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福島 三春町 昔ながらの姿残す三春人形

冬は人形づくりの最盛期 ココに福ありfMAP
  • 2024年02月22日

江戸時代の後期から発展したとされる三春人形。昔ながらの姿を残そうと三春町で取り組む女性人形作家を取材しました。(キャスター・渡邉由紀子)

躍動感ある姿あらわす三春人形

愛きょうのある顔に生き生きとした動き、紙を貼り合わせてつくる張り子の人形「三春人形」です。江戸時代から地域に伝わる郷土玩具で、縁起物や歌舞伎などをモチーフに細かな着物の袖の動きを表現するなど、繊細さが特徴です。

いまも三春町で三春人形をつくり続ける人がいます。小沢宙さんです。町内ではただひとりの三春人形の職人です。

三春人形づくりは冬が最盛期。冬の時期はひな人形を主につくっていて、桃の節句に向けて全国各地から注文が多く入っています。木型に和紙を貼る下地づくりから絵付けまで、ひとつひとつすべて小沢さんのもとで行われています。

(小沢宙さん)
顔で印象が決まってしまうので、顔は一番気を遣いますね。人形にもよりますが穏やかに、でもニッコリもしすぎず品がよくなるように。

家族の思いを受け継ぐ人形づくり

子どもから大人まで幅広い年代が楽しむことができる三春人形ですが、明治時代頃にブリキやビニールを素材としたおもちゃの登場などで、一度途絶えてしまったという歴史があります。

その復興に携わったひとりが、小沢さんの祖父・太郎さんです。地域に残された木型や人形を探して研究し試行錯誤を重ねながら、1950年代に地域に三春人形を復活させました。その後、人形づくりは小沢さんの祖母や父が受け継いでいきました。家族が人形づくりをする姿を見ていた小沢さん。次第に自分もつくってみたいと思うようになりました。

(小沢宙さん)
高校生で本格的に進路のことを考えるようになってきたときに、一番最初に自分の選択肢として思い浮かんだのが三春人形でした。父は「なかなか食べていくのも大変だし大丈夫か?」と心配していましたが、私から「人形づくりをやらせてください」とお願いしました。

小沢さんが人形づくりの参考にしているものが、祖父の太郎さんが1964年に出版した三春人形に関する本です。地域に残された貴重な三春人形の写真や太郎さんが調べた昔ながらの三春人形の製造工程、歴史をまとめたものです。小沢さんは、祖父が残した本を教科書にして、江戸時代の人形の写真を資料として見たり、顔を描くときの参考にしています。

さらに、昔ながらのつくり方にもこだわっています。たとえば色づけに使う染料は、青色を出すための藍や黄色を出すためのクチナシの実など自然のものを使います。自分の納得する色をつくるまでに時間と手間がかかりますが、昔ながらの優しい色合いの三春人形に仕上がります。

(小沢宙さん)
比較的江戸時代の材料や風合いに近いもの、祖父が使っていたものをそのまま引き継いでいます。できるだけそのままやっていければなあと思っています。

この先も愛される三春人形に

小沢さんは、三春人形を大切に思う人との交流を人形づくりの活力にしています。訪れたのは、町内の渡邉日向さんの自宅です。渡邉さんは、町の歴史民俗資料館の職員で、小沢さんがつくる三春人形のファンです。

飾られているのは、小沢さんが手がけたひな人形です。渡邉さんが妻へのプレゼントとして製作を依頼したもので、5年前から数体ずつ購入して、ことしようやく全て並べることができました。

(渡邉日向さん)
いろんな表情が見えますし、自分の気分によっても見え方が違ったりする人形だと思うんです。素朴ですがすごく上品で優雅な感じがして、そして精神的にしんどいときでもこれを見ると明るく華やかになりますよ。

(小沢宙さん)
籠もってひとりでつくっているものですから、こうやって買っていただいたお客様と話すことや飾られたところを見ることが唯一のつながりです。ちゃんと大事にしてもらっているんだなと実感が湧いてうれしいです。

昔ながらの三春人形を残すことで家族の思いを受け継ごうとしている小沢さんは、この先何十年も大切にしてもらえる人形をつくりたいと意気込みます。

(小沢宙さん)
地元でもご存じない方もいらっしゃるので知っていただけるといいなと思います。自分で満足のいくような技術を身につけたいですし、私が出来うる限りは向き合って作っていきたいです。

あとがき
小沢さんはより多くの人に三春人形に親しんでもらいたいと、地域のイベントへの出店や学校での講話を行うほか、手にとりやすい小さなサイズの人形も新たに手がけています。小沢さんがつくる三春人形の色合いやかわいらしさが、地域の方にも愛されているのだと感じました。(キャスター・渡邉由紀子)

  • 渡邉由紀子

    NHK福島放送局

    渡邉由紀子

    福島県郡山市出身。
    「ココに福ありfMAP」などのリポートを担当。美術館や博物館で伝統工芸品を鑑賞することが好きです。

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