手口を知って防ぐニセ電話詐欺
- 2023年05月09日

手口を知って防ぐ ニセ電話詐欺対策
ニセ電話詐欺の被害が深刻です。今回は、現場の捜査員や犯人グループから押収した「マニュアル」から、対策をみていきます。
劇場型とも呼ばれる最近の手口はどのようなものか。
80代の女性の自宅に次のような電話がかってきました。


名乗る男
もしもし?ごめんごめん
電話の調子が悪いんよ

うん

○○っていう人から電話こんやった?
親しげに話す男の声。
男は女性の息子を名乗りました。
最初の電話から数分後。

私、鉄道会社の遺失物紛失係の
○○と申しますけれども
忘れ物のお預かりをしてまして
今度は、鉄道会社の遺失物係を名乗る人物から電話がかかってきました。
息子を名乗る男から電話で伝えられた○○という人でした。
息子の携帯・財布などを預かっている。
着信音で業務に支障が出るので、携帯電話の電源を切ると伝えてきました。

その後、息子を名乗る男から再び電話が入ります。

財布の中身の現金を盗られた
銀行のカードは今日は使えなくて
会社の振込支払いができん

どんくらいいると?

150万円くらい足らんのよ
複数の人物が次々に登場し、筋書きに基づいて進められる劇場型とも呼ばれる手口。
福岡県警で特殊詐欺事件を担当する捜査員は手口の巧妙さを知らないと被害に遭う危険性が高まると指摘します。

息子さんは非常に焦っている、病気になっている、携帯電話を落としていて息子さんに電話をかけることができない、というストーリーを前段階で作っている。これが巧妙な手口の1つです。

携帯電話をなくしている、使えないという巧妙なストーリーで『本当の息子』に電話をかけさせないように、だますための準備をしているのです。
そして、最近の手口には決まったパターンがあるといいます。

「病院の医師」が登場するパターン
息子がのどの手術を受けているというストーリーで、
声が違っても違和感がないように認識させる手口です。
「駅の職員」が登場してくるパターン
携帯を無くしたというストーリーで、
実の息子に連絡をとらせない状況を作り出す手口です。
「株の取り引きで失敗した息子」が登場するパターン
失敗で会社に損害を出してしまい、このままでは逮捕されてしまうというストーリーで、誰にも相談できない状況を作って不安をあおる手口です。

駅の職員、医者が出てきた段階で、これはオレオレ詐欺だなと気付くことができます。だまされないために、まずは手口を詳細に知ることから始めてほしいと思います。

末端の実行役は“捕まり役”
被害がなくならないもうひとつの理由は、金欲しさから闇バイトに手を出してしまう実行役の存在です。


これは現金の受け取り役の「受け子」が使う
犯罪マニュアルです。
警察が押収した資料をもとに再現しました。
内容をみると「お客様は80歳以上の女性、センスより真面目」という“心構え”や犯罪の手順が書かれています。
犯罪グループは資料を共有し、闇バイトで集められた素人でも簡単に“仕事”ができるようにしているといいます。
しかし、こうした末端の実行役は「警察に捕まる役」だと指摘されます。
それを裏付ける証拠もあります。
現金の受け取り役の「受け子」から警察が押収したスマートフォンに実際のやり取りが残されていました。

金の受け取りに失敗した受け子に対し「ちゃんとやれ」、
「まじでみんなイライラしている」と脅す指示役。

匿名性に守られみずからの手は汚さない上層部に対し、
末端の実行役は被害者に直接接するというリスクがあるほか、防犯カメラなどに写るなど証拠も残りやすいため、相次いで逮捕されています。

こうした実行役にならないよう呼びかけていくことが
重要な対策だと言います。

一度手を染めてしまったら犯行グループから氏名、住所、勤務先、家族構成、ありとあらゆる個人情報を吸い上げられて「家族がどうなってもいいのか」、「警察にばらすぞ」という言葉で脅されて犯行を止めることができません。絶対に手を出してはいけないということです。

複数の人物になりすまし電話をかけてくる「オレオレ詐欺」の被害額は、福岡県では令和2年に3000万円まで減ったものの増加に転じ、ことし(令和5年)はすでに1億5000万円を超えています。
犯罪者グループが使う偽の肩書きには紹介した「医師」や「病院の関係者」などのほか「息子の上司」が登場するケースも多いということです。警察は、自宅の固定電話にかかってきた知らない番号からの電話に出ないことに加え、出てしまったとしても、こうした肩書きが使われたら、詐欺だと気づくきっかけにして欲しいと警戒を呼びかけています。