【解説】東日本大震災・原発事故「避難指示地域の居住状況」
- 2023年02月22日
避難指示出された地域の居住率は?
東京電力福島第一原子力発電所の事故によって避難指示が出された12の自治体のうち、独自の避難指示を出した広野町を除く11の市町村にNHKが取材したところ、2月1日現在、避難指示が解除された地域に住民登録している人は5万2275人、実際に住んでいる人は1万6328人でした。
住民登録している人の数に対する居住者数の割合(居住率)を自治体別に見ると、帰還困難区域が設定されなかった4市町村は比較的高くなっています。
一方、帰還困難区域が設定された7市町村は、人の生活圏が帰還困難区域とならなかった南相馬市を除き高くても3割台前半で、浪江町と大熊町は15%程度、双葉町は1%台と、いずれも大幅に低くなっています。
帰還困難区域だった場所への居住
帰還困難区域が設定された7市町村のうち、葛尾村、大熊町、双葉町では、先行して除染やインフラ整備などを行ってきた「特定復興再生拠点区域」の避難指示が去年解除され、「将来にわたり居住を制限する」とされた場所にようやく人々の営みが戻り始めました。
去年6月12日に避難指示が解除された葛尾村の野行地区には、2月1日現在、1世帯2人が暮らしています。
6月末に解除された大熊町のかつての中心部では、2月1日現在、27世帯36人が暮らしていています。このうち、避難先から帰還した人は17人、新たに移り住んだ人は19人だということです。
去年8月に避難指示が出された12の自治体の中で最後に帰還が始まった双葉町には、1月末現在で、およそ60人が暮らしています。このうち、3分の1が帰還した人、3分の2が新たに移り住んだ人だと見られています。4月からは、町営住宅に新たに十数人が入居する見込みだということです。
住環境整備も徐々に
1月中旬には、かつて大熊町の中心部にあった理容室が、原発事故の発生から11年10か月ぶりに避難先から戻り、元の場所で営業を始めました。大熊町商工会によりますと、加盟しているおよそ260の事業所のうち、かつての町の中心部で再び営業を始めたのはこの店が初めてです。
2月1日には、双葉町で住民のための医療環境を整えようと、JR双葉駅と町営住宅の近くに町で唯一の医療機関となる町立診療所が開設されました。特定復興再生拠点区域だった地域では、住環境整備が徐々に進められています。
元拠点区域の居住率 わずか1%
去年避難指示が解除された、葛尾村、大熊町、双葉町の「特定復興再生拠点区域」だった地域に住民登録している人は、2月1日現在9219人、住んでいるのは約100人で、居住率はわずか1%程度です。
これから避難指示が解除される地域も含め、どのように居住人口を増やし新たなまちを作っていくか、避難指示の解除後も課題は尽きません。