ものがたり

会津地方

中條さん

  • 嗚呼!絶景

長床 田んぼで返済

国の重要文化財にも指定されている、新宮熊野神社。通称、長床。
横幅25mの長い拝殿は、日本でここにしか残っていない貴重な作りだ。

この長床、地元・慶徳町新宮集落の持ち物。維持、管理は、集落の60世帯が行ってきた。
しめ縄作り、かやぶき屋根の雪下ろし。維持するには、手間と金がかかる。
新宮集落の人たちが特に大切に守りぬいてきた“秘宝“がある。鎌倉時代から祀られてきた立派な仏像だ。
獅子の上に座った、高さ3mの文殊菩薩像など、圧倒的な迫力がある。

ところが20年ほど前、その宝を保管してきた建物が老朽化で傾き始めた。
頑丈な建物に建て直すには、総額7,000万円の大金が必要となった。当然、集落にそんな財源はない。
集落で生まれ育った、中條雅之さん。
「先祖の宝を守りたい気持ちはみんな同じ。しかし、7,000万もの大金となると、途方にくれるばかりだった」

集落は揺れに揺れた。
そのとき中條さんたちは、あるアイディアを思いつく。
集落に受け継がれてきた共有田で米を作れば、安定的に金を返せるのではないか。
集落の人々は、清水の舞台から飛び降りる覚悟で、20年ローンで金を借りることにした。
田植え、稲刈り、水路の管理、草刈り。集落の人たちは、一致団結して借金返済のために田んぼを作った。
更に、中條さんたちは、自らポスターを作り、長床を広めて回った。
すると、みるみるうちに拝観者が増え、繰り上げ返済。わずか8年で、借金を返し終えた。

秋、長床の境内は銀杏の葉に染め上げられ、一年で最も美しい季節を迎える。
75歳の中條さんは、観光客を案内するために境内を奔走。
そして集落の人たちが守った仏像も、訪れる人たちを穏やかに迎えている。