2021年09月24日 (金)「バイクの"騒音"」取材後記


9/10放送の『追跡!バリサーチ』はバイクの騒音に苦しむ現場を取材しました。
担当した記者の西潟茜子です。放送後、新たな動きがありました。

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今回の現場になった糸島市の二丈パーキングが10月1日から夜間閉鎖されることが正式に発表されました。発表の文書には、赤い文字で「一部の利用者による違反行為により近隣住民の皆さまに多大な迷惑をおかけしていることから、やむをえず夜間閉鎖を行うものです」と書かれていました。

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放送内容には盛り込んでいませんが、実は、このパーキングはもともと長距離トラックの運転手などの休憩用の施設です。だから24時間、利用できるようになっています。
ところが近くの有料バイパスが無料化され、バイパスを利用する人が増えたことから、駐車場の本来の目的が少しずつ変化する中で、放送でもお伝えした自動車やバイクの暴走行為や空ぶかしによる騒音が問題化しました。
発表文にある「やむをえず」という表現には、管理者の国やパーキングを観光資源の一つとしてきた地元糸島市など、「閉鎖」とは違う形で問題の解決を望んできた人たちの悔しい気持ちが込められていると私は思います。

夜間閉鎖によって、あのバイクの集団は、別の「居場所」を求めるのだろうか。

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彼らに直接、話を聞きに行って一番印象に残ったのが「居場所がない」という言葉でした。
バイクに乗って集まることができる県内の複数のスポットが閉鎖され、さまよう彼らの気持ちもわかるような気がしたからです。それはコロナ禍で、不要不急の外出が制限され、気軽に出かけたり、旅行したりすることができない私も自分の「居場所」を求めるような気持ちになることがあるからだと思います。

それでも、リサーチを進めていくと日常生活の「居場所」で苦しむ人たちの姿が見えてきました。二丈パーキング周辺の地域に住む人たちです。
当時の私の取材メモをご紹介します。

(6月14日の取材メモ)
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「静かにしていただけませんか?」と注意をした住民の方は「なんや、おまえ!」と怒鳴られ、その後1時間ほど家の窓にライトを照らされ、怖くて外に出ることもできなくなったといいます。その恐怖とストレスから、帯状ほう疹を患い、薬を飲まないと眠れなくなって本当に苦しいと話しました。「夜は安心して眠りたい」そんな声をたくさん聞ききました。
「夜、現場に行ってみてほしい。そうすればあなたも分かる」そんな言葉もたくさんかけられました。

また、地域に長年住んでいる住民の方からは、「以前からバイクがよく通る場所。こんなことで声を上げていたらきりがない。ここに住むのであれば仕方ないと割り切らなければ。これまで我慢してきたのだから」という声もありました。

住民の中には、市役所へ相談したという方もいました。ところが、騒音問題に対応する専門の部署はなく、さまざまな部署を紹介されるうちに、声を上げること自体がためらわれるような気持ちになったと困惑していました。

こうした状況から、実態をインタビューで応えてほしいとお願いしてもなかなか答えてもらえず、放送に向けた取材は難航しました。その中で、ある住民の方が、放送前日に騒音被害の実態について手紙で伝えてくださいました。
放送では一部の紹介にとどまったので、ここで全文を掲載します。


「ご担当者様
はじめまして。
202号線沿いに住む住民のものです。
糸島は海も山も近く、環境的に子育てにとても良いと思っていました。が、現状はとてもひどいもので、夜中はバイクや車によるドリフト行為で、
子供も泣きながら起きてしまい、私も不眠症になってしまいました。
元々パニック障害を患っており、正直この騒音のせいでとてもストレスのかかる生活を送っており、パニック発作も頻繁に出るようになりました。
二丈PAが集いの広場になっていること。
警察の方から、沿線上を行ったり来たりしながら、二丈PAに集まってきていると聞きました。一部のマナーやモラルのない方の行為によって、近隣住民の方の生活に支障をきたしていること。騒音がいかに心理的なストレスに繋がり、身体の不調にまでつながる事。
この現状をこのままで放置せず、管理者にはきちんと対応いただきたい。
実際にものすごいスピードですれ違うバイクや車と衝突をしかけて、
命の危険をも「何度も」感じました。
正直人身事故が起きるのも時間の問題と思っております。
明日自分の大切な人の命が奪われ、あの時二丈PAを閉鎖していれば、、、っていう結末にならないように。
一日も早い閉鎖のご検討をお願いいたします。
そして一日も早く、住民の方たちに平和な日常が戻りますように。
心より願っております。」


放送の最後で触れましたが、騒音は公害の一つです。その中でも「感覚公害」というものに分類されます。簡単に言えば「うるさい、くさい、きたない」など、人の感覚に作用する公害です。総務省によると「感覚公害」は公害被害のおよそ7割を占めています。日常生活に密着した公害とされる一方で、自治体に感覚公害を専門とする職員や部署が少なく、問題が長期化しやすくなる傾向にあるということでした。感覚公害は、個人差があり定量化も難しいため、具体的な解決策を導きにくい実態があることを知りました。

感覚公害。皆さんの身近に潜んでいないでしょうか?社会では、時として声を上げることが、傲慢だとか異常だと思われてしまうことがあるように思いますが、声を上げることで物事は少しだけ良い方向に動くかもしれない。今回の取材で得た私の実感です。


NHK福岡放送局
記者 西潟茜子

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投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:13時20分


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