台湾で輝け✨「博多あまおう」の挑戦
- 2023年03月16日

新型コロナの水際対策の緩和で福岡との往来が再び活発になっている台湾で2月下旬、福岡特産のイチゴ「博多あまおう」の試食・販売イベントが開かれました。その狙いや台湾の人たちの受け止めなどを取材しました。(台湾取材班・米山奈々美)
赤く輝くあまおうに人、人、人

試食・販売イベントは、台湾への輸出拡大を目指す県の肝いりで2月25日と26日の2日間、台北の量販店で開かれました。

新型コロナの感染状況が落ち着いてきたこともあり、3年ぶりに試食も行われ、赤く輝くあまおうを目当てに大勢の買い物客が詰めかけました。

かなり甘くて、歯ごたえもいいです。

台湾のイチゴは小さくて、日本のほうが大きいです。

10粒前後が入った1パックの価格は、日本円で2000円を超えます。朝市で売られるような一般的な台湾産イチゴの3倍以上ですが、多くの人が手に取っていきます。

人気の理由の1つは、あまおうの名前の由来にもなっている、その色です。

ヘタの近くまで真っ赤なあまおうは、赤が縁起のよい色とされる台湾で特に好まれるということです。

「女性のお客様はあまおうを見た瞬間に手に取って写真を撮っています。あまおうは大変人気で、特に日本で言う正月ですね、春節期間にものすごく需要があるイチゴになっております」

イベントを主催した福岡県の担当者、手嶋洋司さんは、台湾の人たちの反応を初めて目の当たりにし、手応えを感じました。

みなさん反応がいいですね。行列ができて、予想以上です。
あまおうを輝かせる取り組みとは

県などが台湾への輸出に取り組み始めたのは18年前。イチゴはもともと台湾で人気のフルーツで、経済成長に伴って、高くても品質のよいものを求める人が増えると見込んだのです。

追い風となったのは、福岡と台湾の距離の近さです。直行便を使うと早ければ収穫の2日後には台北の店頭に並べることができます。これは、市場を通じて関東に届けるのと同じ日数で、鮮度は抜群です。

さらに、安全・安心なあまおうを作り、届ける体制も整備しました。

日本とは異なる台湾の輸入基準にあった方法で栽培され、さらに空港での検査で病害虫がないと確認されたものだけが、痛まないように丁寧にこん包されて空輸されるのです。


あまおうが呼吸できるように、穴の開いたラップを使ってこん包します。密閉してしまうと、熟成が早く進んで痛みやすくなってしまうのです。よい状態で向こうに届くように工夫しています
こうした福岡県側の取り組みを、台湾側も高く評価しています。

「台湾の農薬基準に合った完璧な栽培の仕組みなら、通関手続きもすみやかになり、消費者の手にあまおうをいち早く届けることができます。台湾の消費者は福岡のあまおうを毎年、楽しみにしています」
あまおうのライバル登場!?
今回、手嶋さんが台湾を訪れた目的は、イベントの開催だけではありませんでした。台湾ではいま、どんなイチゴが人気なのか市場調査も行いました。

台北のショッピングセンターの売り場を訪れた手嶋さん。日本産のイチゴとともに並べられていた、台湾産の高級イチゴが目にとまりました。1パック、日本円でおよそ2500円。あまおうと競合する価格で販売されていたのです。

台湾産、色もいいし、形もいいですね。



すごい真っ赤ですね、色もいいし。

箱とか下に敷いてる材質とかよく考えられてますね。台湾にこのようなイチゴがあると知らなかった、現場に来こないとわからないね。勉強になりました。
あまおうが輝き続けるために
競争が激しくなる中、台湾の店舗や輸入商社との会議では、より多くの消費者の需要に応えるため輸入を増やしたいという希望が伝えられました。

しかし、福岡県内で台湾向けに栽培している農家は10人足らず。さらに、気候や発生する病害虫が異なる台湾の農薬基準にあわせて栽培する過程で日本の病害虫が発生してしまうこともあるということで、無事に出荷にこぎつけられるのは一握り。簡単には輸出量を増やせないのが実情です。

手嶋さんは、栽培に挑戦する農家が増えるよう、いっそうのブランド化など、より大きな利益を生み出す取り組みを進めていきたいと考えています。

「台湾は売り上げが伸びてますので、ものすごく重要なマーケットだと思っています。農家が無理なく作れて、台湾に量をいっぱい輸出していただいて、台湾の方にものすごくあまおうを楽しんでいただける状況ができるといいなと思ってます。簡単ではないですけど、そこは我々も精一杯支援させていただいて、やっていきたい」
取材を終えて
「日本のイチゴは、あまおうか、それ以外か」。台湾でのあまおうの認知度の高さを教えてくれた、商社の人のことばです。「もっとたくさん輸入できれば、もっとたくさんの消費者の手に届けられるのに」とも話していました。台湾向けあまおうの栽培の苦労やリスクに見合う利益を生み出す仕組みを整えて、挑戦する農家を増やせるかが輸出拡大のカギだと感じました。

互いの産品の輸出状況について和やかに情報交換