静かに広がる、ちょっと変わった絵本の読み聞かせ
- 2023年10月03日

子どもの頃、絵本の読み聞かせでドキドキ、ワクワクしたという方も多いのではないのでしょうか。いま、ちょっと変わった絵本の読み聞かせの形が、ここ福岡で静かに広がっているということで、早速、取材してきました。
一風変わった絵本の読み聞かせ会
直方市立図書館で行われた絵本の読み聞かせ会です。ボランティアの気持ちのこもった朗読に耳を傾けていたのは…。

なんと大人たち!実はこれ、大人向けの絵本の読み聞かせ会なんです。

この日は、30代から70代の6人が参加。時折、うなずいたり、目に涙を浮かべたりしていて、絵本の世界に入り込んでいるようでした。

大人になってから体験する絵本の読み聞かせ。何がよかったのか、参加者に聞きました。

子育てのときは、私が子どもに絵本を読んであげていましたが、人に読んでもらうことはないので、初めての感覚でした。心が癒やされました。

ラジオで朗読をするのを聞いたことがありますが、じかに見て聞くのとは違います。感動しました。最後は泣けちゃいました。
きっかけは8年前の実体験
イベントを企画した、石田美由紀さんです。

ボランティアとして子ども向けの読み聞かせをしていた8年前、知人に誘われて初めて、大人向けの絵本の読み聞かせを体験したといいます。

読み手の声がすっと体に入ってきてすごく和みます。ただ面白いとかではなく、心が本当に安まる感覚がありますね。
癒やしの効果を感じた石田さん。多くの人に魅力を伝えようと、みずからも、大人向けの絵本の読み聞かせを始めました。

自分が気持ちよかったことは人にも教えたくなります。「またやってほしい」と言われたときは、「やった!」と思いますね。
広がる大人向けの絵本の読み聞かせ
大人向けの絵本の読み聞かせは、福岡県内のほかの地域にも広がっています。各地の公立図書館に取材したところ、この1年間に新たに5か所で始まっていました。「心が安らいだ」などといった感想が多く寄せられたということです。

「癒やし」のメカニズムを分析
絵本を読んでもらったときの感覚的な効果を科学的に分析した専門家がいます。徳島大学非常勤講師の森慶子さんです。

森さんは、大学生およそ60人を対象に、絵本を読んでもらっているときの脳の活動を医師とともに調べました。

分析の結果、60人全員が絵本の読み聞かせを聞いている時に、おでこのあたりにある、前頭前野の特に真ん中の部分の脳の血流量が下がることがわかりました。

絵本の読み聞かせを聞くと、リラックスしたり、心が落ち着いたり、読んでくれている人に対するいい感情が芽生えることがわかってきました。
絵本の読み聞かせは、家庭や職場での円滑なコミュニケーションを図る上でも効果的だといいます。

人に絵本を読んでもらうと、大人どうし初めての人でも心が打ち解け合ったり、癒やしの場ができたり、また、ちょっと悩みがあったとしても心が温かくなるような場ができると思います。

取材を終えて
私も実際に絵本の読み聞かせを体験しました。子どもの頃に両親に絵本を読み聞かせてもらったことを思い出し、懐かしく温かい気持ちになりました。と同時に、心が落ち着くような、癒やされるような、子どもの頃とは違う感覚も覚えました。
森さんによると、アナウンサーのように上手に読もうと気負わず、自己流でも気持ちを込めて読み聞かせをするとリラックス効果が期待できるそうです。少しずつ広がりつつある大人向けの絵本の読み聞かせ。普段の生活にちょっと取り入れてみてはいかがでしょうか。