クローズアップ現代

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2018年7月25日(水)
“つながり孤独” 若者の心を探って…

“つながり孤独” 若者の心を探って…

ツイッターやFacebookなどのSNSが急速に普及するなか、“多くの人とでつながっているのに孤独”という、“つながり孤独”を感じる若者が増えている。「SNSで友だちの暮らしを見て劣等感を抱く」「SNSでのつながりの薄さに孤独を感じる」。番組には“つながり孤独”を訴える声が200通近く寄せられた。SNSがなぜ孤独を生み出すのか?番組では、寄せられた声をもとに、オープンジャーナリズムの手法で若者たちを悩ませる“つながり孤独”の実態を探っていく。

出演者

  • 菅本裕子(ゆうこす)さん (SNSアドバイザー・YouTuber・モテクリエイター)
  • 石田光規さん (早稲田大学文化構想学部教授)
  • 水無田気流さん (詩人・国学院大学経済学部教授)
  • 武田真一・田中泉 (キャスター)

“つながり孤独”を知っていますか?

“つながり孤独”。今、知り合いや友達とのつながりに悩み、苦しむ人が増えているのを知っていますか?

30代 女性
「つながりがあっても、自分は誰からも理解してもらえない。」

20代 女性
「『つながり孤独』を感じすぎて、しんどかった時は、ああ死にたいと。」

インターネットを通じて、いつでもどこでも誰とでもつながることができる私たちの社会。その裏で、若者たちが感じる「孤独」。それが“つながり孤独”です。友だちもいるし、独りぼっちなわけでもないのに、なぜ?同じ悩みを抱える28歳、ディレクターのこの疑問から取材は始まりました。私たちは、番組のホームページやフェイスブックでご意見や体験談を募集。すると、200通以上の声が寄せられました。

20代 男性
“知り合いの幸せそうな姿、夢や目標に向かって頑張っている姿を見て、自分は誰からも認められていないのではないかと、孤独を感じます。”

20代 女性
“気軽に他人の近況をチェックできることによって、自分との差異がより明確になってしまい、孤独を感じます。”

20代 女性
“SNSの投稿では、友だちが就職先の先輩と楽しそうにしているのです。自分とは違う状況がうらやましくなり、孤独感にさいなまれます。”

“つながり孤独” 他人と比べてしまう…

この声を寄せてくれた人を訪ねることにしました。
アカネさん、20歳。高等専門学校を卒業後、地元の会計事務所で働いています。

アカネさん(20)
「この子はたぶん、会社の人たちとディズニーランドに行ってる写真です。」

よく見るSNSはインスタグラム。自宅や職場で少しでも時間があるとチェックを欠かしません。アカネさんがよく見るのは、進学や就職で東京に引っ越した友だちの投稿です。都会での暮らしを生き生きと伝える写真や動画。それを見る度、アカネさんはどうしても自分と比較してしまうといいます。

アカネさん(20)
「キラキラした写真っていうのが、あんなに近くにいた人たちがやっぱり違う世界にいるんだなっていうさみしさがあります。うらやましいっていう気持ちもありますし、自分と同じ人たちだったのに、こんなに差があるのか。」

つながり孤独に苦しんだ、アカネさん。もう見るのはやめようと、スマートフォンをたたきつけたこともありました。それでも、SNSから離れることはできません。

アカネさん(20)
「『つながり孤独』を感じすぎて、しんどかった時は、ああ死にたいと。」

「死にたいとまで思ってたの?」

アカネさん(20)
「はい。インスタグラムをやめちゃったら、もうつながりがなくなるのと一緒で、いつ会えるか分からないし、もう私のこと覚えてくれるかも分からない。SNSがあって当たり前の生活になってしまってるので、この孤独感はずっとつきまとうなって思ってる。」

“つながり孤独” 本音が言えない

つながり孤独を訴える200通の声。SNSで本音を打ち明けることができないという悩みも多く寄せられました。

20代 男性
“いまはSNSがあるので、自分の考えを表明できる環境はあるように思われますが、結局“本心”を隠すことになり、孤独を感じます。”

30代 女性
“家族といても、職場で誰かと一緒にいても孤独を感じます。SNSでつながりがあっても、距離を感じます。”

この声を寄せてくれた、リサさん、34歳。販売の仕事をしています。

つながり孤独を強く感じたのが、去年(2017年)仕事に行き詰まり、フェイスブックに書き込んだ時のことでした。

“もう、どうしたらいいか。今までで一番メンタルが低空飛行してる。”

「つらい心境を分かってほしい」。でも、リサさんは本当の気持ちを書き込むことはできませんでした。

リサさん(34)
「ネットだから、文字だけでは分からないところもありますし、それで誤解を受けてしまうというところもあると思うんです。」

友達は励ましのコメントを寄せてくれましたが、表面的なやりとりで終わりました。相談できず、アドバイスも受けられない。リサさんは、結局仕事を辞めてしまいました。

リサさん(34)
「職場とかSNSだとか、世界は昔に比べたら広くなってきているし、選択肢だって、いろいろとあると思うし。それでもやっぱり、つながりがあっても自分は誰からも理解してもらえないというか、孤独感を感じることをなくすというのは、たぶんないのかなって、この先。」

変わる若者の孤独感

若者の悩みに、長年向き合ってきた人も“つながり孤独”の広がりを感じています。
本郷由美子さん。民間団体が認定する精神対話士の資格を持ち、16年間、孤独や生きづらさを抱える人たちのケアに取り組んできました。

大学3年生
「もう少し深い関係の仲の友人を増やせたらなという思いはあります。」

学校や職場にとどまらず、インターネット空間でのつながりに悩み、コミュニケーションがとれない若者が増えている。本郷さんは、そう実感しています。

精神対話士 本郷由美子さん
「10何年前っていうのは、集団の中ではみだしてしまうような立場に追いやられてしまって孤独を感じるっていう悩みを聞くことが多かったんですけど、(今は)たくさんつながってるけれども、本当に心を許せる人がいない。SNSよりも生身の人間に関わりたいっていうことをおっしゃっていて、でもその関わり方が分からないという風に苦しまれている。」

“つながり孤独”って!? ただいま検討中

SNSで孤独を感じる、苦しい。

“つながり孤独”を訴える若者たちの切実な声に、私は20代のころの自分を思い起こしました。

武田:“つながり孤独”がピンと来ないっていうことは全くなくて、僕の若いころなんかは、例えば地方局で同期が良い仕事をして認められたとかなると、すごくうらやましく感じたし、他人の芝生が青く見える的な感覚っていうのは、若いころに本当によく感じましたね。よく分かります。

SNSをよく使っている私は、自分も同じように感じることがあると思いながら、同世代の人たちを見ていました。

田中:見ている人みんな理解できるんじゃないかなと私は思って、3人グループがいたら、他の2人だけ一緒に遊んでいるのを見ちゃったら、あっとか思うとかって、そういうことっていっぱいあると思うんです。

武田:孤独って、すごくつらいじゃないですか。死にたくなるくらいつらいっていうことも分かる。ただ、やっぱり孤独って悪いことばかりじゃなくて、それを原動力として人とつながりたいと思うし、誰かを愛したいっていう気持ちにもなるだろうし、孤独はやっぱり僕は友だちだと思いますし。

田中:若者の状況が知りたいっていうことをすごい思ったんですね。何で生身の人間関係に逃げない?っていうか、行かないのかなって。悩みを持った時にっていうことをすごく思ってしまって。

武田:そういうのは、もしかして勝ち組の論理なのかもしれないけどね。

田中:だから私も毎回そうじゃないし、だけど、その勝ち組って今おっしゃいましたけど、そう思える人と思えない人は何が違うのかとか、そういうことを知りたい。

“つながり孤独” 若者の胸のうち

ゲスト 菅本裕子(ゆうこす)さん(SNSアドバイザー・YouTuber・モテクリエイター)

つながり孤独を感じる若者たちの胸のうちに、もっと迫りたい。私は、SNSの世界で活躍する、菅本裕子さんに会いに行きました。

菅本さんは「モテクリエーター」を名乗り、SNSなどでファッションやメイクの情報を発信。「ゆうこす」の愛称で同世代の女性から支持を集め、SNSの総フォロワー数は100万人を超えています。

武田:実はこれ、みんなで見た時に、SNS上で孤独を感じたんだったら、なんで近くの生身の人間関係を充実させようとか思わないのかな?

菅本さん:私はSNSと現実世界だったら、やっぱ現実世界のほうに気を遣っちゃうんですね。たぶん私たち世代はSNSでコミュニケーションとるのに慣れすぎて、SNSで失敗したから現実っていうのは、なかなか行きづらいかもしれない。現実で失敗したからSNS(に逃げる)っていうのは分かるんですよ。だけどハードル低いところから急にまた高いところに挑戦していくの、なんか難しいかも。

武田:現実世界の方がハードルが高い?

菅本さん:全然高いです、私からすると。どうですか?

武田:いや、それは全然わかんない。

“接続過剰な日常”が若者を苦しめる

ゲスト 水無田気流さん(詩人・国学院大学経済学部教授)

私は、生きづらさや孤立についての著作もある、水無田気流さんに話を伺いました。

田中:いま若者が感じている“つながり孤独”、これを水無田さんは、どういうふうなものだと捉えていらっしゃいますか?

水無田さん:私は、SNSに日常的につながっていないとやりきれないというような、そういう若い人たちのあり方を、“接続過剰な日常”と言ってきたんですね。SNS上に出てくるキラキラした情報というのは、ほんの氷山の一角で、それ以外のところは、いろいろと悩みやゆがみを抱えていたり、あるいは、そういった問題が人に話せなくて困っているかもしれないんですよね。例えば座間で起きたSNS上に自殺願望を書き込んだ、特に女性たちを中心とした被害者が、殺人事件の被害者になるという痛ましい事件が起きましたけれども、SNS上で日常生活をリア充として「盛る」文化と、こういう自殺吐露のつぶやきというのは、表裏一体だと思うんですよね。自分の薄暗い部分、人はそういう部分あって当たり前なんですよね。ただ、そういう当たり前の暗くて薄暗くてドロドロした部分というのを、なかなか社会が容認できなくなってきている。

“つながり孤独” 心の病に苦しんで…

“つながり孤独”から心の病を患ってしまったという女性に出会いました。
大学3年生のサクラさんです。

双極性感情障害と診断され、心療内科に通っています。サクラさんがのめり込んでいたのは、16歳から始めたツイッターです。自分のつぶやきを読んでくれるフォロワーを増やすことに熱中し、つながった人は8,000人を超えました。

サクラさん(20)
「承認欲求みたいな、人にたくさんフォローされることで、なんとなく認められてるみたいな。少なくとも『ひとりぼっちではない』、そういうのが欲しかったんだと思います。」

しかし、8,000人のフォロワーで、サクラさんのつぶやきに反応してくれる人はほとんどいませんでした。

サクラさん(20)
「結局こんなに人がいても、自分に関心を持つ人は4〜5人しかいない。(SNSを)使う前は、誰とでもつながれるっていうので、携帯を持つことで(孤独から)救われるみたいな気持ちがあった一方で、持ってみると、結局そういうわけじゃなくて。SNSっていっても、使いこなせばこなすほど、限界が見える。つながりの限界。」

サクラさんは、8,000人とつながったアカウントを削除しました。しかし、SNSで誰かに気にかけてほしいという思いはなくならないといいます。

ゆうこすが語るSNSといいね

SNSの総フォロワーが100万人を超す、菅本さん。サクラさんの話を、どう受け止めたんでしょうか。

菅本さん:自分が納得できたらいいじゃないですか、その頑張ってることに対して。だけど今は、頑張ってる過程に、今から一歩踏み出します、“いいね!ゼロ”。やっと頑張って達成しはじめました、“いいね!ゼロ”とかだと、もう数字がずっと常につけられてる感覚なので、やっぱそれはさみしいですよね。

武田:数字か。すぐ評価されますからね。でも自分が頑張っていれば、それでいいじゃんって思うんですけど。

菅本さん:本当はたぶんそうだと思うんですよ。だけど、もう今は(SNSを)みんなが持ってて、みんなが使ってるもので、それをしないことが逆に不自然っていう社会なので、常にここに数字が出ているようなものじゃないですか。

孤独は社会問題 動き始めたイギリス

“つながり孤独”を社会の問題と捉え、対策に動きだしたのがイギリスです。孤独問題を担当する大臣を新設。300億円の基金も作りました。

イギリス トレイシー・クラウチ孤独担当大臣
「高齢者の孤独の深刻さを理解するためには、かなりの作業が行われています。ですが、孤独の問題は高齢者だけでなく、すべての世代に広がっていることです。」

イギリスでは、孤独は心身の健康を損ねたり、職を失ったりすることにつながるなど、全ての世代に関わる深刻な問題と受け止められています。孤独な社会がもたらす経済損失は年間5兆円に上るという試算もあります。孤独を隠すのではなく、みんなで共有しようという取り組みもネット上で始まっています。

“さあ、みんなの声に耳を傾けて。”

「正直ホント孤独ですよね。」

「一日、家と職場の往復だけだと孤独だよね。」

「一番大きな問題は、自信のなさなんだ。」

動画を制作したNPOは、孤独を後ろめたいものと捉える社会の風潮を変えるため、孤独を語り合うイベントも開催しています。

イベント参加者
「私は30代中ごろに孤独を感じて、ネットで『孤独』って検索していたわ。」

イベント参加者
「自分が孤独だと認めるのって、難しいわよね。なんだか失敗を認めているような感じがするもの。」

NPOの代表、エイミー・ペリンさんです。

番組に寄せられた“つながり孤独”の声を読んでもらいました。

NPO『マーマレード・トラスト』代表 エイミー・ペリンさん
「とても悲しいですね。私もこんな気持ちになったことがあると、とても共感します。こんなにも多くの若い人たちが孤独を感じているなんて、抱きしめて『大丈夫、孤独な感情は普通のことだよ』と言ってあげたいです。」

“つながり孤独” 私たちはどうすれば?

ゲスト 石田光規さん(早稲田大学文化構想学部教授)

私たちの社会は、孤独にどう向き合えばいいのか。現代の人間関係について研究を続ける、石田光規さんを訪ねました。

石田さん:心配されるのは、格差化されるだろうなっていう感じはするんですよね。つながりを持つ人はものすごい持ってて、持たない人は本当に持てないという形で、ものすごい自由になってしまうと、その自由を精いっぱい活かして、つながりをたくさん作ることが出来る人と、そうではなくて、つながりというところからあぶれてしまう人という形で、もっとはっきりしてきてしまうんじゃないのかなと。

武田:僕らの言うことも届かないし、向こうの言うこともあんまり理解できてないのかなと、すごく不安になるんですけど、どう乗り越えたらいいんですかね。

石田さん:もともとは(現代の若者は)ひとりというところから始まってるんだということを、もう少し理解してあげたほうがいいのかなと思うんですよね。一昔前であれば、つながりの中にある程度、包摂(ほうせつ)されていたから、そんなに別につながりのこと、あれこれ言う必要なかったんですけれども、現在の若い世代は、そういったものが非常に緩くなってしまっているので、ある意味、課題みたいなものを背負ったまま、今の若い人っていうのは育ってきてると思うので、そういった状況というのを理解した上での言葉っていうのが必要なのかな。

SNS総フォロワー100万人の菅本さんは、ネットの中に自分の居場所を見つけることを勧めます。

菅本さん:孤独を感じるのもSNSだけど、孤独を癒すのもSNSなのかなと。ちょっとは自己中心的になる必要性があるなと思ってて、SNSの中では。人に合わせる合わせるだけだったら消費されてって、どんどん孤独になってっちゃうから。私はこうです、ああです、これが好きで、こういうことに興味がありますって言うことで、ほかのSNS上の人たちが話しかけやすくなって、仲間が見つけやすくなって、そこに居場所ができて、コミュニティーができてってなったら、たぶん他でうらやましいなと思っても、私にはここに友だちがいるし、居心地がいいし、そんなになんか疲れることもなくなっていくんじゃないかな。

孤独を感じる時間も大切なもの。水無田さんはそう話します。

水無田さん:孤独というのは悪いところだけでもない。孤独というのをポジティブな面から自分と対話する時間だと思って、少し自分を直視するということもトレーニングしてみたらいいのではないかなと思いました。

田中:本当に今もまさにヒントだと思うんですけど、それができればいいんですけど、できないっていう人がつながりをやめて自分の内省ができないっていう人が、かなり今、多くなっている。

水無田さん:つらいんだったら普通はやめなさいというアドバイスになると思うんですよね。でも、別にやめることができないんだったら、それはしょうがない。そういったダメなところも含めて、自分を認めてあげよう。不安とか孤立感、孤独感を感じたにしても、それは一時のものですよね。なので、今、感じていることを認めてあげた上で、でも、それは永遠ではないということを知ることも必要じゃないかと思います。

田中:私たちが生きる日々は、みんな決してキラキラしているばかりではありません。今回の取材を通じて、孤独に悩み、苦しみもがいている人たちが表に見えにくい形で私たちの周りにいることに、改めて気付かされました。

武田:“つながり孤独”は、家族・会社・地域といったしがらみではなく、個人として自由に人とつながることを求めてきた私たちが、その自由と引き換えに抱え込むことになった孤独なのかもしれません。そう考えますと、若者だけの問題ではないと感じます。

田中:こうした人たちの声に、これからも向き合っていきたいと思います。