“子育てしながら働きたい”を応援!
- 2022年11月29日
子育てしながら働きたい女性を応援したいー。そんな思いから生まれた求人サイトがあります。
福岡県の調査では、女性の62%が「結婚・出産後もずっと職業をもつことが理想」と答えた一方、実際に「ずっと職業をもっている」と答えた女性は46%にとどまっています。
理想と現実のギャップの解消が望まれる中、求人サイトが広げる可能性を取材しました。
(福岡放送局記者 米山奈々美)
労働条件より大切なことって?

ことし2月に開設された求人サイト「福岡じょしごと」。「じょしごと」は、「女子」と「仕事」を組み合わせた造語で、最大の特徴は、企業の求人情報のページにあります。業務内容や賃金などの労働条件より先に、子育て中の女性従業員が実際にどのように働いているかなどについて長文の記事を載せているんです。

記事の文字数はなんと4000字!子どもが急に体調不良になったときに早退しやすいか、子育て中の女性従業員は何人いるかなど、子育てしながら働くうえで本当に知りたい情報を、経営者や従業員の生の声といっしょに紹介しています。

お子さんの参観や学校行事などは考慮してシフトを組んでいます(記事より)

保育園からの呼び出しのとき、周囲の人が「早く行っておいで」と言ってくれます(記事より)

求人サイトを立ち上げたのは、人材紹介などを手がける会社の東郷麻妃子さんです。子育て中の女性の就職支援を行う中で、一般的な求人情報では職場の様子が十分にわからないことから、就職後に自分には合わないと気づいて離職するケースが多いと聞きました。そこで新規事業として提案したのが、「福岡じょしごと」だったといいます。
「主婦歓迎だったり、女性活躍みたいなタグで載ってはいても、実際のところどうなの?っていうところがわからないので、それがわかるようなサイトがあったらすごくいいんじゃないかって」
聞きにくいことを、代わりに聞く
記事を書くライターには、子育て中の人を起用しています。求人サイトの利用者と同じ目線で情報を集め、発信するためです。
新しく掲載予定の障害者支援施設では、施設の代表だけでなく、子育て中の職員にも話を聞きました。モットーにしているのは、「就職面接では聞きにくいことを、求職者の代わりに聞く」ことです。

「福岡じょしごと」運営責任者 東郷麻妃子さん
「子育てしていると、どうしても子どもが熱を出したときに早退しなきゃいけないとかっていうところがあると思いますが、その早退するときの社内の雰囲気というか意外と気になるんですよね。“早く帰るときってどんな雰囲気ですか?”なんて、面接の時に聞けないと思うので。でも知りたい情報ではあるから、そこを私たちが根掘り葉掘り聞いています」

「私でも働けるんだって思えた」
このサイトを通じて就職を決めた、前田真理さんです。自宅で1歳の子どもを育てながら、職場には出社しない“フルリモート”で働いています。就職活動では大手求人サイトも利用しましたが、「福岡じょしごと」の記事を読むことで会社の雰囲気がよくわかり、安心して応募ができたといいます。

「本当に子育てしている方の記事が出てるわけですから。私でもこういうふうな働き方できるんだってモデルがいて。社員も楽しく働いているし、無理なく働いているという会社の中身が知れたので応募させていただきました」
企業側にもメリットが
前田さんを採用した福岡市のコンサルティング会社「ワクフリ」の代表、髙島卓也さんです。このサイトを使って採用することは、企業側にもメリットがあるといいます。

「創業の経緯から根掘り葉掘り聞かれました。子育て中の女性が安心して入れる会社を探せるように、会社の情報をしっかり掲載しようとしているのがすごく伝わってきました。記事を読んで応募してくる方のモチベーションも高いですし、子育てしながらでも働けるような会社だって思ってもらえることもメリットだと思います」
いつか、名前も変えられるように
「福岡じょしごと」が今、メインの読者と想定しているのは女性ですが、東郷さんは、子育て中の男性や、子どもがいない人にも利用してもらえる求人サイトにしていきたいと考えています。

「“じょしごと”は、女子と仕事をくっつけた造語なんですけど、例えば、10年後、20年後には名前を変えられるように。子どもがいるからとか、女性だからみたいなところで可能性を狭められない世の中になって欲しいなと思っています」
ことし2月のサイト開設以降、これまでに掲載された企業は11社です。本当に働きやすい職場か見極めるための聞き取りに時間がかかるうえ、スタッフ自身の子育てに無理のないペースで働くため、記事の掲載までに1か月近くかかるということです。時間はかかりますが、これまでに8人の採用に結びついたということで、今後、掲載企業を増やしていきたいとしています。
取材を終えて
この求人サイト、もちろん男性も利用できます。ただ、いまの実態として、子育てを担っているのは女性が多いため、名前を「じょしごと」にしているといいます。冒頭にご紹介した女性の働き方についての理想と現実のギャップを解消し、東郷さんが話していたように、「じょしごと」という名前が必要ない社会をつくっていくことが求められていると感じました。

生活や福祉に関するニュースを中心に取材。3歳と1歳の育児中。
2人とも、「ママ」より先に「パパ」としゃべるように。