。こういうふうに上げて投げる選手に(けがの)リスクが高いので、大谷選手はその投げ方をされていたので、ちょっとリスクが高い。逆に言うと、改善の余地が、そこにあるんだろうと思っています。」

一方で、このフォーム改造によって、大谷選手の投球にある影響が生じるのではと懸念しています。それは160キロを超えるストレート。

馬見塚さん
「(球速が)数キロ落ちる可能性はある。数キロを求め腕を思いきり振る投げ方をしてしまう。ただ、これ(去年のフォーム)のほうがスピードがちょっと速いと思う。」

待ち受ける試練 その先の進化へ

コーチからフォームの指導を受けた1か月後。大谷選手のフォームは、去年とは違うものになっていました。

元巨人 桑田真澄さん
「いまはすごくいい感じになってますよね。」

巨人のエースとして活躍した桑田真澄さんです。

桑田さんも、右ひじのトミー・ジョン手術を経験。復帰後、最優秀防御率のタイトルを獲得しています。手術をしても負担のかからないフォームを身につけ、投手としての新たな境地を切り開くことができる。桑田さんは、自らの経験を振り返ります。

桑田さん
「同じというのは僕はありえないと思います。ましてや手術をしたわけですから、手術前のいいときのイメージは、僕は捨てたほうがいいと思います。ピッチャーの目的は、打者を抑えることですから、そうするとコントロールとかキレとか、打者にボールをできるだけ見せないフォームはどういうフォームかとか、いろんなことが見えてくるんですよね。」

その桑田さんが心配するのは、打者として試合に出場しながら、二刀流復活を目指すリスクです。

桑田さん
「打者として試合に出始めると、試合で打つことが最優先になりますので、フォーム作りとか、リハビリとかはなかなか集中できないと思いますよ。デッドボール当たったり、スライディングしたり、いろんなケースは瞬時に出てくる。また接触する時もありますし。」

今日の試合では、桑田さんが懸念した通り、手術した右ひじにデッドボールを受けるシーンも。二刀流の復活、どう進めていけばいいのでしょうか。

“オレ流”落合博満が斬る!さらなる進化へ

武田:あのデッドボールのシーンは何度見てもヒヤッとしましたけれども、打者として出場することで、投手としての復帰に影響が出るというリスクはあるんでしょうか?

落合さん:それはないと思います。逆に、野球をやっている環境の中で、毎日、自分の状態を見ていけますから、彼にとってはいい。

武田:むしろバッターとして出続けることが復帰への近道?

落合さん:すんなりピッチャーのリハビリに入っていけると思います。あまりにも「あれやったらケガするんじゃないか」「これやったらケガするんじゃないか」って、みんな心配してたら、何にもできなくなりますから、そういう意味で、今日のデッドボールはよかったと思いますよ。

武田:よかったですか?

落合さん:早めに当たってくれて。「あ、こんなもんなんだ」っていうのを、本人が経験したわけでしょ。そしたら今度、あの辺のボールを当たらないようにするにはどうしたらいいのかを考えていきゃいいんだから。

武田:ケガを機会に、大谷投手はもしかしたらピッチングのフォームも変えようとしているんじゃないかという話でしたけれども、落合さんは去年、大谷投手の魅力はストレートだというふうにおっしゃっていました。大谷投手が取り組んでいる投球フォームの見直しはどうご覧になっているんですか?

落合さん:逆にいい方向に出てくるかも分かりません。一番簡単な言い方すると、よくアマチュアの方とか、お子さんが、ひじが下がっていると。どうやって、ひじを上げたらいいですかって言う。そうすると、難しい言い方をするんです。一番簡単な方法って、何だか分かります?例えば、先生が「この問題が分かる人」って言ったら「はい」って手を上げるでしょ。手を上げた時に、ひじってどこにあります?

武田:ひじはここにあります。

落合さん:ここにボールを持っているわけでしょ。「はい」ってボールを上げたら、ひじは上がるんです。

そういう考え方をすれば、何も「ひじはこうやって上げなきゃいけないんだ」「ボールはこうやって上げなきゃいけないんだ」っていう、それを考えてなくていい。

武田:これでいいんですか?

落合さん:これでいいじゃないですか。そこまでの過程の間に、どういう動作をすればいいかっていうだけであって、ただ単純に「ひじを上げるためにはどうしますか」って言ったら「手を上げなさい」「ボールを持っている手を上げれば、ひじは上がりますよ」って。ボールを投げる時、このまま投げれませんから、必ずこういうふうに畳んでいきます。それでいいじゃないのっていう。子どもさんに教える時は、これが一番分かりやすい教え方だと思いますよ。だから、ひじがああだこうだって今までしみついたものが、もっと単純に彼が取り入れてきて、いらないものが全部そぎ落とされていったら、逆にもっと速いボールを放る可能性は出てくると思います。ケガのリスクは少なくなるんじゃないかという、逆にそっちのほうを考えます。

武田:三冠王を3回獲得された落合さんからご覧になって、大谷投手の進化は、打者の立場では、どう進化すると脅威だなと感じますか?

落合さん:もっと力量感を求めない打ち方になったら、力じゃなくて、もっと簡単に放るっていうのを、つかまえる場所があって、つかまえられるんだよっていうものが本人が分かったら、とてつもないバッターになるんじゃないかなと。

武田:ピッチャーとしてはどうですか?

落合さん:やっぱりコントロールでしょう。日本の野球と違って、アメリカの野球(打者)は、インサイドなのか、アウトサイドなのか、高めなのか、低めなのか。だから、バッターをもっと細かく研究していったら、もっと勝つんじゃないのかと。今はまだ手探りの状態だと思います。

武田:二刀流で大リーグ挑戦。そして前代未聞の二刀流リハビリに取り組んでいるわけですけれども、大谷選手の挑戦をどういうふうに見守ったらいいんでしょう?

落合さん:彼を見て、「野球はピッチャーだけじゃないんだ」「バッターだけじゃないんだ」「両方やれるんだ」っていう、それを作り上げた功績は、アメリカでも日本でも、全世界で野球をやっている人たちには、最高の希望の光なんじゃないかと思います。

武田:希望の光の一歩一歩だと思って見守るということですね。

落合さん:それが一番いいと思います。

関連キーワード