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【福島・双葉町】和楽器界の新風!人気箏奏者“コトメン”

箏で伝える震災と生きる希望
  • 2024年01月24日

和楽器・箏(こと)の演奏者・大川義秋さん。
箏男と書いて「コトメン」と呼ばれ、斬新な演奏で国内外で活躍しています。東日本大震災と原発事故により、避難した埼玉県を拠点に活動する大川さん。箏を通して若い世代に震災の経験と生きる希望を伝え続けています。

福島 双葉町が生んだ人気箏奏者! 

和楽器の全国コンクールで日本一に!
写真:賢順記念全国箏曲コンクール
コンサートは大盛況!

 大川さんは和楽器の全国コンクールで2度の日本一に輝いた実力者! 華やかな衣装で古典曲だけでなく流行のポップスやオリジナル曲も演奏。箏の敷居を下げ 聴いても見ても楽しい演奏を幅広い世代へ届けています。 

演奏動画 「青のすみか」(キタニタツヤ)

 演奏動画「初心LOVE」(なにわ男子)

震災で出会った箏

双葉中学校の入学式

福島第一原発が立地する福島県双葉町で生まれ育った大川さん。高校入学を控えた2011年3月、東日本大震災と原発事故が起こりました。双葉町は全町避難を余儀なくされ、大川さんは埼玉県に避難しました。その避難先で高校に進学し、意外な理由から箏と出会います。

大川さん

「進学した高校は部活に入る決まりがありました。福島から来たというだけで 放射能のいじめや差別が怖くて誰とも話したくなかった。なので部員が0人の部活を探したら、1つだけあって。それがお箏がある邦楽部でした。」

それまでなじみがなかった箏でしたが、触れてみるとその優しい音色に心が癒されました。勇気を出して部員を勧誘するなどして廃部寸前の邦楽部を再興。箏を通じて次第に周囲に心を開けるようになりました。

箏の音色に心を救われた
大川さん

「音色が心を癒してくれて。背中を前に押してくれて。このお箏ともに生きていきたいと思ったんです。」

心を救ってくれた箏の魅力を広めたいと大川さんは18歳のときストリートライブに挑戦!珍しい試みでもあり、誰か立ち止まるだろうと思っていたが、当初はみんな素通りでした。どうしたら興味を持ってもらえるか。まずは「見てもらう工夫」が大事だと考えた大川さんは衣装を制作することに。生地の調達からデザイン、裁縫まですべて自前。その斬新な衣装での演奏に注目が集まりました。

初のストリートライブ 18歳・東京
衣装はデザインから裁縫まで自前
埼玉 大宮駅前で

衣装で大切にしているのは、和を際立たせること。着物のえりや帯をイメージし、着物の生地を使用しています。
伝統ある和楽器の箏をただまったく別な洋服で演奏するのではない。和と洋を融合させた衣装で、箏に関心がない人でも「楽しそう!やってみたい!」と思ってもらい、箏を未来に残すきっかけにしたいと考えています。

大川さん

ストリートライブや衣装など新しいスタイルで、箏を知らない人にも届けるというのを大切にしています。

箏で伝える震災と生きる希望

埼玉県立庄和高等学校で
福島県立磐城桜が丘高等学校で

大川さんが力を入れているのは学校での講演。震災経験とともに生きる希望を見つける大切さを伝えています。講演で必ず演奏する特別な曲が「時の風に乗って」。自身の厳しい被災経験をもとに、辛い状況でも生きる希望をもって前を向いてほしいという思いを込めた曲です。 

「時の風に乗って」を作曲したのは2020年3月。双葉町に出されていた避難指示が、駅の周辺など一部で解除され、9年ぶりにふるさとを訪れたことがきっかけでした。地震で崩れた建物が残り、時計も発災の時刻で止まっていた。大川さんは町を歩きながらある風を感じました。その風からは「悲しい、苦しみもがいている感情」を感じました。

2020年3月 9年ぶりにふるさと双葉町へ

復興のために何ができるのか。大川さんはふるさとで感じた思いを込めた曲を作りました。工夫したのは自身の感情を色で表現すること。被災した苦しみや悲しみは青。復興へ前を向く思いは黄色やオレンジで表現しました。曲ではあるメロディーが繰り返されています。苦しい中でも前を向こうともがく背中を優しく押し、止まった時を進める優しい追い風をイメージしています。

大川さん

「同じメロディーを繰り返す部分があります。そこには、苦しんでいるけど誰かに助けてと言えず前に進めない気持ちがあって、それにお互い気づいた瞬間手を取り合う思いを込めています。苦しむ背中を押す優しい追い風になりたい、心の復興につなげたいと思って作りました。僕の代名詞ともいえる大切な曲です。

2020年3月 「時の風に乗って」を作曲
音符に色をつけた楽譜

演奏動画「時の風に乗って」ノーカット版
(福島県立磐城桜が丘高等学校で演奏)

大川さん

「震災当時は1日1日を生きることに必死で夢も希望もなかった。ですが多くの方からの支えがあって生きているありがたみも、前を向く大切さも学びました。震災を知らない世代が増えてくるからこそ、お箏を通じて命の大切さを伝える活動をこれからも続けていきたいです。」

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