ものがたり

中通り

村越雄城さん

  • 未来デザイナー

349号線の知られざる名湯

【風変わりな一軒の温泉】

349号線が南北を貫く田村市。車を走らせていると突然、道の脇にニワトリが放し飼いされているのが目に飛び込んでくる!さらにはヒツジまで!ここは動物園・・・ではなく日帰り温泉施設、聖(ひじり)石(いし)温泉だ。温泉県福島でも珍しい含(がん)鉄泉(てつせん)、赤褐色の湯が楽しめる。

 

 

 

【地元の人たちのオアシス】

温泉の主、村越雄城さん。朝早くから車を走らせ、地元のおばあちゃんたちの家々を回る。
頼まれればいつでも地元のおばあちゃんたちのお迎えに駆けつける。

 

 

 

 

送迎代は無料。さらに食べ物や飲み物の持ち込みは自由でカラオケも歌いたい放題だ!「自分の家にいるような感覚で楽しんでもらいたい。」まさに大盤振舞い!底抜けに明るい村越さんと湯の魅力にひかれ集まる人たちもとっても楽しそうだ。

 

 

 

【湯は元々やっかいものだった?!】

22年間、地元の人たちに愛されてきた聖石温泉。でも元々は、村越さんの父・昭一さんが飲み水として掘り当てたものだった。
ところが、飲んでみると鉄くさい!昭一さんはもったいないから風呂水として使うことにした。
あっという間に近所の人たちの評判になり、村越家の風呂に入れてくれと、おばあちゃんたちが詰めかけるようになった。

 

 

 

すると、昭一さんは、温泉施設を作ることを思いつく!狙われたのは村越さんの愛車が入っていたガレージだった。
「知らないうちに自慢のバイクを解体屋が持っていってたんです。ショックでしたよね。」

 

 

 

 

 

振り回されっぱなしだった村越さんの父を見る目を変わったのは、ある時、温泉客のおじいちゃんが持ってきた手作りの置き物だったという。「お前の親父にはすごくお世話になった」と言って『爺婆よろこぶ恵の湯』と手書きの置き物をプレゼントされた。父親が作った温泉が地域の宝になっていたことを知った村越さん。いつしか自分も父の背中を追うようになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

【受け継がれるDNA】

村越さんは新たな客の開拓に乗り出している。施設内の柱にびっしり書かれたサイン。
これ、自転車やバイクで日本を旅する人たちが書いていったもの。

 

 

 

きっかけは5年前、薄汚れた男が「風呂に入れてくれ」と訪ねてきた。日本一周の途中の旅人と聞いた村越さんは、ご飯や寝床を無償で提供。するとその噂がネットであっという間に広がり、今では旅人たちに聖地になりつつあるのだ。「町の活性化に繋がれば、儲からなくてもいいんだ」と村越さんは笑い飛ばす。

 

 

 

 

 

そんな村越さんに去年、力強い仲間が加わった。娘の芽生(めい)さんが若女将として温泉を継ぐことになったのだ。若女将修行のかたわら、芽生さんは聖石温泉をPRするためにインターネットに動画を投稿したり、若い発想で温泉の魅力を多くの人たちに伝えようと奮闘している。

 

 

「まだまだ小さな温泉だけど、町を支えられるような観光名所になりたい。」
349号線をもっともっと魅力ある道に、それが親子の夢だ。