クローズアップ現代

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2019年3月5日(火)
どうなる?日本のマンガ・アニメ ~中国 急成長の衝撃~

どうなる?日本のマンガ・アニメ ~中国 急成長の衝撃~

これまでクール・ジャパンの象徴とされてきた日本のマンガ・アニメで異変が起きている。国民的マンガ雑誌の編集部には、中国人作家の作品が持ち込まれ、地上波でアニメ化される作品も。日本の優秀なアニメーターを厚待遇で募集する中国企業も出てきている。急速に存在感を増す中国の背景には、国をあげた国産マンガ・アニメ振興策がある。各地でアニメーターを養成する「基地」を設立、世界に打って出るアニメや漫画を国策として育成しているのだ。激動する日中のマンガ・アニメ制作の現場を密着ルポし、日本マンガ・アニメのこれからを見つめる。

出演者

  • 武田真一・田中泉 (キャスター)

潜入ルポ “チャイナパワー”驚きの現場

日本がリードしてきたマンガ・アニメにも、チャイナパワーが!?日本や世界で、中国の存在感が急速に高まっているらしいんです。

安室透:こんばんは、安室透です。実は僕も中国で大人気とか。田中泉探偵、潜入取材を頼みますね!

田中:安室さん、了解です!私が潜入したのは、国民的マンガ雑誌の編集部。早速、最先端の動きを見つけました。インターネットで配信しているマンガサイトに、中国人マンガ家の作品があったんです。

集英社『少年ジャンプ+』 細野修平編集長
「こちら『一人之下』という、中国の米二(ミーアル)さんという方が描かれている作品。」

見せてもらったのは、日本でもアニメ化され大人気となった、中国人作家のバトルマンガ。

田中
「(中国のマンガは)縦なんですね。」

集英社『少年ジャンプ+』 細野修平編集長
「縦スクロール、あとフルカラーですね。すべての作品がカラーというのが、中国で主流となっています。」

田中
「擬音語が漢字?ゴゴゴゴって。」

集英社『少年ジャンプ+』 細野修平編集長
「書き文字と我々は言ってますが。」

田中
「中国語のままに、あえてされてる?」

集英社『少年ジャンプ+』 細野修平編集長
「迫力のある書き文字は、中国語というか、漢字で書かれている方があるのかなと。すごい画面構成が巧みだなと思います。」

こちらは4月から配信が始まる新作。去年(2018年)、国際的なマンガ賞で大賞を取り、連載が決まりました。

集英社『少年ジャンプ+』 細野修平編集長
「『カノカレ』、中国語で彼女と彼ということらしいんですが。」

田中
「日本ではカレカノって、ほっこりするような。見やすいです、すごく。」

集英社『少年ジャンプ+』 細野修平編集長
「日本の作家さんと遜色ないくらいのレベルまで、絵のレベルが上がっている。」

集英社『少年ジャンプ+』 細野修平編集長
「おそらく中国でも、ここ数年のうちに、世界に通じるような恐るべき才能を持ったマンガ家さんが生まれるんじゃないか。ジャンプ的にいうと、ライバルが強いほどマンガは盛り上がるので、そういう意味では非常に強いライバルがでてきた。」

Cool Japanにとって、強力なライバルが出てきたことを世界に知らしめた作品があります。
中国で制作された、3Dアニメ映画。去年、日本で上映。60か国以上で公開され、興行収入は200億円を超えています。

中国のアニメ産業の市場規模は、今やCool Japanを掲げる日本の規模を大きく上回っています。日本を含め、海外に輸出される中国作品も増えてきているのです。

中国はなぜこれほど急速に力をつけてきたのか?大ヒットした「西遊記」を制作したスタジオを取材しました。

「日本のファンからの郵便です。」

田暁鵬監督
「ありがとう。」

日本にも熱烈なファンを持つ、監督の田暁鵬さんです。

田暁鵬監督
「中国語で手紙を書いてくれました。これだと読めますね。本当に感激です。」

田監督は、中国を代表するアニメ監督として、今、世界から次回作を待望されています。
この日、訪ねてきたのは、大手エンターテインメント会社でした。

ソニーピクチャーズ北京
「(新作の)予算はどれくらい?」

プロデューサー
「宣伝費を含めないで、3,000万ドル(約33億円)。」

ソニーピクチャーズ北京
「米ドルで?Wow!」

今回、特別に、新作映画の舞台裏に密着することが許されました。すると、日本とは異なる制作手法や、スケールの大きさが見えてきました。

「たとえママだとしても、おまえを見捨てたんだぞ。」

来年(2020年)の公開を目指す、3DのCGアニメ「深海」。内気な性格の女の子が、不思議な世界深海に迷い込むファンタジー映画です。
活用していたのは、人間の動きを記録する「モーションキャプチャー」。実はこの施設、政府によって整備されています。国の強力な後押しで、最先端の技術をふんだんに活用できるようになっていました。

クリエーターも精鋭ぞろい。

クリエーター
「目をもう少し丸くしましょうか?」

ハリウッドで活躍していた人など、中国全土から3DCGアニメ制作の精鋭を選抜しています。

田暁鵬監督
「ラーメンを食べるときに、熱いという動きは強調しなくていい。」

クリエーター
「つまり、このシーンはオーバーな表現でしたか?」

田暁鵬監督
「このシーンで観客に何を伝えたいか、そこを強調してほしい。」

CGには、日本に多い手描きとは異なるメリットがあります。目指す表現のため、スピーディーに何度も試行錯誤できるのです。

田暁鵬監督
「私たちは欧米のアニメを見慣れているので、キャラクターの動きは身振り手振りで表現するべきだと思いがちですが、そうではないものを表現したいのです。時間とコストが許す限り、さまざまなことを試していきたいですね。」

「おはよう。」

密着取材で、田監督のすごさを実感する場面に出会いました。
この日、中国の映画やテレビで活躍する、11歳の天才子役を呼んでいました。微妙な感情表現をCGで表すため、その表情を観察しようというのです。主人公と、自分を助けてくれた男性キャラクターとの、別れのシーンの絵コンテ。女の子は、悲しい気持ちと感謝の気持ちが入り交じった表情を見せます。この絵コンテをもとに、CGを作ろうとしていました。

田暁鵬監督
「スタート、終わりの合図を出さないから、自分のペースで演じてください。」

クリエーターたちに、子役の表情をじっくり観察させます。

子役
「ありがとう。」

田暁鵬監督
「『ありがとう』は、軽くつぶやいて。小さな声で、心の中に思っている人に語りかけるんです。」

子役
「ありがとう…。」

田暁鵬監督
「すばらしい。」

子役
「泣いたとき、力が抜けたみたい。」

田暁鵬監督
「まさにその感覚だ。」

心を動かされた子役の表情が、CG制作の大きなヒントになりました。

アニメーター
「解決したよ。方向性が見えました。」

「自分のキャラクターが、彼女の演技より感動的になることが目標です。実現できるかどうか、頑張ります。」

中国の急成長のわけには、もう1つ、インターネットを最大限に利用して人気作品を生み出す仕組みがあります。
1億5,000万人の読者が登録する、マンガ・アニメのポータルサイトです。携帯ゲームやSNSなどを手がける、中国の巨大IT企業が運営しています。

その編集部は、日本のマンガ編集部とは様子が違っていました。
編集者がパソコンでやりとりしているのは、マンガ家。すべてチャットで行われています。新作の持ち込みや、連載作品の修正もチャットで行い、直接顔を合わせるのは年に1回です。

編集部が認めた作品は、無料で掲載されます。およそ3万本の作品から、ダウンロード数をもとにランク付け。人気が出れば有料化します。さらに人気が続けば、アニメ化やゲーム化など、幅広いビジネスに展開します。
このビジネスには、名だたるIT企業が続々と参入しています。

「現時点で、ダウンロード数は2億人余りです。」

ダウンロードされた時間や地域、読者の年齢などもすべて解析。その情報を生かして、ヒット作品を生み出しているのです。こちらの作品は、連載開始から9か月で累計37億ダウンロードを達成しました。

集英社『少年ジャンプ+』 細野修平編集長
「中国の出版社の方と話をしたときに、中国でマンガを描きたいと思っているマンガ家志望の人ってどれくらいいるか聞いたら、だいたい中国ではマイナーなジャンルなので、100万人ぐらいしかいませんと言われたことがあって。100万人もいるのかと非常にびっくりしましたし、100万人の人たちがみんな描いているんだったら、すごく怖いことになる。」

“チャイナパワー”の裏に国策が…

武田:私も、アニメ大好きです。今回、いくつかの中国作品を見てみたのですが、映像の美しさやストーリーの面白さ、ともにその躍進ぶりには驚きました。
急速に力をつけてきた背景には、中国の国策があります。アニメは今後の成長が期待できる産業だと位置づけ、国を挙げて強力なバックアップをしているのです。

田中:もともと中国では、改革開放をきっかけに、日本やアメリカなど、海外アニメが大量に流入しました。その転換点となったのは2004年です。国産のアニメを育成するために、海外アニメを規制。テレビ放送枠の割合を、中国の国産アニメが7割を下回らないよう指示したのです。そして2008年には、ゴールデンタイムのテレビ放送で海外アニメを放送することを禁止。さらに2013年には、人気の高い衛星チャンネルに、毎日少なくとも30分以上の国産アニメの放送を義務づけました。

武田:田監督も、国が整備していたモーションキャプチャーの施設を利用していましたよね。中国政府はそうした設備だけでなく、国産アニメを制作する会社には税の優遇や奨励金なども提供しているんです。

田中:ただ、課題もまだあります。中国では、アニメのキャラクターを模倣するなどして、著作権を侵害する行為が繰り返されていて問題となっています。こうした行為が、健全なアニメ産業の発展を妨げていると専門家は指摘しています。

最前線ルポ 変わる日本と中国の関係

武田:さて、中国の急成長をきっかけに、日本のアニメ産業も大きく変わり始めています。日本と中国の間では、これまで、原作は日本で、アニメ制作の一部を中国へ発注するという仕組みがありました。中国のアニメ産業が日本を支えるという構造があったのです。その関係に今、変化が起きています。

アニメ産業が集積する、中国・大連。ここで15年前に設立された、アニメ制作スタジオです。設立当初は、ほぼすべての仕事が日本の下請けでした。しかし今では、3分の2が中国向けのアニメ制作です。

Be top 大連 肖廸社長
「ここからここまでは、日本アニメの担当です。ここから向こうのエリアは、すべて中国国内のアニメを制作しています。」

スタッフは、日本の下請けだった頃の10倍に。

「これはいいですね。」

今、制作しているのは、オリジナル作品です。中国だけでなく、日本のアニメ市場への展開も視野に入れています。

Be top 大連 肖廸社長
「このキャラクターを、日本人に設定しました。5人のうち、男の子は日本人で、忍者の格好をしています。」

Be top 大連 肖廸社長
「(中国の)アニメ市場の将来は明るい。私たちは自信満々でやっています。」

中国原作のアニメを、日本で制作。中国で公開しようとする動きも出ています。
去年6月、日本人とともに都内で事業を立ち上げた、鄧志巍さんです。手がけているアニメは、ほとんどが中国国内向けです。

高い技術力を持った日本のクリエーターとともに制作しようと、採用活動を進めています。契約社員も多いアニメ業界で、正社員を募集しています。条件に応じて家賃を補助。残業の少ない環境を整備するなど、スタッフの待遇に力を入れています。

カラード・ペンシル・アニメーション・ジャパン 江口文治郎取締役
「比較的、応募は思った以上にもらっていますね。日本のアニメ業界って、今なかなか厳しい状況に置かれている中で、どんな労働環境で働けるかということを気にしている(専門学校の)生徒さんも多くて、そういう方々に比較的支持されているのかなと。」

日本のマンガやアニメが大好きでアニメーターになったという鄧さん。

カラード・ペンシル・アニメーション・ジャパン 鄧志巍代表取締役
「中国と日本の懸け橋になりたいです。日本で制作する優秀な作品を中国市場へ出し、中国の人たちに楽しんでもらいたいです。最終的には、世界中の人にも見てもらいたいと思っています。」

広がるチャンス 日本に新たな動き

田中:今回、現場を取材してみると、当初考えていた以上に中国の勢いを感じました。日本のマンガやアニメは大丈夫なのかと少し心配になります。

安室透:田中泉探偵、確かに不安になりますよね。でも僕に任せてください。日本だって負けていない現場を中国で見つけたんです。

これは、北京で開催されたマンガ・アニメのイベントです。来場者は1万人にも達しました。人気はやはり日本の作品なんですよ。

来場者
「日本のアニメをよく見ます。人物や物語がとても目新しいです。」

「日本のアニメは物語が面白いです。中国のストーリーは、もの足りない。」

実は、日本のアニメ会社が期待をする取り決めが、去年5月、日本と中国との間で交わされました。もともと中国では、海外映画の上映本数に制限があるため、日本作品の中国進出には壁がありました。しかし、日本と中国が共同で制作する「日中合作」の作品であれば、規制の対象外となったのです。

すでに、日中合作の動きが始まっています。東京・武蔵野市にスタジオを構えるアニメ制作会社です。
この映画は、日本と中国のスタジオが協力して制作。監督も日本人と中国人が共同で務めました。映画は日本と中国で同時公開され、話題を呼びました。

絵梦 唐雲康取締役副社長
「今後、必ず国境を越えて一緒に作るのが大事だと思うので。両方の国で感動できる作品を作れると思います。」

中国の成長をきっかけに、日本のマンガの表現スタイルも変わろうとしています。

「6本から10本を選ぶ感じで。」

この編集部では、中国と同じ「縦スクロール」のマンガを募集したコンテストを開催。日本人のマンガ家から200作品以上が集まりました。

「これ一番圧倒的だったけど。」

「“縦スク”にはなってます。」

上位5作品に選ばれれば、中国のポータルサイトでデビューします。
さらに今年(2019年)1月から、日本人のマンガ家の作品を英語やスペイン語に翻訳し、世界同時配信するサービスも始めました。

集英社『少年ジャンプ+』 細野修平編集長
「ジャンプの王道マンガというのは、別に形があるわけじゃなくて、一番多くの読者に読んでもらえる作品がジャンプマンガなんだと思っているので、5年後、10年後に世界で読まれているジャンプマンガというのは、今とは全然別物になっている可能性がある。」

ピンチかチャンスか?この先は?

田中:現場で見えてきたのは、ネット時代だからこそ中国が急成長しているし、日本を含むマンガ・アニメ産業が大きく変わってきていることでした。今はマンガが国境を越えて楽しまれている時代ですよね。

武田:見ていても、あまり(国境は)感じないですね。

田中:だからこそ、日本にとっては、強力なライバルとの競争に一気にさらされるという意味ではピンチでもあるし、逆に世界の人たちに広く楽しんでもらうという意味ではチャンスでもあると感じましたね。

武田:まさに分かれ道ということなんですが、それがピンチかチャンスか、専門家に聞きました。

10年以上、中国のアニメ産業を調査・研究してきた、増田弘道さんです。日本の将来に悲観しているわけではないと言います。

ビデオマーケット 常勤監査役 増田弘道さん
「日本のアニメがものすごい力があるのは、歴史の力というか、文化の積み重ねの違い、スタッフの育成度がまだ日本のほうが一日の長があるので。」

増田さんは、日本のマンガやアニメ産業が成長していくためには、拡大を続ける中国市場でヒットする作品を生み出せるかどうかがカギだと言います。

ビデオマーケット 常勤監査役 増田弘道さん
「本当の意味で、中国でフェアな環境で、日本のアニメが公開されるとか、テレビで放送されるようになったら、ものすごい経済的なメリットが大きくなると思います。経済的なフィードバックがあると、中国を意識した作品ができてくると思いますし、中国との共同制作も進むと思います。」

武田:縦スクロールのマンガや、中国らしい表現のアニメ。私は新鮮に感じました。そこからさらに日本も刺激を受けて、もっと面白いものを、見たことがないものを、競い合いながら作ってほしいと思います。