過去最悪のペースで流行が続く風疹。妊娠初期の女性がかかると赤ちゃんに障害が出るおそれがあり、今回の流行ですでに10人の赤ちゃんが「先天性風疹症候群」と診断されている。風疹は予防接種で防げるのに、なぜ患者が大量に発生しているのか。その背景として、国の対策の不備が浮かび上がっている。患者のほとんどは20代から40代。副反応が問題になったことを受けて、国は平成6年の法改正で、義務から勧奨、学校での集団接種から医療機関での個別接種に転換した。個人の意志に任せたことでこの世代の接種率が大きく低下。専門家は9年前に厚生労働省に警鐘を鳴らす「緊急提言」を行ったが、この時も根本的な対策は行われず、問題は放置された。一方、アメリカは、接種しそびれても18歳までは公費でワクチン接種が受けられる態勢を整え、専門家による方針のもと官民あげて接種率向上の取り組みを徹底。その結果、2004年に「排除宣言」を出すに至った。防げる病気を予防し、安心して暮らせる社会を築くためには何が必要なのか、風疹を通して感染症対策のあり方を考える。
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