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自分らしく生きていける福島に 踏み出した性的マイノリティー

  • 2023年05月15日

福島県で、性的マイノリティーが暮らしやすい社会にしたいと活動している人がいます。福島県は、同性カップルを結婚に相当する関係と認める「パートナーシップ制度」を導入した自治体がまだ1つもないなど、性的マイノリティーを受け入れる社会の仕組みや土壌の整備がまだ進んでいません。そんな福島県で、みずからも当事者として悩みや不安を抱えながら、仲間との結びつきや社会との関係を作ろうと模索する姿を取材しました。

ふくしまレインボーマーチ開催の廣瀬さん

去年10月に福島市で開催された「ふくしまレインボーマーチ」。性の多様性への理解を訴えて、性的マイノリティーや支援者たちがまちなかをパレードしました。「自分らしく生きるってとてもすばらしいことじゃないですか」。そう語りかけたのは、パレードの実行委員長を務めた廣瀬柚香子さんです。戸籍上は女性。でも、自分のことを男性とも女性とも思えない「Xジェンダー」だと表現します。

2022年 ふくしまレインボーマーチ

生きづらさ感じた10代

矢吹町出身の廣瀬さん。幼いころから生きづらさを感じていたと言います。女の子として過ごすことに強い嫌悪感があったのです。

高校生の時には、女性を好きになったことを親しい友人に打ち明けたところ、「気持ち悪い」「吐き気がする」などと言われたといいます。自らを女性とも男性とも思えない自分は一体何者なのか。戸惑いや不安に押しつぶされそうになるなか、家族からも理解が得られず、大学進学を機に福島を離れることを決めました。

寂しいとか全く思わず、早く行きたいって思って、部屋の中の物を全部捨てて空っぽの状態にして出てきました。もう一生帰って来ないつもりでいました。

当事者との交流で気持ちに変化が

東京に進学した廣瀬さん。そこで、大きな変化が生まれました。性的マイノリティーの交流イベントで、多様な人たちが集まり、お互いの違いを自然に受け入れ、認めあう姿に心を打たれたのです。廣瀬さんは、自分が自分らしく生きていいことを知りました。そして、ふるさと福島で同じ光景が見たいと思ったと言います。

地元でも性的マイノリティーの交流の場を作りたい。体調を崩して、6年前に実家に戻った廣瀬さん。家族の理解を少しずつ得ながら始めたのが、県内に住む当事者などが集まる「郡山にじいろサークル」の活動です。悩みを相談しあったり、花見などをして交流したりしています。こうした活動で、孤独から抜け出し、安心感や前向きな気持ちを持てたという声も聞かれました。

ふるさと・福島を変えようと踏み出した一歩

こうした活動の結果、実現できたのが、去年10月のパレードです。今度は性的マイノリティーの存在をこの福島でも知ってもらい、県民のまなざしを変えたいと、さらに一歩踏み出したのです。この日は、県内外から当事者や支援者およそ100人が参加しました。当初は、見た人に嫌悪感を持たれないか不安でいっぱいだったと言いますが、目にしたのは、沿道で応えてくれた大勢の人たちの姿でした。

みんなで一歩を踏み出したと思えるマーチでした。福島はもともと生きづらいと思っていた場所でしたが、変えていけるんじゃないかと思えました。

2022年 ふくしまレインボーマーチ

福島に希望を持てたという廣瀬さん。ことし4月には、国内最大規模の性的マイノリティーらのイベント、「東京レインボープライド」に、仲間たちとともに参加しました。掲げたのは、福島県をデザインした大きな旗。かつて疎外感を感じた福島が変わりつつあることを全国の仲間や社会にアピールしたのです。

福島の人間としてここを歩いているなんて想像もつかなかったことをしているなと、誇らしいです。きょう歩けなかった人たちがきっといたと思うので、そういう人にとっても、もっといい世の中になっていけばいいなと思って、福島で活動を続けていきたいです。

2023年 レインボープライド
  • 本田歩

    NHK福島放送局 記者

    本田歩

    2021年入局。福島市政とスポーツ取材を担当。性的マイノリティーが暮らしやすい社会を作るため、これからも取材をしていきたいです。

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