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どこまで「平常」に戻る? 新型コロナ「5類」へ

  • 2023年05月08日

どこまで平常に戻る?新型コロナ「5類」へ

新型コロナの感染症法上の位置づけが、きょうから(8日)季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行しました。県内で暮らす私たちの日常もコロナ禍前のように戻るのでしょうか。さまざまな場面で対応がどう変わるのか、当事者の声と一緒にまとめました。

飲食店は

感染対策の仕切りを外すオーナー

福岡市博多区のレストランは、きょうランチの営業時間の前に、これまで感染対策のためカウンター席などに設置していた仕切りを外しました。

「感染防止認証店」のステッカーもはがしていた

また、5類移行に伴って飲食店の感染対策を県が認証する制度も終了したことから、入り口に貼っていた県の認証ステッカーもはがしていました。一方で、従業員は感染対策などを理由に引き続きマスクを
着用するということです。

従業員やオーナーはマスク着用も

企業は

企業の間でもこれまでの対応を見直す動きが広がっています。このうち、西日本シティ銀行は、3月の国の方針変更のあとも行員に対してマスクの着用を求めてきましたが、5月8日から個人の判断に委ねることにしました。ただ、銀行は接客窓口のアクリル板については残し続けることを決め、博多駅前の本店営業部の窓口では、8日もマスクを着用して業務にあたる行員たちの姿が見られました。

マスクは個人の行員の判断に 

マスクの着用をめぐっては、「福岡銀行」もきょうから個人の判断に委ねるとしたほか、デパート大手の「岩田屋三越」も8日から従業員に対して、個人の判断に委ねることにしました。

市役所は

消毒液を撤去する市職員

福岡市役所では、出入り口に置かれていた検温を行う機器などが撤去されました。8日午前8時ごろ、
市役所では出入り口に設置していた検温を行うサーモグラフィーや消毒液を職員が撤去しました。
その後、通勤の時間帯などに人が密集しないよう入り口と出口を分けるために設けていた掲示やベルトによる仕切りも外されました。
また、個人の判断に委ねられているマスクについて、市役所内では多くの職員が外して業務にあたる姿が見られました。

5類に見直されたことで、総合的に判断して撤去しました。感染するとリスクになる人もいると思うので、国が示す手洗いなど有効な方法を踏まえて個人の判断で対策をとってもらいたい。
(福岡市新型コロナウイルス感染症対策担当の八尋由紀課長)

PCR検査 無料検査は終了 自己負担で検査も

以前は長い行列ができたPCR検査

一時は長い行列が出来ていた感染に不安を感じる県民対象の無料のPCR検査や抗原検査。こちらも、7日をもって終了し、県の特設サイトも閉鎖されました。ただ、無料検査が終了したあともほとんどの検査センターが営業を続ける予定で、希望すれば自己負担で検査を受けられるということです。

重症患者受け入れの医療機関は

新型コロナの重症患者を受け入れてきた医療機関のうち、ECMO=人工心肺装置による治療などを行ってきた福岡市の福岡大学病院は、5類移行後も医療提供体制を維持するとしています。
具体的には、重症患者用のベッドは4床確保したうえで、6床まで増やせるようにしておくほか、医師や看護師の人数も同じ規模を継続するということです。

『5類』になったからといって体制を緩めるのではなく、どのようなことが起こっても継続的に重症患者に対応できる 体制を整えて、福岡や九州の救命につとめていきたい。
(福岡大学病院 石倉宏恭 救命救急センター長)

どう変わる? 姫野キャスターがプレゼンします

ここからは「5類」への移行でどう変わるのか、姫野キャスターのプレゼンです。

図:感染状況の把握「定点把握」に

まず、感染状況の把握方法が大きく変わります。これまではすべての医療機関からの報告をもとに毎日、感染者数が発表されていましたが、8日を最後になくなります。
インフルエンザなどと同じように指定された一部の医療機関だけが感染者数を報告する「定点把握」に変わります。定点把握された感染者数だけが週に1度、木曜日に1週間分まとめて発表されます。最初は来週の木曜日になります。

図:医療提供体制

続いて気になる医療提供体制です。これまで福岡県は専用の病床をあわせて2089確保し入院患者を受け入れていましたが、5類への移行で、コロナ専用病床という考え方自体がなくなります。
ただ、感染が再拡大した場合に備え7月末までは、基礎疾患があったり、介護の必要がある軽症の患者などのための病床を最大で1000床、9月末までは酸素投与が必要な中等症以上の患者のための病床を 最大で600床それぞれ確保するということです。そして、これまで以上にもっと幅広い医療機関が患者を受け入れられるよう体制の整備に取り組むとしています。

また、外来については、現在、診療に対応している医療機関で引き続き対応しつつ、新たにコロナ診療に対応する機関を増やすほか、診療や検査にあたる医療機関のリストの公表は県のホームページで継続するとしています。

図:感染した場合の医療費

一方、これまで公費で賄われ、無料だった医療費の窓口負担は、検査や外来診療の費用などが自己負担に見直されます。

図:ワクチン接種

ただ、ワクチンは、これまで通り今年度いっぱいは無料で接種を受けられます。
高齢者など重症化リスクの高い人などは8日から、それ以外の5歳以上の人は9月から接種できるようになります。

図:感染した場合は?

続いて感染した場合です。
これまでは外出自粛と7日間の療養が求められていましたが、今後は、発症の翌日から5日間、外出を控えることを推奨するとしています。
濃厚接触者については特定したり外出自粛を求めたりすることもなくなります。

【相談窓口】
これから感染対策は個人の判断に委ねられます。体調が悪化した場合、まずは、かかりつけ医や、こちらの24時間対応の電話相談窓口に連絡してほしいとしています。

▼福岡市 相談ダイヤル 
050ー3665-7980
050ー3629-0353
▼北九州市 受診・相談センター
050-3665-8105
▼久留米市 相談センター 
0942-30-9750
▼3市以外 福岡県総合相談窓口
050ー3665ー8126
 

幅広くコロナ患者を受け入れへ かかりつけ医の取り組みは

新型コロナの5類移行で期待されるのが、幅広い医療機関でのコロナ患者の受け入れと医療ひっ迫の軽減です。こうした中、福岡市医師会は、会員の医療機関による初めての受け入れを後押ししようと、診療のポイントなどを共有する取り組みを進めています。

一般の医療機関でもコロナ患者を受け入れ

ほかの医療機関に先駆けて8日から診療を始めることにした福岡市東区の内科医院です。

重症化リスクが高いとされる高齢のかかりつけ患者との接触を避けるため、コロナ患者は受け入れてきませんでした。しかし、5類移行をきっかけに、福岡市医師会の後押しもあってコロナ患者の診療を
始めることにしました。

コロナの重症化とか死亡率が下がっているような印象があるので、怖さが少し減ってきたように思います。(鮎川楠夫 院長)

屋外で診療を対応

心配なのは、院内感染です。

医師会がまとめたコロナ患者の診療のポイントを参考に発熱やせきなどの症状があって感染が疑われる人には、時間を決めて屋外で対応することにしました。

パーティションで分けられた待機スペース

一方、感染の可能性が低い人は、院内に設けた待機スペースで受け入れる方針です。

鮎川院長

院外で見る方と院内で待機いただく方の判断は今悩んでいるところではあります。
感染力の強弱という点で、熱ですとか、ご本人がコロナを強く疑っているですとか、せきなどの症状がひどいとか。そのへんで見極めようかなと思っています。

対応は基本的に院長1人で行う予定ですが、不安もあるといいます。

鮎川院長

通常の診療の合間をぬってしますから、ちょっと仕事量が心配な点はあります。
やってみないとわからないと思っております。

そして、きょう8日。
午前中の外来患者は10人あまり。この中に感染が疑われる人はいませんでした。病院では感染の再拡大に備えて、体制を整えたいとしています。

鮎川院長

ついに来たなと思う、心配がありますが、今のうちに確実なペースで業務が完成していくと冬場に向けていいかなと思います。

幅広い医療機関での受け入れに向けて取り組みが進む一方、福岡市医師会では引き続き感染対策を行う重要性を訴えています。

福岡市医師会 平田泰彦会長

インフルエンザの分類のところになったというだけで感染力も変わりませんし、やっぱり高齢者がかかると重症化して亡くなることもるわけです。やはり用心だけは続けて、マスクをつけるとか、家の中では換気するとか手洗いとかですね、そういうのはもうしばらく続けてほしいと思います。

リスクはある、でもつながりを大切にしたい

対面での面会が再開

福岡市にある特別養護老人ホームは、感染対策を段階的に緩和し、3月には家族などとの対面での面会を再開しました。一度に面会できる人数や時間に制限はありますが、基本的な感染対策をとったうえで、写真のように高齢者と家族が部屋でともに過ごすことができます。

対面での面会の再開で感染リスクが上がる心配はありますが、高齢者の気持ちやメリットを重視したといいます。

施設長

日々の生活が、お部屋を見ればわかると思いますし。利用者にとっても自分の部屋でゆっくり話せるというのは非常に喜ばしい事だと考えています。ご家族との時間をもっと大切にしたい、リスクはありながらでも、それを重要視していきたい。

ここでは、利用者が家族と一緒に外出・外泊することも認めていて、5類移行後は希望者が増えると
見込んでいます。また、中止している地域との交流行事を再開することも考えています。

検査キット

一方、施設内での感染対策はこれまでどおり徹底しています。マスクの着用や消毒など基本的な対策はもちろん、職員の週1回の抗原検査も続けています。

地域で感染者が増えれば、重症化リスクの高い高齢者を守るため、対面での面会などを再び制限することも考えています。

施設長

重症化というのは、頭に常に置いておかないといけないと思ってます。
いつでもドクターが駆けつけられる環境にありますので、ドクター、先生の協力も得ながらやっていければと思ってます。

取材後記

福岡も対象となった最初の緊急事態宣言から約3年。長かったコロナ禍で、感染者数と亡くなった方の数が公表され、NHK福岡放送局でも毎日、報じてきました。その数字の向こうにある一人ひとりの生活、命を思う日々でもありました。暮らしや社会経済のさまざまな場面が制限され、「3密の回避」「マスク越し、仕切り越し」など人との距離をとる一方、このコロナ禍では、私たち一人ひとりの行動が誰かの健康や命に深く関わっていることに気づかされた3年間でもありました。また、医療や福祉、保育をはじめ、スーパーや配送業者など命や生活を支える現場の人たちの大切さにも気づかされました。日常が少しずつコロナ禍前に戻っても、忘れないようにしたいと思います。

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