クローズアップ現代

毎週月曜から木曜 総合 午後10:00

Menu
No.33922013年8月28日(水)放送
連鎖する“異常気象” 地球でいま何が

連鎖する“異常気象”
地球でいま何が

世界の“異常気象” 原因は海にある?

この夏、世界各地を襲った異常気象。
そのことを事前に予測していた科学者がいました。

今年(2013年)4月まで、NASA=アメリカ航空宇宙局で研究を続けていた、ジェームズ・ハンセン博士です。
世界に先駆けて、地球が温暖化していることに警鐘を鳴らした人物です。

NASA・ゴダード宇宙研究所 元所長 ジェームズ・ハンセン博士
「地球温暖化が、気候を変えようとしているのです。」


ハンセン博士が、今年1月に発表した報告書です。
“地球の温暖化は、今後数年間、猛暑などの異常気象を頻繁に引き起こす”と警告していました。

NASA・ゴダード宇宙研究所 元所長 ジェームズ・ハンセン博士
「地球のエネルギーバランスは今、大きく崩れています。
これから確実に暑くなっていくのです。」

ハンセン博士が注目しているのは、温暖化による海の水温の上昇です。
この100年間で、海水温の上昇は世界各地で確認され、平均で0.5度上がっているのです。




NASA・ゴダード宇宙研究所 元所長 ジェームズ・ハンセン博士
「海水温が上がれば、海から蒸発する水蒸気の量も増えていきます。
たとえ僅かな水温の変化であっても、大気は大きな影響を受け、大規模な異常気象につながるのです。」

海水温の上昇がもたらす異常気象。
実は日本の気象庁も、その兆候に気付いていました。
長期の気象予報を担当している、藤川典久さんです。
藤川さんが注目していたのは、日本の南に広がる海でした。

これは、2月のフィリピン沖の海水温のデータです。
平年に比べ、0.5度高く、その後も高い水温が続く傾向が見られたのです。

気象庁 地球環境・海洋部 藤川典久予報官
「2月の段階で、海面水温が今年の夏、高めになりそうだと、数値シュミレーションの結果が出ていたので、今年の夏(気温は)平年並みか、高くなる可能性が大きい。」

夏を迎え、フィリピン沖の海水温は、30度近くまで上がります。
大気を暖め、積乱雲と共に、強い上昇気流が発生。
日本の南海上で下降気流となり、太平洋高気圧の勢力を強めたのです。
さらに今年は、西から別の高気圧が張り出し、2つの高気圧が重なりました。
その結果、高知県四万十市では、国内観測史上、最も高い41度を記録。
日本各地で、猛暑日が相次いだのです。

気象庁 地球環境・海洋部 藤川典久予報官
「(最高気温)記録を更新しただけではなく、夏を通して、気温の高い状況が続いている。
そのベースとなるところは、海の状況がどのようになるのかが、一番おおもとにあると思います。」

連鎖する“異常気象” そのメカニズムは

さらに、日本と世界の異常気象は、互いに連鎖している可能性も見えてきました。
気候変動のメカニズムを研究している、東京大学の中村尚教授です。

世界のどこかで異常気象が起きると、遠く離れた地域で別の異常気象をもたらす、テレコネクションと呼ばれる現象が起きると指摘しています。
5月下旬から、6月の日本。
梅雨入りしたにもかかわらず、雨が降らない日が続きました。
中村教授は、日本から1万キロ離れた、大西洋の海水温の変化が影響を与えた可能性があるといいます。


東京大学 先端科学技術研究センター 中村尚教授
「(大西洋の)メキシコ湾流あたり、中緯度の海で、(平年より海水温が)1.5度とか2度高い。
かなり異常だと思います。」



大西洋の海水温の上昇で、温帯低気圧が北にずれ、偏西風を大きく引き上げ、蛇行させました。





それに伴い、ヨーロッパでは寒気が南下。
フランスでは、初夏にもかかわらず、異例の大雪となりました。





ドイツやオーストリアでは、大雨が続き、大きな被害をもたらしました。
ヨーロッパで異常気象をもたらしたエネルギーは、偏西風を次々と蛇行させ、日本には大陸からの乾いた空気が流れ込みました。
その結果、日本は雨の少ない梅雨になったのです。



一方、7月下旬に東北地方を襲った集中豪雨も、テレコネクションの影響だとみられています。





このときも、偏西風は大きく蛇行。
日本の上空では、暖かい空気と冷たい空気がぶつかって、大気は不安定な状態になりました。
一方、ヨーロッパの上空には、高気圧が勢力を拡大。
各地で、記録的な猛暑に見舞われました。
この異常気象の連鎖をもたらした要因の1つも、大西洋の海水温の上昇だとみられています。

東京大学 先端科学技術研究センター 中村尚教授
「ヨーロッパや地中海で起きたことが、さらに西側の大西洋で起きたことまで、日本に影響してくる。
異常気象が西からも、南からの影響でも起きやすいという、そういう所に日本列島が位置しているというわけです。」

深海にまで及ぶ 水温の上昇

異常気象と密接に関わる海水温の上昇は、どこまで進むのか。
先月(7月)下旬、衝撃的な研究結果が発表されました。
東京大学大気海洋研究所の渡部雅浩准教授です。

世界各国と共同で、観測機を水深700メートルを超える深海に沈め、水温を分析してきました。





上の画像は海面、下は、深海の水温の20年の変化を表したものです。
2000年までは、大気に接する海面の温度だけが上がっていました。
しかし、それ以降、深海の水温も上昇していることが明らかになったのです。
渡部准教授は、深海を暖めた熱がいずれ大気に放出され、地球温暖化を進行させる危険性があると指摘します。


東京大学 大気海洋研究所 渡部雅浩准教授
「今回の深層の温暖化というのが、警鐘のような役目を果たしている。
(海が)余分な熱を吸うことがなくなりますので、その分、表面の水温がまた上がっていくことになるだろうと考えられます。」

連鎖する“異常気象” 地球でいま何が

ゲスト木本昌秀さん(東京大学大気海洋研究所教授)

●専門家から見ても、この夏の気候は異常?

そうですね、今年もそうですし、このところ暑い夏が続いてますね。
やはり地球温暖化が進行してきて、暑い記録がどんどん更新されていく。
その中の一環ではないかなと思います。


●日本列島に2つの高気圧が覆いかぶさっていた?

VTRでも説明があったと思いますけれども、この日本列島、特に、西日本を中心に高気圧が強められた。
それは、この遠く離れた南シナ海、フィリピンの雲の上昇気流が下降して、高気圧を強めた。
なぜそうなったかと言うと、ここに雲が多い。
その下の海水温が多い。
ハンセン先生がおっしゃったように、海水温が少し上がりますと、大気中の水蒸気が非常に増えて、雲を変える。
それが気圧配置を変える。
これも中村先生のおっしゃった偏西風を通じて、遠くの影響が伝わるというテレコネクション、それとは形態は違いますけれども、やはり、これもテレコネクションの一種と言っていいと思いますね。
(日本海側の高気圧が張り出した理由は、フィリピンの海水温が影響ということですが、太平洋側の高気圧はなぜ?)
チベット高気圧ですね。
これは、ここも雲が多いんですが、実は、インドモンスーン、インドは雨季ですから、その雨も平年より多くて、それが直接関係するチベット高気圧を強めて、東に勢力を伸ばさせた。
これもやっぱり、こことは少し違いますが、やはりアジアモンスーンの雨の影響だということが言えると思います。
そんな具合に、いろんなところから、いろんなふうに影響が伝わるわけですね。

●この100年間で 平均0.5度の海水温上昇ということだが?

0.5度だと大したことない、昨日は今日より0.5度以上寒かったよ、みたいな話になるかと思いますが、海水は熱容量が大きいですので、公園の池はあまり暖まらないけれども、その隣の砂場は、非常に温度が高くなりますね。
でも、夜は逆に冷たくなりますね。
その水は、熱量が大きいからそうなるわけですが、その海水が100年間で0.5度上がっているということは、非常に大きなことだし…。
(水がいったん暖まると、なかなか下がらないと?)
そうですね、だから、それがもう着実に0.5度上がってきている。
それから渡部先生のお話であったように、表面だけじゃなくて、深いところまで、もうすでに上がってきてるというのは、地球温暖化が進んでいる証拠になると思います。

●今後の海水温の変化予想 北側や日本近海で変化が大きい理由

赤道に比べまして、緯度の高いところには白い氷があります。
白い氷が太陽光を反射してます。
ですけれど、温暖化が進みますと、その白い氷が少なくなったり、なくなったりします。
そうすると、黒くなって、太陽光をよけいに吸収するようになりますので、温暖化は低緯度に比べて、高緯度のほうが加速されやすい、温暖化の幅が大きくなる。
それを反映したものですね。
ですから、日本付近は黒潮も来ておりまして、海水温には漁業も敏感ですけれども、それが一層、これで強調されるような形になってると思います。

海水温の上昇 日本の海に異変

北海道東部の港です。
今年、水揚げされる魚に大きな異変が起きています。

70キロを超えるクロマグロです。
暖かい海水を好み、主に本州より南でとれる魚です。




「こんなにマグロがとれることはあるのですか?」

「はじめて、はじめて。」

今年、釧路沖では、これまでほとんどとれなかった魚が、次々と網にかかっています。



こちらはトラフグ。






イシガキダイは、九州などでとれる魚です。
見慣れない魚に、漁業者たちの戸惑いが広がっています。




「どの辺から来るのですか?」

「分からん。
全然分かんない。」


異変は、なぜ起きたのか。
専門家の調査から、海で、例年にない現象が起きていることが分かってきました。

海流の研究が専門の黒田寛さんです。
黒田さんは今年、北海道、東北沖の海水温の調査を重ねてきました。

水産総合研究センター 黒田寛研究員
「3月1日から、最新の8月16日までの状況です。」


3月からの海水温の変化です。
画面の下、暖かい海水が黒潮から続く暖流です。





この暖流から、海水が北海道沖へ向かって流れ、先端部分が塊のように切れます。
暖水塊と呼ばれています。
この暖水塊、例年は途切れたままですが、海水温が高かった8月、再び暖かい海水とつながったのです。
南方の魚が次々と北上するルートができたのではないかと、黒田さんはみています。


水産総合研究センター 黒田寛研究員
「今回のような暖水塊が発生することで、魚の分布域が変わる。
魚のとれる場所、とれる種類というのが、おそらく変わる。
暖水塊が高温化するとか、発生頻度があがるとか、そういったことには注視していく必要がある。」

海水温の上昇による魚の異変。
地元の漁業に打撃を与え始めています。
地域の経済を支えてきた、サケの水揚げが減少しているのです。

釧路地方の漁獲量は、この10年で、およそ4分の1に落ち込んでいます。
北海道の沖合に広がる、暖かい海水。
低い水温を好むサケは、近づけなくなっている可能性があるのです。
地元では、サケの水揚げが減り続けることへの不安が広がっています。


「苦しいです、やっぱりね。
私たちにとって、主力商品ですからね。
とれる、とれないは本当に大変ですよ。」



「イクラとかスジコのほうに大きく響いてくるので、量は、たくさんとれてもらわないと困る。」




海の変化に、どう対応するか。
これまでの漁業を見直す動きも出ています。
釧路沖のサケ漁は、稚魚を大量に放流し、漁獲量を保ってきました。
しかし、海水温が上昇し、サケが戻ってこない中、放流の時期や場所の大幅な変更をすべきか、検討が始まっています。

水産総合研究センター さけます資源部 永沢亨部長
「悪い影響というのを、いかに緩和していくことができるか、技術的に探っていくというのが大事になる。
かなり厳しい時代になっている。」

海水温の上昇 日本への影響は

●漁業に見られる異変 どう考える?

気温にしてみれば、そんなに大きな変化じゃないように思われる方もあるかもしれませんけれども、やっぱり気候が変化していくということは、今日の漁業の例だけじゃなくてね、農業でもそうですし、あるいは洪水が増えれば、堤防の高さの設計も変えなきゃいけませんので、社会のいろんな所ところで、いろんな影響を与えますし、この地球の温暖化、気候の変化というのは、もうかなり、これから先、本格化すること、それから、ある程度の温暖化は避けられないこと、これはもう間違いありませんので、やはりそれに対して適応していく、対処していくということが大事だと思いますね。

●長期的に見て予想される、日本の気候の大きな変化は?

今日の話でもありましたように、日本は、いろんなところから、いろんな影響を受ける場所なんですね、大陸と海の間にあって。
ですから、今でも長期予報は難しいんですけれども、これが気候が変化して、どんなふうになるのか、これは一つ一つを解明していくのはかなり難しいとは思うんですが、確かなことは、地球温暖化、気温が上がる、これは誰もが分かると思いますが、同時に、今年起こったような雨が強い、集中豪雨が起こる、あるいはゲリラ豪雨が増える、こういうことも予想されます。
日本は雨の多い国ですから、雨の多い季節を持ってますから、これに注意しなきゃいけない。
さらに、海水温の変化が漁業を変えるというような具合に、いろいろ対処をしなければいけないところがあると思いますね。

●地球のエネルギーバランスが大きく崩れているとは?

地球というのは、住みやすいいい国なんですけれども、それは太陽光を、エネルギーを吸収して、その分、地球の温度に応じて、赤外線を宇宙に放出して、それでプラスとマイナスが、ちょうどバランスした状態で、いい気候になっている。
ところが、人間が化石燃料を燃やして、二酸化炭素を増やしたばかりに、そのバランスが、ハンセン先生は大きく崩れていると言いましたが、実は数値的に言いますと、太陽光250ワット来たのに対して、4ワットぐらい、僅かにずれてるだけなんだけれども、それで、こういう気候変化、温暖化が起きちゃうわけですね。
そして、地球はこのバランスをなんとかゼロに戻して、温度を一定に保とうとします。
ところが、人間はたくさんの化石燃料を出し続けているので、それがなかなかバランスが取れなくて、温暖化がどんどん進んでいるというのが、今の状態ですね。
(地球がバランスを取ろうとしているというのは、例えば、海水温で熱を吸収しようとしているといったこと?)
そうして、温度を上げて、バランスをゼロにして。
ですから、CO2出しちゃいますと、温度は上がったところで、バランスを取っちゃうわけなんですね。
だけど、今はその途中にあって、止まる見込みがないという状態ですね。

●止まらない気温上昇 人間はどこまで適応できる?

世界のいろんな研究者は、できれば、産業革命以前に比べて、2度の上昇でとどめたいという目標を立てて、いろいろ研究してますが、かなり難しいかもしれませんね。
(2010年の猛暑のときは、平均どれぐらい上がったんですか?)
1.6度ですね。
それが地球全体で2度というのは、大変、大きなことだと思います。

あわせて読みたい

PVランキング

注目のトピックス