「このままでは10億円以上の赤字を飲み込むしかない。」建築用の鉄材を扱う業者が嘆く。今年に入り、鉄鋼の原料価格は去年の2倍以上に急騰。デフレも追い打ちをかけ、モノ作りの現場から悲鳴が上がっている。さらに、鉄の価格を決める国際ルールが根底から覆り、混乱が広がっている。これまで鉄の原料、鉄鉱石の価格は日本の鉄鋼メーカーと海外の大手資源会社の間の“話合い”で“年に1度”決められてきた。基本素材の安定供給という名目のもと20年以上続けられてきた伝統だ。しかし、今年突然、大手資源会社の一方的な通告で「市場価格」が持ち込まれ、その伝統が崩れた。裏側にあるのは、大手3社が世界の鉄鉱石の7割を握る極端な寡占化と、中国など新興国の急速な台頭による世界の構造の大転換である。資源がないモノ作りの国・日本に迫る大きな波の最前線を追う。
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