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“デジタルノマド”を福岡に!

  • 2023年11月09日

 

「デジタルノマド」って知っていますか。ITなどデジタル技術を使って仕事をすることで、働く場所に縛られず世界各地を転々とする人々のことです。コロナ禍を経て、新しい生き方として欧米の若者を中心に広がりを見せていますが、福岡市は自治体として全国で初めて、世界中からデジタルノマドを呼び込む取り組みを行いました。その狙いを取材しました。(NHK福岡放送局記者 宮本陸也)

約50人のデジタルノマドが集結

 

集まったデジタルノマドたち

2023年10月、福岡市はヨーロッパを中心とする24の国と地域からおよそ50人のデジタルノマドを招きました。自治体として世界各地からデジタルノマドを呼び込む取り組みを行ったのは、全国で初めてだということです。

仕事に打ち込む人たちも

デジタルノマドたちは市内のホテルなどに滞在しながら、ソフトウエア開発やマーケティングなどといったインターネットと端末があればできる仕事をしています。滞在するホテルにはコワーキングスペースも備えられていて、それぞれの仕事をしたり、一緒に滞在している仲間たちと料理を作ったりして、自分たちのペースで生活しています。

福岡の街や食を満喫!

編集作業を行うニックさん

このうちの1人、オランダ人の動画クリエイターで、動画制作会社のオーナーでもあるニックさんです。市の依頼を受けて、滞在中に訪れた観光地など市の魅力を世界に発信する動画を制作しています。

ニックさんが制作した映像の一部(提供:Nick Vinken)

動画では、デジタルノマドたちがルーフトップバスで市内を観光したり、近隣の名所を訪れたりする様子を紹介しました。

ルーフトップバスで夜の福岡を観光(提供:Nick Vinken)
屋台で福岡の食を満喫(画像提供:Nick Vinken)

これまでに50か国を訪れたことがあるニックさん。福岡市は、飲食店や働く場所がある都市部と豊かな自然を体感できる地域がコンパクトにまとまっていて生活しやすいと話してくれました。

ニックさん

ニックさん
「福岡市はデジタルノマドが仕事をする上で、最高の目的地です。飲食店や商業施設などがかなりコンパクトにまとまっていて必要なものがすぐ近くにあります。また、福岡は料理も最高です。まだ行っていない場所もあるので、残る期間で行けるのが楽しみです」

地域の人たちと交流も

地元の園児との交流を楽しむデジタルノマドたち

ニックさんたちデジタルノマドを招いた福岡市は、もっと福岡の魅力を感じてもらおうと、植物園で地元の園児たちと鉢植えを体験してもらう催しを企画しました。デジタルノマドたちが滞在先での地元の人との交流をとても楽しみにしていると聞いたからです。

ニックさん

鉢植え体験はとてもよかったです。福岡市の子どもたちと良い交流が出来ましたし、一緒にコラボしたことで福岡をよりかわいくすることに貢献できたと思います。子どもたちと一緒に作業が出来るすばらしい文化交流でした。

福岡市経済観光文化局観光産業係 横山裕一係長

福岡市経済観光文化局観光産業係 横山裕一係長
「福岡の街としてのエネルギーも感じていただきたい。また、地域の方々と関わってもらえるような取り組みを通じて福岡市を満喫してもらい、魅力の海外発信につなげていければと思います」

豊かな自然は「最高にクール」

福岡市は、街の近くの自然を満喫できる催しも企画しました。和服などを着てデジタルノマドたちが向かったのは西区の能古島です。船で10分ほどで行ける身近で自然豊かな島として、アウトドア派の外国人などから注目されています。

 

ゆっくりと時間を過ごす

ゆったりとした音楽が流れる中、デジタルノマドたちはビーチの上で記念写真を撮影したり、船着き場で海を眺めたりするなど思い思いの時間を過ごしました。

テントサウナを海辺に設置

また、この日は特別にテントサウナも設置。デジタルノマドたちは、温まった後は水風呂の代わりに海に飛び込み、島ならではの「ととのい方」を味わったほか、大自然の中で行うヨガ教室にも参加しました。

キャンプファイアを囲んで盆踊り

夜にはキャンプファイアを囲んで盆踊りを体験するなど、福岡の自然を全身で感じながら、日本文化を体験していました。

ニックさん

この島の雰囲気は最高です。ビーチの上で夕日を見ることもでき、最高にクールです。私は滞在先の都市を選ぶとき、街に店やできることが多いこと、すべてがコンパクトなことを大切にしています。また、自然の中で過ごすことも大好きなので、福岡市は自然へのアクセスがいいことも素晴らしいと思いました。

デジタルノマドに熱視線の理由

福岡市がデジタルノマドの呼び込みに力を入れ始めた理由、それはコロナ禍を経て、今後、規模の急速な拡大が見込まれているからです。日本デジタルノマド協会などによりますと、世界中のデジタルノマドの数は現在およそ3500万人ですが、2030年には30倍近くの10億人に上ると予測されています。

福岡市に集まったデジタルノマドたち

もうひとつの大きな理由は、デジタルノマドの人たちの所得が比較的、高いということです。日本デジタルノマド協会がデジタルノマド90人に対して行った調査では、平均月収は78万円超と日本の平均月収の2倍を超えました。また、昼食にかける額は平均で1900円に上り、旅行者より長い期間滞在することもあって、大きな経済効果が見込めるということです。

 議論するデジタルノマドたち

さらに、地元の企業にも大きなメリットがあると考えられています。フリーランスが多いデジタルノマドと福岡市にたくさんあるスタートアップ企業が交流することで、新たなビジネスが生まれる可能性を秘めているというのです。

デジタルノマドから見た福岡の課題

では、福岡市が世界中のデジタルノマドから選ばれる場所になるためにはどんな課題があるのでしょうか。今回の福岡市の取り組みに協力した、福岡市の企業を取材しました。この企業はデジタルノマドの調査や誘致に関するコンサルティングなどを専門に行っていて、メンバー自身もデジタルノマドで、海外でのノマド生活の経験を事業に生かしています。

会議を行うメンバーたち

この日のミーティングでは、滞在先としての福岡市の課題についても話し合うことになりました。すると、メンバーからは2つの課題が指摘がされました。1つは、「ことば」。美味しい飲食店などを中心に手書きのメニューが使われている場合があり、英語が併記されていないなど、外国人が1人で店に入って料理を注文するのが難しいというのです。デジタルノマドの生活面での大きな問題です。

 

海近くのコワーキングスペース

もうひとつは、コワーキングスペースの課題です。デジタルノマドの取引先が多い欧米の時間にあわせて、夜間でも仕事やオンライン会議ができるような施設が少ないというのです。こちらは、デジタルノマドの仕事面での大きな問題です。

この企業の代表、大瀬良亮さんは、こうした課題を解決して福岡市としての魅力をさらに高めると同時に、福岡を含むアジアの都市を回ってもらえるよう、アジアのほかの都市と連携することも必要だと指摘しています。

代表取締役の大瀬良亮さん

代表取締役の大瀬良亮さん
「福岡だけで誘致をやって、『我がまちへ』と水を引こうとしてもあまり意味がなく限界があると感じています。福岡市は韓国に近い台湾に近い、あるいは東南アジアに近いっていうところで、福岡だけではなく、アジアのほかの国や地域に交流を広げていきたい。例えば、ソウルと福岡の真ん中のプサンで何か一緒にイベントをやったりとか、いかにみんなで交流を続けていけるかが大事になると思います」

取材後記

取材を通じて、コロナ禍で落ち込んだインバウンドの回復を目指してさまざまな施策が進む中、デジタルノマドたちが福岡を盛り上げる起爆剤になるのではないかと感じました。そこで課題になるのが「ビザ」の問題です。世界ではすでに60か国近くがデジタルノマド用のビザを導入していて、入国しやすい環境づくりを進めています。一方、日本では、観光ビザより長く滞在できるデジタルノマド向けのビザの2023年度中の制度化を目指して検討しています。

今後、世界各地で活発化すると考えられているデジタルノマドの誘致合戦。福岡市が国内の自治体の先駆者となって、「オール九州」、「オールアジア」の取り組みをどう進めるのか注目してみたいと思います。

  • 宮本陸也

    NHK福岡放送局

    宮本陸也

    2018年入局/大分→福岡
    国際ニュースを日々取材

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