アナウンサーの川崎寛司です。
今月7日、悲しい知らせが入りました。
絵本作家「かこさとし」さんが、慢性腎不全のため、亡くなりました。92歳でした。
かこさんは、福井県越前市のご出身。
「だるまちゃん」シリーズや、「カラスのパン屋さん」、科学絵本シリーズなど、
半世紀にわたって、600点もの作品を生み出して来ました。
未来を担う子どもたちのために、全力で生きられた方でした。
私は、前任地の福井放送局時代、神奈川県藤沢市のご自宅にお邪魔して、
何度もインタビューをさせていただき、「あさイチ」や「シブ5時」などで全国放送もしました。
90年あまり生きて来られたかこさんの言葉は、
すべて重みがあり、いつも勉強をさせられました。
私の心に特に刻まれている言葉を記します。
「生きることは、喜びです。本当は、うんと面白い。
戦後、もう何も信じられないと、絶望に打ちひしがれていた時、それを子どもたちから教わった。
だから、僕は子どもたちには、生きることをうんと喜んでほしい」
「30年来、緑内障で、左目がほとんど見えず、右目も視野が小さい。
うっかりして、どこかにぶつかると、情けない気持ちになる。
でも、これも個性だと思えばいい。
それは、きっと誰にでもあるはずで、
欠点に見えるものと、どうつきあうかで、人間の厚みが出来ると思う」
「僕が、なぜ、繰り返し「大勢」を描くのかと言えば、
自分が、世の中の中心だとは、とても思えないから。
この世界は多様であり、自分は、そのどこか端っこにいる。でも、端っこも世界なんだ。
真ん中だけがエライんじゃない。端っこで一生懸命に生きている者もいるんだよって伝えたい。
人間は違っていい。多様性が認められる社会であってほしい」
「人間は、生きていくことに伴う苦しみを、避けて通ることが出来ません。
その時に、ただ逃げていてはダメで、それをまっとうに受け止め、乗り越えなければならない。
そのためには『だれかに言われたからそうする』のではなく、
自分で考え、自分で判断できる賢さを持っていて欲しい」
かこさんは、ことし1月、3冊の絵本を出版。
その中の1冊は、福島にちなんだ「だるまちゃんとはやたちゃん」です。
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で被災した方々を気にかけていらっしゃいました。
50年以上、子どもたちの興味を育てる絵本を描いてきたかこさんが亡くなって、
心にぽっかりと穴があいたようです。とても寂しく、悲しいです。
かこさん、安らかにお眠りください。本当にありがとうございました。
(最初と最後の写真は、かこさんの故郷の福井県越前市にある
『かこさとし ふるさと絵本館「石石」(らく)」』からご提供いただきました。
ありがとうございました)
投稿時間:18:03