“線状降水帯発生!” 従来より最大30分早く発表
- 2023年05月30日
近年よく耳にする“線状降水帯”。発達した積乱雲が連なり数時間にわたって同じ場所に大雨を降らせて甚大な被害をもたらします。気象庁は、線状降水帯が発生したことを知らせる情報=「顕著な大雨に関する情報」について運用を変更し、従来より最大30分前倒しして発表することになりました。その背景とは?そして私たちは情報をどのように捉え、行動すればよいのでしょうか。(NHK福岡放送局記者 宮本陸也)
線状降水帯の情報 最大30分前倒し
気象庁は令和3年から「線状降水帯」の発生が確認され土砂災害や洪水の危険性が急激に高まった際に「顕著な大雨に関する情報」を発表しています。福岡県でも去年7月に1度発表されています。
今回、気象庁は、線状降水帯による大雨が“予測”された場合に「発生した」と見なして発表することになりました。最大で30分前倒しして発表されます。
これが可能となったのは気象レーダーの機能強化などによって線状降水帯が発生する直前の予測精度が向上したことがあげられます。
気象庁が令和元年7月から令和4年10月までに降った大雨を検証した結果、「30分後に線状降水帯が発生する」と予測されたケースのうち84%で実際に発生していたことがわかりました。
このため、予測の時点で「発生した」と見なして情報を伝えることで、災害の危険度が高まっていることをいち早く伝え、防災行動に役立ててもらおうというねらいです。
線状降水帯が発生すると状況が一変
情報の発表を少しでも早める背景には、線状降水帯がもたらした過去の豪雨の教訓があります。
その一つが令和2年の熊本豪雨です。線状降水帯が発生し、3時間で最大200ミリの雨を観測する豪雨となり、球磨川が氾濫するなど甚大な被害が出ました。
短い時間で急激に災害の危険性が高まる「線状降水帯」。危機感を伝える情報の発表を少しでも前倒ししようとなったのです。
「30分程度とはそんなに長い時間ではありませんが、少しでも早く大雨への危機感を伝えるのが最大の目的です。迫り来る危機から身の安全を確保することを考えてもらい、川や崖など危ないところの近くに住んでいるのであればそこから少しでも遠ざかる、垂直避難をするなどといった防災対応につなげてもらいたい」
「線状降水帯発生」情報が発表されたら・・・
線状降水帯の発生を伝える「顕著な大雨に関する情報」は「警戒レベル4相当」以上の情報で、災害の危険が差し迫っていることを意味しています。
福岡管区気象台は、情報が発表されたらすみやかに身の安全を守る行動を取ることを改めて認識し、自治体からの避難指示などの避難の情報が出ていないかなどを確認してほしいと呼びかけています。
すでに周りが水につかっていたり大雨で避難所まで移動することが困難な場合には、垂直避難なども含めて少しでも身の安全を確保できる行動をとってください。河川の近くや土砂災害が発生する可能性がある崖などからは少しでも離れることが大切です。
線状降水帯の“半日前予測”とどう違う?
線状降水帯に関しては「半日前」に出される情報もあります。
気象庁は令和4年6月から、線状降水帯が発生するおそれが高まった場合、半日前~6時間前を目安に地方気象情報や府県気象情報の中で警戒を呼びかける取り組みを始めています。
実際に大雨になる前に危険性を伝え、明るい時間帯など早いタイミングで避難行動につなげてもらうのがねらいです。
一方で「半日前」予測の情報は、精度の面でまだまだ課題があり、どこで発生するか細かい市町村までは絞りきることはできません。このため「九州北部で線状降水帯が発生する可能性がある」など広い範囲を対象にして発表されます。
各地の自治体も、この情報だけで必ず避難情報を出すといった運用までは至っていないのが実情です。気象台の担当者は次のように話しています。
福岡管区気象台予報課 村方栄真 気象防災官
「まだまだ精度を上げていく必要があると認識しています。ただ、線状降水帯がいつどこで発生してもおかしくないような状況になりつつあるということから大雨への警戒は改めて認識してほしい」
「線状降水帯が発生する可能性がある」という情報が発表されたら、大雨になるという心構えを持ち、その後気象庁から発表される警報などの情報に注意する、夜間に線状降水帯が発生すると予測された場合には明るいうちの避難にも役立ててください。
ひとたび線状降水帯が発生すれば甚大な被害につながります。どのような情報が発表されるのかを事前に把握したうえで、予めハザードマップや避難経路などを確認しておき、いざという時にどういう行動をとればいいのか、今のうちから準備を進めてほしいと思います。