クローズアップ現代

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2019年2月5日(火)
睡眠不足にストレス 突然おそうパニック障害

睡眠不足にストレス 突然おそうパニック障害

タレントが活動休止の理由に相次いで公表した「パニック障害」。実は、100人に一人が罹患する身近な病気。受診者は15年で9倍と増加している。強烈な発作を引き起こし、日常生活に常に不安感がつきまとう疾患だが、原因については詳しくは不明。ただし、生活の乱れやストレスが多い人がかかりやすいことが分かっており、現代病とも言われている。回復には、周囲の理解が欠かせないという「パニック障害」。声を上げ始めた患者の姿を追う。

出演者

  • 中川家 剛さん (お笑い芸人・パニック障害を経験)
  • 武田真一・田中泉 (キャスター)

タレントも次々に告白 突然おそうパニック障害

去年(2018年)人気アイドルが相次いで休養を宣言。その理由は、パニック障害。激しいどうきや呼吸困難、汗や震えが突然襲ってくる病です。診断を受ける人の数は、この15年で9倍に急増。

多くの著名人もこの病に苦しんできました。

タレント 安西ひろこさん
「寝不足だったり、栄養不足だったり、食べる時間がなかったりとか。急に目の前が見えなくなっちゃったんです。ふわっと倒れて、過呼吸みたいな感じで息が吸えなくなっちゃったんです。」

女優 大場久美子さん
「なんか呼吸をしているのに息が吸えてない。肺に空気が入ってないような息苦しさと、心臓発作かなと思われるような、どうきが急に来まして。窒息する寸前て、こんなに苦しいのかなって。」

原因は詳しくは分かっていませんが、ストレスやアルコール、たばこの量が多い人ほど症状が悪化しやすく、現代病ともいわれています。実は日本で100人に1人がかかるという身近な病気。その苦しさを周囲に理解してもらえず、病を告白することさえできない患者も数多くいます。

ゲスト 中川家 剛さん(お笑い芸人・パニック障害を経験)

武田:中川家の兄、剛さんも、この病に苦しんだお一人だということですけれども、どんな症状だったんですか?

剛さん:僕の場合は、発作、息ができないというのと、あとは電車に乗れない。特に急行や特急には長い間乗っていられないという。外に出れないから不安で。だから、各駅停車に乗って、大阪・京都間を仕事で通っていたんですけれど、ふだん30分のところを4、5時間かけて、乗っては降りて乗っては降りて。

武田:今はかなり改善されて?

剛さん:今はもう全然大丈夫ですけれども。

武田:今日は視聴者の皆さんにどんな思いを伝えたいですか?

剛さん:やっぱり、この病気を理解してほしい、もっと知ってもらいたいということですね。

田中:改めて、このパニック障害とはどんな病なのか。まず、診断基準によりますと、「パニック発作」です。突然激しいどうきや呼吸困難などの発作が繰り返し起こります。そしてもう一つが「予期不安」。再び発作が起きるんじゃないかという不安に襲われて、仕事や日常生活にまで支障を来すようになります。

武田:その時に発作が起きていなくてもということなんですね?

剛さん:次、来るんじゃないか来るんじゃないかと、常にドキドキしているということですね。

田中:さらに、すぐに逃げ出せない場所や、助けを求められない状況など、発作を思い出させる特定の場所や条件で恐怖を感じる「広場恐怖症」という症状も、多くの人が併発するんです。

武田:広場といっていますけれども、広場にかぎらず、電車だったり?

剛さん:電車もそうですし、エレベーターもそうですね。

田中:人によって恐怖を感じる場所や条件は違いますね。
アメリカでの調査によりますと、人口に占める患者の割合、女性が男性の2倍以上で、特に女性が多いんですね。

また、ストレスや寝不足、そしてアルコールなどが症状を悪化させ、先進国では途上国に比べて有病率は5倍というデータもあります。その患者さんたちを取材しました。

先進国の“現代病” 突然おそうパニック障害

長年、パニック障害に悩まされている、林恵子さん(仮名)です。

林さんは、夫と娘、母親との4人暮らし。以前は薬剤師として働いていましたが、現在は自宅で療養しています。林さんが初めて激しい発作に襲われたのは、電車の中でした。突然、冷や汗や呼吸困難に襲われたといいます。

林恵子さん
「だんだん震えとか、めまい、貧血みたいな感じですかね。どうしようという不安感、何が起きたんだという、まさにパニックって感じですね。」

さらに、激しい発作を経験してからは、また発作が起こるかもしれないという不安が常に付きまとうようになりました。特に、1人で風呂に入る時にはスマホが手放せないといいます。

林さん
「連絡手段、呼び出しベルの代わりっていう感じで。具合悪くなってフラフラとなったときは呼び出さないと不安なので。」

取材班
「実際に危なかった目にあったことは?」

林さん
「ないんですけれど、やっぱり、なったらどうしようと。」

逃げられない、助けを呼べないと感じる特定の場所では、強い恐怖心が湧き上がるといいます。以前は好きだった車の運転ができなくなりました。

林さん
「堤防の両端に川沿いにガードあるんですよ。そういう風に閉鎖された感じになると、どっちにも逃げられない感じになって、もうなんか怖い、どうしよう、でも平気だよねといいながら、自分に言い聞かせて深呼吸してみたり。」

発作の時を除いて、ふだんは元気に見えるパニック障害は周囲の理解を得にくく、トラブルにつながることも多いといいます。薬剤師として働いていた時には職場にいづらくなり、何度も勤め先を変えざるを得ませんでした。

林さん
「やっぱり耐えきれなく、自分に対する雰囲気が、どんどん悪くなっていくのが目に見えてわかるし、私みたいな薬剤師なんかいなくたって普通に薬局も動いてるし…という気持ちにどんどん卑屈になっていって、やっぱり自分を否定して、否定しまくる。苦しくて、死んでしまいたいという気持ちになっている人間は、本当に苦しいんですよね。」

パニック障害によって、その後の人生が大きく影響を受けたという人もいます。20年以上この病に悩んできた、大嶺昭さんです。

大嶺昭さん
「もともと、ひとり旅行が好きだったから、こうやって人のいるところ歩くのが好きでしたけど、病気でもう怖くて1回(歩くのが)できなくなって。」

大嶺さんは20歳のころ、ミュージシャンになる夢を追いかけてアメリカに音楽留学をしていました。その時、突然心臓が破裂するほどの強烈な発作に襲われたといいます。

大嶺さん
「扉を開けようとしたら体が動かなくなった。もう脳が完全にパニック起こして、体が固まっちゃってる。もう極度の緊張と混乱…。どうしよう、どうしよう、出られない、どうしよう。だんだん今度は気持ちが悪くなってきて。」

大嶺さんは夢半ばで帰国します。ところが、国内の病院ではパニック障害と診断されず、適切な治療を受けられなかったといいます。その後、うつ病も併発。当時の思いをイラストにしていました。

取材班
「なんて書いてあるのですか、字は?」

大嶺さん
「苦しい、辛(つら)い、重い。心は苦しいけれど外には出せないし、目にも見えないし、もう嫌だということ。」

30代に入り、パニック障害と診断され、適切な治療を受けてからは症状が改善したという大嶺さん。現在は自宅でできる作曲の仕事をしています。

大嶺さん
「だいぶ治ったので明るい未来を考えているのですけれど、やっぱり無理はしない。だからその辺で病気に変えさせられたというか、人生観をですか。学んだことは多かったのかな。」

武田:このお2人の状況、お分かりになりますか?

剛さん:さっきの女性の人の「私がいなくても」とか、僕やったら「僕がいなくても、別にこの世界回ってるし」みたいな、その悲観的に考えますよね。一人で追い込んで追い込んで。

武田:パニック障害の症状ももちろんつらいんでしょうけれども、それをきっかけにどんどん自分を否定するようになる。

剛さん:否定して、自分で自分を追い込んでいくみたいな形。

武田:つらいですね。

田中:実はこの15年でパニック障害と診断された人は9倍に増えているんです。でもこれは病気の認知度が上がったために、これまで理由が分からず苦しんでいた人も、医師に相談するようになったためだと考えられています。
どういうきっかけでパニック障害になるのか。実ははっきりとは分かっていないんですが、専門家の貝谷医師によりますと、肉親との離別体験、引っ越しなどの環境の変化、そして虐待など、人間関係のストレスが引き金になる可能性があるといいます。

武田:剛さんは、きっかけについて思い当たることはあるんですか?

剛さん:20代半ばぐらいですかね、仕事がゼロやったのが急に増え出して、休憩することなく一年中毎日仕事という形で、頑張れ頑張れと。なんでもっと頑張られへん、なんでもっとできへんのや、みたいなことで追い詰められた、追い込まれた形ですよね。忙しいことはうれしいんですけれど、考える間もなかった。

武田:その日々の忙しさのストレス?

剛さん:ストレスですね。休憩がなかったですね、とにかく。

武田:それがある時、発作になって出てきたと。そのきっかけって何かあったんですか?

剛さん:だから、周りから言われますよね、なんでもっとできへんのや、みたいな。でも僕、お笑いなんで。それはツッコミなんですよね。何もできへんな、暗いなぁっていうのはツッコミなのに、それを僕は真に受けて、本当に何もできない、俺は暗いんや、みたいな。何の役にも立ってない、みたいな形で。

武田:さっきの女性みたいに追い込んで。

剛さん:追い込みましたね。自分が悪い自分が悪いって。

田中:このパニック障害、どういう治療方法があるのかといいますと、まずは「薬物療法」ですね。抗不安薬や抗うつ薬を精神科などで処方してもらいます。パニック発作や、また起こるかもしれないという不安を和らげる効果があります。もう一つが「認知行動療法」。これは、発作がまた起きるんじゃないかという思い込みを改めて、段階的に恐怖に身を置くことで、心の免疫力をつけるという精神療法なんです。例えば電車に乗れなくなった人が、一駅、また一駅と、少しずつ距離を伸ばしていくというようなことなんですね。専門家によりますと、かつては病気の認知が広まらず、適切な治療を受けられなかったため、重症化するケースも多かったんですが、現在は早期発見、早期治療が進んで、症状が改善するケースが増えているということです。

武田:剛さんも今は改善されたということなんですけれども、どういうふうに治療は進めていかれたんですか?

剛さん:僕も、自分でちょっとずつ挑戦ですね。電車で2駅しか行けなかったところを3駅行ってみるとか、エレベーターも2階までだったのを3階までにするとか。あとは漫才、今もやっているんですけれど、五分五分でしゃべっていたのを、8対2ぐらいに変えてみたりとかして。

武田:弟さんのほうがたくさんしゃべるようにして?

剛さん:僕はしゃべれないですから、その時は。何をやっても、ドキドキドキドキするんで、そういう形を変えたりとか、いろいろ試しましたね。薬をちょっと控える、1日3回飲んでいたのを1回にするとか。

武田:お薬も飲まれていたんですね。

剛さん:はい。薬で抑えつけるのもあんまり良くないかなと思っていたので。

武田:漫才のスタイルを変える。でもその結果、Mー1グランプリでチャンピオンにもなられたと。

剛さん:それは本当たまたまなんですよね。

武田:それが一つの漫才のスタイルになったと思うんですけれども、その時はどうでしたか?申し訳ないなとか、自分黙ってていいのかなとか。

剛さん:最初はありましたけれど、それによってお客さんが笑うようになったというか。たまたまなんですけれどね、その形を取ったのは。だから自然になったことなんですけれど。

武田:ちょっとずつ努力していって、ということなんですね。

田中:ほかにも、患者が自らパニック障害の症状を和らげる方法もあります。専門家によりますと、例えば運動やヨガのほか、「マインドフルネス」というリラックス法も効果があるというんです。マインドフルネスは、例えばこのような静かな部屋で、毎日朝晩10分ずつ、リラックスした姿勢で座ったまま軽く目を閉じます。そして、浮かんでくるイメージや考えを無理に止めようとしないで、とらわれることもなく、ありのままを受け入れます。こうすることで心が穏やかになるといわれているんですね。

武田:こういうことも、専門医に相談してということですね。
そのパニック障害ですけれども、症状のほかにも患者を苦しめるものがあるといいます。

遠出が苦手な人が多いパニック障害の患者たちが、全国から年に数回集まる会があります。

パニック障害の患者
「幼稚園の先生に『お母さんはなぜ来れないのですか』って。『なんなんですか、パニック障害。なんなんですか』って。」

この日話題になっていたのは、周囲から理解されにくいという悩み。元薬剤師の林さんの姿もありました。

林さん
「やっぱり言ってもわかってもらえないなって。親せきなんかは『あんたも頑張りなさいよ』『気が弱いからよ』って。」

例えば、参加者の数の割に広い、この会場。狭い場所が苦手な人に配慮したものです。こうした苦しみは、職場や地域では理解されにくく、偏見に悩んでいるといいます。

林さん
「半年ぐらい働いたら、また具合が悪くなって、突発休が重なるからやっぱりちょっと困ります、ということになって、やめるっていうのも何回も7回8回は繰り返していて。」

パニック障害の患者
「目の前のこの人に知られてはいけない、もしかしたら他の人に漏れちゃうかもしれない。そしたら、子どもにどんな影響がいくんだろう、お友達にどう言われるかわかんないとか。」

そうした中、周囲に病気を理解してもらうことで症状が改善したという人がいます。加藤格さんです。

大手石油関連会社のサラリーマンだった加藤さん。当初は仕事に支障を来すのを恐れ、自分の病気について周囲に話すことはありませんでした。

加藤格さん
「さすがに上司には言えなかった。上司はそういうのわかってしまうと、やっぱりこいつに仕事任せられない。なんかこう完全に社会から外される感がでるんじゃないですか。だからやっぱり言えなかったですよね。」

しかし、受診した心療内科の医師からは思わぬことを告げられました。周りに病気を公表するよう勧められたのです。そこで実際に告白すると、職場も取り引き先も、高い場所での会議が苦手な加藤さんに配慮してくれるようになり、症状が改善したといいます。

加藤さん
「社長をはじめ、役員の人たちも、みんなでパニック障害の本を買ったりとか、なんとかしてやろうみたいな感じで、協力はすごく(いい)。」

40代になり、加藤さんは長年の夢を実現します。飲食店を兼ねたライブハウスの経営です。

「なんか今日も、ええ感じの。調子が良さそうで。」

加藤さん
「調子いいよ。」

加藤さんは今も、親しい仲間には自分の病気について積極的に語るようにしています。

「聞いたからといって別に、こうせなあかん、ああせなあかんとか、僕にはないんですけれど。」

加藤さん
「全然楽ですね。助けというか気持ちが、全く違うので。知ってる人がいると、どこかに自分が許せる部分というか、自由になる部分があるので、知ってる子がいるのといないのでは(気持ちが)全然違います。」

田中:学校や職場でパニック障害への誤解や偏見をなくすために、患者自身が病気のことを知ってもらう活動も始まっています。こちらは、患者たちが中心になって立ち上げた団体で、実際に企業を回り、周囲の人たちが患者とどう接すればいいかを教えています。

そのポイントを聞きました。例えば患者に声をかける時は「気のせいだよ」などと否定しては絶対ダメで、「そばにいるからね」といった、相手に寄り添う言葉が望ましいそうなんですね。心構えとしては、慌てず、焦らず、安心感を与えること。ありのままを受け止める姿勢が大切なんだそうです。

京都府立医科大学 客員教授 精神科医 貝谷久宣さん
「自分が迷惑をかけていない、かけたくない、悪い人間と思われたくない、という人が非常に多い。(周りの人は)あまり気をつかい過ぎないことが一番。気をつかわれることに気をつかうのが、この病気の特徴ですから。まさにこの病気になる人たちはそういう人が多い。」

剛さん:気をつかわれることに気をつかうってことですね。

武田:納得できます?

剛さん:納得できますね。

武田:剛さんが周りにカミングアウトした時には、周りの方々はどんな反応だったんですか?

剛さん:だから、芸人なので特殊やったのか分かんないですけれど、みんな笑っていましたね。「なんじゃその病気」って。「聞いたことない、教えて教えて」言うて。挙句の果てには、さんまさんは「パニックのPを取って、額にPつけて、パニックマンっていうキャラクターでコント作ったらどうや?」みたいな。

武田:それはどうだったんですか?笑われてちょっと嫌だったとか、そういうことはない?

剛さん:いや、楽でしたね、笑ってくれたほうが。深刻にそうかって近寄ってこられるより、なんやそれって笑いながら、みんなが近寄ってきてくれたことが、すごい楽になりましたね。

武田:でもそれはやっぱり芸人さんだから、そういうふうに受け止められるということもないですか?

剛さん:そのあとすぐパニックマンやりましたから、額にPつけて。ヒーローで、助けに行くんですけれど、パニクって助けることができない、どうしようっていうコントなんですけれど。

武田:同じように悩んでいらっしゃる方に何か一言メッセージを頂けるとしたらどんなことですかね。

剛さん:だから、周りの理解ですよね。周りの人も大丈夫?って真剣に言うよりも、普通に笑顔で接することなんじゃないですかね。やっぱり周りの理解が大事やと思いますね。

武田:そのために、自分からつらいけど言わないといけない、ということもありますよね。

剛さん:言ったほうがいいと思います。分かってもらう、周りにしっかり理解してもらう。周りの人も適当でいいよって笑顔で言ったら、そっちのほうが安心すると思いますね。

武田:最後に、このお2人からのメッセージです。

タレントも次々に告白 パニック障害で苦しむ人へ

女優 大場久美子さん
「とにかく、この世で一番苦しいもの、つらいものっていう記憶が私の中にあるので、同じ病気で苦しんでる方の、少しでも役に立ちたいというのが、ほんとうに、これからの後半の人生、それにつきますね。」

タレント 安西ひろこさん
「あきらめようと思っている方がいたら、絶対にあきらめないで欲しい。じゃ、どういうふうにすればいいのと聞かれたら、120パーセントの力で闘わないで、向き合うことも、そんなにまじめにしないで、のんびり、大丈夫だから。わたしを見てほしい、今のわたしを。」