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大学生が見た福島第一原発

  • 2024年01月31日

去年8月、東京電力福島第一原子力発電所で始まった処理水の放出。これをきっかけに原発事故やその後の廃炉作業への関心が高まったという大学生がいます。先日、彼らは初めて原発を視察。現場で何を感じたのか、取材しました。

遠い存在だった“原発事故”

福島大学2年、茨城県出身の石井咲妃 (いしい・さき)さんは、小学1年生の時に東日本大震災を経験。茨城県の沿岸部は津波で大きな被害を受けましたが、隣の福島で起きた原発事故は、どこか遠い出来事のように感じていました。

石井さん

友達同士で原発事故の話は普段あんまりしないですね。福島に来てからも、授業の後に少し話題にする程度で、ほかには全然話すことがありません。

そんな石井さんが原発事故に興味を持つようになったきっかけは、去年夏にアルバイト先の飲食店に相次いでかかってきた迷惑電話でした。処理水の放出直後、中国からとみられる国際電話による嫌がらせが全国で相次ぎました。放出への意見を一方的にまくしたてたり、怒鳴ったりする電話が自分の身近なところにもかかってきたことに衝撃を受けたのです。

石井さん

電話に出たときは「怖い」と思いました。こんなところにも電話がかかってくるんだって。それと同時に、なぜこんなことが起きているのか、もっと知らなければいけないと思うようになりました。

処理水の放出をきっかけにしたこの騒ぎで、福島第一原発で何が起きているのかを知りたいと思うようになった石井さん。12月下旬、同じように関心を持っていた学生たちと一緒に、原発の視察を東京電力に申し込みました。今回、NHKは彼らに同行しました。

初めて入った福島第一原発

さまざまなセキュリティーチェックを経て、いよいよ原発の構内へ。その前に、視察用の装備に着替えます。被ばく量を量る「線量計」も渡されました。

線量計を身につける石井さん
石井さん

想像していたよりも軽装だと思いました。もっと全身を覆う装備に着替えるのかなと思っていましたが、こんな薄めのベストでいいんですね。

東京電力の担当者にまず案内されたのは、処理水を保管しているタンクを見渡せる場所。

敷地を埋め尽くすタンクはおよそ1000基。処理水は放射性物質の濃度を国の基準を大幅に下回る値まで海水で薄めた上で、放出されています。

処理水の放出は保管タンクを減らし、ほかの廃炉作業を進める上で必要な敷地を確保するために行っていると説明を受けました。

タンクはどうなる?

石井さん、放出後のタンクついて担当者に質問しました。

担当者

当面の間は発電所の中で適切に保管していくことになると思います。今後それをどうしていくかっていうのは、次の課題ということでしっかり考えていかなきゃいけない。

30年程度かかるとされる処理水の海洋放出。石井さんは、放出が始まった後も続く廃炉の果てしなさを目の当たりにしていました。

石井さん

私も私の周りも、放出した後も続く作業のスケールは知らない部分だったので、放出だけに注目するんじゃなくて、その期間とかその後のタンクの処分などをどうするかも知ることができてよかったです。

廃炉が“人の手”で

次に訪れたのは、事故を起こした原子炉建屋が見渡せる高台。いまは廃炉作業の中でも最難関とされている 「燃料デブリ」 の取り出しに向けた準備が進められています。 

画面左は原子炉建屋

原子炉建屋の周辺では、ヘルメットに防護、防護マスクを身につけた作業員たちの姿が。 

「1つ1つの作業が、人の手で行われている」

これまでどこか遠い場所で行われている気がしていた廃炉。それが“人の手”で進められていることを実感していました。

石井さん

廃炉は機械がやっていくイメージがありました。それが人の力で行われているんだということをすごく感じました。

これからも続く福島第一原発の廃炉。若い世代が関心を持ち続けることが大切だと石井さんは考えています。 

石井さん

これから何十年も処理水放出を続けていくなかで、その計画が実際にどんなものであるのか、今後はどういう計画で進めていくのか?それに地域住民の方がどうかかわっていくのか、をそれぞれの人が知っていくことが重要だと思いました。

取材を通して感じたこと

須藤

石井さんは「実際に現場に行ってみて想像以上の発見があった」と話していました。また、ほかの学生の中には 「廃炉は遠い話だと思っていたが本当に計画通りに進むかどうか注目しないといけない」などの声もありました。震災と原発事故の記憶がない、あるいは経験していない世代が増えるなか、どう関心を高めていくかが大切だと感じました。

  • 須藤健吾

    NHK福島放送局アナウンサー

    須藤健吾

    茨城県東海村出身。主にリポーターを担当。4歳の時にJCO臨界事故を、15歳の時に東日本大震災を経験。原子力分野への関心が高く、県内各地で取材を続けている。

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