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ものがたり

浜通り

小澤是寛さん

  • 未来デザイナー

未来の昔話をつくる

原発事故で一時、町から人が消えた浪江町。地域で語り継がれてきた昔話も、失われかけている。

こうした町の昔話を拾い集めてきた人がいる。

小澤是寛(おざわよしひろ)さん。浪江に戻らないことを決め、今は相馬市に住んでいる。

 

 

 

震災の10年前に浪江に心を惹かれ、移り住んだ小澤さん。

愛知県出身で、建設現場で働きながら全国各地を転々としてきた。

子どもたちが帰って来られる場所を探して、辿り着いたのが、浪江だった。

 

 

 

この日、久しぶりに浪江を訪れた小澤さん。

ふるさとにしたかった町。自宅近くの川で鮎を釣るのが、何よりの楽しみだった。

 

 

 

 

浪江の面影だけは残したい。集め始めたのが、昔話だった。

 

 

 

 

 

「物語を聞く度に、この場所は、こうだったなという思い出は甦る。これは、将来的に残しておかにゃいけないと思った。」

 

 

 

 

昔話を探し歩く中で、大きな出会いがあった。

福本英伸(ふくもとひでのぶ)さん。広島に住む、紙芝居作家だ。

広島の紙芝居を20年以上作り続けてきた福本さん。ボランティアで福島を訪れたとき、小澤さんに声を掛けた。

 

 

 

 

 

「広島に昔話がないんです。原爆で一瞬のうちに消えてしまったので。同じ事が福島でも起きているんじゃないかと思って。じゃあ民話や昔話を救いに行こうと。」

小澤さんが原稿や資料を集め、福本さんが描く。

浪江に伝わる数々の昔話を、紙芝居にして残していく。

 

 

 

 

 

 

さらに、小澤さんは今、新しい昔話をつくっている。

避難先で会った人たちとつくった、原発事故後の物語。

殺処分命令が出た、避難区域の牛の話。殺すことを迫られた、農家の苦しみを描いている。

 

 

 

 

 

福島市に避難した女性が綴ったのは、浪江に戻らないことを決めた、母と娘の物語だ。

 

 

 

 

 

長く語り継がれてきた昔話の力を実感していた小澤さん。だからこそ、原発事故の教訓も昔話にしたいと考えた。

「震災後の紙芝居も、今現在は現在の物語かもわかんないけど、将来的にはこれは昔話として、語り継いで残していかなきゃいけない」

 

 

 

 

 

 

こうしてつくった紙芝居は、震災遺構で何度も読み聞かせをしている。

「僕が住んでいた浪江町の請戸地区は」

 

 

 

 

 

 

 

 

「今から原発が全部処理が終わるのが、50年後、60年後になるかもしれません。そのときに、昔話として残して、二度と繰り返さないような形に伝承できたらいいなと思ってます。」

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