クローズアップ現代

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2018年12月20日(木)
年末スペシャル 本音で迫る!あのニュースの「その先」

年末スペシャル 本音で迫る!あのニュースの「その先」

クローズアップ現代+年末の特番は73分の拡大版!いま話題になっている、あるいは今年大きな話題になったニュースの「その先」を掘り下げ、新たな演出でお伝えします。パワハラ問題や助成金の流用などで揺れた日本のスポーツ界、東京オリンピック・パラリンピックに向けて何が求められているのでしょうか。地震、大雨、台風・・・視聴者が撮影した迫力映像を最新科学で分析すると、都市ならではの知られざる「死角」が見えてきました。生放送で、当事者や専門家だけでなく、視聴者やネットのコミュニティ参加者も巻き込み、深掘りしていきます。特設ページはこちら(https://www.nhk.or.jp/gendai/feature/2018/)。

出演者

  • 木村祐一さん (タレント)
  • 大久保佳代子さん (タレント)
  • 為末大さん (元プロ陸上選手)
  • 武田真一・鎌倉千秋・田中泉 (キャスター)

節約でも!?“賢い”消費術 一番おカネを使う今 新潮流

田中:年末年始、海外旅行に行きたいけど行けない。そんな人たちに人気のサービスがあるんです。

花の都・パリへのファーストクラスがなんと5,980円。広い座席に、フランス料理。楽しむのは、バーチャルリアリティーの旅行です。

利用者
「体の都合で海外旅行できないもんですから、旅行気分を味わわせていただいて、とてもうれしいです。」

「とてもファーストクラスに乗れないので、良かったと思います。」

今月(12月)各社がキャンペーンを実施し、話題となったキャッシュレスサービス。

ポイントが還元され、実質、現金が戻ってくるのと同じメリットがあるとして大人気です。

主婦
「3,000ポイント分ピザを頼むと、3,000ポイント戻ってきたりすることがあるんです。」

田中:つまりタダってこと?

主婦
「そうなんです。いまは本当に特典をつけることでユーザーを増やす戦国期なので、だから、いまが一番おトクなんです。」

戦後最長の景気回復とは言われるものの、クリスマスプレゼントの出費は去年(2017年)と比べて500円減るという試算が。そんな時代だからこその新たなマネー術が生まれています。

消費動向に詳しい専門家
「(お金を)使いたいところには使うし、使い方をより“賢く”、手軽に、おトクに購入する。」

スタジオゲストのキム兄と大久保さんもボーっと生きていられませんよ!

節約でも!?“賢い”消費術 話題の“ポイ活”最前線

30代のYUNさんです。

YUNさん
「今日もちょっとお花を買いたいなと。」

現金を使わないキャッシュレス生活を始めたことで、平均して毎月1万円分のポイントを得るようになったといいます。クリスマスの飾りを買うときも現金いらず。

YUNさん
「1,130円で。」

YUNさんがメリットを実感したのは、この店で妹の結婚式のためにブーケを購入したときでした。キャッシュレス決裁を手がける企業が行ったキャンペーンの対象に当せんしたのです。

田中:見てください、これ。

YUNさん
「4万5,000円のお支払いで『おめでとうございます、4万5,000円相当のPayPay残高ゲット』。4万5,000円使って、4万5,000円戻ってきました。」

田中:意味がわからないです。

今では、8種類のポイントサービスを使いこなすYUNさん。きっかけは、節約方法を探していたときにSNSで出会った、この言葉。“ポイ活”=ポイント活動。たまったポイントを活用して、コンビニやスーパー、ネットショッピングなどでお得に買い物するようになったのです。

YUNさん
「旦那も育休をとらせてもらってて。」

田中:YUNさん自身も育休をとっていらっしゃる。

YUNさん
「子どもとたくさん一緒にいる時間はとれるけれども、お金はないっていうことで、どうにか節約をしなきゃいけない。子どももオムツとか、なんだかんだでかかるじゃないですか。」

でも一体なぜ、そんなにお得になるのか?実は今、キャッシュレス決裁のサービスが次々誕生。より多くの利用者を獲得しようと競い合ってキャンペーンを行っているのです。最近では、例えば1万円分の買い物をすれば2,000円分のポイントがもらえる20%ポイント還元。抽せんで実質、全額無料になるというサービスもありました。YUNさんは、いつ、どこで、何を買えばポイントをより多くためられるか、ToDoリストにしています。

来年(2019年)5月に誕生日を迎える子どものプレゼントも、すでに購入。クリスマスプレゼントじゃないんです。

YUNさん
「節約が趣味になって、友だちもすごい言ってます『えー知らなかった、私どんだけ損してたの?』って。本当に1万と2万とかいうセコい話じゃなくて、年間で言うと10万20万レベルで損してたなって、いま感じるので。」

国もキャッシュレス決裁の普及を促し、その利用を10年で2倍に増やそうとしています。しかし一方で、不正利用も起きています。10月に始まったサービス「PayPay」で利用者のクレジットカードに身に覚えのない請求が相次いだのです。ゲストのお2人、キャッシュレスサービス、どう思いますか?

ゲスト 木村祐一さん(タレント)
ゲスト 大久保佳代子さん(タレント)

木村さん:こなせれば、もうこれ以上いいことはないと思いますけれど。

大久保さん:でも、やっぱり知らないサービスだから、なんか損するんじゃないかとか、なんか危ないことがあるんじゃないかとか、怖さが、私、まだありますね。

武田:お2人はそもそも使っていらっしゃるんですか?

木村さん:いや、使ってないです。

大久保さん:私、最近スマホを換えたきっかけで、交通機関に乗るときにピッて。あれもいいんですよね。

武田:それもキャッシュレスですよね。

大久保さん:あれにやっとなりました。

武田:でも、先ほどのVTRの方は、これまでどんだけ損してたのっておっしゃっていましたけれど。

木村さん:年間10万、20万っていうことでしょ。

武田:もしかしたら、ずいぶん損しているんじゃないですか。

大久保さん:1万買って1万戻ってくるって、そんなね、いい話ないですよ。

木村さん:ごく少数なんでしょ。あの方はたまたま当たったけれども、みたいな。

武田:先ほどもおっしゃいましたけれど、交通系のカードとか、いろいろあるじゃないですか。今回、取材した田中さん、そもそもキャッシュレスって一体何なんでしょうか?どういう仕組みなんですか?

田中:代表的な決済方法の一つをご紹介しますね。まずは、キャッシュレス決済のアプリをスマホにインストールします。支払いに使うクレジットカードや銀行口座などをアプリに登録します。何か欲しいものがあったとなりましたら、店頭でスマホを使って、こうしたQRコードやバーコードを読み込むことで支払いが済んで、先ほど登録したクレジットカードなどから支払いが引き落とされます。このときに、支払い額に応じて、先ほどVTRにもありましたが、例えば数パーセントのポイントが還元されるという仕組みなんですね。

大久保さん:これはクレジットカード会社からポイントがもらえるんですか?

田中:クレジットカード会社からももらえますし、この決済サービスのアプリからももらえる。

木村さん:買い物したものによっても変わるんでしょ?2つ目までやったら、新幹線のチケットとかやっていますけれど、それに付随するポイントとか調べたこともないし、あるのかどうかも知らないですよね。

武田:実は、皆さんの疑問にお答えしていただくために、今日は賢い消費のプロにも参加していただこうと思います。貯金や節約に詳しい、ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さん、よろしくお願いします。

風呂内さん:風呂内です。よろしくお願いします。

武田:今お2人から疑問が出ていましたけれども、その前に、このキャッシュレスサービスは今、相当盛り上がっているんですよね。なぜなんですか?

風呂内さん:キャッシュレスがはやっている理由は、得だっていうところがもちろんあると思います。ポイントがうれしいと、消費者から見ると得であるというところもありますね。あとは、カバンの中からお財布を探したりしなくてよかったりとか。

木村さん:持ち歩かないのがいいですよね。

風呂内さん:そうなんです、すごく便利ですね。あと、データが自動的に残るというところもすごく家計管理においてもメリットがありますね。

木村さん:風呂内さん、どんな商品にもポイントとかが必ず付いていると考えてもいいんですか?

風呂内さん:そのお店が決済のサービスを導入していたら。

木村さん:そういうことでしょうね。それで買えるということはそういうことなんでしょうね。

田中:このキャッシュレス決済なんですけれど、来年の消費税率引き上げのときにも、注目を集めそうなんです。というのも、国が景気対策として、クレジットカードやスマートフォンによる決済サービスを使った場合、中小の商店の場合は原則5%、そしてコンビニやガソリンスタンドなど、大手チェーンの店舗では2%のポイントを還元する方向で、今、検討しているということなんです。

大久保さん:消費税が上がるけれども、これだけ還元してくれれば。

田中:ただ、それはクレジットカードだったりとか、スマートフォンによる決済サービスを行った場合ということです。

武田:こういうサービスを使っていないと、ポイント還元ももしかしたら受けられないかもしれない。

木村さん:詳しくはなりたい気持ちもありますけれど、面倒くさいとか理解が難しいとかいう方はいらっしゃると思いますけれど。

大久保さん:年齢的にももう50手前になると、何か読むってことが非常に難しいんですよ。

木村さん:覚えが悪い。

大久保さん:覚えが悪い。何が書いてあるか分からない。投げちゃう。

武田:先ほど、ちょっと不安だとおっしゃっていたじゃないですか。やはり、最近いろいろ問題も出ていますよね。

田中:VTRにもありましたけれども、キャッシュレス決済の「PayPay」では、不正利用の問題も起きています。身に覚えのないクレジットカード決済が行われたという報告が相次いでいるんですね。クレジットカードの裏に数字3桁の「セキュリティコード」ってあるじゃないですか。これに何度番号を入れ間違えても、入力に制限がかからないようになっていたんですよ。なので、こうした登録方法の甘さもありまして、クレジットカードを第三者が勝手にアプリに登録して利用したと見られているんです。会社は今は入力の上限回数を設けていまして、不正な利用を行えないように対策を取っているとしています。ただ、身に覚えのない請求がありましたら、カード会社に問い合わせるように注意を呼びかけています。

木村さん:知らぬ間に引き落とされているわけですから、気付かないといけないですね。

武田:ここまで、キャッシュレスでポイントを使って、お得に年末を過ごそうという方をご紹介しましたけれども、知恵を絞ってお得に楽しむのは、キャッシュレスだけではないんです。

少額で欲しいものを… 拡大する“シェアサービス”

支払いは少なく、気分はリッチに。ふだんは手に入らない高額なモノを手軽に楽しむサービスも増えています。

「いい感じですね。」

こちらは、時計を購入するのではなく、レンタルする店。中には、200万円を超える時計もあるんです。レンタル料は月およそ4,000円から2万円までの定額制。プランに応じた時計を選ぶことができます。

75万円の時計を借りた、こちらの男性。仕事柄、身なりを整える必要があるため、このサービスを利用しているといいます。

オーダーメイドスーツを販売 大上貴司さん
「スーツの数が20本とか多いので、それに合わせて時計をそろえてしまうと金銭的に厳しい。借りることがコスト的にも見合っているので利用させていただいています。」

子育て中のこちらの男性。

景気の先行きが見えない中、妻と子どもの生活費や教育費を考え、時計の購入は見合わせました。

「代表の方、役員の方、プロデューサーの方、責任者の方。」

2年前に起業し、取り引き先との商談で信用を損ねないため、身だしなみの大切さを感じていました。

ネット広告会社 代表取締役 山田雄介さん
「起業する前は、時計もあまりこだわりはなかったんですけど、その会社の顔に僕がなると思うので、ちゃんとした格好で臨むのが相手に失礼がない。」

このサービスを立ち上げたのは、これまで時計とは縁のなかったIT企業です。ネットで中古品をやり取りする人が増えていることを知り、モノをシェアするサービスに可能性を感じたといいます。開始から僅か1年半で、会員数は1万3,000人を超えました。

時計のレンタルサービスを運営 常務取締役 小川紀暁さん
「当初、想定したよりは結構受け入れられているのかなと。人が使ったものでも、自分が必要であれば、買ったり、借りたり、新品ではないものを共有することに対し、抵抗感がなくなってきているのではないか。」

モノを所有するのではなく、シェアするサービス。さらに広がりを見せています。

ブランドバッグのレンタルサービスを運営 竹増浩司さん
「最近は、大きめのバッグではなく、小さめのバッグが人気。」

月に6,800円で、ブランドバッグを貸し出してきた、この会社。学生から主婦、働く女性など、登録者数は27万人を超えています。
去年、新たなサービスも始めました。会員が所有する高級バッグを預かり、メンテナンスして、別の会員に貸し出すというサービスです。所有者はバッグが貸し出されると、月2,000円受け取ることができます。今では3万個のバッグのうち、およそ2万個が会員が所有するものです。在庫を抱える必要がなくなり、経営リスクの軽減にもつながりました。

武田:いかがですか?腕時計とバッグをシェアしようという。

木村さん:車とか、家とかがありますけれど、ああいうものはもう自分のものになるからというステータスのものだったでしょ。それがシェアって感覚になれる人がそんなにたくさんいらっしゃるんですね。

武田:やっぱり僕らバブル世代なので、やっぱりものは欲しいんですけれど、最近はそうじゃなくなってきているんですね。

大久保さん:でも私、基本ブランドにあんまり興味がなかったりするんですけれど、たまにちょっと結婚式があったりしたときに、友達に借りるのはちょっとやだなとか、そのためだけに買うのやだなっていうときには「あっ、こういうので借りていけばいいんだな」って、便利だなと思いましたけれどね。

武田:VTRに出ていらっしゃった、ブランドバッグのシェア会社で取締役を務める、竹増さん。後ろに並んでいるのは全部バッグですか?

木村さん:倉庫みたいになっていますけれど、高級バッグばっかりですか?

竹増さん:そうですね。平均30万円を超えるバッグがたくさんあります。

木村さん:その会社の持ち物でもあるものもあるし、会員さんのものもたくさんあるんですよね。

竹増さん:はい、そうですね。お客様からお預かりしているものもたくさんあります。

木村さん:それ思いついたとき、どんなお気持ちやったんですか?

竹増さん:やったなと。

大久保さん:これだ!と思ったんですね。でも、会員さんっていうか、借りた方が多少傷つけたり、汚したりした場合って補償というか、何かあるんですか?

竹増さん:お預かりしているバッグも、自社のバッグも、社内のリペア、メンテナンスができるチームがいるので直していきます。

木村さん:じゃあ、借りる側にもリスクはあんまりないんですね。だから、クリーニング代払うぐらいの感じなんですかね。

竹増さん:そんな感じです。

大久保さん:いいですね。

武田:でも、貸す側はどうなんでしょうか。やっぱりちょっと傷が入ると嫌だなっていう方もいらっしゃると思うんですけれど。

竹増さん:もちろん保証もありますし、あとは先ほどのメンテナンスというところで、しっかりといい状態で維持していくという形で。

木村さん:多少傷があったほうが、自分が使いこなしている感も出たりするという考えを持ってはるんでしょうね、こういうところを利用される方は。あまり新品よりは、ちょっと古めのやつを貸してくれっていると思うんですよ。

竹増さん:いらっしゃいます。新品を持つと、今、買ってきたみたいな感じで嫌だなって。

大久保さん:ふだん使ってます感、出すために。そういうリクエストも来てるんだ。

武田:やっぱり、このシェアリングエコノミーって、どんどん今、伸びていますよね。

田中さん:今、年々市場規模拡大していまして、今後も増えていくことが予想されています。

そして、専門家はこのように分析しています。「先行きが見通せない中、人に頼らず自分で考え満足できる消費のしかたを求めていて、幅広い年代で賢い消費が広がっていくのではないか」。(博報堂生活総合研究所 十河瑠璃さん)

木村さん:それをそうか、賢いと言うか。欲しいときだけいるっていうことですもんね。僕の友達でも高級車を、それはたぶんディーラーがやっているんだと思うんですけれど、レンタルでっていうのありますね。持たなくていい楽さっていうのをいいますね。買い替えられるとか。

武田:新しい消費の在り方ですね。

大久保さん:結局、住んでいる所もそんなに広くなかったりすると、買って物が増えていくよりは、住むためにもいいですよね、住むスペースを考えると。

武田:ずいぶん消費の在り方も、キャッシュレスだったり、ポイントだったり、シェアだったり、ずいぶん変わってきているということですよね。

大久保さん:新しいですね。

木村さん:ちょっと考え直すべきかもしれませんね。

武田:さあ、続いての話題です。 続いては「スポーツ界の不祥事」。あの人がインタビューに答えました。

ボクシング 渦中の人が答えた! 選手に激震 新たな疑惑が…

今年(2018年)審判の不正や助成金流用に揺れたボクシング界。渦中のこの人がインタビューに答えました。

日本ボクシング連盟 前会長 山根明氏
「何も、なんの落ち度もない。知らんもんは知らん。何も悪いことはしていない。」

オリンピックの金メダリスト、村田諒太選手。一連の不祥事について、初めて思いを語りました。

ロンドン五輪 金メダリスト 村田諒太選手
「悪いことをしたと思ってたら自浄はできるが、そうではない人間もいる。意外と多い、そういう人。」

私たちは問題発覚後、新体制をスタートさせた日本ボクシング連盟に密着取材を続けてきました。新たに副会長に就任した、菊池浩吉さんです。

不正を洗い出すために、先月(11月)から税理士らと調査を始めました。すると、今まで明らかになってこなかった、ずさんな会計処理の実態が浮かび上がってきました。

税理士
「この赤いところが、今、費用計上が認められない。かなりずさんな状況ではあります。組織として体をなしていない。チェック機能が一切なかったんじゃないか。」

日本ボクシング連盟 菊池浩吉副会長
「不備があることはわかってましたけど、チェックしていただくとすごく多い。」

使途不明の支出はこれまでの調査で2,400万円余りに上っていることが分かりました。
不正はどのように行われていたのか。当時、経理を担当していた女性に話を聞くことができました。連盟の事務局で見つかった文字を複写するトレース台。女性は領収書の偽造をたびたび目撃していたといいます。

経理担当の元職員
「こうやってなぞって、領収書を作成するやり方です。(偽造を)止めなかった、止められなかったということもすごく悔しい。」

これは、連盟の車を修理した際の請求書です。同じ内容の請求書がなぜか2枚ありました。一つは9万5,000円。もう一つは12万4,200円。

車の修理は山根前会長の長男の会社が行っていました。女性は、水増し請求が行われたのではないかと考えています。この金額の違いを説明したときの山根前会長の音声です。

日本ボクシング連盟 前会長 山根明氏
音声:「9万5,000円は(長男の会社で)利益のない仕入れ価格、そのまま。12万4,200円というのは俺の指示や。この値段で出しとけって言ったんや。」

連盟の元理事です。人事権を握る山根前会長に誰も逆らえなかったといいます。

日本ボクシング連盟 元理事
「逆らったり意に沿わないものは処分であると。明日は我が身になってはいけないという気持ちがおのずとできあがった。」

連盟のずさんな運営は選手にも大きな影響を及ぼしていました。ある関係者は、選手に賞金が渡っていなかったと証言します。

関係者
「(選手への賞金)200ドル、100ドル出たのを、帰国して『会長に返せ』と。『会長に渡さないといけない』と言われて、選手から集めて(山根前会長側に)返金した部分があります。」

さらに、連盟の不手際で、選手の遠征費用などに充てる国の助成金の一部も請求できていませんでした。資金不足が原因で、海外遠征や合宿の回数が減っていた可能性が明らかになったのです。

日本ボクシング連盟 菊池浩吉副会長
「本当に強化事業をできなかったりとか、そういうことがたくさんあった。(選手に)非常に申し訳ない。」

奪われていた選手の活躍の場。今回の取材で明らかになった事実を選手に伝えると…。

東洋大学 中馬力選手
「びっくりして。直していってもらって、しっかり遠征とかできるようにしてほしいなと思います。」

ロンドン五輪 金メダリスト 村田諒太選手
「選手が海外遠征に行くチャンスを逃してきた?それが一番ありえないことで、選手の強化、僕らはそれで強くなった。チャンスをもっと与えてほしいです。」

連盟から除名される見通しになった山根前会長。一連の不正の疑いについて問いました。

日本ボクシング連盟 前会長 山根明氏
「(経理の不正は)それ知らんね。僕は金銭に絡んではタッチしていないんで。経理面では、それなりに理事がおられて。」

「透明性は担保されている?」

日本ボクシング連盟 前会長 山根明氏
「ちゃんとしている。」

ボクシング 連盟を独自取材 “やることがたくさんある”

今、連盟は体制の見直しを進めています。4人しかいなかった事務職員を8人に倍増。外部の弁護士や会計士とも契約し、チェック体制を強化しました。しかし、連盟の自主財源は限られ、組織の運営に使える資金は多くはありません。この日、連盟が訪ねたのは、大手広告代理店の担当者です。スポンサー企業を探したいと相談しましたが、信頼を取り戻すことは容易ではありません。

広告代理店
「やはり前連盟のイメージがあまりにも良くないレベル。みなさんが思っている以上に企業は冷ややかではないか。」

日本ボクシング連盟 菊池浩吉副会長
「チェックがしっかりできていることで、周りからちゃんと意見が言える。そういう組織を作っていかないと、同じことが起こってしまう。やることがたくさんあると思います。」

相次ぐスポーツ界の不祥事 選手に影響が…その背景は!?

ゲスト 為末大さん(元プロ陸上選手)

武田:ということなんですけれども、いかがでしたか?

木村さん:会長が言うてはることがバラバラなので、よく分からないですね。

大久保さん:ボクシング協会って、ボクシング自体が強くなって全体になればいいと思っているはずなのに、選手に賞金がいかなかったり、助成金の申請をしていなかったりして、やっていることがもうめちゃくちゃですもんね。

武田:このテーマを元プロ陸上選手の為末大さんと考えていきたいと思います。
今年、さまざまなスポーツ界の不祥事ありました。どういう問題意識を持っていらっしゃいますか?

為末さん:ひと言で言うと、普通の組織になりましょうということだと思います。やはり違法行為っていうのが先に今回の件もあると思うんですけれども、何がそうさせているのかって、背景を見ると、やっぱりスポーツ界って、前に成功体験があって、30年前ぐらいって、体罰があるような漫画が人気になったりとかしていて、スポーツは結構、この感じでいいんだっていうのがそのまま続いてしまっているという問題があると思うんです。あとはスポーツ、ボクシングが好きな選手にとっては、ボクシング界でもし逆らってしまうと、違うスポーツに行かないといけなくなって、引退してもその世界にいるので、やっぱりこういう流動性のなさっていうのも1つ原因かなと思います。

武田:取材に当たったスポーツニュース部の中島デスクはどう見ていますか?

中島紀行デスク(スポーツニュース部):私たちの取材で、この一連の不祥事について浮かび上がったキーワードが3つあります。まず、「ずさんな組織運営」。そして「閉鎖的な体質」「過度な主従関係」。私たちは今回、国内41の競技団体にアンケート調査を行いました。そこで不祥事が相次いだ原因について尋ねたところ、組織運営、つまりガバナンスにかける人手や予算に余裕がないと答えた団体が6割以上に上ったんですね。スポーツ庁は今日、競技団体が守るべき規範を作ったり、ガバナンスに問題があれば、改善を求める仕組みを発表しました。国も東京オリンピックに向けて、競技団体への関与を強化する方針なんです。

武田:実は今回、私たち、事前にツイッター上でも議論を続けてきました。「スポーツの闇を話そう」というハッシュタグでたくさんのご意見を頂いています。
「協会だの連盟だの、それ自体が閉塞の塊」というご意見。為末さん、やっぱり組織運営に問題があるような指摘もありますね。

為末さん:普通、「アスリートファースト」っていう言葉を掲げておいて、それがうまくできていないところは一つ問題だと思いますね。

武田:そして、実は今日、陸上界で新たな問題が明らかになりました。見えてきたのは、閉鎖的な体質の危うさです。

選手の自由が“縛られる”!? 陸上界“移籍制限”に調査が

実業団駅伝の強豪チームに所属する現役選手です。実業団の世界には、選手の自由を奪いかねない、あるルールが残っていると証言します。

実業団の現役選手
「1回その会社(実業団)に入ってしまったら、そこで走るか、辞めるか、選手にとっては縛られている。(ルールが)厳しいなって思います。」

この選手はコーチの指導に疑問を感じ、移籍したいと申し出たことがあります。しかし、返ってきた言葉は思いもよらぬものでした。

実業団の現役選手
「『円満(移籍)は出せない』の一点張りで、『そんなわがままなことは通用しない』『市民ランナーになるのか?』って言われました。自分の陸上人生なのに、気持ちを踏みにじられた。」

選手の前に立ちはだかったルール。“移籍制限”と呼ばれています。選手が移籍する際には、所属する実業団の承諾を得る“円満移籍”が求められています。しかし、“円満移籍”ができない場合、実業団の大会には出場できないと定められています。その期間は無期限。実業団側が大きな権限を握っているのです。
名門チームに所属していた男性です。監督に移籍を申し出たことで、チームに居づらくなったといいます。

名門チームに所属していた男性
「話をしても聞く耳を持たずに、嫌がらせというか、らちがあかない。権力者みたいなところがあるのかもしれない。選手がどんなに不満に思っても反論ができない。」

この“移籍制限”について、公正取引委員会が調査に乗り出したことが、今日、明らかになりました。実業団同士の競争を妨げ、選手の自由を奪う独占禁止法違反のおそれがあるというのです。
なぜ“移籍制限”は生まれたのか?実業団によって、多くのオリンピック選手を輩出してきた日本の陸上界。テレビ中継で人気のある駅伝やマラソンは、企業にとって宣伝効果が大きいものでした。育て上げた選手の奪い合いを防ぐために定められたのが、無期限の“移籍制限”でした。
実業団の一つ、大塚製薬です。

選手は正社員として雇用され、生活が保障されています。

大塚製薬 陸上競技部 川内理江主将
「実業団という場所がないと、陸上をさせてもらえる環境はないというか、走れる環境があるのはすごいありがたい。」

監督の河野匡さんです。“移籍制限”は実業団にとって不可欠なものだと考えています。

大塚製薬 陸上競技部 河野匡女子監督
「競技力の向上というのは、ある一定の年数がかかるわけですね。長年育ててきた選手が、いきなり何名も次の会社に移籍するのは非常に厳しいものだと思うし、(移籍が)自由にできてしまうということは、こういった恵まれた(実業団の)システムがうまく機能しないんじゃないかという危惧がある。」

“閉ざされた環境” ランナー告白 “過度な主従関係”で何が?

一方、閉ざされた環境の中では、指導者との過度の主従関係が生まれると指摘する人がいます。藤原新選手です。実業団を離れ、プロ選手としてロンドンオリンピックに出場しました。

ロンドン五輪 日本代表 藤原新選手
「指導者側が選手を選び、選手側が指導者を選ぶ。お互い選びあうっていうのが対等だとすると、いまの状況からすると、一方通行な感じがします。選手の選択肢がないという意味で、地位が低い。やっぱり閉塞感みたいなものが生まれる。」

実業団を僅か2年で引退した西澤果穂さん、23歳です。高校時代、強豪校で全国大会に出場していた西澤さん。実業団に入り、コーチとの主従関係に悩んだといいます。

西澤果穂さん
「本当に精神的にも追い込まれてしまっていたので、もう辞めようって、辞めなきゃ死んじゃうって思ってて。」

「これが(当時の)体重ですね。」

コーチが西澤さんに求めていたのは、厳しい体重管理です。

「(コーチは)『41キロ台に』って。」

高校時代から摂食障害だった西澤さん。しかし、さらなる減量に取り組む中で、コーチから厳しい叱責を受けるようになったといいます。

西澤果穂さん
「体重が0.1キロ増えただけで『なんで増えているんだ』『やる気あんのか』ってすごい怒られたりとか、『デブだから走れないんだよ』というのは言われました。本当に寝る前も、水を飲むのも我慢して我慢してという状態で。」

さらに、コーチの指導や振る舞いに恐怖を覚えることもあったといいます。

西澤果穂さん
「コーチが怒ったときにエアロバイクを倒されたりとか、あまりにもびっくりしすぎて何も言葉も出なくて。」

次第に追い込まれ、心身に変調を来たすようになったという西澤さん。環境を変えたいと言い出すこともできず、21歳の若さで実業団を辞め、引退しました。実業団のコメントです。

所属していた実業団のコメント
“選手の夢をかなえるため、栄養士やトレーナーと相談し、本人とも同意した体調管理ルールを守れなかったときには、指導が厳しくなる事があったかもしれない。”

引退から2年。西澤さんは今も、走ることへの思いを捨て切れていません。

西澤果穂さん
「コーチとか監督とうまくいかないとか、いろんなことで苦しいって話はけっこう聞くので、私のほかにも苦しい思いをしている人はたくさんいるんだと思います。」

選手の自由が“縛られる”!? “閉ざされた環境”で何が…

武田:ツイッターでも、「移籍は難しい問題だよな…実業団もお金かけて育ててるからな…」という声もありますが。

木村さん:そのへんは分かりますけれど、先ほどの為末さんの「普通であれば」ということもそうなんですけれど、実業団都合のルールとかもやっぱりあると思うし、プロ野球の選手がある程度、年数たったら自由に行き来できたりするのもあって、何が一番かと、選手はそういうけれど、見てる人やと思うんですよ。視聴者なりファンなり、興味のある人がすばらしい競技を見れて楽しめば人気が出るわけですから、それを一番に考えたらいいんじゃないかと思いますね。

武田:為末さん、どうですか?

為末さん:この問題って、一つは選手が移籍をするときに制限がかかっていることなんですけれども、コーチからしてみれば困るんですね。つまり指導しているときに、もしこれが嫌だったら違うチームに行けるよっていう前提があれば、それはパワハラになりにくいんですけれども、それを塞いでいるので、要は出口がないところを押すので、選手が非常に追い込まれるわけで、もしこのコーチが合わなかったら次のチームに行ける。逆のチームから見ても、うちの指導のほうがあの選手に合うのかなっていうときに、その選手に合う指導がやれないという問題があるので、この一つのチームだけで見るとそうなんですけれど、マッチングがうまくいかないという問題が一番大きいと思いますね。

武田:中島デスク、これはほかの競技ではどうなっているんですか?

中島デスク:実は今年に入ってから、撤廃しようという動きが広がっているんです。例えば、ラグビー、バレーボール、バドミントン、ソフトボールが、相次いで今年に入って“移籍制限”を撤廃しました。選手の権利をより尊重するという認識が広がっているんです。

武田:企業側もそれなりの事情があるわけですよね。

中島デスク:やっぱり“移籍制限”がなくなりますと、選手の引き抜き合いっていうのが始まります。となると、資金力のある企業に強い選手が集まる。手塩にかけてきた選手が自由に引き抜かれてしまうと、そのものが成り立たなくなる。

木村さん:たぶん、そうなってから考えるべき問題やと思いますよ。やっぱりお客さんが楽しいのが一番いいから、そこを優先して考えていないから、そういうことになるんやと思います。

大久保さん:今の陸上の選手とかって、フリーになられている方もいるじゃないですか、私、ちょっと分からないんですけれど。そのフリーに簡単になるってことはできないものなんですか?

為末さん:これは、実は長距離特有の問題で、オリンピックとは関係がない話なんですね。この全日本実業団駅伝というところに出れないだけで、普通のオリンピック予選とかは出れるわけなんです。

武田:駅伝があるかどうかでちょっと違う。

為末さん:駅伝はものすごく露出効果が高いので、企業は駅伝をやるわけで、マラソンやっているわけじゃないんですね。この駅伝に出れないとなると、選手は制限がかかっているので、長距離特有の問題ですね。

武田:VTRの後半では、選手と指導者との関係の在り方も問題があることが見えてきたわけですけれども、その関係はどうあるべきなのか、今年、パワハラの問題になったレスリング界を見てみましょう。

パワハラ発覚後 レスリング “暴言か否か?”手探りの指導

パワハラが問題となったレスリング。栄元強化本部長が退いた後のアジア大会。女子は金メダルゼロに終わりました。選手強化の責任者を引き継いだ、西口茂樹強化本部長です。問題発覚後、西口さんは選手へかける言葉に気を遣うようになったといいます。

日本レスリング協会 西口茂樹強化本部長
「そうそう、ナイスポイント!」

日本レスリング協会 西口茂樹強化本部長
「ここまでやったらパワハラじゃないかとか、非常にそういったところの遠慮というのがあったと思います。」

しかし、厳しい言葉をかけなければ結果はついてこない。西口さんは手探りの指導を続けています。

日本レスリング協会 西口茂樹強化本部長
「暴言か暴言でないかというのは非常に難しくて、『攻めろ』は暴言じゃないと思います。『がんばれ』も暴言じゃないと思うんです。『何やってんだお前は』『やる気あんのか』は暴言だと思うんです。ジレンマなんです。勝たなあかんし、成果主義に走るのもいけない。非常に苦しいです。」

スポーツ界は変れるか!? いま問われているのは

武田:パワハラは、やはり今の時代ありえないと思いますし、一方で、勝ち負けがはっきりとしているスポーツの世界ですから、結果を出すためにね。

木村さん:指導者を悩みますっていうのがだめですよね。指導者が悩んでたんじゃ、気の毒でもあるし、選手も育たないですもんね。

武田:為末さんはどう思われますか?

為末さん:厳しい指導はいいか悪いかっていうと、パワハラ以外で言えば、これ、選手を育てるのに確かにいい面があるんですね。自由にやらせる指導もいいんです。問題は、選手が自分にあうものを選べることなんですけれど、スポーツ界ではこれを選べなくなっている。つまり厳しい指導以外の指導が受けられることが問題で、厳しい指導自体の問題ではないというのが認識するべきだと思います。この方の指導でもいいし、違う方の指導がよければ、そこに移れればいいだけの話だと思います。

武田:番組ではこのテーマでツイッター上などで事前の議論をお願いしています。ジャーナリストの佐々木さん、そちらではどんな議論になっているんでしょうか?

佐々木さん:根性論がやっぱりベースにあるんじゃないかと。成果を上げるためには、根性を厳しく指導しなきゃいけないというのが、本当に戦後一貫して日本の陸上競技会にあったんじゃないかという話はあります。スポーツライターの酒井さんは「監督、コーチは、彼らも選手時代にパワハラを受けていた、それ以外の指導のしかたが分からない」という指摘もされているんですね。為末さんもおっしゃったように、ほかの指導のしかたもあるんだっていうことをちゃんと認識されていないんじゃないのかなと。だから、これを改善するためには、指導者がコミュニケーションの技法を学ぶべきであるとか、コーチングを学んだほうがいいみたいな声も出ているようです。

武田:そして、大学生で実業家の椎木さんにも加わっていただいているんですけれども、椎木さんは、どのようにご覧になりましたか?

椎木さん:私が注目したツイートなんですけれど、スタジオにいる為末さんがおっしゃっていた、協会の理事、役員に女性が少ないということがすごく気になっていて、理事に多様性がないというところは、意思決定の場に多様性がないということなんですよ。なので、女性ならではの、例えば新体操などの女性だけの競技に男性だけの意思決定っていうのはすごく難しいところがあると思っていて、例えば月経であったりとか、さっきの体重の減量の問題だったりとか、そういうところにおいて、女性アスリートの味方になるっていうことが、絶対に必要なんじゃないかなと。

武田:そして、弁護士の紀藤さんにも加わっていただいています。紀藤さん、いかがですか?

紀藤さん:私は、指導の現場って、これまでもジャーナリズムが入っていたと思うんですね。勝つが肝心みたいなイメージですしね。指導の現場でせっかく社会常識のあるメンバーが入っていても、結局暴力とかを見逃してきたんじゃないかなというふうに思いますので、これからはメディアも社会常識を備えた指導の在り方を一緒に考えていかないといけないんじゃないかというふうに思います。

武田:皆さん、ありがとうございます。ツイッター上の議論は、このあと明日(21日)まで続くということです。どうぞよろしくお願いします。
為末さん、今のお話をどういうふうにお聞きになりましたか?

為末さん:やっぱりあるタイミングで、実は日本社会の象徴みたいなところが、この体育界文化ってあったと思うんですね。上が下の面倒見て、下は文句を言わないでついていって、ボクシング協会ほどではないにしても、昔の企業ってあれに似た、一人の決定で全部決まっているってあったと思うんです。それがいろんな問題を起こしてきて、コンプライアンス、ガバナンスって、社会が変わっていく中でスポーツだけはずっと取り残されてきたという問題があると思うんです。なので、まずスポーツ界は社会に開く必要があって、何が常識なのかっていうのを、もう一回外に伺いにいくということも大事じゃないかと思いますね。

木村さん:これも今、始まったばっかりみたいな感じですよね。改革、これからしなければいけないというような。

為末さん:なので、村田選手が言ったのは結構ポイントを突いているなと思っていて、悪いと思っていたら改善できるんですけれど、これが悪いと思っていないパターンがありえるっていうのがすごく問題だと思いますね。

木村さん:あとうまく伝えられないとか、いろいろあるでしょうしね。雄弁じゃないもん、みんな。

武田:中島デスク、NHKのアンケートではどういうことが出てきているんですか?

中島デスク:もう一つアンケートでポイントが出てきています。それは「行き過ぎた勝利至上主義」という声ですね。例えば強ければ、多少の不作法は許されるという風潮があるとか、過去の実績が過度に重視されて、誤った成功体験が修正されないというような声を上げている競技団体がありました。

武田:これはやっぱり、どこかでそういった連鎖を断ち切るということは必要ですよね。

為末さん:時間がかかると思いますけれど、すごく重要だと思います。まず、ガバナンスとか協会が変わるべきだと思いますが、実は重要なのは、選手が立ち上がるというのが結構重要で、選手会というものがないんですね、スポーツ界はあんまり。この独立した選手会、例えば危険性があるのは、「ちょっとあの指導者が気に食わない」ということで、魔女狩りが選手に今できてしまう状況なので、「それはお前、自分の問題じゃないか」と、選手側が抑制できる必要もあって、適度なけん制が必要なんですけれど、今、全く選手側がない状態が、むしろスポーツ団体にとって不利な状況になっているんじゃないかと思いますね。

武田:先ほど、紀藤さんから「マスコミも含めて、外からの目が必要だ」というご指摘がありましたけれども、やっぱり透明性を保つためにも、みんなでしっかり見ていかなければいけないことだというふうに思いました。為末さん、ありがとうございました。
さあ、次はこちらです。

雷に暴風…冬も危ない! 都市災害の脅威

冬の落雷。そして、激しい吹雪。これからの季節、エルニーニョ現象の影響で、嵐を巻き起こす「南岸低気圧」が頻繁に発生することが懸念されています。振り返れば2018年は、未曽有の自然災害に翻弄された1年でした。

撮影:視聴者
「横転や!」

気候の極端化により、1年中、都市を大規模な災害が襲うようになったといわれる今。私たちは何にどう備えればいいのか。
そのヒントはスマホの中に。これまで記録が難しかった災害のその瞬間の映像が、多くの人に撮影されました。中には、研究者をうならせるものも。

研究者
「命がけで撮ってもらった画像は、学術的には非常に価値がある。」

そこで今回、視聴者から寄せられた映像を専門家と分析。防災のヒントを探ります。

衝撃映像から分析! 都市に吹く暴風の脅威

今年9月に、関西地方に上陸した台風21号。都市に吹きつける風の脅威を、まざまざと見せつけました。

東京工芸大学 松井正宏教授
「空気をあまり、なめてはいけない。スカイダイビングで人間が何も着けずに手を広げて落下した時の速度と同じ。」

その中で、人々を震撼させる出来事が起きました。

撮影した人
「バキッていう音がしたから下に行って見たら、ぶらんぶたんしているから何かなと思って。」

8階建てのマンションに飛んできたトタン屋根が突き刺さり、最上階に住む女性が亡くなったのです。

屋内に避難していたのに命を奪われるという異例の事故はなぜ発生したのか。事故が起きた大阪市港区。亡くなった女性のマンションの周辺は、公園や団地が混在する、ごくありふれた住宅街です。風のメカニズムを研究する、京都大学の竹見哲也さんは、マンションの近くで視聴者が撮影した川の映像に注目しました。水面に白波が立つのは、風速40メートルから50メートル。時速にすると180キロにもなるといいます。

京都大学 防災研究所 竹見哲也准教授
「こういう所だと、もっと強い風が吹いていたと思う。」

強い風は、遮るもののない川を通って、この地区に吹き込んでいました。川の風はこのとき、北東に向けて吹いていました。女性の住むマンションは、別の方角です。しかし、川の猛烈な風が突然向きを変え、マンションを襲ったことを示す画像が撮影されていました。公園の木が、根元からなぎ倒され、全て同じ方向を向いていました。木はマンションのある北向きに倒れていました。

川沿いに建つビルの間に入り込み、向きを変えたと見られています。しかもこのとき、風のエネルギーは増幅されていたと、竹見さんは見ています。竹見さんが行った風の力を測定するシミュレーションです。台風が最も強かった時間帯を想定しました。川で吹いていた風は、建物の間に入った瞬間、強力な赤い色に変わっています。

このとき、最大で風速55メートルに迫っていたといいます。狭い場所が、風の通り道になって、強さが増幅されたためです。その先には、あちこちから風の集まる公園の広場が広がっていました。そして、再び狭い場所を通って勢いを増した風は、あの女性がいたマンションに襲いかかったのです。

京都大学 防災研究所 竹見哲也准教授
「川から強い風が吹いてきて、こういった市街地に入ってくると、強い風で物が飛んでいくと。(他の町でも)十分あり得ると思う。」

武田:どうですか?

大久保さん:怖いですね。

木村さん:ちょっと考えられないですけれどね。これは不運だけではちょっと言い表せないですね。

大久保さん:だって、自分の部屋がまさか、川からこう行ってこう来る風のゴールにいるって思わないですもんね。

武田:今のVTRで見てきたのは「都市部では強風がさらに強く!?『増幅』の怖さ」ということで、取材に当たった鎌倉キャスターです。

鎌倉:まず今回、大阪市港区役所や住民の皆さんにご協力をいただきまして、台風の映像を集めることができました。どうもありがとうございました。
この現象なんですけれども、日本の大都市の多くで起こりうるんですよ。東京や名古屋など、ほかの都市も沿岸部にありますよね。そうすると、強い風が障害物のない海や川の上を勢いを保ったまま、吹きつけてくるということが共通するんですよ。

武田:だから、どこでも起こりうるということなんですよね。

木村さん:建物によってということですもんね。

鎌倉:ビルがありますと、その間に風がぐーっと集まってパワーが増幅されると。

大久保さん:家の中にいて安心ってことじゃないんですよね、もはやね。

石原さん:木村さん、木村さん。
今、風の増幅って話が出ていたけれど、ビル風ってあるじゃないですか。だから同じですよ。建物があると複雑に風が動いて、ある1か所に風が集中してしまうということは、ふだんからありうることなんですよね。

木村さん:それは都市全体がそういうことですもんね。

石原さん:特に台風の場合は、台風の本体自体が動いていくから、その風の動きが刻一刻と変わっていくわけじゃないですか。だから、どこにいても、外にいるのはもちろん危ないし、そういうビルやマンション、今回、不幸な事故であったんですけれども、窓際にいると危ないことは起こりうるんですね。

武田:石原さん、今日はありがとうございます。これは冬でも同じようなことは起きるんですか?

石原さん:冬は台風のようなものが来るわけではないんですけれども、まず基本的には、北寄りの季節風が強いじゃないですか。やっぱり南風より北のほうが平均風速が強いんですね。そうすると乾燥しますよね。ですから火災とか、体調管理、そういう意味では風は怖いんです。最初のほうにも出ていましたけれど、南岸低気圧、これも最近、地球の異常気象、過去では考えられないように発達する台風であったり、また低気圧も発達する恐れもあるので注意が必要です。南岸低気圧っていいますと、木村さん、大久保さん、分かります?南の海上を進んでいくっていうやつ。

木村さん:東京とか千葉の先っちょだけ、ガッと大雪が降るとか。

石原さん:そういうときに風よりも、特に関東地方、首都圏の大雪に注意が必要です。

武田:また、このあともお話を伺います。

石原さん:よろしくお願いします。

鎌倉:ということで、命を奪った風の脅威というものを見てまいりましたけれども、実はその脅威、増幅だけじゃないんです。

風がモノを凶器に! 都市を襲う謎の渦

強風に加え、もう一つ衝撃的だったのが、トタン屋根をマンションの8階まで吹き上げた力です。視聴者から寄せられたほかの映像にも、様々なものが吹き上げられる様子が捉えられていました。

被害に遭った男性
「巻き上げられた家がバラバラになって飛ばされたのが見えたので、これは普通の台風とは違うと。」

この力はどうやって生まれているのか。ヒントとなる動画がありました。

撮影:視聴者
「すごい、竜巻っぽいもん。」

まるで竜巻のような渦。

当時、同じような渦がさまざまな場所で目撃されています。

『渦』を見た 朝倉次郎さん
「金属製の物が飛んでいたので、竜巻自体経験したことないのでわかりませんが、(風が)グルグル回って、どっちから吹いているっていうのもなくて。」

防衛大学校 小林文明教授
「これですね。これなんか完全な渦ですから。」

防衛大学校の小林文明さんも、この渦に注目します。

防衛大学校 小林文明教授
「竜巻みたいな渦が起こって物が飛ばされると、低い物も高い所まで行くとか、普通じゃあり得ないことが、やっぱり起こり得るので。」

小林さんは、渦が生まれる原因の一つとして、建物が複雑に入り組む都市の構造を指摘します。台風による強い風は、住宅やビルの間に入り込み、いったん弱まります。しかし、路地を通ってきた風が互いにぶつかり合ったり、建物に当たることで強いエネルギーの渦が出来るといいます。風の動きを、事故のあったマンション周辺でシミュレーションしたものです。マンションに向けて、強い風が吹きつけていたことが分かります。

横から見てみると、マンションや周辺の建物にぶつかった風が渦となり、巻き上がっていったことが分かります。

防衛大学校 小林文明教授
「局所的な竜巻が何十個も起こったような現象が、広域の大都市の中で起こっている。」

こうした都市を襲う災害では、ひとたび被害を受けると、生活再建まで長い時間がかかることも分かりました。大阪市内で被害に遭った男性です。自宅マンションの窓などが破損し、2か月以上たっても住むことができずにいました。

被害に遭った男性
「ホテルだったりネットカフェとか、そういう所を転々としつつ、そういった生活ですね。」

マンションの向かいにある大学の外壁が壊れ、巨大なコンクリートが飛来。復旧が遅れていました。
なぜ復旧まで長い時間がかかるのか。同じマンションで被害を受けた、松田さん夫妻です。リビングに入ると、大きな壁が。壊れた窓を塞ぐ応急処置として立てられたものです。

妻 理沙さん
「光も入ってこないですし、今、晴れているのか雨なのか、明るいのかどうかもわからなくて。」

キッチンからはいまだにガラスの破片が出てきます。

妻 理沙さん
「この辺からガラスが出てくるので、口に入れるものをここで作ってというのは怖い。」

松田尚之さん
「保険会社に写真を添付して。」

部屋の改修には、200万円以上の費用がかかります。しかし、保険の審査がなかなか下りず、工事を始められずにいました。大規模な自然災害が都市を襲った今年、損害保険の支払い件数は昨年の4倍以上に急増。保険金が下りるまでの期間が長くなっていたのです。今回の台風被害で、もう一つ被災者を悩ませているのが、責任の所在です。他人の所有物が飛んできて、被害を受けた場合、その責任を問えるのか。松田さんのもとに、外壁が壊れた大学から1通の文書が送られてきました。

松田尚之さん
「家に被害を与えたりしたことに対してはお見舞い申し上げますと、ただ、まれにみる規模の台風のため、不可抗力によるものであり、法的には責任がないと。」

都市を襲う暴風 空き家が危ない?保険は?

武田:これはやるせないですよね。

木村さん:どこに本当に持っていったらいいのかということですよね。

武田:気になりますよね。

大久保さん:大学側の言い分も分かりますもんね。

武田:そこで次にお伝えするのは「建物被害、誰の責任?」ということなんですけれども。

鎌倉:今回、法律の専門家に聞きました。すると、こうした自然災害の場合は、一般的には相手に過失がない場合は責任を問えないそうなんです。過失、具体的には建築時に手抜きがあったり、あるいは保守点検を怠っていたり、そういったケースの過失ですね。先ほどのマンションの隣の大学の場合なんですけれど、大学はこのように言っています。「建築基準法に照らし合わせても問題がない。法的責任はなく、損害賠償責任は生じない」としているんですね。こういった風が起こす被害なんですけれども、実は私たちの周りにも危険は潜んでいるんです。こちらの映像、ご覧ください。木村さん、見て分かりますか?

木村さん:難波ですよね。

鎌倉:そのとおり、大阪の中心地・難波です。デパートが建ち並ぶ一等地ですよね。そこにあるのが、この建物。

これ、台風21号で破壊されたまま、今も放置されている空き店舗なんですね。築70年で、所有者の方はすでに数年前に亡くなっているんですよ。このままですと、再び風が吹いたら二次被害が起きかねないと、大阪市が懸念していたところ、所有者の親類が名乗り出てきて、今、撤去の方向で検討が進められています。

木村さん:それを待たないとできないということですよね。

大久保さん:勝手にはできないのか。

武田:誰もが被害者にもなりうるし、加害者にもなりうるということなんですけれども、VTRにも出ていただいた気象の専門家の小林さんに中継がつながっています。これは、被害に遭うのも怖いですけれども、誰かに迷惑をかけるのも怖いですよね。

小林さん:ひと言で言うと、我々、「破壊の連鎖」というふうに言っているんですけれども、50メーターを超えるような強風下では、数キロもあるような木片とかトタンが飛んできて、ガラスとか屋根を壊すわけですよね。それがまた飛散物となって、次の建物を壊すという、破壊が破壊を呼んで、飛散物が飛散物を生んで破壊が続くという、この負の連鎖が一番怖い。しかも今回みたいに、もう飛散物が山ほどある所で、これが本当に顕著に起こったということだと思います。

武田:これも都市化が進んだ現代ならではの災害ですよね。

小林さん:そうですね。都市型の被害といっても過言ではないと思います。

大久保さん:ちょっとしたベランダの植木鉢ぐらいいいやじゃないですよね。

小林さん:植木鉢どころか、サンダルとか、そういうものがやっぱり飛んでくるわけですから。

大久保さん:サンダル、置いてある。

木村さん:強力になるんでしょうね。

武田:では、どうすればいいのかということなんですけれども、「保険でどう備えるのか」ということで、鎌倉さん。

鎌倉:実は、火災保険で台風などによる風災や洪水などによる水災というのもカバーできるんですね。ただ、専門家によりますと、加入している火災保険の対象に、それが含まれていない場合もあるので、これは契約内容をご自身で確認していただく必要があります。それから、補償の対象が建物と家財に分かれています。建物しか保険に入っていない場合は、家具や家電などが補償されません。先ほどのVTR、最後、家の中にまだ壁があった松田さん。ようやく保険が下りたそうなんですけれども、実は、家財に保険をかけていなかったので、ピアノやテーブルなどは補償されなかったそうなんです。

武田:視聴者の皆さんが撮影した写真や動画によって、明らかになってきた都市を襲う気象災害。
今年、ネットをにぎわせたこんなものの正体も分かってきました。

都市に新たな危険 謎の“ラピュタ雲”

一年中、都市を襲う雷。冬でも年々増える傾向にあり、70年で3倍以上に。気象庁の研究官、荒木健太郎さんは、ネット上に上がったある画像に注目しています。

気象庁 気象研究所 荒木健太郎研究官
「見た目はきれいな形なんですが、この下では激しい雷雨になっている。局地的な災害をもたらす雲。危険な雲ですね。」

8月下旬の3日間、東京や埼玉など、関東地方に相次いで出現した巨大な積乱雲です。「ラピュタ雲」と呼ばれ、さまざまな場所で目撃されました。今回、多くの人が捉えた映像を専門家と共に分析すると、都市型積乱雲の脅威が見えてきました。
発生の瞬間を捉えた映像です。突然現れ、僅か30分で成層圏近くまで成長。まさに神出鬼没。

そして、雲から遠く離れた場所まで雷を飛ばす力を蓄えていました。ラピュタ雲が発生した日、首都圏では落雷で7,000世帯以上が停電。さらに、猛烈な突風「ダウンバースト」が吹いていたことを示す写真もありました。

現場には今も、その破壊力の大きさを伝える爪痕が残されていました。

被害に遭った農家
「衝撃波じゃないですけれども、そういう“フッ”というのがあって。空気の圧を感じて。」

鎌倉:え、圧が?

被害に遭った農家
「圧ですね、ほんとに。」

なぜ、これほどの力を持つ積乱雲が都市に突然現れるのか。専門家の考えるメカニズムです。まず、海から都市に湿った空気が流れ込みます。都市部は、温暖化やヒートアイランドの影響で高温なため、空気中の水分が一気に蒸発します。猛烈な速さで成長することで、強力な静電気が発生。強いエネルギーを持つ危険な雲になるのです。

防衛大学校 小林文明教授
「都市の温暖化、ヒートアイランドで、東京はたぶん世界でいちばんヒートアイランドが進んでいて、50年で約3度くらい気温が上昇している。1個の積乱雲が巨大化して長続きしてなかなか消えない、死なないと。」

大久保さん:でもこれ、どう備えたらいいんですか、石原さん。

石原さん:急速に発達しますけれど、天気予報を聞いていると、大気の状態が明日は不安定ですよ、って聞きますよね。ですから予兆があるわけなんですね。そういうときには、天気予報を見るのも大事なんですけれど、出かけたら自分の目で空を確かめるんですよ。そうしたら危険な雲が分かりますから。単純なことだと思います。

武田:冬でも出るものなんでしょうか?

石原さん:冬はさほど、夏に比べれば、そこまで発達することはないかもしれないですけれども、やっぱり、そういう危険な予兆を天気予報で聞いたときには、自分の目で確かめてください。それと、スマホでも、今、いろんな情報が得られますので、それを見比べるということですね。

武田:やっぱり災害、気象現象もますます激しくなっていますよね。

木村さん:いろんなことを知って備えておかないと、本当に身を守らないといけないわけですからね。

武田:特に都市化が進んで、現代、街の姿もどんどん変わる中で、やっぱり我々の備え方も変わっているじゃないですか。

大久保さん:今まで「こんなもんだ」と思って備えている以上のものが来ると思っていないとだめですよね。

木村さん:自分の所には来ないって、どっか思っていますけれどね。それはもう、なしにしないといけないですね。

武田:本当にあらゆることに備えて、「経験したことがないような」っていう言葉を何回も聞きましたよね、今回。

木村さん:聞きました。

武田:経験したことがないような雨が降るとか。

木村さん:やっぱり命を守る行動を取ってくださいというのを、本当に身に染みて思わないといけないですね。

武田:それが本当に普通だというふうに思って、我々、備えないといけないということですね。議論は尽きませんけれども、そろそろ時間切れになってまいりました。
今日、取り上げたスポーツの問題については、このあともツイッター上で議論を続けていきたいと思います。