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【福島・古殿町】栗原はるみさん“山あいの郷土料理”に触れて

おいしくて、たのしくて 栗原はるみの福島さんぽ
  • 2023年09月15日

料理家・栗原はるみさんが旅人となって、
福島県内各地を訪ねオリジナルレシピを紹介する。
「おいしくて、たのしくて 栗原はるみの福島さんぽ」
 3回目となる今回の舞台は中通り・古殿町です。

阿武隈山系の山あいにある 古殿町

栗原さんが今回やってきたのは、阿武隈の山々に囲まれた古殿町。
まずは地域の特産品を知りたいと、道の駅を訪ねました。

店内に入ると、旬の野菜や地酒などが並ぶ中。
ユニークな名前のお惣菜が並ぶコーナーが・・・。
聞くと、町に古くから伝わる郷土料理でした。

懐かしさと珍しさから、
町内外のお客さんに人気なんだとか。

町外のお客さんにとっては聞き慣れない郷土料理も
子どもの おやつ として作られてきた「揚げまんま」

お店の人から、町で有名な「郷土料理」の作り手がいると教えてもらいました。

道の駅駅長の遠藤栄作さん

郷土料理の達人を訪ねて

こちらが「郷土料理」の達人・小澤啓子さんです。

小澤さんの家は代々続く米農家。
収穫したお米をさらに活用しようと、
15年ほど前から郷土料理を作り始めたといいます。

そんな小澤さんが自慢の一品を紹介してくれました。
出荷できないお米を無駄にしないよう、
先人たちが生み出した保存食「しみ餅」です。

昔は貴重だったお餅。
その食感を再現するために、
この土地ならではの知恵が込められています。

何だろう。エゴマ?

小澤さん

しみ餅ではこの辺では必ず入れるという
「オヤマボクチ」っていうものです

オヤマボクチ??

実際に見せてくれると小澤さんが連れて行ってくれたのは自宅の裏山。

 その正体は・・・。

オヤマボクチ

阿武隈の山々に自生する野草でした。
繊維が豊富なため乾燥させて、しみ餅に練り込むことで
ふっくらした食感を出せるという先人の知恵でした。

乾燥させたオヤマボクチ
しみ餅は水で戻して、焼くと ふっくらモチモチに!
小澤さん

この野草を誰が使い始めたかはわからないんです。
郷土食って、その土地にあるからできるものですよね。
ないものをわざわざ買ってきては作らないんです。


栗原さん 生活の知恵がつまった郷土料理に興味津々

郷土料理の魅力をもっと知りたいと、
栗原さんは小澤さんと一緒に料理をすることに。
小澤さんが教えてくれたのは、この地域では「じゅうねん」と呼ばれるエゴマを使った料理です。

「じゅうねん」と呼ばれる理由は・・・
10年も長期間保存ができるという説や
栄養豊富で食べると10年長生きできるからだという説があるのだとか。
小澤さんは、昔からゴマの代わりにエゴマをいろんな料理に活用する食文化があるといいます。

煎ったエゴマをすりつぶし、
砂糖とみそを入れて水で濃さを調節。
シソとキュウリを薬味に入れれば、
「じゅうねん冷やダレ」の完成です。

冷やしうどんで食べるのが夏の定番なんだとか。
それでは試食の時間・・・と思いきや。

鍋を取り出す小澤さん

小澤さんの料理の手はとまりません。
作り出したのは小さなジャガイモを油で揚げて
みそに絡める「みそかんぷら」

「小芋も無駄にしないように」と親しまれてきた郷土料理
シソをトッピングするのがポイント

栗原さんも、小澤さんの手際のよさにビックリ。
あっという間に古殿町の郷土料理のフルコースができあがりました。

古殿町の郷土料理のフルコース

小澤さんのご家族と一緒に郷土料理をいただきました。

じゅうねん冷やダレのうどんや
オヤマボクチを練り込んだ小澤さん自慢の一品「しみ餅」のお味は??

焼いたしみ餅に、砂糖じょうゆをかけると絶品!

(冷やダレは)ごまとちょっと違う風味がありますね。
さっぱりしていて、おいしいです。

そして、しみ餅もとてもおいしい!
本当のお餅みたいです。
お米とオヤマボクチを混ぜる配合がとてもいいんじゃないかと思います。

郷土料理って、すばらしいですね。
ひとつひとつ手作りだから本当においしいし、なにより一緒に料理ができて楽しかったです。

すると小澤さん家族からサプライズが。
栗原さんが大好きな福島の日本酒です。

このお酒は、小澤さんが栽培したお米だけを使って地元の酒蔵が醸造したものです。
長男・嘉則さんは冬場は蔵人として酒造りまで関わっています。

長男・
嘉則さん

古殿という場所でのコラボです。
醸造した酒蔵も、地酒を地元の人に愛してもらいたいっていう
気持ちが強いんです。


郷土料理の原点に触れて

料理からお酒まで。地域の食に魅了された栗原さん。
翌日、郷土料理のことをもっと知りたいと、
ある人に会いにいきました。

それは、小澤さんに郷土料理を教えてくれた“師匠”です。

小澤さんの師匠・水野ウメ子さん

ご自宅におじゃますると、ウメ子さんが手料理でもてなしてくれました。

巻き寿司やきゅうりの漬物など・・・
使った食材のほとんどが、ウメ子さんが自分の畑で栽培したものです。

ウメ子さんの手料理の中で、
栗原さんが気になったのは、インゲンの つくだ煮。
煮つめていても、食材本来の食感が残っていることに驚きです。

夏にたくさんできるインゲンを
長期保存できるようにと調理した「つくだ煮」
水野さん

インゲンは生のままだと柔らかい。
すぐ煮えてしまうから、干してからゆでると、食感がしっかりする。

食感を残したまま つくだ煮を作る調理方法。
こうした各家庭に残されている料理の知恵を
小澤さんは聞き取りながら郷土の料理として
いまに伝えています。

「ちゃんとしたレシピがあるわけではなく、作り方はみんなそれぞれ」と話すウメ子さんの姿に胸が熱くなった栗原さん。

何が正解っていうものじゃない。
それぞれが家庭の味で、いいのだと思います。だから郷土料理って、いいんですよね。


地元食材を使ったオリジナルレシピを紹介

旅のお礼にオリジナルレシピをと、
栗原さんが選んだ地元の食材は・・・

こんにゃくです。
古殿町では手作りするほど身近な食材なんだとか。
ただ一方で「使い方が限られる」という悩みも・・・
この地域では、刺身こんにゃくにするか、
鍋の具材として煮込むか、が主な食べ方だと言います。

昔は こんにゃくいも を栽培する家庭が
古殿町には たくさんあったといいます

こんにゃくを主役にした料理がないので、ほしいなと思っています。

お悩みに応えるべく栗原さんが考えたレシピ。
まずは、こんにゃくを手でちぎり始めました。

「こんなにちぎってどうするんですか?」と小澤さん

ここで種明かし!
栗原さんはヘルシーなこんにゃくを鶏肉のそぼろのように変身させようというのです。

ゆでたあと、さらに鍋でから煎り。
しょうゆ、砂糖、みりんで味を調えながら
煮込めばできあがりです。
ごはんにかけたり、チャーハンに入れたりいろいろな料理に活用できる「常備菜」としても使えるのだとか。

こんにゃくそぼろ

今回はさらにアレンジ。
バターで炒めたトウモロコシと
刻んだショウガを入れれれば・・・
家族で楽しめる混ぜごはんのできあがり!

↑詳しいレシピはこちらから↑

「あるもの」で工夫して食を豊かにしていく
郷土料理の精神にも通じるレシピでした。


気になるそのお味は・・・?

「いままでにない食感と風味があっておいしい」と好評。
特に刻んだショウガとの相性が抜群だったようです。

米農家の小澤さん一家。
こんにゃくとご飯を合わせて食べるのは初めてだったようです。


郷土料理の奥深さに触れた栗原さんの古殿町の旅でした。

郷土料理もいろんなものがあっていいんだなと思いました。
料理家として、これがおいしいんだと自分のなかで、決めていたものがあったけれど、それぞれの家庭の味があって、似ているんだけどちょっとずつ違っていて、でもそれぞれにおいしさがあると知りました。
すごく勉強になりました。

 

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