クローズアップ現代

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No.37412015年12月1日(火)放送
家族はいるけれど ~急増“日中独居”高齢者~

家族はいるけれど ~急増“日中独居”高齢者~

家族はいるけれど “日中独居”の現実

横浜市に住む小柏さん親子です。
息子の武彦さん、父の武市さん。
6畳2間のアパートで2人で暮らしています。
武市さんはほとんど寝たきりで、自力ではなかなか起き上がることができません。

息子 武彦さん
「夜勤行って来るから。」

小柏武市さん
「ご苦労さん。」

息子 武彦さん
「じゃあ、あとは頼むね。
明日の朝、帰ってくるから。」

息子の武彦さんの仕事は警備会社の契約社員。
週に3回、宿泊勤務があり、昼夜、家を空けざるをえない状況です。

息子 武彦さん
「夜トイレに行ったときに1回倒れたことがあるので、24時間の仕事なので夜は心配。
ほとんどいないので。」

1人では食事もままならない武市さん。
週に4回、訪問介護を利用しています。




1回につき利用できるのは1時間ずつ。
そのほか昼間、高齢者を預かるデイサービスを週に2回利用しています。
武市さんは息子が宿泊勤務する週3回に、デイサービスを増やしたいと思っています。


しかし、介護サービスを増やす経済的な余裕がありません。
一家の収入は武市さんの年金を合わせて月30万円ほど。
家賃や光熱費に加え、一昨年(2013年)亡くなった妻の医療費と葬儀代で抱えた借金があります。
介護サービスに充てられるのは現在の自己負担分、月2万6,000円が限界です。

息子 武彦さん
「やはりお金の面でしょうね。
(介護サービスを)増やしたいんですけど、一日増やすと(支払える額を)超えちゃうので、ちょっと厳しいかなって。」

日中独居のお年寄りが必要な介護を受けられないのは、経済的な理由だけではありません。
家族と同居していることがネックになる場合もあるといいます。
自治体によっては、掃除や買い物といった家事全般を支援する生活援助のサービスが、同居する家族がいるという理由で受けにくくなるのです。

武市さんを担当するケアマネージャー 古川弘美さん
「お掃除とかお買い物は、ご家族がいると、介護保険ではやはり同居のご家族がやってくださいということで。
お一人だったらもう少し、生活援助、家事の部分で(自宅に)入るプランを立てることは出来ますが。」


今、地域の訪問介護の現場では、家族がいる世帯を支援する難しさに直面しています。
ここが担当する高齢者250人のうち、同居する家族がいる人は、およそ200人。
子どもが働いている場合は、自分が親を支えようと頑張り過ぎるあまりに、必要な支援を受けないことも多いといいます。

うしおだ介護支援センター所長 佐々木千春さん
「皆さん本当に家族で頑張って、協力して自分たちの生活をやっているんですけど、その中でどうしても要介護になったご両親を、孤立というか、そうせざるを得ない状況になっている。」

同居する家族の中には、事態を深刻化させてしまうケースもあります。
横浜市で母親を介護しながら働いている、娘の友紀子さんです。

娘 友紀子さん
「お母さん、ごはん食べたの?」

母 昭子さん
「食べたじゃん。」

娘 友紀子さん
「隠して腐ったやつ食べるから、おなか壊すんだよ。」

75歳になる母・昭子さんは認知症で目が離せません。
友紀子さんが働いている日中は、ほとんど1人で過ごしています。

実は友紀子さんは、2年前まで父親の介護もしていました。
脳梗塞で倒れ、寝たきりの状態だった父・一郎さん。
友紀子さんの留守中、発作を起こし、亡くなりました。

娘 友紀子さん
「行ってくるね(配達)。」

友紀子さんは親のために建てた二世帯住宅のローンを返済するため、3つの仕事を掛け持ちしてきました。
早朝、新聞配達に出たあと、昼間はスーパーでパートの仕事。
そして夕方は再び新聞配達。
家に残した両親が心配でも、自分が頑張るしかないと思っていました。
父親は訪問介護と看護のサービスを週5日1時間ほど受けていましたが、日中のほとんどの時間は目が届かない状態になっていました。

娘 友紀子さん
「あわてて帰ってきたら、もう死んでいた。
自分でちゃんと(介護を)出来ると思ったんですけど、仕事して、やっぱり本当に難しい。」


認知症の母親をこのまま支え続けられるのか。
友紀子さんは今、不安を募らせています。
母・昭子さんは週3回の訪問サービスを受けていますが、経済的にはこれが限界です。

母親の要介護度は5段階のうち3番目。
預かってくれる施設を探そうにも、より介護度の高い人が優先されるため、難しいのが現実です。
友紀子さんは親のために建てたこの家で、最後まで介護を続けたいと考えています。

娘 友紀子さん
「この先、歩けなくなったり、考えたくないですけど、その時になったらどうしようって思いますけど。
でも働かなきゃいけないし、そこはすごい不安ですね。」

家族はいるけれど 急増“日中独居”高齢者

ゲスト結城康博さん(淑徳大学教授)

●日中に孤立状態、目が届かない状態に置かれている高齢者は相当増えている?

そうですね。
私もいろいろ現場を見ていると、かなり増えています。
ここでの問題っていうのは、やっぱり第一に経済的な問題が挙げられます。
今、お子さんたちの雇用が非常に不安定化しつつある。
具体的には非正規雇用者が増えてますので、終身雇用制度というものが少し解体しつつあることで、自己負担の問題が出てきているという点ですね。
2つ目は、家族の介護力がちょっと減っていると。
昔であれば3人きょうだいとか当たり前で、きょうだいで介護をしていくんですが、今は一人っ子とかで、1人が全部を担っていかなければいけない。
そういうふうに家族の介護力が減退していると。
3つ目としては介護保険制度、VTRにもありましたように、例えば生活援助というサービスが同居者がいれば少し使いにくいということで、こういう雇用形態とか、そういうものを見ながら制度がメンテナンスされていないところに、私は問題があると思いますね。

(生活援助とは、具体的には掃除や洗濯などの家事一般?)
そうですね。
ここに見ていただきますけれども、ヘルパーさんのサービスというのを大きく分けると、身体介護ということでお風呂の介助とか、清しきとかですけども、それからこういう掃除とか、洗濯とか、買い物、食事、ある意味、身の回りのお世話をすると。
あとは身体介護と生活援助を混合型にするんですが、この生活援助というサービスが、ある程度現役世代のお子さんがいると使いにくい。
まあ、全然使えないわけではないんですけれども、いろいろちょっとハードルが高くなるという点がある。
これは地域性にもよりますけどね。

●息子が父親を介護していたケース 生活援助が使えれば、もっと目の届く範囲は広がると考えられる?

そうですね、VTRにもありましたように、日中独居だと、例えば今問題になっていたのは孤立死、孤独死、安否確認も非常に心配ですよね。
ですから、自己負担が限られていると。
例えばですね、これ生活援助が少し使いやすくなれば、例えば最初の息子さんが夜勤のときに、身体介護はちょっと我慢していただきたいけれども、例えば生活援助のほうが身体介護を絡めるよりはちょっと費用が安くなるわけですね。

例えばこれ、詳細に僕はケースを見てませんが、例えば独居高齢者だったらこういうふうにヘルパーさんの目をちょっと厚くして見守り機能を果たすこともできるので、これで費用負担とか、ある程度同額なり、抑えられるということなので、こういうサービスの使い方も、なかなか日中独居の方にはまだ使いづらいのかなと思いますね。
(なぜ今のルールでは、家族がいると生活援助が使いづらくなっている?)
基本的には、こういう介護っていうのは家族がある程度やっていくものだということが考えられていますね。
とにかくこういう掃除とか、洗濯とかすれば見守り機能も合わせてつきますけど、こういうものってやっぱり、介護っていうと家族がいれば十分じゃないか、社会保険サービスでやる必要がないんじゃないかという、まだそういう考え方が制度に残っているんですが、先ほど申し上げたように働き方も変わってますし、家族構成も変わってますから、やはりそういうところで社会サービスを見ていくべきだと僕は思いますね。
(一律的に、家族がいるからといってこうしたサービスを使いにくくするべきではない時代に来ているということ?)
そういうことですね。

●家族が働けたほうが社会全体としての負担は減っていくのでは?

基本的には、確かに生活援助サービスを使いやすくしていきますと、ある程度、ちょっと介護給付費が膨らんでしまう可能性はあります。
ただし、もし本当にこういうきめ細かいサービスをやらなければ、例えばもう生活保護サービスを使うしかなくなってしまいます。
例えばもし私が、最初のケースでいきますと、申し訳ないんだけども息子さんとお父さんを同居じゃなくて、世帯分離して生活保護しないとなかなかやっていけない。
どんどん介護度が重くなってきますと仕事と介護を両立できなくなりますから、私はある程度、介護保険サービスを使いやすくすることによって、ある程度、利用するべきときはするんですけども、生活保護にまでいかないように社会保険で抑えるというやり方も、中長期的に見ると財政的にも僕はいいと思うんですけどね。

地域で支える “日中独居”高齢者

全国平均を上回るスピードで急速に高齢化が進む、埼玉県幸手市です。

「介護保険の対象とならない人、介護保険で落ちこぼれているサービスを中心にやっていこう。」





介護サービスが行き届かない世帯に向けて自治体と住民が連携し、独自の対策に乗り出しています。
まず行ったのは、日中1人で過ごす高齢者がどれだけいるのか把握する調査です。
個別に家庭を訪問して事情を詳しく聞き取り、これまで見過ごしてきた日中独居の実態をつかもうとしています。
調査の結果、高齢者がいる世帯230軒のうち174軒が、日中1人でいる時間が長いことが分かりました。

調査に参加 中野智紀医師
「同居世帯がいると大丈夫だと判断されてしまう。
すごく強がられていたとしても、実際はすごく困っていて、例えば衰弱されているとか体力が落ちているとか、実際に会ってみないとわからないわけです。」

日中、1人で過ごしているのに介護サービスが十分に受けられていない人たちに利用してもらうことにしたのが「幸せ手伝い隊」です。
費用は介護サービスの3分の1程度。
家族がいると利用しにくい生活援助を行い、見守りにもつなげようという試みです。

このサービスの利用を始めた渡辺登代子さんです。
同居する50代の息子が働いているため、日中はほとんど1人で過ごしています。
高血圧の持病があり、足腰も弱っている渡辺さん。
この夏、息子の留守中にめまいで倒れ、起き上がれなくなることもありました。
自分で動けるうちはできるだけ介護サービスの世話にはなりたくないと、より負担の少ない手伝い隊を利用することにしました。
1人で出歩くことにまだ不安があるので、買い物の代行や病院や役所への付き添いなど月6回利用しています。

渡辺登代子さん
「今日はね、豚。」

幸せ手伝い隊サポーター 浦和茂子さん
「豚肉、はい。」

渡辺登代子さん
「ねぎ。」

渡辺さんを支援しているのは近所で暮らしている70歳の女性。
地元の商店街で使える商品券がもらえる仕組みで、今では300人が登録しています。
サービスを通して親しくなった女性に、頻繁に様子を見に来てもらえるようになった渡辺さん。
日中、1人でいる不安が少なくなったといいます。

渡辺登代子さん
「時々、犬の散歩をしては寄ってくださるんですよね。
『大丈夫?』と言ってくださったり、ずいぶん助かりますよ。
なんていうか、癒やされてね。」

支える側も、元気なうちに地域の役に立つことで新たな生きがいにつながったといいます。

幸せ手伝い隊サポーター 浦和茂子さん
「社会に貢献して人のためになれば自分も向上できると思って。
家にいたのでは年をとるだけで、いま外に出るように心がけています。」

どう支える “日中独居”高齢者

●高齢者どうしが地域で支え合う取り組み、どう見る?

非常にいい試みで、この日中独居とか、家族の介護の場合、非常に家族だけで孤立しやすい場合があるんですね。
そして地域も実は声をかけにくいんですね。
でも、こういう有償ボランティア的な、こういう多様なサービスがあるということは、地域の目が入りやすいきっかけ作りになりますので、ある意味、家族がいるから安心だというんではなくて、家族の介護者に対しての目配りが非常にしやすくなるということで、いい方法だと思います。
もう1つは、家族介護者側もこういう有償ボランティア的なサービスがあるということで、1回使ってみることによって、いろいろ情報を得やすくなると。
自分だけで頑張らずに、介護保険だけではなくて多様なサービスがあると。
これを通して、例えば家族介護者の集いとか、そういう介護者どうしで集って、ある程度、情報交換する会に参加する機会も得られるかもしれないということで、地域がそういう家族に入ることによって、孤立化を防ぐという意味で非常にいいことかなと思いますね。

●これが抜本的な解決策ではない?

そうですね。
これは非常にいい効果はありますけども、やっぱり抜本的な問題は、足りないサービスを増やしていくとか、使いにくい介護保険サービスをよりよくしていくとか、介護人材不足の問題を解決して、介護サービスをきちっとしていくということがありますね。
実際ですね、使いにくい介護保険サービスというのは、今日は「在宅」のことをいっていましたけれども、「施設サービス」、例えば特別養護老人ホームでも、実は同居家族がいるとなかなか点数が低くなってしまったりという問題もありますから、そのへんも家族と個人というサービス、そういうところも大事だと思います。
最後に、どうしてもこういう家族を支えるときっていうのは、サービスのことばかりに目が向けられがちですけど、やっぱり家族が介護しやすい労働環境を作る。
具体的には介護休暇を取りやすくするとか、介護のために2~3日休んでも大丈夫なように、職場環境を介護の理解のために、そういうようなインセンティブを働かせるような仕組み作りがやっぱり必要不可欠ですので、そういうところに補助金を出すとか、働きやすい、介護しやすい環境も同時に作らなきゃいけないんではないでしょうかね。
(そういうことが行われないと、65歳まで男女ともに働き、在宅介護の大きな流れを作ろうとしていても不安ばかりが大きくなる?)
そうですね。
政府も介護離職ゼロを目指すわけですから、サービスを増やすということと同時に、日中独居でも安心して暮らせるような働きやすい環境と、そして介護しやすい環境、これが両方、問われているのではないでしょうか。

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