クローズアップ現代

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2017年5月29日(月)
豊洲か?築地か? 小池都政・判断の行方は

豊洲か?築地か? 小池都政・判断の行方は

混迷する豊洲市場問題をめぐり、小池知事がどのような判断を下すのか注目されている。先が見通せない状況に、築地市場の業者は動揺し、業界は分断されかねない状況だ。問題はどのようにして今に到り、何が課題となったのか。プロジェクトチームや専門家会議を立ち上げながら、独自の手法で移転の可否を探ってきた小池知事。番組では、これまでの経緯を関係者の証言を交え徹底取材、市場問題を通して小池都政を検証する。

出演者

  • 北川正恭さん (早稲田大学名誉教授)
  • 武田真一・田中泉 (キャスター)

都議選まで1か月 小池知事 判断の行方は

豊洲か築地か。小池知事の判断の行方は…。

都議会議員選挙まで1か月余り。そして今週からは議会が始まります。
注目は、豊洲市場問題。移転の判断に必要な報告がまとまらず、今年(2017年)夏ごろとされる判断の時期がずれこむ可能性も出ています。

築地市場 業者
「どうしてこっちが責任をとるんだよ。」

築地市場 業者
「本当にお客さん来なくなりますよ。」

専門家
「どのようにすれば安全確保ができるのか。」

小池知事はいつ、どのように判断するのか。

東京都 小池百合子知事
「豊洲問題には決着をつけていきたい。」

知事へのインタビューと都庁内部の証言から、混迷を深める問題の背景を徹底検証していきます。

豊洲か?築地か? 小池都政は

小池知事が都政改革の試金石と位置づけてきた豊洲市場問題。今、出口の見えない状況が続いています。

田中:そもそも去年(2016年)8月、小池知事は、豊洲市場の地下水のモニタリング調査の結果を待ちたいとして、11月に予定されていた移転の延期を表明。今年1月、モニタリング調査の結果がまとまり、最大で環境基準の79倍のベンゼンが検出されました。
こちらは、小池知事が移転判断までの道筋を示したロードマップです。

4月から5月にかけて移転判断の材料となる専門家やプロジェクトチームの報告書がまとまる予定でした。しかし、その取りまとめは相次いで遅れています。それによって、この夏にも示されるとされていた総合的な判断、これが遅れる懸念も出ているんです。
こうした中、今、移転延期の影響を受けているのが築地市場の業者です。すでに豊洲市場に設備を持っている業者は維持管理費などを負担しているため、東京都は業者への補償の対応に追われています。現在支払った額は、およそ9億円。補償手続きは始まったばかりで、補償額は大幅に増える見通しです。

本来、移転するはずだった去年11月から半年余り。方向性が示されない中、業者は揺れています。

豊洲か?築地か? 揺れる市場業者

豊洲か、築地か。知事の判断が遅れる懸念が出ていることで、移転の準備を進めてきた業者の間にはいらだちが募っています。
築地市場の業界団体を束ねるトップ、伊藤裕康さんです。伊藤さんが経営する卸会社のグループでは、70億円余りを投じて豊洲市場に冷凍施設を作りました。一度冷凍を始めた後に電気を止めると設備が故障するおそれがあるため、月に少なくとも200万円の電気料金を払い続けています。都からの補償で電気料金をまかなう予定ですが、この状況がいつまで続くのか不安を募らせています。

築地市場協会 伊藤裕康会長
「早くどうするんだということを決めてほしい。我々はじっと待っていることしか今はできないんですよね。」

移転の判断の行方が見通せない中、業者は新たな経営計画を描けないと危機感を強めています。

築地市場協会 伊藤裕康会長
「途方にくれるといいますか、何をどうやっていいんだかさっぱりわからない。」

一方、小池知事は移転が可能か慎重に見極めていると理解を示す業者もいます。500以上ある仲卸業者で作る団体の理事長、早山豊さんです。早山さんも豊洲市場に冷凍庫などをすでに準備するなど、200万円の投資をしてきました。しかし、豊洲市場に汚染が残っていることが移転前に分かり、延期の判断は結果的に間違っていなかったと評価しています。

東京魚市場卸協同組合 早山豊理事長
「開業したあとに(地下水の汚染の)問題が発覚したら、おそらく市場の取り引きは壊滅的になっていたことは想像できる。」

業者が安心して商売できる環境なのか。知事には時間をかけてでも検証してもらうことを望んでいます。

東京魚市場卸協同組合 早山豊理事長
「(知事が判断を)急がされるのは、我々とすれば本意ではない。本当に時間をかけても、しっかりとした話し合いをして、その上で都知事に判断してもらえれば。」

田中:移転の判断に向けて、どのように議論が行われてきたのでしょうか。知事は、2つの組織の検討結果をもとにするとしています。
1つは、小池知事のブレーンからなる市場問題プロジェクトチーム。市場の採算性などの検証を行います。そしてもう1つが、市場の安全性を検証する専門家会議です。しかし、この議論の進め方が変わってきています。都庁で何が起きているんでしょうか。

混迷!?豊洲市場問題 都庁で何が起きているのか

市場問題プロジェクトチームです。市場の採算性などについて議論を続けています。チームを束ねるのは小島敏郎座長。小池知事に最も近いブレーンの1人といわれ、議論に強い影響力を持ちます。

市場問題プロジェクトチーム 小島敏郎座長
「(今後の検証について)事実は証拠なり証言なりに基づかないと、これは極めてセンシティブな問題。」

小島座長は環境省の官僚出身。小池氏の環境大臣時代から政策の助言を行い、15年来の関係があります。かねてから豊洲への移転に懐疑的だった小島座長。移転延期の判断は小島座長に小池知事が相談して決まったとも言われています。

なぜ、知事はこうした外部ブレーンを重用するのか?小池知事は、過去の決定にとらわれがちな都庁職員ではゼロベースからの議論は難しかったと明かしました。

東京都 小池百合子知事
「都はこれまで豊洲でやってきたわけですから、自分たちの正当性、仕事してきたんですから『間違ってました』とは言いません。『これまでこうやってきたんです』という人の言い分だけ聞いてきたら、これまでと同じ延長線に私は乗るわけですね。」

蚊帳(かや)の外に置かれる形となった都庁職員たち。当時、小池知事の手法に懸念と不安の声が上がっていました。

当時の都庁幹部の証言
“知事はブレーンからどんなアドバイスを受け、何を基準に判断しているのか、政策決定の過程がまったく見えない。”

しかし先月(4月)、外部ブレーンを重用してきた小池知事の姿勢に変化が見られます。都庁職員だけで作る「市場のあり方戦略本部」を新設。当初の判断プロセスにはなかった組織を突如立ち上げ外部ブレーンたちの上位組織と位置づけたのです。

東京都 小池百合子知事
「行政として、それをどのように判断するかということから戦略本部を生かしていきたいと思っています。豊洲、築地のそれぞれの持っている課題・問題点を出し、全部1つのテーブルの上に載せてみようということであります。」

これまで議論をリードしてきた小島座長。戦略本部について聞かれると…。

「戦略本部には座長は入る理解でいいのか?」

市場問題プロジェクトチーム 小島敏郎座長
「戦略本部のことは聞いていないのでわかりません。検討中なんじゃないですか。」

戦略本部の本部長に就任したのは、市場長経験者の中西充副知事。豊洲の盛り土問題で処分を受けた責任者の1人です。かつて豊洲移転を進めた人物のトップへの起用。都庁幹部の間では、豊洲移転にかじを切るサインと捉える空気が広がりました。

当時の都庁幹部の証言
“複雑化する問題を解決するには都庁職員の力が欠かせない。問題提起を得意とする外部ブレーンでは打開できないと見たのだろう。”

ところが、事態はさらに複雑な展開に…。プロジェクトチームの小島座長が、豊洲に移転せず築地市場を建て替える案を突如打ち出しました。コストも抑えられ、長年のブランドも生かせるというのです。

小池知事も、この案の中に検討に値するものがあるとの考えを示しました。

東京都 小池百合子知事
「一案として私は受け止めている。」

小池知事が豊洲移転にかじを切り始めたと受け止めていた戦略本部の複数の幹部からは、困惑の声が上がっています。

戦略本部 幹部の証言
“知事の意図がどこにあるかつかめず、疑心暗鬼だ。我々も何をやったらいいのかわからず機能不全の状態だ。”

戦略本部からは、築地市場を建て替えるという案に対してコスト面などに課題があるという指摘が相次ぎ、事態は混迷しています。

「(築地建替案の)工期や事業費に関して、こういった課題を1つ1つ丁寧に織り込んでいく必要がある。」

こうした現状をどう見ているのか。小池知事に問いました。

東京都 小池百合子知事
「どんどんと進めてきたほうと、ここが問題ではないかという両方(都庁側とブレーン側)から聞くことは、混乱でも何でもない。むしろ正しい判断をするということに必要な手はずだと思います。」

豊洲か?築地か? 小池知事の“手法”を検証

ゲスト北川正恭さん(元三重県知事・早稲田大学大学院 名誉教授)
津武圭介(NHK 記者)

豊洲問題への知事の対応について、評価できる点は?

北川さん:都知事選挙を踏まえて「都民ファースト」ということを訴えられたわけです。それでプロジェクトチームとか専門家会議で、いわゆる巨大組織の都庁が決めてきたことに対して情報公開を武器にオープンな形で進めようということで、盛り土があると言ってきた、虚偽の報告がなかったというようなことをオープンにして、意思形成過程を明確にしたという大きな成果を上げられました。そして、その中からいろんな問題点が出てきて、これをどうしようかという問題提起をされる中で、戦略本部なども作られて、いよいよまとめの時期に入ってきているということで、知事は政治家である反面、行政の責任者ですね、執行権を責任を持ってやっていくということになれば、ぼつぼつ、その収束をきちっとエビデンスを整えて結論を出していくという、この大きな課題を私は早期に解決をしていただく、それが課題だと思います。
(さまざまな組織を立ち上げて検討する、この部分は評価できる?)
そうです。そうでなければ、ここまで導けなかったなという思いです。

一方で課題は、さまざま立ち上げた組織がまだ結論を出すに至っていないという部分?

北川さん:そうです。だから結論を出すという執行権者たる責任を果たさないと知事は責任を逃れられないと思いますから、そういった問題をまとめ上げて都民に説明責任を果たすという課題が残っているということです。

就任以来、小池都政を9か月間取材してきて、今の事態をどう見る?

津武記者:移転にストップをかけたものの、次にどこに向かうのか、ゴールを走りながら考えているのがこの間の小池知事ではなかったかなと感じています。特に盛り土や地下水の問題が次々に発覚したいきさつを考えれば、方向性をそう簡単には示せない事情があったと思います。
一方で小池知事と都庁組織がしっくりしていないのも確かで、例えばこの間、意思決定に関する情報が都庁側に下りてこず、幹部が小池知事の記者会見で情報を収集するというケースも多々見られ、知事の意向がどこにあるのか都庁職員が手探りの状態だということが言えると思います。こうしたことが続けば結果的に組織の萎縮を招くという懸念の声も上がっているんです。この問題、小池知事は都政改革の試金石と位置づけていて、その判断の行方が注目されるわけですが、今後、小池知事が都庁組織を十分に機能させることができるのか、今後の都政を占う意味でも重要になってくると思います。

移転を判断していく上で小池知事が最も重視しているのが、「安全」と「安心」。その見極めが焦点となっています。

“安心”か“安全”か 市場移転の判断は…

豊洲市場の安全性を検証する専門家会議です。小池知事はこの会議の検証結果を移転判断の重要な要素と位置づけました。

東京都 小池百合子知事
「客観的、科学的な分析が必要。」

しかし年明けの1月、安全性についての見解が小池知事と専門家の間で食い違い始めます。豊洲市場の地下水から、環境基準を大きく超える有害物質が検出されたことがきっかけでした。

専門家会議は有害物質が検出されても豊洲市場の地上部分は安全だとの認識を示しました。

専門家会議 平田健正座長
「地面の上については安全な話です。地上に関して今は何か問題があるかというと、ない。」

これに対して、小池知事の考え方は異なるものでした。

東京都 小池百合子知事
「地下と地上と分けることを理解していただくのは、なかなか難しい。」

科学的な「安全」だけでは、消費者が納得する「安心」は得られないとしたのです。こうした中、築地市場でも環境基準を超える有害物質が検出されたことで、事態はさらに複雑化します。小池知事は、築地には長年運営されてきた実績があり、安全だけでなく安心も確保されていると強調。

東京都 小池百合子知事
「築地市場は現に営業を行っております。築地市場につきましては法令上安全、そして都民の絶大な信頼を得ているという2つの意味において、安全・安心だと思います。」

これに対して自民党からは、築地市場だけを安心とするのは主張が矛盾しているとの批判が上がりました。

自民党 都議会議員
「築地は安心だと言うならば、なぜ豊洲も安心だと言えないのか。豊洲と築地は違うというようなダブルスタンダードはやめていただけませんか。」

何をもって「安心が確保された」とするのか。小池知事に問いました。

東京都 小池百合子知事
「安心というのは、基準はなかなか難しいものがあります。消費者としての選択ですから、一つずつ確認してきているわけですから、その中で安心がまだ(課題として)残って、“安心に対しての確信”が必要だ。」

「安心」は何をもって判断されるものだと考える?

北川さん:小池知事もおっしゃってましたが、いわゆる「安全」ということについて、客観的なエビデンス、あるいはファクトを積み重ねて、そして90%までは安全と言えると思いますと。残り10%は地上と地下の問題とか揮発性の問題とか、そういった問題も含めて徹底して説明責任を果たす。例えばコンクリートを固めるとか、10センチの厚さにするとか、そういったことを説明責任を果たしながら、安心感というのは都民がご判断いただくことですから、安心感が持てるような、いわゆるエビデンスを整えて客観的なデータのもとに判断されるということが安心につながると。徹底してその努力をされるべきだと思います。
(『安全』だという結論だとしても、納得させるためには説明責任が生じるということ?)
そうです。だから説明責任を果たす一つの安心感を持ってもらうためには、意思決定過程がクリアに明確になってくることであるとか、状況証拠を徹底的に整えるとか、そういった努力の積み重ねで安心感が生まれるとそういうスタンスを言ってるんですけどね、私は。

田中:NHKの先月の世論調査では次のような結果になりました。「速やかに移転すべき」が22%、「移転は慎重に判断すべき」が57%、「移転すべきではない」が10%でした。いつ、どのように判断する考えなのか、小池知事に問いました。

東京都 小池百合子知事
「私自身は一つずつ検証するところは検証し、総点検をしているということでありますので、さまざまな課題が出そろってきていることは事実でございますので、スピード感を持ってこれについては対応していきたい。」

豊洲か?築地か? 小池都政・判断の行方は

今後の小池知事の判断に向けて、何が一番重要となってくる?

北川さん:「スピード感を持って」ということですけども、そのスピード感に具体性をちゃんと付加しないといけないかなという気がするんです。したがって、都議会議員選挙がございますが、都知事選挙と比較しても都民の審判を仰ぐ絶好の機会だというようなことから、いろんなエビデンスをまだ不ぞろいな点があれば徹底してそれを整えるという、いわゆる執行機関も知事の執行権の責任の中に入っていると思いますから。できたら、私の体験的な判断ですけども、7月の都議会議員選挙ぐらいまでには方向性を示して、そして知事の意思決定に対して都民の審判を仰ぐというようなことにしていただくと、議論はさらに深まって、そして安心感にもつながっていくだろうと。だから執行権の行使をぜひしていただくほうがいいんではないかと。これは私の私見ですけども、今までやってこられたことに対しても、せっかくのいろんなことがこの判断によってうまく回転するように期待したいですね。
(『安全』であるということを追求する、そして『安心』であるという説明をする。さらには執行権者としてはしかるべきタイミングではきちっと決めるというところまでが責任だという考え?)
問題提起をすることとそれを結論まで導く、そのプロセスを明確にする。それは執行権者としての責任だと私は思います。

東京都議会議員選挙まであと1か月余り、豊洲市場を巡る問題は今後どんな議論が予想される?

津武記者:知事はこの問題について都議選の争点の1つになるという考えを示していまして、各党も公約に盛り込むなど議論が活発化しています。こちら、各党の公約をまとめました。

自民党は早期に移転。公明党は安全対策を万全にし移転。共産党は築地再整備。民進党は都民の理解なしに移転はなし。都民ファーストの会は、知事の判断を尊重するとしています。東京・生活者ネットワークは移転に反対です。日本維新の会は早期に移転となっています。
こうして見ますと、各党移転問題へのスタンスがそのまま小池都政への評価につながっているとも言うことができると思います。その知事ですが、判断時期について「今年夏ごろまで」としていて、この都議選の前になるのか後になるのかは明言していないのですが、この都議選の前になれば議論はさらに活発化することが予想され、今後はいつ判断をするのかその時期についても焦点になってくると思います。

地方自治の在り方に一石を投じる、在り方を見直すことにもつながるのでは?

北川さん:これは本当にそう思いますから、ぜひいろんな点で結論を急いでいただければいいなと、そういうことを期待したいですね。

この豊洲市場の問題、一度決まった政策を見直すことの意義と課題を浮かび上がらせ、地方自治の在り方を問うものともいえます。小池知事、そして都民の判断に注目していきたいと思います。