人に会って、“久しぶりであって、久しぶりではない”という感覚は、誰にでもあると思います。
相馬市の佐藤定広さん。
東京で、福祉番組を担当していたときに定期的に取材し、その時々の思いを交わしていました。
佐藤さんは、南相馬市で、障害のある人の自立研修所を運営していて、
震災と原発事故の後、それまで行っていた農作業をあきらめ、缶バッジ作りなどの仕事を立ち上げました。
「ハートネットTV」ブログ 「支援に終わりはない ~南相馬取材報告~」
http://www.nhk.or.jp/hearttv-blog/1700/155068.html
「ハートネットTV」ブログ 「これからも、被災地を忘れない」
http://www.nhk.or.jp/hearttv-blog/1700/176738.html
そして、2年前の春。
佐藤さんは、ふるさと相馬市に、障害のある人の福祉作業所を立ち上げました。
その名は「工房もくもく」。
JR相馬駅から歩いて数分の建物の2階にあります。
精神障害や知的障害の程度が比較的重い、20代から40代の人たちが、毎日、10人前後通っています。
写真の入口から階段を上がり、2階のドアを開けると、
大きな窓から、やわらかな日差しが差し込む空間が。
スピーカーから流れる、ゆったりとしたインストルメンタルの音楽が、やさしく部屋の空気を包みます。
皆さん、わたしの取材を、楽器演奏で迎えてくれました。
ハンドベル演奏では、曲をじっくり聞きながら、
“自分の音”が来ると、丁寧に腕を動かし、きれいな音を奏でていました。
曲は「きらきら星」や「ふるさと」など。私も一緒に口ずさみました。
(立ってウクレレを教える佐藤さん)
中には、南相馬市小高区から避難してきて、戻らずに相馬に住み続けるという選択をした人もいます。
「もくもく」が、“自分の居場所”になっているのでしょう。
特に、障害のある人にとって、
あらたにコミュニティに入って溶け込むためには、大きなエネルギーが必要で、難しいのが現状です。
「ここでは、お互いがお互いを認めて、仲間意識がメンバーの心に生まれ、
ある人の姿が見えない日には、みんなが心配するというつながりができています」と佐藤さんは話します。
みなさん、機織りやボールペンへの糸巻き。
さらに、紙すきやTシャツプリントなど、スタッフの方々のサポートを受けながら、
疲れた時は休みながら、自分のペースで制作に取り組んでいました。
佐藤さんによると、今年度は売り上げが3倍になり、工賃を上げることができたそうです。
しかし、まだ全国平均には至っておらず、常に“次の一手”を考えているそうです。
(商品の数々。どれも丁寧に仕上げられています。)
佐藤さんのお話で、印象に残っていることがあります。
『「支える」「支えられる」という一方的な関係ではなく、
みんなから教えてもらうことが、本当にたくさんある。
一緒に笑い、一緒に涙しています。毎日いろいろなことを教えられる。楽しいです』
とは言え、スタッフの献身性だけで福祉事業所を持続的に運営していくのは困難です。
活動への助成金が削られていくとしたら、どのように運営していくのか。
ここに通うみなさんの笑顔を、そして、佐藤さんたちスタッフのみなさんの笑顔を絶やさないためにも。
現状を把握した上での、国や自治体の施策や仕組みづくりが求められます。
みなさんと一緒に!楽しい時間をありがとうございました!
投稿時間:19:47