クローズアップ現代

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2018年10月15日(月)
乳がんを乗り越える!

乳がんを乗り越える!

急増する「乳がん」。今や11人に1人がかかると言われる。一方、医療の発達で生存率は上昇。このことは、再発や転移の不安を抱えながら、長期にわたり、乳がんと共に生きることを意味している。今回、SNSなどを通じて募集した声には、乗り越えるヒントがあった。みんなで乳がんを学び、母を支える家族。最新医療で子どもを授かった女性。彼女たちを取材することで見える秘策とは? 専門医の知見や最新の医療情報も交え、乳がんとつきあう生き方を考える。

出演者

  • 山内英子さん (聖路加国際病院 乳腺外科部長)
  • 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)

“とにかく明るいがん家族” 乳がんを乗り越える!

次男 睦生くん
「とにかく明るいがん家族!」

夫と子ども、家族全員で乳がんに向き合い、病気を乗り越えようとしている女性がいます。
彦田かな子さん。4年前に乳がんと診断され、左胸をすべて摘出しました。診断直後は不安に押しつぶされそうになったといいます。当時の日記には、後ろ向きな言葉が並んでいました。

彦田かな子さん
「もう私、死ぬんだなって、毎日泣いていました。」

最も悩んだのは、4歳から12歳の3人の子どもたちのこと。病気を伝えたら、死を連想し、受け止めきれないのではないかと心配したのです。それでも夫の泰輔さんは、隠すことなく家族で病気に向き合いたいと、新聞記事を使って子どもたちに伝えることにしました。正しい知識を得ることで、必要以上に怖がらなくてもいいことを教えられると思ったのです。

夫 泰輔さん
「妻の病気のことを子どもと話すのは、お互いにダイレクトすぎるので、間接的にがんと向き合う。お母さんの病気について、わかってもらう機会になったのは大きい。」

子どもたちは感想を書き、お母さんの病気への理解を深めていきました。

長女 一花さん
「医学が進歩することで新しい薬が開発されたりするから…。」

「ただただ怖いというイメージしかなかったけど、こういうことをやったあとは怖くないんだな。」

次男 睦生くん
「(がんと聞くと)驚きは多少するけれど、え!がんになったの!?とはならない。」

「(お母さんは)こんな大変なことをしていたから、すごいなって。」

家族ぐるみで正しくがんを理解することで、かな子さんは前向きに治療を受けることができるようになりました。

彦田かな子さん
「(病気を)受け止めたうえで、お母さんは死んでないよね、治療をがんばっているよねというのをわかってくれた。私も安心しました。」

乳がん急増 どう乗り越える 最新医療で治療選択 出産へ

今、日本では乳がんが急増しています。この40年で患者は4倍に増え、女性の11人に1人が経験する時代になっています。

一方で、医療の発達で、早期に発見・治療すれば命を落とすことは少なくなりました。
乳がんになっても自分らしい生き方を実現する女性たちが増えています。

鎌倉
「おなか大きい!」

御舩美絵さん。おなかには、まもなく産まれる赤ちゃんがいます。御舩さんが乳がんと診断されたのは8年前。結婚式の2週間前でした。31歳という若さで、左胸をすべて摘出しました。

御舩美絵さん
「本当にこれから先、生きられるのか。すごく不安な時期だったんですね。」

手術は成功しましたが、御舩さんを最も悩ませたのは、再発を防ぐための治療の選択でした。抗がん剤を使うと卵巣が影響を受け、子どもを産めなくなるおそれがあったのです。

御舩美絵さん
「命も大事だし、死にたくないし、子どもを持つ可能性も失いたくないし。失いたくないものだらけで。どう選択していこうかなというのは、すごく悩みましたね。」

何か方法はないか。情報を集める中で医師に紹介されたのが、再発リスクを知るための最新の遺伝子解析でした。再発リスクが低ければ、抗がん剤を使わないという選択もできると言われたのです。

こうした解析は、国内外複数の検査会社で行われています。

「手術で摘出した乳がん組織です。」

がん細胞の遺伝子を装置にかけると…。マスで区切られた色のパターンが現れます。これによって、再発に関わるとされる遺伝子の働き方が分かるといいます。その結果から医師が再発リスクを見極め、患者に伝えるのです。

大阪大学 医学部附属病院 直居靖人医師
「遺伝子診断でクリアに『再発はほとんど大丈夫』とか、『再発のリスクはあるが抗がん剤で下がるので大丈夫』。納得して治療にポジティブに進んでいただく。」

御舩さんの遺伝子解析を行ったのは、アメリカの検査会社でした。再発リスクは6%。これをもとに、抗がん剤を使わない治療を選択したのです。

御舩美絵さん
「私はすごく、遺伝子検査を受けてよかった。その結果に救われた。」

診断から8年。

御舩美絵さん
「きょう、よく動いたわ。」

夫 剛司さん
「順調だね。」

治療を乗り越え、御舩さんは、ようやく念願だった子どもを授かることができました。

御舩美絵さん
「乳がんの告知を受けてから死を怖がっていたけど、ここに新しい命が宿っている。すごく幸せな気持ちになります。」

“正しく知って 正しく治療に”

ゲスト山内英子さん(聖路加国際病院 乳腺外科部長)

鎌倉:乳がんが急増しているわけなんですけれども、その背景には、昔に比べて子どもを産む回数が減って、生涯の生理の回数が増えているため、乳がんを誘発する女性ホルモンが分泌される回数も増えたことが原因だといわれているんです。この傾向は今後も続くと考えられていて、多くの女性にとって、これは決してひと事ではありません。

武田:乳がんの専門医で、患者会の立ち上げなどもしてこられた、聖路加国際病院の山内英子さん。もちろん簡単な病気ではないと思うんですけれども、VTRを見てみますと、今や前向きに生きていくこともできる病気なんだと思いましたが?

山内さん:私も日々、乳がんと診断された患者さんと歩ませていただいてますけれども、皆さん、診断されたときは本当にショックで、まるで羽をもがれたチョウが、「もう先生、私、飛べません」と言っているような状況から、今のVTRにあられた方々のように、ご家族や周りのサポート、その中から自分らしさというものをどんどん身につけられて、そして乳がんと診断される前よりも、ますます美しく輝いている方がたくさんいらっしゃいます。

武田:どうすればそうした人生を歩めるのかという知恵を、きょうはたくさんお伝えしたいと思います。

鎌倉:VTRの御舩さんが、治療方針を決めるために受けたこの遺伝子診断についてですが、まずは医療機関で受けるべきかどうか、相談してください。遺伝子診断を受け付けているのは、全国でおよそ200の医療機関です。解析自体は国内外の検査会社が請け負い、それぞれ独自の方法で行っています。ですが、この遺伝子診断は現在まだ研究段階にあり、保険の適用外なんです。費用は20~50万円となっています。

武田:この再発のリスクを測ることができる遺伝子診断、VTRの御舩さんは「リスクが低い」と出ました。これはよかったと思いますけれども、逆に「リスクが高い」と出てしまったらショックだと思いますし、これはどう受け止めたらいいのでしょうか?

山内さん:これは、本当に必要な治療がどういった方にあるかということを見る検査ですので、むしろ再発リスクが高いと出た場合には、抗がん剤の効果がある、抗がん剤が効きやすいということになります。私どもの患者さん、高リスクと出た患者さんでも、これだけ抗がん剤が効くということがはっきりと自分の目で見られるような形で、データとしてわかったので、たとえいろいろな副作用があっても、それを考えて乗り越えることができたとおっしゃる方も多くいらっしゃいます。

子どもにどう伝える?

武田:家族のサポートも非常に大事だと思いましたけれども、最初にご紹介した彦田家では、子どもたちにとても上手に伝えていましたよね。それでうまくいっているんだなと思いましたけれども、あれはいかがでしたか?

山内さん:私どもの患者さんでも、なかなかお子さんに伝えるのが難しいとおっしゃる方はたくさんいらっしゃいます。私の患者さんで、受験生のお嬢さんを抱えていて、お嬢さんが心配してしまうのではないかということで伝えづらかったんですけれども、でもみんなで周りから、「勇気を持って伝えてみて」という形で伝えたところ、お嬢さんが、がぜん勉強をし始めて、「大きくなったらお医者さんになってお母さんを助ける」というふうになったお子さんもいらっしゃいます。ですからお子さんの力を信じていただいて、伝えるということはとても大切だと思います。

武田:中には、こんな絵本を使って子どもにがんのことを伝えたという方の声も寄せられているんですね。どんなことが書いてあるかといいますと…。

“お母さんはがんという病気になったの。”

“僕がいい子にしていなかったから、病気になったの?”

“違うのよ、誰のせいでもないのよ。うつることもないの。”

武田:というふうに、お母さんががんを告白するという内容なんですが、子どもたちにどう話すかも大事だと思うんですけれども、これも相談できるそうですね?

山内さん:お子さんの年齢によって、こういう絵本を使ったりとか、伝え方が違ってきます。今、病院の中では、そういったことをサポートするような働きというのが広がってきておりますので、そうした働きをしている部署や、看護師さんなどにご相談いただければと思います。

“経過観察期こそ つらい”

鎌倉:今回、乳がんになった皆さんにお話を聞いてみますと、実はこんなことが分かったんです。手術などを終えたあとに続く、「経過観察期」こそつらいんだという声だったんです。
一般的にがんというのは、手術、抗がん剤、放射線などで治療するわけなんですけれども、その後、5年がたてば、一般的には、再発・転移のリスクというのは、ほとんどなくなるんです。しかし乳がんの場合は、再発した人の4割がこの5年よりもあとに起きているため、この経過観察期にも不安な思いが続くということなんです。

武田:がんと向き合う長い期間をどう乗り越えるのか。今回、番組には患者さんや家族から数多くのヒントが寄せられました。その中で私が気になったのは、「夫の役割」についてなんです。こんな声が来ています。

“精神面で夫に支えてもらい、つらさや痛みを乗り越えられました。”

“夫と泣きながら笑いながら、とことん話し合ってきました。”

武田:妻が乳がんになったとき、夫として具体的にどう支えればいいのか、乳がん患者の夫に聞いてきました。

カギは夫 どんな支え方が?

集まってくれたのは、3人の男性。職場などに妻の病気を伝えていないため、匿名ならと話を聞かせてくれました。

8年前に妻が乳がんと診断された男性は、診察に同席し、医師の話を分かりやすくまとめてきました。

8年前に妻が乳がんと診断された男性
「メリット・デメリットをまとめて、たとえば胸を全摘する場合と部分切除の場合、生存率に違いがあるのかなとか、遠隔転移率に違いがあるのかなとか。」

武田
「どういう職業ですか?」

「銀行に勤めています。」

落ち込む妻に対し、男性は会社で仕事をするように情報を分析し、妻が治療を選ぶための判断材料を作ったのです。

8年前に妻が乳がんと診断された男性
「妻が私以上に憔悴(しょうすい)しきり、茫(ぼう)然自失。僕がやれることをやらないと、まずいな。」

こちら、妻が半年前に乳がんと診断された男性は、やってほしい家事をリストに書いてもらっています。

半年前に妻が乳がんと診断された男性
「机の上に置いてあると、『きょうはこれやればいいのね』みたいな。」

お宅にお邪魔すると…。この日の依頼は洗濯物を畳むことなど。薬の副作用で妻がつらいときは、やってほしいことを具体的に伝えてもらうことで、お互いにストレスをためずに済んでいるといいます。


「(夫に)『察して』って言っても、なかなかそれは難しいので。ダウンしてダメなときは、(リストを)もとに動いてくれたりするので助かる。」

武田
「奥様がサポートしてほしいことを『見える化』するということですか?」

半年前に妻が乳がんと診断された男性
「そうですね、『見える化』ですよね。苦しみとか痛さとかは、他人にはわからない。」

武田
「以心伝心は通用しない?」

半年前に妻が乳がんと診断された男性
「そうですね、うちの場合は言葉に出さないと。」

8年前に妻が乳がんと診断された男性
「察するって、難しいですしね。」

夫が妻のためにしてきたこと。妻たちはどう感じているのか、ないしょで手紙を書いてもらいました。
リストで家事を書き出してもらい、支えている男性。妻からは、遠慮せず何でも伝え合える関係が一番の支えだと感謝されました。

“不安や心配事、希望、願いなどを言葉にして伝えあい、共有して日々の暮らしを営んできたことは、今回の闘病にも役立ったなあと思います。”

治療方針を決めるため、資料をまとめた男性には…。

“あなたの診察メモは、今でもわたしの御守りです。”

8年前に妻が乳がんと診断された男性
「やってることがずれていないか、見当違いじゃないか、不安はあった。感謝の言葉をもらえて、ほっとした。」

もう1人、妻の診断から2年になる男性には…。

“告知されたばかりの頃、『僕たちは2人で1つ。一緒に闘おう』と涙してくれてありがとう。”

その一方で、厳しい言葉もつづられていました。

“家庭の雰囲気を暗くしたくないから口にはあまりしないけど、『大丈夫?』とか『無理しないで』とか、やさしい言葉をたまにはかけてもらいたいです。”

武田
「後半、厳しい指摘がありましたけど?」

2年前に妻が乳がんと診断された男性
「自分の気の緩みが、ずばり指摘されていた。反省しないといけないな。」

武田:この男性、初期の治療が終わって、病院にもあまり行かなくなって、ついつい妻が病気であるということを忘れがちになってしまうということなんですよね。私もそうなりそうな気がしました。

山内さん:ご本人にとっては、やはりずっとその治療に関して選択をしながら走ってこられるので、ふっと肩の力が抜けたときに、わーっと今までのことが、悲しみが来たりすることもあるんですね。ですから、むしろそういう時期に、奥様を一緒に旅行に連れていってさし上げたりという配慮が、とてもいいと思います。

不安・悩みはここで解消 乳がんを乗り越える!

鎌倉:夫の役割は重要だとよくわかったのですが、当然、番組に寄せられた声の中には、「じゃあ、おひとり様はどうするんですか?」「友人に話せないんです」というものもあったんです。こういった悩みのヒントになりそうな投稿も、たくさん頂きました。
50代の女性からです。「がん相談支援センターに定期的に相談に行って、悩みを聞いてもらうようにしています」。これはどういうところかといいますと、全国437か所ある、がん診療連携拠点病院などに設けられているもので、治療についてだけでなく、医療費など金銭的な問題や、仕事と治療の両立など、生活全般について無料で相談することができる。さらに、家族も自分の悩みを相談できるんです。詳しくは「がん情報サービス」で教えてくれます。

武田:それから、こんな声も寄せられています。「緩和ケアの医師が支えてくださっています。ステージ1でも緩和ケアが重要」ということなんですけれども、「緩和ケア」というと、どうしても終末期というイメージがありますが、初期の段階でも受けることができるんですね。

山内さん:皆さん、そういうイメージが終末期のみと思ってらっしゃる方も多いですけれども、がんと診断されたときから、いつでも症状などのご相談ができますので、ぜひそういったことも受診していただければと思います。

乳がんでないあなたへ “検診に行ってほしい”

鎌倉:今回、番組に寄せられた乳がんの方からのメッセージの中で、特に皆さんにお伝えしたいものがあるんです。
「私のがんは悪性度が高く、進行も早かったので、もっと早くから受診すべきだったと後悔しています。2年に1度の検診は、積極的に行ってほしいと願っております」。私も取材をして、まず検診に行って、早期発見につなげること、それが第一歩だと感じました。皆さん、検診に行きましょう。
その乳がん検診ですが、厚生労働省は、発症リスクが高まる40歳以上は2年に1度を推奨しています。自治体からの助成金を受けますと、無料から数千円で受けることができるということです。

武田:受ける内容としては、マンモグラフィーや問診ということなんですね。私もやはりパートナー、妻や家族に、検診を受けることを勧めることは非常に重要だと思うんですけれども、「検診に行くのが怖い」という声をよく聞くんですよね。

山内さん:検診は、症状があっても受診するのが怖いと思われる方は多いんですけれども、でも乳がんと診断されても、ますます輝いて生きていらっしゃる方々がいますので、怖がらずに受診していただければと思っています。

武田:やはりそこから始まっていくわけですね。まず把握して。きょうは、先生も実は。

山内さん:実は、私も(検診を)受けてまいりました。

武田:最近は、痛みなどはどうなんですか?

山内さん:そういったものも配慮して、女性の技師さんを置いたりといったこともやっておりますので、ぜひ本当に皆さん、怖がらずに行っていただければと思っています。

鎌倉:最後にもう1人、がんで失った乳房を手術で取り戻して、前向きに生きる女性に会ってまいりました。

新しい乳房で温泉も水泳も 乳がんを乗り越える!

週2回、スポーツジムに通う友野順子さん、54歳。8年前、右の乳房をすべて摘出しましたが、シリコーンを入れる再建手術で胸を取り戻しました。

鎌倉
「手術されたのは、どっちの胸?」

友野順子さん
「こちら側です。」

鎌倉
「わからない…。」

特別に見せていただきました。

鎌倉
「傷は少しある?」

友野順子さん
「はい。」

鎌倉
「触ってわかります?」

友野順子さん
「よかったら、触ってください。」

鎌倉
「あっ、確かに少し深い谷間のほうにくると、インプラント(シリコーン)のほうが、ひんやりしていますね。見た目にはまったくわからない。」

友野順子さん
「温泉とかも普通に行けます。」

「ジムに来てプールで泳いだり、体を使うことによって、前向きになれたかな。」

かつては自己負担だった乳房再建。今では保険が適用されています。主な方法は2つ。友野さんが行ったシリコーンを入れる方法と、自分のおなかの脂肪などを移植する方法です。どちらも、高額療養費制度を使えば10万円前後です。

横浜市立大学附属市民総合医療センター 佐武利彦医師
「患者のライフスタイル、仕事、そして子育て、そういったことをしっかり医師側に伝えていただいて、一緒に治療方法を選択する。患者によって、いろいろな治療方法を選べる時代。」

11人に1人が乳がんになる時代。正しく乳がんを知り、納得できる治療法を選びながら自分らしく生きていくことの大切さを感じました。