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2017年11月16日(木)
元副大統領 アル・ゴアの告発 ~“不都合な真実”はいま~

元副大統領 アル・ゴアの告発 ~“不都合な真実”はいま~

アメリカ 元副大統領でノーベル平和賞受賞者のアル・ゴアさんが、環境問題を世界各地で訴える様子を記録したドキュメンタリー映画「不都合な真実」。アカデミー賞で「長編ドキュメンタリー賞」を受賞した作品から10年が経ち、世界情勢も大きく変わる中、今年11月ゴアさんのその後の活動を追った「不都合な真実2」が公開される。温暖化の国際ルールの決議に至ったパリ協定への困難な道筋やその後のアメリカトランプ大統領の対策を取りやめる動きなど、必ずしも順調に進んでいるとはいえないその後の地球温暖化に対する彼の「戦い」を、激動する世界の情勢を織り込みながら描いている。地球温暖化問題はどこへ行くのか。今週開かれているCOP23に参加したゴアさんの様子も盛り込みながら、ロングインタビューで地球の未来を展望する。

出演者

  • アル・ゴアさん (元アメリカ副大統領)
  • 武田真一 (キャスター)

“不都合な真実”はいま 米元副大統領の告発

ハリウッドや日本のスターが一堂に会した東京国際映画祭。その中で、ひときわ注目を集めた人物がいます。アメリカの元副大統領、アル・ゴア氏。世界に衝撃を与えたドキュメンタリー映画「不都合な真実」から10年。今、その続編が公開され再び大きな反響を呼んでいます。

アル・ゴア氏
“嵐は巨大化し、大量の水が街を襲う。これが地球温暖化だ。”

映画で描かれるのは、地球温暖化の危機を訴えながらも、なかなか前進しない現実。

アメリカ トランプ大統領
“アメリカは撤廃する。温暖化対策は行わない。”

次々に気象災害が発生する中、世界中を奔走するゴア氏。一民間人としての苦闘が描かれています。

アル・ゴア氏
“人類の運命は、人類によって定められる。”

今回、NHKを訪れ、ロングインタビューに応じたゴア氏。温暖化対策を巡って世界が大きく揺れる中、新たな映画を通じて、今、何を訴えようとしているのか。アメリカ 元副大統領の未来への警告です。

“不都合な真実”はいま 米元副大統領の告発

ゲスト アル・ゴアさん(元アメリカ副大統領)

今日はお忙しい中、ありがとうございます。お会いできて、とても光栄に思っております。こういうようなインタビューの番組を収録する時には、普通、ペットボトルのお水を用意するんですね。ただ、今日はペットボトルはNGだというふうに言われましたので、用意していないんです。
ご自身で二酸化炭素を減らすための取り組みをされていると伺ったが、どんなことをふだん心がけている?

ゴアさん:私は電気自動車のテスラにしか乗りません。今年(2017年)自分の農場に520個の太陽電池パネルを導入しました。自宅も環境に優しい国際認証を得た家にしました。しかし私たちは温暖化ガスを出さないと動かない社会に住んでいるので、完全に避けるのは難しいです。私はJALの飛行機で日本にきましたが、いつか、よりクリーンな燃料で飛行機を飛ばせるようになることを願っています。でも私は、今できることは何でもやるようにしてはいます。

今年は「不都合な真実」が公開されてから、ちょうど10年という節目の年に当たるが、なぜ今回、この映画で再び世に問おうと思った?

ゴアさん:気候危機は、人類が今まで直面してきた最も深刻な課題です。昨年(2016年)は、これまでの観測史上、最も暑い年でした。最も平均気温の高い17年のうち、16年までが2001年以降の年なのです。10月には2つの台風が日本を襲い、いくつもの町で過去最高の降雨量を記録しました。アメリカは同じころ、3つの非常に強いハリケーンに襲われました。テキサス州ヒューストンでは、降雨量は1,500ミリに達し、わずか6週間で最大3,500億ドルもの被害をもたらしました。一方、カリフォルニアでは、歴史上かつてない山火事も起こりました。気候に関連する極端な事象は、ますます破壊的になり、その数も増えています。最初の映画から10年という、この時期に、観客に再び地球に起きている危機を伝えるべきだと思ったのです。

米大統領候補から “温暖化対策”の伝道師へ

今週、ドイツのボンで開かれている、地球温暖化対策のための国際会議「COP23」。アル・ゴアさんは、この会議の創設に関わり、すべての会議に参加してきました。世界の温暖化対策をリードし、ノーベル平和賞も受賞したゴアさん。今回の会議でも、その一挙手一投足に注目が集まりました。

アル・ゴアさん
「母なる大地は、私たちに議論を急げと警告を発していると思います。私たち人類は、変わらなければならないのです。」

17年前、大統領選に立候補したゴアさん。ブッシュ元大統領に僅差で敗れ、政界を引退しました。しかし、ゴアさんにはライフワークがありました。大学時代から目を向けていた、環境問題に対する取り組みです。引退後は、温暖化対策を訴える、いわば伝道師として世界中で危機を訴えてきたのです。しかし、前作の発表後も、環境問題への理解は簡単には広がりませんでした。議会の公聴会で、石油業界と結び付きの強い議員から、うそつきと非難されたこともありました。

「温暖化は科学によって立証されてはいません。何人かの活動家が予言しているだけで、事実ではないでしょう。」

アル・ゴアさん
「温暖化に疑問の余地はないんです。」

「それは単なるあなたの意見でしかない。」

一方、この10年、大気中の二酸化炭素の濃度は上昇の一途をたどっています。去年には、危険水域とされる400ppmを超えたのです。

今、世界では温暖化の弊害が次々に起きています。気温の上昇で崩れ落ちる氷河。このままでは、今世紀末までに気温は3〜4度高くなり、海面の上昇で最大2億人が影響を受けると、専門家は警鐘を鳴らしています。映画には、激しい気象災害に見舞われる世界各地の姿も映し出されています。

“高波が来た。激しい勢いで、水の壁が。”

“みんな、逃げながら泣いていました。家族が行方不明で。”

アル・ゴアさん
“無事でよかった。”

“本当は、すごく怖いんです。台風の話をすると…。”

アル・ゴアさん
“よみがえるんだね。”

映画の中でゴアさんは、その苦悩を告白しています。

アル・ゴアさん
“だが私にとって、この20年間は、非常につらいものだった。”

“合意は認めません。拒否します。”

アル・ゴアさん
“好ましい成果を上げられないためだが、それだけじゃない。私は手が出せず、調停役として、あまり働けずにいた。”

映画のクライマックスは、2年前のCOP21で、世界各国がパリ協定を採択するまでの道のりです。ゴアさんは、副大統領時代からの人脈を武器に奔走。対立する国々を説得し、合意に結び付けようとします。

アル・ゴアさん
“人類の危機を思えば、我々も考慮すべきだろう。”

“パリ協定は合意に達しました。”

パリ協定は、世界の国が初めて行った歴史的合意でした。今世紀末までに二酸化炭素を削減し、温暖化による気温上昇を2度以内に抑えること。そして、途上国に先進国が1,000億ドルを超える資金を援助することが決められたのです。

“不都合な真実”はいま アル・ゴア氏の警告

パリ協定では、今世紀末までに気温の上昇をプラス2度に抑えるというふうに決まった。ただこれは、各国が具体的な削減目標を立てるということになっているが、それを全部足し上げても、そのプラス2度という目標には届かないのではないか。このプラス2度にとどめるという目標は達成できると考えている?

ゴアさん:はい。私は達成できると思います。その理由を説明しましょう。世界のすべての国々が現在、約束した数字をすべて足しあげても、2度以下の温度上昇にとどめるには、十分でないことは事実です。しかしパリ協定では、5年ごとに世界中のすべての国が、自分の目標を見直さなければなりません。すべての情報を世界中の人々に公開しなければならないのです。再生可能エネルギーのコストは継続的に下がり、より効率的な電池などの新たな技術も開発されています。その前提で目標を設定しているかどうか、評価も受けなければなりません。来年(2018年)には、最初の見直しが始まります。私はパリ協定の下で各国が、より野心的な目標を掲げていくと確信しています。

6月には、トランプ政権がパリ協定から離脱するという事態にもなり、先行きは不透明な状況にあるのではないかと感じてしまうが?

ゴアさん:トランプ大統領が離脱の演説をした時、私は他の国々も、それに続くのではと心配しました。

アメリカ トランプ大統領(今年6月の演説)
「アメリカはパリ協定から離脱する。」

ゴアさん:しかし翌日、世界のすべての国がパリ協定を守ると言ってくれたのです。そしてアメリカ国内でも、カリフォルニア州とニューヨーク州を始め、多くの大都市や多くのビジネスリーダーがトランプ大統領の意向に関係なく、パリ協定を守ると言ってくれました。そして法的には、パリ協定を離脱できる最初の日は、2020年の次の大統領選挙の翌日なのです。

したがって、トランプ大統領とアメリカを区別することが重要です。アメリカは依然として、パリ協定の枠組みの中にいます。私たちはパリ協定での約束以上に、削減を行っていくつもりです。

地球温暖化が進んでいく現状自体については、やはり焦りを感じている?

ゴアさん:たくさんの活動が立ち上がっています。私は何百万人もの草の根の活動をしている人々から力をもらってきました。そして現在、アメリカ人の3分の2以上が、気候変動問題を解決するパリ協定を支持しているのです。面白いことに共和党の支持者の大半も、気候危機の解決を支援しているのです。さらに複数のトランプに投票した人でさえ、気候危機の解決を支援しているのです。気候変動を解決することに対し、国民の支持は増えています。ですから、私は近年、ますます希望を募らせているのです。

地球温暖化を防げ “連帯”進めるアル・ゴア氏

トランプ大統領のパリ協定脱退宣言の影響は乗り越えられると考えているゴアさん。今週開かれているCOP23でも、各国の代表などに呼びかけ、地球温暖化防止に向けた結束の強化を確認していました。

アル・ゴアさん
「私たちが目標を達成することは、かつてないほど重要になっています。最大の問題は、受け止め切れないようなリスクを人類が避け、後戻りできない場所に来てしまう前に、この問題に打ち勝てるかどうかなのです。」

米元副大統領ゴア氏 温暖化への警告

温暖化問題を実行していくためには、やはり人々のパワー、あるいは政治的なリーダーシップ、さまざまな力が必要だと思うが、どういう力が必要?

ゴアさん:日本でもアメリカでも、そして他の多くの国でも、化石燃料産業には強い政治的な力があります。100年以上かけて、彼らは政治的なネットワークを築き上げてきました。そして彼らは、ばく大なマネーで多くの国の政治システムに影響力を持っています。彼らのロビー活動や政治的影響力に対抗するための唯一の方法は、未来を大切にすること。そして政治に積極的に働きかける草の根レベルの活動を増やすことです。正しいことをしない限り、票を投じないということを、政治家に分からせることなのです。

2030年のエネルギーミックスを見ると、日本で最も多いのは、石炭発電というふうに想定されている。ただ同時に、原子力発電を再稼働させるということに対しては賛否両論あり、難しい状況になっていて、日本人は今すごくエネルギーの在り方について悩んでいる。どう解決すればいいと考える?

ゴアさん:私はまず、化石燃料を使った発電への補助金を止めなければならないと思います。日本は発展途上国の石炭火力発電に、世界で最も多くの資金拠出を、公的に行っている国です。その資金は税金です。私は日本の有権者が声をあげ、地球温暖化に手を貸すような行為をやめさせることを願っています。

“環境ビジネス” アル・ゴア氏 新たな動き

今、ゴアさんは、地球温暖化防止に取り組む人材の育成に力を入れています。
ゴアさんが主催する、リーダーを養成するためのセミナー。参加者は年々増加。これまでに1万3,000人を超えるといいます。

アル・ゴアさん
“キング牧師は、いつまで戦うのかと問われた時、“じきに終わる。なぜならば虚偽は長続きしないし、最後には正義が勝つ”と説いた。今の我々も同じだ。変化を起こす時だ。奴隷制度廃止運動、女性参政権運動、公民権運動、アパルトヘイト廃止運動、これらの運動は、いつの時代も反対にあった。人類の運命は、人類によって定められる。未来の人類を救うんだ。環境破壊を止めるんだ。未来に望みをつなぐんだ。”

ゴアさんが今、最も希望を抱いているのは、世界で急速に拡大する、再生エネルギーの利用です。近年、太陽光発電のコストは急速に下がり続けています。石炭による発電価格を下回る太陽光発電所が、世界中で次々と建設されているのです。

しかし、その恩恵を受けられるのは、太陽光発電の設備を大規模に設置できる国だけで、日本のような狭い国土の国では、現実的ではないという見方もあります。ゴアさんは、温暖化防止に貢献する企業だけに資金を提供する投資会社を経営しています。今後、発展が見込まれる再生エネルギー産業には投資価値があり、ビジネスと温暖化対策は両立すると考えています。

米元副大統領ゴア氏 地球の未来のために

ゴアさんご自身も、環境ビジネスに対する投資をなさっている。ゴアさんは、世界初の「カーボンミリオネア(炭素長者)」と言われていると伺ったが、ご自身の活動が、そういったビジネスに役に立つから、あんなに一生懸命に活動しているのではないかと見られることについて、どう考えている?

ゴアさん:まあ、それは全く間違った告発ですね。私は億万長者だったらと願ったことはありますが、そうであったことはありません。確かに私はビジネスで成功しましたが、それはネット関連のビジネスでのことです。私は資本主義はかわらねばならないと思います。もし環境という価値に対して、投資が行われるようになれば、世界をより良い場所にすると同時に、利益も生むことができます。私はそのことを証明したいと模索してきました。そして今、私はこの新しい形の資本主義が、世界を正しい方向に導いていくと思っています。

ここ10年、ただ一度も二酸化炭素は減ってはいない。それでもゴアさんは、これは前向きに捉えている?

ゴアさん:私たちは二酸化炭素の年間排出量を実際、減らすことができるようになっています。これは良いニュースです。特に太陽光発電のコストは、世界の多くの地域で、石炭による電力の価格の半分以下になっています。アブダビでは、わずか3週間前に太陽光発電がキロワット時あたり1.7セントという、石炭の電気料金の3分の1以下の値段で、新しい入札を開始しました。チリと南アメリカ、アメリカのアリゾナ州など複数の場所で、補助金など一切なしで石炭による発電の半分以下の値段を達成しています。これが今の現実です。今、私たちの世界は(持続可能な社会を求める)「サステナビリティー革命」の初期段階にあります。その大きさは産業革命と同様の規模であり、スピードはデジタル革命と同じなのです。これが世界中の企業や産業、コミュニティを変革しています。二酸化炭素は過去3年間に、すでに排出量が安定しており、今年はわずかに下がるでしょう。私たちは今、温室効果ガスを排出しなくても経済成長できるという現実を目撃しているのです。

ゴアさんは、この問題を語る時、「将来に対する倫理の問題だ」という言葉をよく使われる。なぜ、このような表現をするのか?

ゴアさん:はい、それは今、まさに人類の未来が危険にさらされているからです。これは私たちが直面してきた最も深刻な課題であり、そして人々のさまざまな権利を進化させてきた大きな社会運動の流れでもあるのです。例えば、奴隷制度を廃止しようとした世界の努力。女性の権利のために、法の下の平等を獲得するための闘い。そうしたものを、私は思い浮かべています。多くの男性がその戦いに抵抗しましたが、時間の経過とともに、複雑な問題ではないことが明らかになりました。それは、何が正しくて、何が間違っているかの選択でしかありませんでした。男性は、自分の娘と妻と母親を見て、女性を法の下で平等に扱うことは当然だとわかったのです。気候変動は、それに非常によく似ています。最初は複雑に思えるかもしれませんが、最終的には、非常に単純な二者択一の問題になるのです。何が正しく、何が間違っているのか。子どもたちや未来の世代が、科学者たちが警告したような苦しみや、過酷な生活に直面しないようにするため、この惑星の未来を救うことが正しいことは明らかです。ですから、これは私たちの良心の選択、倫理の選択なのです。

ありがとうございました。

ゴアさん:ありがとう。

地球温暖化を防ぐために、世界中の国々や人々が、同じ目標を共有して進んでいくことは簡単なことではありません。しかし、ゴアさんは、目標は達成できると言い切りました。地球の未来を救うことは「正しいことだ」という信念に突き動かされ、前向きに運動に取り組む姿に、希望を感じました。