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福島県でもクマ出没注意!専門家が対策を分かりやすく解説

NHK福島の記者が聞く!
  • 2023年05月10日

毎年のように県内各地で確認されているクマの出没。
山菜とりなどの際に遭遇した人がケガをするという被害もあとを絶たず、ことしも5月2日に須賀川市で70代の男性が頭や顔などにケガをしたほか、3日には会津若松市の70代の女性も軽いケガをしています。
こうした被害にあわないためにはどうしたらよいのか、そしてことしの注意点などについて、クマなどの獣害対策が専門の福島大学 食農学類の望月翔太・准教授に聞きました。

被害にあわないためのポイントは?

佐藤翔記者

今月に入って、山菜とりで山に入った方がクマに遭遇しケガをする被害が2件立て続けに発生しました。そうした被害にあわないためにはどうしたら良いですか?

望月翔太(准教授・福島大学食農学類)

特に今回の2件については、3つの共通点がありますよね。
・朝早くであること
・1人であること
・山菜とりに行っていること

クマの活動は、早朝と夕方に活発になることが分かっています。夏の暑い時期には、人間にとっても朝早くや日が沈み始めてからの涼しい時期に外出したくなりますが、クマと遭遇するリスクも高いので、できるだけ山や森に入るのは避けたほうが良いですね。

また、1人で出歩くことも危険です。特に山菜とりは、他の人には秘密にしたい自分だけが知っている群生地がある人もいるそうで、1人きりで歩き回ってしまうようです。しかし、2人で話しながら歩くだけでもクマに遭遇するリスクはぐっと減りますし、事故を避けるためにも複数人で行動して欲しいですね。

それでも、どうしても1人で山に入らなければならないという場合には、必ずクマよけの鈴か、つけっぱなしのラジオを携帯するようにしてください。鈴については、動かずに作業していると音が鳴らずに、クマが近づいてきてしまう恐れがあります。こまめにチリンチリンと音を鳴らしながら作業すると良いでしょう。
 

佐藤翔記者

それでも万が一出会ってしまったら、どのように行動すれば良いでしょうか?

望月翔太(准教授・福島大学食農学類)

遭遇してパニックになり、走って逃げようとすると、追いかけられてしまう可能性があります。

近い距離で出会ってしまったら、とにかく頭をひっかかれないようにすることがポイントです。しゃがんで、腕で頭や首を覆うことで、ひっかかれても背中や肩に当たる可能性が高まりますし、体を縮めていることで空振りする可能性もあります。

クマはしつこく人を襲う習性の動物ではないので、ひとかきしたら、怖がって逃げていくと思います。最初のひとかきでケガをしてしまうリスクはありますが、致命傷を避けて命を守る行動をとってほしいと思います。

佐藤翔記者

また、今シーズンについては、例年より暖かくなる日が早く、植物の生育などにも影響が出ています。クマにはどういった影響が考えられますでしょうか?

望月翔太(准教授・福島大学食農学類)

それほど大きな影響は無いと思います。
ただし、植物の葉っぱのつきや、花の開花が早まっているということは、クマの食べ物が早い時期からできているということです。例えばこれまでは5月になってから食べられるようになっていた食べ物の量や種類を、4月の中旬くらいに食べることができているという可能性ですね。

これから6月には繁殖期が控えるわけですが、メスを探し回るオスにとっては、食べ物がふんだんにあればあるほど、繁殖行動に専念できるようになります。そうすると、広い範囲を動き回るという可能性が出てきますし、そもそもの繁殖期が始まる時期も1週間から2週間早まって、5月下旬に前倒しになることも考えられると思います。

佐藤翔記者

ほかにこれからの繁殖期の行動で、気になることはありますか?

望月翔太(准教授・福島大学食農学類)

去年はクマの好物のブナやミズナラの実が豊作だったんですね。すると、栄養もしっかり取れていて、多くのメスが子どもをうめたと考えることができます。
冬眠から覚めたばかりのこの春は、母グマはそうした子どもの世話が忙しく、森の中の一部にこもり潜んで生活しています。それだけなら良いのですが、繁殖期のオスからすればメスを探すのが大変になり、いつも以上に広い範囲を動き回ると思われます。そうなってくると、交尾を求めて気性が荒くなっているオスのクマが、市街地に出てきてしまうという可能性が強まるとも考えられます。

佐藤翔記者

最後に改めて、クマへの注意点や考えておくべきことはありますか?

望月翔太(准教授・福島大学食農学類)

クマの頭数や生息範囲は間違いなく増えています。個体によっては、会津地方から新潟県まで移動するものもいるなど、動き回ってもいます。こうした状況は来年も、3年後も、5年後も動きとしては変わらないでしょう。
私たち人間と、クマなどの野生動物との距離が近くなっていることを分かった上で、とにかく意識して欲しいのはケガをしないことです。動物も、人にケガをさせたいと思って、人里に入ってきているわけではありません。たまたま鉢合わせたときに、人間の方が力関係で弱くてケガをしてしまっているわけです。
早朝は出歩かない山菜とりは2~3人で行動、そんなに難しくないと思うので、そうしたことを徹底できれば、人身被害というワードは減ると思います。

  • 佐藤翔

    NHK福島・コンテンツセンター

    佐藤翔

    生まれも育ちも福島市で、現在は会津若松報道室勤務。まもなく2歳になる娘が好きな動物は、カバ・ワニ・チーター。

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