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タイで福岡が熱い!?

タイで福岡をPR!県や北九州市の取り組みとは
  • 2023年05月18日

このところ、街中で外国人旅行客を見かける機会が多くなっていますが、福岡市近郊の“ある場所”にタイからの旅行客が詰めかけていることをご存じでしょうか。なぜ、その場所が人気を集めているのか取材しました。(福岡放送局記者 宮本陸也)

人気の場所はいったい、どこ?

タイが正月を迎えていた4月中旬、タイからの大勢の旅行客が訪れていたのが、篠栗町にある寺、南蔵院にある「ねはん像」です。

全長41メートル・高さ11メートルのねはん像

取材をしたこの日も5組の団体客が訪れ、記念写真を撮っていました。

記念写真を撮影するタイの人たち

旅行客にねはん像の魅力を聞いてみました。

福岡ツアーに参加した親子

福岡ツアーに参加した親子
「ねはん像はとても大きくて美しいです。この敷地内に入ると、平和的な空間だなと思いましたし、神聖なところに来たなと感じました。バンコクにも似たような仏像があったと思います。このねはん像のことは知っていました」。

どんな方法でタイからの旅行客を呼び込んでいるのか寺の副住職に尋ねたところ、思いもよらない答えが。

南蔵院の副住職 林覚竜さん

南蔵院の副住職 林覚竜さん
「タイからのインバウンド客はここ最近とても増えていて、1日に5組ほどの団体客が来ることもあります。ただ、ねはん像はあくまでも宗教施設の一部なので、インバウンドに対して、海外に向けての宣伝は一切、行っていません」。

“微笑みの国”へ

では、タイの旅行客はどうやってねはん像のことを知ったのでしょうか。その理由を探ろうと、タイに飛びました。

街中に建ち並ぶ寺院

まず訪ねたのが、福岡県のバンコク事務所です。13年前の2010年、福岡県がほかの都道府県に先駆けて設置しました。

日本人やタイ人の5人ほどが常駐

実はここが、重要な役割を果たしていました。

仏教国で信仰心のあついタイの人たちに向けて、篠栗町のねはん像の情報を2022年11月にSNSで発信したところ、多くの反響があったというのです。

ねはん像を紹介するSNSの投稿

投稿したのは、SNS担当のタイ人スタッフ。この9年間、タイの人たちの心に刺さりそうな福岡の観光情報を地道に発信してきました。

県のバンコク事務所は担当スタッフ以外にも、福岡好きのタイの人たち10人に協力を依頼しました。そのうちの1人、ポップさんは「福岡観光アンバサダー」として、自分のSNSを使って情報を発信し、後押ししています。

ポップさん

ことし2月の福岡旅行では、大小さまざまな神社・仏閣を訪れては、撮影した画像をSNSに投稿したというポップさん。ことし中にはまた福岡に行って、魅力を発信したいと話しています。

ポップさん
「福岡は食事や観光地などタイ人にとって魅力がたくさんあります。次は太宰府や『ららぽーと』に行って、福岡県の情報を広くタイ人に伝えていきたい」。

太宰府天満宮など全国的に有名な神社・仏閣が多い福岡県。
バンコク事務所の西田所長は、より多くのタイの人たちに訪れてもらえるようPR活動を強化する考えです。

福岡県バンコク事務所長 西田光孝さん

福岡県バンコク事務所長 西田光孝さん
「福岡はアジアの玄関口ということで、バンコクと距離的にとても近いと感じます。また、3つの航空会社が直行便を運航するくらい、関係としてはすごく深い都市になっています。観光ビジネスも今後さらに活発化していけたらいい」。

バンコク事務所が発信しているのは、神社・仏閣の情報だけではありません。現地の旅行会社を訪ねた西田所長は、フルーツ好きのタイの人たちにアピールしようと、福岡特産のいちご「博多あまおう」などを味わえるフルーツ狩りを提案しました。

現地の旅行会社とのミーティング
西田所長

先日、福岡県知事がタイに来てPRしていた食べ物の1つに、とてもみずみずしくて甘いイチゴ「あまおう」があります。これは、タイの人の間で非常に人気です。ぜひツアーの中に盛り込むなどして福岡の魅力を伝えていきたいと思っているのでよろしくお願いします。

 

旅行会社の副社長
ワッサモン・チーワラッタナポーンさん

旅行会社の副社長
ワッサモン・チーワラッタナポーンさん
「福岡県は今、とても人気がある県です。タイから福岡までの渡航時間は短く、観光地もたくさんあって、さらに料理もすごくおいしいのも大事ですね。タイの人が好みそうなツアーを積極的に組んでいきたい」。

北九州は“ロケツーリズム”で勝負

福岡ならではの都会的な景観と豊かな自然を生かした、観光客誘致の取り組みも進められています。北九州フィルム・コミッション事務局の職員、上田秀栄さんは10年以上タイのバンコクに通い続けてきました。

現地の芸能事務所幹部と上田秀英さん(右)

映画やドラマなどのロケの誘致に取り組む中で、若者を中心に盛り上がるタイのエンタメ業界に注目。誘致活動の結果、去年、タイの人気アイドルグループが北九州市の名所でミュージックビデオを撮影しました。

こちらは、市街地と海が一望できる皿倉山のケーブルカーで撮影。

ミュージックビデオのワンシーン

かつて「東洋一のつり橋」と言われた若戸大橋を背景に撮影したシーンもあります。

ミュージックビデオのワンシーン

旦過市場でも撮影が行われました。

ミュージックビデオのワンシーン

ミュージックビデオをみたタイのファンが、ロケ地巡りのため北九州市を訪れたといいます。

ミュージックビデオのワンシーン

この日、上田さんは現地の芸能事務所のトップの1人とさらなる仕掛けについて話し合うことに。

仕掛けについてアイデアを出し合う

上田さんからは、2023年12月に開催予定の北九州国際映画祭に向けて新しいプロジェクトを立ち上げたいと提案しました。すると、前向きな答えが返ってきました。

芸能事務所で幹部を務める
ナタポン・パワラワッタナさん

芸能事務所の幹部
ナタポン・パワラワッタナさん
「タイの人たちに北九州をもっと知ってもらえるように何か観光に関するストーリーを作ってもいいですね」。

北九州フィルム・コミッション事務局次長
上田秀栄さん

北九州フィルム・コミッション事務局次長
上田秀栄さん
「ロケツーリズム、エンターテインメントを活用した観光客誘致を考えていて、僕らは常に新しいことを仕掛け続けないと忘れられてしまう、消費されてしまう。新しいものを提供し続けないといけないので戦略的に伝え続けていきたいし、仕掛け続けていきたいと思っている」。

LCCも福岡に期待!

福岡側の熱心な誘致活動に加えて、タイ国内では経済成長に伴う海外旅行熱が高まっています。これを追い風に、航空会社も積極的な事業展開を進めています。LCC=格安航空会社の「タイベトジェットエア」は2022年7月、日本便の初就航先に福岡を選びました。

LCCのカウンターに並ぶ大勢の外国人観光客

福岡を選んだ理由について幹部に話を聞いてみると、期待のこもった答えが返ってきました。

タイベトジェットエア 広報担当役員
シワルット・モーンプラーさん

タイベトジェットエア 広報担当役員
シワルット・モーンプラーさん
「需要においても福岡はポテンシャルが他と比べて高い。福岡便の客もリピート客が増えてきていて、需要も増えている。現時点では福岡にリソースを集中して今後便数を増やせるようにしていきたい」。

取材後記

バンコクでは、繁華街にもつ鍋や水炊きなど福岡グルメを売りにする飲食店が何店舗もあって驚きました。そして、福岡のことを知っている、行ってみたいと話すタイの人たちも想像以上に多く、今後、旅行先としての福岡の人気の高まりが期待できると感じました。

また、タイからの旅行客のおよそ7割がリピーターというデータもあり、一度来て好きになると何度も足を運んでくれる人が多いことがうかがえます。タイの人たちにとって福岡は九州の玄関口でもあるので、福岡だけでなく、九州のほかの県の魅力も発信していくことも大切だと思いました。

  • 宮本陸也

    NHK福岡放送局

    宮本陸也

    2018年入局/大分→福岡
    国際ニュースを日々取材

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