追跡!バリサーチ

2022年01月26日 (水)変われるか?"エスカレーター"マナー


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「エスカレーターでは、右側に立たないといけない」。

百武桃香さんの言葉です。
百武さんは左半身にまひがあり、エスカレーターはいつも右側に乗ります。

去年12月、百武さんへの取材を元にエスカレーターの乗り方についてお伝えしました。

「右側を歩く人のために空ける」という乗り方が浸透するなか、
歩行中に転倒するなどの事故が起きていることや
百武さんのように片側にしか立てない人もいるため、
2列乗りが呼びかけられているという内容です。

しかし「2列乗り」はほとんど浸透していないため、
私たちは現状を知ってほしいと、
ツイッターに放送内容をまとめた動画を公開しました。

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動画は広く拡散され、再生回数は110万回を超えました。
同時に多くの意見もあり、関心の高さに驚きました。

そこで先週の「追跡!バリサーチ」で追加取材。
見えてきたのは「呼びかけ以外のアイデアの必要性」でした。
どうすればすべての人が気持ちよく利用できるのか、
一緒に考えていただけると嬉しいです。


【あのインフルエンサーも反応】

なぜ、これだけ多くの反響があったのか。
私たちはツイートを分析することから始めました。

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これは、動画が掲載されたツイートの拡散数のグラフです。
動画を公開した3日後、12月24日に大きく伸びていることが分かります。
この背景には2人のキーパーソンがいました。

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24日に拡散した1人が「レンタルなんもしない人」さんです。
そのツイートがこちら。

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「わざと空いている側に立ちはだかって、『エスカレーターは歩けない』を
当たり前にしていこうかな」。

どんな気持ちで意見を発信したのか、話を聞きました。

(「レンタルなんもしない人」さん)。
「自分が知らなかったし知らない人も多いだろうなと思ったので、
もっと知られてもいいんじゃないかという気持ちだった。
(自分の)子供を右側に立たせている状態の時に、
その状態ができただけでドキドキするので、
エスカレーターは片側を空けないといけないっていう風潮が
当たり前になりすぎているなって思う。
当たり前になりすぎているから自分も染まっているのであって、
その当たり前を変えていかない限りは、
今のままになってしまうんだろうなって思う」。


さらに、23日に拡散のきっかけを作った人にも取材しました。

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大阪の作業療法士、竹林崇さんです。
普段から半身まひを抱える障害者などのリハビリに取り組んでいる
竹林さんにとって、片側にしか立てない人がいるエスカレーターの話は
ひと事ではありませんでした。

(竹林さん)。
「ツイートへの意見を見てみると
『まひしている方の手で持てないならば横向きに乗ればいい』という意見があった。
こうした一般目線での意見はもっともらしく聞こえるが、
上下肢にまひがある方にとっては前進するだけでも難しく、
そういう状況に対して想像を働かせるための情報が今かなり足りていない。
今回もエスカレーター危ないですよっていう話で止まるのではなくて、
どうしても配慮が必要なんですという情報を頒布することで
そういう潮流が少しずつできていくんじゃないかなと思う」。

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竹林さんのツイートは
私たちのツイートを上回る
7000件を超えるリツイート、9400あまりの「いいね」を集めています。

影響力のあるインフルエンサーが「知ってほしい」と共感したことが、
広く拡散されたことにつながっていました。

 

【なぜ、変わらないのか?】

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反響を確認した後、
私たちは「もしかしたら乗り方に変化が起きているかもしれない」と
駅の様子を見に行ってみましたが、そんなわけはありませんでした。

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右側を空ける人、空いた右側を駆け上がっていく人を見るたび
浸透させることの難しさを感じました。

「なぜ、変わらないのか?」
集まった意見に目を通すと、そこには答えとなるつぶやきがありました。

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こうした「2列乗りがルールなのは分かっているけれど、それができない」
という意見は多く見られました。
このほかにも・・・

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こういった条例や罰則を設けないとダメだという声もありました。

SNSという匿名性の高いものを介しているからこそ、
様々な考えを知ることができました。

 

【変わらないのは『世界共通』】。

ではどうすればいいのでしょうか?
強制的な取り組みしかないのでしょうか?

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エスカレーターに詳しい江戸川大学の斗鬼正一名誉教授は、
強制するような取り組みは決して効果的とはいえないといいます。

(江戸川大学・斗鬼正一名誉教授)
「本来マナーは条例とか罰則とか強制するものではない。
メーカーも鉄道事業者も利用者も行政も、みんなが考えていく必要がある。
『歩く権利』を主張する方々を頭から押さえつけていいのかという問題は、
民主主義の国としてある」。

実際に、埼玉県では去年10月から2列乗りを呼びかける条例が施行されましたが、
利用風景は大きく変わっていないという声もあります。
また、世界を見ると韓国が2007年から行政主導で2列乗りの呼びかけを行いましたが
「このような行政主導の強圧的なやり方はおかしい」と反発があり8年後に断念しました。斗鬼教授は、世界レベルで見ても「2列乗り」が守られている国はないといいます。


【福岡で変われば世界初? 求められる「アイデア」】

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1月中旬の福岡市交通局。
呼びかけ以外にどういう取り組みが効果的か、話し合いが続いていました。

(ミーティングでのやり取り)。
「なんで止まる必要があるか言わんけん、みんなしない」。
「走っちゃいけない以外のメッセージが必要」。

(福岡市交通局営業課・宮崎岳彦課長)。
「エスカレーター付近とかにポスターとかはったりしているが、
皆さんすぐ通り過ぎてしまうので、
なかなかメッセージが届かない部分もある。
右側に立つ勇気を与えるというか、背中を後押しする。
右側に止まってる人がそういうプレッシャーを感じなくても
済むようにしていきたい」。

もし、福岡からマナーを変えることができれば、
それは世界で初めてと言えるかもしれません。
そのために必要なのは「アイデア」です。

みなさんは、どうすればすべての人が気持ちよくエスカレーターを
利用できると思いますか?
ぜひ、アイデアをお寄せいただければ嬉しいです。

(投稿フォーム)
https://forms.nhk.or.jp/q/RPG1DDXL

(あて先)
〒810-8577
(住所不要)NHK福岡放送局『バリサーチ』係

【取材後記】
福岡に赴任した4年前、地下鉄・天神南駅のホームに降りる時に「エスカレーターは2列で乗ろう」と呼びかける大きな看板を見かけました。正直、「それは無理だろう・・・」と思ったことを覚えています。それでも「どうしてこんな呼びかけを行うのか?」と気になる部分がずっとありました。そして去年、取材を始めると事故が起きていることや「右側にしか立てない人がいる」ということが分かりました。
その後、拡散の数や集まった意見を目の当たりにしたとき、「このままではダメだ」と思いました。多くの人が利用する分、いきなり利用風景が変わるとは思いません。しかし、取材中も誰かが右側に止まると、その後ろの人たちも止まっていて、瞬間的に「2列乗り」が実現していました。これは「右側に止まること」について理解はあるということだと思います。「エスカレーターは2列で。急いでいる人は階段を」、何かきっかけを作れないか、今後も考えていきたいと思います。
(福岡拠点放送局 記者・福原 健) 

投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:18時03分 | 固定リンク


2022年01月11日 (火)さよなら「かしいかえん」 閉園に密着


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新年最初のバリサーチは、去年12月30日に閉園した福岡市東区の遊園地、『かしいかえん』、その最後の数日間に密着しました。
かしいかえんは、施設の老朽化や新型コロナの影響による入場者の減少によって、惜しまれながら、65年の歴史に幕を下ろしました。

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バリサーチには、視聴者からもメッセージが。
「まさか閉園になるとは思ってもいませんでした。これも時代の流れなのでしょうね。ありがとう かしいかえん」(めぐみさん)
「かしいかえんの思い出は、毎年9月23日になると入園料が無料になることです。観覧車だけが生きがいでした」(坂井さん)

福岡でどれだけ愛されてきた場所だったのか?
年の瀬の『かしいかえん・シルバニアガーデン』に行くと・・最後の思い出をつくろうと、たくさんの人が訪れていました。
園内には、この時のために手塩にかけて育てられた花々。みんな、自然と笑顔がこぼれます。

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さっそく、小学生男子4人組にインタビューすると・・。
「きょうはどうして来たんですか?」。
「全部!いろんなものに乗って!最後だから!最後の思い出を作る!思いっきり楽し
く!」、と元気いっぱい、口々に教えてくれます。

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引率のお母さんは・・。
「ジェットコースターデビューも遊園地デビューもここだったので、最後乗りたかったかなと思って。ちょうどいいサイズの遊園地がなくなるのはすごい残念ですね」。

また、コーヒーカップを和気あいあいと楽しむ女性たちは・・。

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 聞くと、中学校の同級生なんだそう。

「(ここは)デートの場所でもありますし、あと近藤真彦さんの握手会とかに来たりとかですね。やっぱりいちばん人気がある時だったのですごく並びました、2回並びました」。
ここで過ごした青春の日々は、今も色あせません。

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ゴーカートに乗る、ペアルックのおふたりは。
「彼女は初めてだけど、僕は小さい頃に来ていて。すごく大きく感じていた遊具、いま大きくなってみると、こんな小ちゃかったけ!?と思ったりしますね」。
さらに、かしいかえんのどんなところが魅力か質問したところ・・・?
「笑顔がいちばん好きなんで、彼女の笑顔が誰よりもいちばんかわいいと思います、恥ずかしいな」。
「(ディレクター)遊園地の魅力を聞いたつもりなんですけど……」。
このやりとりには、彼女も大笑い!彼女とふたり、これからもお幸せに!

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園内には、モルモットやヤギなど、動物たちとふれあえるコーナーも。
ここで6年間、飼育員を務めてきた松園かなえさん。担当になった当初は、たくさんの動物を前に、戸惑いもあったといいます。
「え!?大丈夫かしらって思ったんですけど、これが私の天職だったんだって初めてもう気づかされましたね。それは本当に人生最大の喜びというか」。

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去年3月、閉園することを知り、真っ先に心配したのが、動物たちの行く先でした。
「(動物たちも)私と同じもう60歳過ぎてるんですね。愛を、愛の手を差し伸べてくれたのが、だざいふ遊園地の。また前に進めるようにこの子たち励ましながら生きていこうかなと思います」。
松園さんも、動物たちと一緒にだざいふ遊園地でこれからも働くそうです。
 
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そして、最終日の12月30日。入り口には、朝から長~い行列が。

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その中に、何やら不思議な装置を持った少年を発見。
聞くと、スマホにマイクと照明、三脚を自分で取り付けた、自慢のカメラなんですって。

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 「閉まった時に撮っとかないと、だんだんと年になってから忘れたりするからそれで」。
これまでも、天神イムズの閉館など、変わり続ける福岡の町を撮影してきたんだそう。
「なくなっていくものに長い間ありがとうって感じです」。

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野外ステージの前では、かっこいいかぶり物を持った親子がいました。
小学2年生の息子さんは、ここでヒーローショーに出会い、成長できたといいます。
(お母さん)「今まではちょっと隠れたりとかしたところもあってなかなか物怖じしてなかなか自分から行動できなかったりしたところもあったんですけど、ここでできたお友達もすごくいて。目標ができた夢ができたということも含めてすごく前向きな性格になったのかなって」。
自作の衣装で、ポーズを決めてくれました。将来の夢はアクション俳優。決まってるよ!

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午後5時半すぎ、閉園の時間。

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 多くの拍手とともに、65年分の感謝が告げられました。

最後の記念撮影をする人々の中に、朝出会ったカメラの少年が。
見せてくれたのは、かしいかえんのシンボルである、観覧車。
「ゆっくりはあんまり見られなかったけど、記録に残しているから満足です」と・・。

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かしいかえん。福岡の人々にとって、忘れられない場所になりました。

最終日の入場者はおよそ9000人と去年最多。跡地の活用方法は未定ですが、ほかのレジャー施設へと思いを引き継ぎたいとのことです。

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さらに、「かしいかえん」の歴史や閉園の裏舞台について、14日(金)夜7時半放送の「#てれふく ~ありがとう、さようなら、かしいかえん~」でたっぷりお伝えします!

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投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:12時30分 | 固定リンク


2021年12月27日 (月)神社がピンチ?再建の手立ては


もうすぐお正月ということで、毎年近くの神社で初詣という人も多いと思います。
福岡県には有名な神社がたくさんありますが、小さな神社を合わせると、その数は県内で3308と、全国3位の多さなんです。
一方、福岡県神社庁によると、多くの神社では、補修などの費用が十分に集めることができないなど、維持管理が難しくなってきており、特に最近では、相次ぐ豪雨や暴風による被害で、地域のみなさんだけでは神社が支えられなくなっています。

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糸島市にある雉琴神社(きじこと・じんじゃ)では、去年9月の台風10号で、境内にあるご神木が本殿を直撃。今も半壊の状態が続いています。
神社は、収穫を願う祭りなどを行う、住民にとって大切な場所でした。
“何とか再建したい”と、氏子たちは動き出しました。

問題となったのは、修繕のための巨額の費用でした。憲法で定められた政教分離の原則があるため、行政からは資金面で支援を得ることはできません。

まずは氏子で再建費用を工面できないかと、資金集めに奔走。
およそ1400万円が集まりましたが、再建に必要な4000万円には足らず、氏子だけでの再建はあきらめざるを得ませんでした。

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(雉琴神社 氏子 重松大和さん)
「裕福な家庭ばかりじゃないですし年金だけで暮らす人から生活を脅かしてまで(再建)するものではないと思うんです。厳しいですよね」。

そんな中、思いがけず、支援をしたいという人が現れました。

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倒れたご神木の撤去に協力したいと申し出た、北九州市で林業を営む中川英則(なかがわ・ひでのり)さん。
神社が被災して困っているというニュースを見て、ボランティアで駆けつけたのです。
「これは行こうと思ってパッと思い立って行った。昼過ぎには糸島おったもん。何とか俺ができることがあれば加勢したいと思って」。
さらに中川さんは、撤去した木を市場で販売し、売ったお金およそ160万円を寄付しました。

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(撮影:雉琴神社)

氏子のみなさんは、中川さんのように、地域の外の人たちから支援を呼び込むことができないかと考え、クラウドファンディングを立ち上げました。
1700年続く、地域にかかせない神社であることを訴えると、最終的に263人から430万円が集まりました。

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さらに、SNSでも積極的に情報を発信。
神社を訪れた思い出があるという人などから応援の手紙とともに寄付が寄せられたのです。
(重松さん)「手紙まで出して頂けるっていうその気持ちがうれしいですよね。そうするとやっぱりちゃんとせないかんのやなって思いはこみ上げてきます」。

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また、個人だけでなく、企業からも支援をしてもらえないかと、市内の会社を積極的に訪問。
およそ30社から500万円の寄付が寄せられ、これまでに集まった金額は3600万円に上っています。

氏子の重松さんは、なんとか再建できる金額まで近づき、あとは立派な神社を建てて皆さんに恩返しがしたいと語りました。

 

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一方で、再建がうまくいっていない神社が多いのも現実。最大の問題は過疎化です。

4年前の九州北部豪雨で家屋186軒が全半壊した、朝倉市杷木松末(ますえ)。
神坂貞和(かみさか・さだかず)さんは、宮司を務めている4つの神社が被災したといいます。

その1つを案内してもらうと、本殿に続く石段は今も流された当時のまま。
建物も朽ち始めていました。

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もともとこの地域では過疎化が進み、手入れが難しくなっていたところ、追い打ちをかけたのが4年前の豪雨でした。住民は、避難生活が長期化する中で、およそ半数が地区を離れて新たな生活を始めています。

(宮司・神坂さん)
「もうどんどん朽ちていく感じですよね。年1回でも掃除とか手入れするかせんかはやっぱり大きいですよね。本当に人が来てないっていうのがよく分かります」。

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この地区にあった別の神社では、維持することを諦めた住民もいます。
おととし、豪雨で流された神社があった場所に、住民たちは集まり、最後に思い出を語り合ったといいます。

(住民の中村亨さん)
「何か残っていれば(再建)はあったかもしれないけど何も残っていない。管理はできない、諦めるしかない」。

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國學院大學 神道文化学部の藤本頼生准教授によれば、
地域の神社がなくなると、草とりや集会など住民が顔を合わせる機会も減ってしまうため、地域のつながりが弱まってしまう。また、神社が放置され続けると、不法侵入されたり放火されるなど、治安や防犯上の問題も出てきてしまうといいます。

取材を通し、神社が地域のコミュニケーションを支える場のひとつであることを実感したとともに、まずは地域でこうした現実を直視して、どうしていったらよいか相談を始めることの重要性を感じました。
みなさんも、初詣の機会に、近所の神社がどんな状態か、一度ご覧になってみてはいかがでしょうか?


NHK福岡 ディレクター 水口紋蔵

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投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:17時00分 | 固定リンク


2021年12月20日 (月)「視聴者が調査!"起路免喜"のナゾ 続編」


今回はなんと、視聴者の方が調べてくださったというバリサーチ!

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10月8日に放送した『起路免喜(きろめき)の謎』。
みやま市にある『起路免喜』という交差点の由来は?という投稿を取材班が地元を回って聞いたのですが、
住んでいる人も誰1人知らず、唯一分かったのが、みやま市文化財課の瓜生さんが昔聞いたことがあるという言い伝え。

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「古くは、雨が降ると大地がキラキラ光っていた。石の粒子が光を反射していた様子では・・」ということまでたどりついたのですが…。

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放送後、何と、20枚近くにも及ぶ、立派なリポートが寄せられたんです。

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送ってくださったのは、九州大学名誉教授の藤野清次さん。
これまでもネット検索とひらめきを駆使し、福岡の歴史を解き明かしてきたそうなんです。

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「キロメキっていうことばが好奇心をくすぐる」と話す藤野さんは、情報科学が専門で、ネットの海から確かな情報を見つけ出す、いわば“検索のプロフェッショナル”。
キロメキの放送を見たあと、みやま市のためになるならと調査を始めました。

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様々なキーワードを組み合わせて調べるのが、藤野流。
今回、キロメキ交差点がある国道208号線の藩政時代の名前、『三池街道』を入力しました。
すると見つかり始めたのが川や干拓地といった“水”に関係する情報。
水をヒントに地名の専門書をひもとくと…。
「そこに『メキ』っていうのはありまして、『百目木(ドウメキ)』『沢目鬼(ザワメキ)』『ガラメキ』、水から発する音の近くの土地を指すときに『メキ』っていうのを使う」。

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確かに、キロメキ交差点の近くには楠田川。さらに、起路免喜堰という名前のせきもあったのです。

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この堰の歴史は、近くの神社の記念碑に見つかりました。

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取材班が確認すると、確かに『きろめき』の文字。
江戸時代、この一帯が干拓によって作られ、きろめき堰を使って水が送られていたとありました。
では、『きろめき』の由来は、江戸時代にあるのか?

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そこから1週間あまり、『きろめき』に関する文献を探し続けた藤野さん。

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見つけ出したのが鎌倉時代の古文書でした。
記述は、なんと、760年前の京都での出来事について。
『キロメキノ尾』と呼ばれていた土地が宝積寺(ほうしゃくじ)というお寺に寄進されたとあったのです。
宝積寺は、聖武天皇とゆかりが深い古くから信仰を集めるお寺です。

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(藤野さんの論文より)「寄進された山は『昔はキロメキの尾』と呼ばれる範囲の山あいとある。
これが『キロメキ』という地名の歴史上の初出である。」

この地から遠く離れた福岡に『キロメキ』は伝わったのではないか。
確かな資料が見つからない中、藤野さんはあることをひらめきます。

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「擬音語ではないか。学問的にはオノマトペという言葉がありまして、例えば犬だったら『ワンワン』とかですねヤギだったら『メーメー』とかそこからきているんじゃないかな、これは直感です」。
では、『キロ』が擬音語だとしたら、水辺の動物といえば、そう、カエルでは?

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そこで、あの古文書に記されたキロメキノ尾を地図で調べると、『龍神池』という池が。
そこに今も『モリアオガエル』が生息しているという目撃談も見つけました。
同種のカエルの鳴き声をよく聞くと・・確かに『キロキロ』!?

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以上から、藤野さんの結論は・・。
「キロメキはモリアオガエルの鳴き声の擬音語と水辺で聞こえる音声を表した言葉である。聖武天皇の即位を実現した龍神さまを敬い、縁起のよい名前や場所として広まり後世に残ったのであろう」。

調査結果をまとめると。

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これを、みやま市文化財係の瓜生さんにも伝えたところ…。
「みやま市は干拓によって農地を広げてきた歴史があり、水は昔からとても重要なものだった。
縁起の良い呼び名というのは可能性は高い」とのことでした。
調査にかける情熱、すごいですよね。
藤野さん、本当にありがとうございました!

引き続きバリサーチでは、皆さんからの耳寄りな情報や論文をお待ちしております!

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投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:11時30分 | 固定リンク


2021年12月13日 (月)どうする?忘年会2021


12/10(金)放送のバリサーチを担当したディレクターの清田です。

年の瀬を迎えた福岡の街。
道行く人に、“今年は忘年会どうしますか?”と聞いたところ・・・。

「今年はやらないですね。会社的に(30代男性)」
「飲みたいなって思いはあるけど、感染対策しっかりしないといけない気持ちもあるし、半々な部分(20代女性)」
「いろんな人と飲みたいので、あったら嬉しかったかな(20代男性)」
さらに・・。
「今、若い人が飲み会を好まない人多いから、私もそっち側の人なので、(しなくても)大丈夫かなと(40代男性)」


比較的感染状況が落ち着いているようにみえますが、コロナ前にはほど遠いように感じます。実際、調査会社によると、忘年会や新年会を「やらない」と答えた企業は全国で70.47%、福岡では62.96%とコロナへの不安がまだまだ根強いとみられます。

一方、「若い人は飲み会を好まない」との声もありましたが、コミュニケーション不足に悩む企業も出てきています。

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福岡市のwebサービス会社につとめる五十川慈(いそがわ・めぐみ)さん。
夫の輝夫(てるお)さんも同じ会社で、コロナ対策のため、去年2月から在宅での勤務が続いています。福岡市の本社で働く70人の同僚とも、まったく顔を合わせていないといいます。

でも今、ちょっと驚く忘年会を企画しているんです。
それが、半年前からランチタイムで活用しているという“あるもの” ---

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VRシステムです・・・!

このゴーグルをつけると---、

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ネット上にある仮想空間で、ほかの同僚たちとコミュニケーションがとれるんです。
見えているのは「アバター」と呼ばれる、ネット上のキャラクター。人の手の動きや、表情なども反映しています。仮想空間上で近くにいる人の声が大きくなるなど、距離感が感じられたり、アバターの見た目も似せて設定できるため、本人とその場でしゃべっているかのような感覚です。また、ゴーグルについた外部カメラを使って、本人のみ、リアルの手元も同時に見えるため、慣れれば食事もスムーズに行えるといいます。

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五十川さんの会社では、それぞれが食べているものは相手には見えないVRの特性を活かして、「今食べているものはなに?」といったゲームが流行しています。
一見、たわいない話であっても、VRで体験すると新鮮に感じることも多く、若手たちからは大好評。コミュニケーションの広がりを実感しているといいます。
五十川さんは、「本当普通にその辺で話している感じ。チームが楽しく働くことができたり、雑談しやすいような環境を作ることが、結果として仕事のパフォーマンスにつながる」と話していました。
同じ形で、ぜひ、忘年会でお酒を飲みながらやろうと声があがっているようです。

そもそも忘年会の本来の目的は何なのか・・・。

上智大学言語教育センターの清水崇文教授に聞いたところ、一番大切にしなければならないのは “雑談”だということです。そもそも雑談とは“自己開示をしあうこと”で、互いに興味のあることや、もっている知識を知ることで、“共感する機会が増える”ことにつながります。職場の人間同士、共感する機会が増えれば、上司や同僚に報告しやすかったり、アドバイスを受けやすい環境が築かれ、自分が所属している組織の同僚に仲間意識が芽生えて、社員ひとりひとりの生産性向上につながると指摘しています。

さて、一方で忘年会をどうするか?というテーマは飲食店にとって死活問題でもあります。福岡のグルメライターであり、市の感染対策アドバイザーもつとめる栗田真二郎さんに話を聞きました。

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栗田さんによると、いま飲食店が直面しているのは、ことし夏の感染拡大による、思わぬ影響、“人材不足”です。比較的感染状況が落ち着いた年末。せっかくお客さんが出てきたのにスタッフがいない。夏場の感染拡大時、お客さんを笑顔にしてサービスするのが楽しくて勤めていたものの、休業が相次ぎ、他のサービスへ移っていったといいます。

さらに現在、お客さんがお店にたくさん入っているように見えても、実際は感染対策で席数を2分の1や3分の1に減らしているところが多いそうです。苦境の最中ではありますが、栗田さんは「ここからが勝負。自分たちのブランド力を高めていって、お客さんとファン、なおかつスタッフを確保していく」ことが重要だと指摘しました。

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栗田さんの紹介で、中央区にある、こちらの魚料理を売りにした居酒屋を訪ねました。このお店では“ファンを増やす”ための取り組みに力を入れています。

突如、音楽が鳴り響き、店にやってきたのは--

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プロのダンサーたち!
このお店でしか味わえない独自の演出として力を入れ始めました。このほか、お客さんの目の前で卵焼きを作ったりと、お客さんを楽しませることを大切にしています。
パフォーマンスを見たお客さんは、「ダンサー来るのは知らなかった。新鮮ですね」と微笑んでいました。

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お客さんを楽しませることで、もう一つ波及効果があります。
どの演出も思わず写真を撮ってしまうようなものばかり。
SNSで共有してもらうことも、狙いです。

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従業員もSNS活用に力を入れています。名物メニューの紹介や、新しいスタッフの募集など、創意工夫をこらして発信しています。
店長の行武知美さんは、「お客さんに楽しんでいただくことを一番に考えていて、動画見てきましたという方も少しずつ増えてきている」と手応えを感じていました。

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グルメライターの栗田さんは、この居酒屋をはじめ、コロナ禍で多くの飲食店でイノベーションが起きていると指摘しています。そのうえで、「どんな店が選ばれるのか。原点である人を大切にすること」が重要だと言います。

取材を終えて、栗田さんの仰ったように、どれだけお客さんひとりひとりを大切にできるか・・・、そして一緒にやっていく仲間をどれくらい作れるか・・・苦境の中でも前を向く活力を感じました。これからも、皆さんが気になることや困っていること、調べていきたいと思っています。
最後に、この場をお借りして、撮影にご協力いただいた皆さまにお礼を申し上げます。
ありがとうございました。

福岡放送局 ディレクター 清田翔太郎

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投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:13時30分 | 固定リンク


2021年11月22日 (月)新型コロナワクチン 副反応どう考える?


今回も、前回に続いて、新型コロナウイルスのワクチンについて取材しました。
テーマは「副反応」です。

県内の実態について調べようと、医師や医療機関が作成した「予防接種後副反応疑い報告書」を福岡県に情報公開請求しました。すると、680人分、1300枚余りの書類が出てきました。

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こちらが報告書のひな形です。
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項目としては、患者の性別と年齢。ワクチンの種類と接種日。それに、症状の概要や程度、患者を診察した報告者の意見などがあります。

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今回入手したのは、ことし3月から9月下旬までに接種した680人に関する報告です。
それらを項目別で集計していきました。

まず男女別でみてみますと、
女性が509人とおよそ75%、男性が170人のおよそ25%でした。

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年代別では、40代が149人と最も多く、30代が129人、
50代が127人などとなりました。

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症状の程度別では、「重い」が158人となりました。 
「重い」症状について、死亡、障害、入院など、さらに細かく書くことになっています。

それぞれの人数ですが、死亡が29人、障害が4人、入院が104人などでした。

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こうした人たちの具体的な症状についても見ていきます。

70歳の女性の報告の内容です。
「接種の翌日から38度台の熱。4日目に熱は下がるものの腹痛と吐き気。
 6日目に病院で受診、意識ははっきりとしていて、検査で異常なし。
 7日目に腹痛のため再び受診も 容態が急変して死亡」。

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続いて、50歳の女性の報告では、
「接種後30分間は異常なく帰宅。その日の夜にじんましんが出て、
 ひどい頭痛と38度台の熱。接種の翌日、昼過ぎごろに救急搬送。
 CT検査で脳内出血確認。意識消失の状態が続く」。

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こうした人たちはいずれも副反応の「疑い」として医師から報告されたもので、
この時点では実際の副反応かどうかは確定していません。

また、死亡した人については、いずれもワクチン接種との因果関係は
「わからない」とされています。

ワクチン接種後の具体的な状況がわかると、非常に不安になるかもしれませんが、
こうした症状は全体で見ると極めて少ないということも今回、わかりました。
では、どれだけの割合で報告書が提出されているのか。

680人が接種した期間には、県内ではあわせて340万人ほどが接種していますので、
単純に計算すると、副反応の疑いで報告が出された人は全体の0点02%。つまり5000人に1人の割合にとどまります。

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この5000人に1人の割合をどのように受け止めればいいのか。
国内の研究者で作る「日本ワクチン学会」で理事長を務める、福岡看護大学の岡田賢司教授に聞きました。

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「ワクチンを打った後、何か症状が出たら報告するのが副反応疑い報告制度です。その中で0.0何%と上がってきているがその中に真の副反応が正確にわかりませんが、それよりももっと少ないはず。 
他のワクチンと比べてメッセンジャーRNAワクチンだけに特別な副反応が検出できたかというと、いまのところ世界中からそんな報告はない。
人に特別、重篤な副反応はいまのところなさそうなのでワクチンを進めようという話になっている」。

岡田理事長は、報告数は多くないと受け止めているとしたうえで、今回のワクチンについて、特別に注意しなければならない状況は見つかっていないと指摘しました。

来月からは3回目のワクチン接種が始まるわけですが、
では、この報告書はいったい、何のために集めているのでしょうか。

厚生労働省は新型コロナに限らずワクチンの予防接種では、副反応が起きる可能性があるとして、国はこうした報告を集める制度を設けています。

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この制度では、現場の医師や医療機関が副反応の疑いがあると
判断した場合に報告書を書きます。

国が委託した専門の組織が、内容を分析・評価し、厚生労働省に報告します。
予防接種に重大な懸念が生じた場合、接種を中止するなど速やかに対応するためです。

このような報告を集める意義について、岡田理事長に聞きました。

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「上がってくる症例は1例1例みんなちがう。打った後の症状や死亡の原因がみんな違う。1つ1つ評価しようとしても因果関係は評価できない。
しかし、そんな人がたくさん増えてきたら関係しているかもしれないのでそこからあるシグナルがわかったらそれを医学的に疫学的に比較していく」。

接種後にでた症状をできるだけ多く集め、その中から注意すべき傾向が出てきたらすぐに対応していこうということでした。

感染者が減って、日常生活を取り戻しつつあるとワクチンの効果を感じている方も多いと思います。しかし、その一方で、副反応の疑いでつらい思いをしている人がいるのも事実です。そういった人たちのためにも、今後も副反応の疑いを幅広く集めて分析し、対策や支援に結びつけていくことが必要だと感じました。

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2021年11月15日 (月)ワクチン 打たない選択の先に・・・追い詰められる人たち


今回のテーマは、新型コロナのワクチン。
先日の放送を見た方からこんな投稿がありました。

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ワクチンを打っていないので、別の仕事をしてほしいといわれたという内容です。
まずは投稿に関して詳しく聞くため、本人を訪ねました。

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福岡県内に住む、佐藤有紀子さん(仮名)は、
子どもと関わる仕事がしたいと、大学では保育学を専攻。
現在、保育士として働いています。

新型コロナの第5波のさなか、勤務先から突如、「園の規定について変更がある」と、説明を受けました。
「(私が)ワクチンを打っていないので/子どもに全く関わらないような仕事しかできないので、事務員っていう枠にしかできないと。申し訳ないけど、そういうふうに規定が変わったと言われた」。

実はそれまで有紀子さんは、
ワクチンを打たないことを園にも認めてもらい働いていました。
「ワクチンは自由意志かどうかっていうのを確認して「強制していいものじゃないから強制はしないよ」と伝えられていた」といいます。

その方針が変わり、園からは
「保育士として働き続けてほしいので、来年4月までにできればワクチンを打ってほしい」と言われていると言います。

佐藤有紀子さん(仮名)。
「園に子どもを預けている保護者からもワクチン、職員さん、みんな打ってるんですかっていうような声が上がったりするから、そういう世の中の流れに合わせて、というような感じのことを園側から言われた」

保育士として働き続けるため、ワクチンを打ったほうがいいのか。
有紀子さんは家族で何度も話し合ってきました。
厚生労働省が出しているデータなどから、
ワクチンは「重症化を抑える効果がある」と考え、
祖母だけは接種をしています。

有紀子さんとほかの家族が
心配しているのは、
接種後の副反応です。
家族の話し合いでも結論がでていません。
「(厚労省のHPでは)ワクチンを打ったあと、亡くなった方が、ワクチンが原因ですっていうふうには出ていない。でもワクチンが原因ではないとは断定していない。分からないっていう理由」

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いまは週に2回、園側の負担で抗原検査を受け勤務を続けている有紀子さん。
来年4月以降、保育士して働ける別の園はないか探し始めています。
「もしワクチンが自由だよっていうような園があるようであれば、そっちをちょっと見学行ってみるか、もう保育職自体を辞めるか、どうしようかなっていうのは、今検討しているところですね」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

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ワクチン接種について、他にも問題は起きていないか。
NHK福岡では、アンケートを実施。
11月12日現在、113の声が寄せられました。
その中には、仕事への影響についてのものも複数ありました。
「未接種の社員は会議に出席できない、出張にいけない」。
「病院勤務、接種が当たり前という無言のプレッシャーがあります」。

中には、打たない選択をしたことで、
退職に至るまで追い込まれている、との書き込みも。
取材をすると、声を寄せてくれた男性は、介護施設で働いていました。
副反応のリスクを考え、接種を見送っていました。
今年9月以降、上司から何度も呼び出され、「接種してもらわないと困る」
「接種しないと今の業務を外す」と言われたと話していました。
そのことで心身ともに疲弊。
先日、職場に退職の意向を伝えました。

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事務員への配置を提案された保育士の有紀子さん。
いま感じているのは
ワクチンを打たない選択を続けることの難しさです。

佐藤有紀子さん(仮名)。
「強制じゃないけど、強制みたいな雰囲気になってきてるなって。あまりおおっぴらに「私は打ってないよ」みたいなことも言えないし、それで「えって」思われて距離を置かれるとか考えたらやっぱり話題にしたくない」

そもそも、こうした事例に法的な問題はないのか。
労働問題を取り扱う福岡労働局を訪ねました。
ワクチンを打たない選択をした人たちが
職場で直面している問題について福岡労働局雇用環境・均等部、指導課長の屋敷智子さんに聞いてみると。

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「確かにワクチン接種をしていない方について、ワクチン接種に関わる差別じゃないかっていうのは相談はあるんですけど、それをしちゃいけませんよっていうふうに直接禁止する法律っていうのもないんです」

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法律がない中、問題がないか判断する基準の一つとなっているのは、
9月に国が示したこの文章です。
(出典:新型コロナワクチン接種証明の利用に関する基本的な考え方について/令和3年9月9日 新型コロナウイルス感染症対策本部より)。

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そこには、
「接種を受けていないことを理由に解雇などを行うこと」は、
「差別的な取り扱いに当たる可能性が高い」とまで記述されていますが、
どのような事例が差別にあたるのか、詳しい説明は記されていません。

そのため多くのケースでは、
働く人と雇う側で、話し合いの場を持ち、
お互いで合意できる可能性を探ってもらうしかないといいます。

福岡労働局雇用環境・均等部、指導課長の屋敷智子さん。
「ワクチンを接種したくないという気持ちは尊重しないといけないから、なんとか続けられる方法を労使で模索していくしかない」
―――――――――――――――――――――――――
今回の取材を通し、
世界中の人の健康や命に関わる問題だけに、簡単には白黒付けられない。
だからこそ、感染が比較的落ち着いている今、ワクチンを巡る様々な問題について冷静に議論する必要があると感じました。

労働局指導課長の屋敷さんによると、
労働局が労使の間に入って、話し合いの場を設けるような対応もできるとのことです。
身の回りで問題が起きていたらまずは相談をしてほしいと話していました。

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2021年11月09日 (火)なぜ不足する?!10代の性知識 その背景とは


11/5(金)放送のバリサーチを担当したディレクターの中村です。
NHKで今月実施中の、「#BeyondGender九州・沖縄」キャンペーンに合わせて、今回は福岡の性教育について取材しました。

最近、よく耳にする「ジェンダー」という言葉。
ジェンダーとは、男らしさ・女らしさなど社会的に作られた性差のことを指します。
19日に九州沖縄で放送する番組のタイトル「Change!ジェンダーをこえて」にも使われているのですが、その中でも大切なのが、ジェンダーと性(セックス)にまつわる問題。
今回、いま不十分だと指摘される性教育の現場はどうなっているかと取材を始めました。

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しかし、取材現場を検討していた矢先、同僚の男性ディレクターWさんからこんなことを聞かれました。「性教育とジェンダーって、何の関係があるんですか?」。
・・・男子校育ちで、性教育を受けた覚えがあまりないというWさん。「性教育の問題は教育の問題、ジェンダーの問題はジェンダーの問題なのに、なぜジェンダーと結びつけるのですか?」と聞くWさんに対し、私は具体的な例を示して答えることができませんでした。

そこで、「ジェンダーの問題はどうセックスに影響を及ぼしているのか。性教育とのつながりは?」とその関連を調べることにしました。
まず分かったのは、今、「セックスをはじめとした、性にまつわる若者の相談が増えている」という事実。相談機関やNPO団体などに聞き取りをする中で、望まない妊娠や中絶について苦しむ若い女性はもちろん、「アダルトビデオなどの情報があふれる中、どうセックスして良いか分からない」と悩む男性も多くいるということです。
これまで福岡では、男女別に生徒が集められ、男子生徒向けに「加害者になってはいけない」という講義がされたということもわかりました。「男だから(女の子の体を無理矢理触る)」「女だから(被害に遭う)」―、こうした思い込みもジェンダーの問題のひとつ。性教育がいかにジェンダーに密接に関わっているかがうかがえるエピソードです。

さらに、「今、性の問題の低年齢化が進んでいて、特に福岡は若年の中絶が多い」という話も聞きました。
「中絶が多いというのは本当なのか。そして一体、ジェンダーとどう関係しているのか?」。

そこで、厚生労働省が出している中絶件数などのデータにあたって調査を進めました。
すると人口1000人あたりの中絶件数は、福岡は20歳未満が三番目に多い(2019年,都道府県別 人工妊娠中絶件数などから算出)という数字が見えてきました。

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若者の性に詳しい産婦人科医の田畑愛先生(熊本県)にこのデータの見方を尋ねたところ、「性教育の不足が密接に関係した問題」だと教えてくれました。増えている性感染症とともに、「コンドームを使わないでセックスする若者が増えている」ことが推察できるこのデータ。身体の仕組みやコンドームの役割をよく分かっていないために、安易に、避妊せずにセックスしてしまう若者が多くいるということが見えてきます。さらにセックスの主導権を男性に任せたり、避妊を言い出せなかったりするジェンダーの問題を背景にあるという指摘も受けました。

性感染症も中絶も、医療行為が必要となり、体に影響が出ます。成長中の若者ではよりそのリスクがあるのではないでしょうか。
では、こうした性の問題をどう解決していけば良いのか。

今、期待されているのがジェンダー観を含めた「性に関する教育」です。
放送では若者のセックスの是非までは言及しませんでしたが、田畑先生は「妊娠しても出産して責任のとれない高校生までは気軽にセックスするべきではない。大人である私たちがそこまで具体的に教えるべき」、と言い切っていました。「寝た子を起こすな」と、性教育に消極的な学校教育が続いてきましたが、田畑先生のようにはっきりと中高生にコミットする先生も現れ始め、現場はようやく、潮目を迎えているといえそうです。

福岡県でも、性暴力の被害件数が多いなどの状況を受けて、2019年に「福岡県における性暴力を根絶し、性被害から県民を守るための条例」が制定され、教育活動として、性暴力対策アドバイザー派遣事業が始まりました。

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その事業のひとつが、放送でご紹介した性暴力被害者支援センター・ふくおかの本村さんの活動であり、高校生に向けて「性的同意の心構え」までも教える授業です。本村さんの柔和な語り口からは、セックスをタブー視せず、教育現場でも真摯に向き合っていこうという姿勢を感じました。
授業後には、担当教諭や生徒が「性について考えることが大事」と話し、変化していく様子も目の当たりにしました。

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中絶や感染症の増加、レイプなどの性暴力―と聞くと、「ジェンダーと何が関係しているの?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、セックスの問題はジェンダーや暴力、感染症などに密接に関わっています。
性行為には相手の考えも影響するため、決して、一人だけの問題ではありません。さらに、セックスの問題は男女間だけの問題ではなく、同性同士でも起こりえることですし、LGBTQ+の方も同様に悩みを抱えています。

学校教育がなかなか広がらなかったように、性については普段からオープンに議論しないことが多く、家庭でも学校でも「どう教えて良いか分からない」という大人も多いかもしれません。しかし取材を通して、性の問題はひとりひとりの体や心に関わる権利に関わることがよく分かりました。取材者として、今後さらに少しでも真剣に考えていただく機会を作りたいと、19日金曜よる7時半からの番組でも改めて深掘りしていきます。

The Life「Change!2021 ジェンダーをこえて」
11月19日(金)午後7:30NHK総合(九州沖縄地方)

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最後に、この場をお借りして、撮影にご協力いただいた性暴力被害者支援センターの皆様、玄洋高校の先生や生徒の皆様にお礼を申し上げます。
引き続き性教育に限らず、ジェンダーの問題に向き合って調べていきますので、ぜひたくさんの方からご意見をお待ちしています。

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福岡放送局 ディレクター 中村宝子

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投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:11時20分 | 固定リンク


2021年10月25日 (月)ワクチンが"打てない"~未接種で追い込まれる生活~


今回は、視聴者から届いた新型コロナワクチンに関する次のような悩みの声をもとに取材をしました。

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内容は、ワクチンを接種したくてもできない上に、未接種を理由に福祉サービスを受けられないというもの。取材班は早速、詳しい事情を聞こうと投稿者を訪ねました。

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投稿をくれたのは、福岡市に住む本田恵さん(仮名)です。
夫と共働きで、特別支援学校に通う高校3年生の息子の光輝さん(仮名)を育てています。

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光輝さんは知的障害があり、言葉を理解したり自分の気持ちを表現したりするのが苦手です。恵さんは息子がコロナに感染し重症化することを心配し、ワクチンを受けさせたいと考えていました。

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恵さんはかかりつけのクリニックに息子を連れて行きましたが・・・
「刺すときに暴れるんです。全身で飛びかかってくるんですよ。急にパニックになって。親子して疲労困ぱいみたいな。打てなかったです」。

それ以来、息子の光輝さんはワクチンと聞くだけで怖がるように。
恵さんは、ワクチンを打てないのはしかたないと考えましたが、息子の友達が接種したと聞くたび精神的に追い込まれていったといいます。
「子育てのしかたが間違っていたのかと思って。自分を責めるし、息子を見ると、何なんだろう私の人生と悩んだ」と話してくれました。

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さらに今月、恵さん一家の日常生活を脅かす新たな問題が起きました。

昼間は働きに出ている恵さんは、毎月2回、2泊3日で息子を福祉施設に預けてきました。それが恵さんにとって心のゆとりを取り戻す大切な時間でした。
ところが、その施設から思わぬ知らせが。

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「ワクチン接種を2回終えた人でないと、当面の間施設を利用することは認められない」というのです。

恵さんは、戸惑いを隠せない様子でした。
「えってなって、今まで(施設に)十何年通ってるから。うちの息子が注射受けられないのご存じですよねって」。

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なぜ、施設側はワクチンの2回接種を施設利用の条件にしたのか。
施設長の答えは次のようなものでした。
「施設では入所者の方で、基礎疾患をもたれている方や重度の障害がある方、そして高齢の利用者などがたくさん利用されています。ですので、実際に新型コロナウイルスが施設に入ったときに利用者の命に関わる問題となりますので、今回はこのような決定をさせていただきました」。

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施設側の決断の背景にあったのは、感染拡大への危機感でした。今年8月には全国の障害者福祉施設195か所で感染が発生し、大きな問題となっていました。(「福祉新聞」調べ)

 

施設側は取材に対し、「知的障害などがある利用者はマスクや手の消毒を徹底させることが難しく、感染リスクを抑えるためには必要な対応だ」と話しました。

ところが取材をした6日後。
施設が急きょ、短期入所の利用条件としていたワクチンの2回接種を見直したのです。

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施設長が再びインタビューに答えました。
「短期入所にあたって、ワクチンを接種するという条件は間違いだった。本当に利用しなければいけない方、利用したい方が福祉サービスの制限を受けてしまうということに配慮が足りなかった」。

施設側は私たちの取材を受けた後、今回の対応に問題がないのか、行政などに改めて確認を行ったといいます。

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厚生労働省は、今回の件について「ワクチン接種を2回終えていない」ことは、福祉サービスの提供を拒む「正当な理由」には当たらないという見解を示しました。施設側はこれを参考に対応を見直したのです。

施設側はワクチン接種による利用制限を解除した後、利用前に抗原検査や健康状態の確認をする水際対策を行うことで感染を防いでいきたいとしています。

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さらに、恵さんが暮らす福岡市でも大きな動きがありました。
市は今月11日、障害や寝たきりなどが理由で病院や集団での接種が難しい人たち対して、新たな対応を始めると発表しました。医療チームが自宅などの希望する場所を訪れワクチンを打つ「訪問接種」を行うことにしたのです。

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福岡市は、誰も取り残すことのないようワクチン接種できる機会を確保するための対応だと答えました。

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バリサーチ取材班は、急ぎ投稿者の恵さんを訪ね報告しました。
福祉施設による利用制限が解除されたことを伝えると、恵さんは大喜びの様子でした。
「うそー!ずっと電話してたんです、いろんな施設に。短期入所いけませんかって」。

最初に訪ねてから1週間。その間も恵さんは県内にある5軒の福祉施設に連絡を入れ、息子を預かってもらえないか相談を続けていたと言います。

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恵さんは安どの気持ちに、涙を浮かべていました。
「いろいろ大変やった。うれしい。もうずっと他の所に電話して。追い詰められて・・・」

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恵さんがNHKに最初に送ってくれた投稿にも、思い詰めた気持ちが綴られていました。
「いっそのこと息子と一緒に、とバカなことを考えることが多くなりつつあります」。

ワクチンひとつで生活が一変する現実があるということ。
ワクチンひとつで不利益を被ることがあっていいのかという疑問。
今回の恵さんの投稿と涙から、ワクチンを打たないことで追い詰められる人がいる現実の深刻さを突きつけられました。

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一方で、福岡市による「訪問接種」について利用するか聞いてみると、
「どうやろ。打てる自信がない、打たせてくれる自信がない」とのこと。
「自宅であっても、注射を怖がる息子にワクチンを打たせるのは難しい」。
そう考え、恵さんは福岡市のサービスの利用を一旦、見送ることにしました。

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今回、息子のワクチン接種に関してはすぐに解決といきませんでしたが、生活の要となる福祉施設が利用できるようになったことがせめてもの救いだと恵さんは話しました。
「なんかほっとした。でも誰のせいでもないと思う。私が悪いわけじゃない、あの子が悪いわけでもない。やるだけのことはやったと思うし、しょうがないよね」。

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今回、施設が対応を見直すもとになった厚生労働省の見解ですが、実はワクチンを打てない人に対し、「どう対応しなさい」というような明確な指針が出されているわけではありませんでした。ただ、福祉施設を運営する上での基本的な考え方に照らすと適切ではないということでした。今回、取材を通してコロナやワクチンという新しい事態にまだまだ対応が追いついていない面があるのだと実感しました。

また、接種することが義務ではない新型コロナワクチンによって私たちが不利益を被ることがないよう声をあげていくだけでなく、メディアとしてワクチンをめぐる社会の動きをしっかり検証していく必要があると思いました。

バリサーチでは、今後も新型コロナウイルスやワクチン接種について取り上げていきます。コロナやワクチンで困っていることがあればぜひ意見をお寄せください。

NHK福岡拠点放送局
ディレクター 佐々木健

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投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:18時00分 | 固定リンク


2021年10月18日 (月)室見川の川底が上がっている!?


今回は視聴者の方から届いたお便りをもとに取材しました。

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「川底が上がっている」とはどういうことなのか。
室見川といえば、週末の散策などで多くの人の憩いの場となっています。
その川で、いったい何が。取材班は早速、住宅地に近い川の下流に向かいました。

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この日も釣りやウォーキングを楽しむ人たちが多くいて、
いつもと変わらないように見えましたが、川に近づいてみると・・・。

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確かに川底が上がり、水面の上に出ているところがあちこちにありました。

近くに住む人に話を聞いてみました。
「砂がとにかく多くなりました」。
「またかというくらいしょっちゅう砂がたまっているよ、ここは」。

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室見川で何が起きているのか、その原因を探るため、
川の治水について研究している九州大学工科研究院の林博徳准教授を訪ねました。

林准教授は川底の上昇は、川の上流から流れてきた土砂がたまったものだといいます。
「地質的な特徴としては、砂分が多い地質になるので
昔からすごくたくさん砂が出てくる川であることは間違いない」。

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その上で、川に砂がたまる現象は、決して特別なことではなく、
上流から流れてくる土砂の量も以前と特に変わっていないと指摘しました。

「自然現象ですね。主に川の勾配で決まっていますけど
大雨の時とかあるいはふだんの流れで下流の方に輸送されて
それが河床に堆積するという仕組みは自然の現象ですので、
室見川でももちろん起こっていますし、
ほかの川でも同じように起こっている現象になると思います」。

自然現象とはいえこのまま放っておいて大丈夫なのでしょうか。
室見川を管理する福岡県を取材すると、川底の砂を取り除く工事を行っていました。

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工事前と工事後の写真を比較すると、
川の中に土砂がたまり植物が生い茂っていた場所が実は川だったことがわかります。
この写真は3年前の工事で、
4か月にわたって1.6キロの区間で土砂を取り除いたということです。
県はこうした工事を、場所を変えて毎年行っていて、
ことしも今月13日から始まっています。

県も対策を取り始めているにもかかわらず、
それでも住民の中から川の土砂に不安の声が出ているのはなぜなのでしょうか。
さらに取材を進めると、ある変化に気づいている専門家がいました。

室見川の生態系を研究している福岡大学の伊豫岡宏樹助教です。
地元の人向けに環境教室を開いていますが、
ここ最近、住民からよく聞かれる質問があるといいます。

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「『うちは大丈夫なんだろうか』とか、
『この間の雨ですごく室見川の水位が上がっていたんだけど大丈夫でしょうか』とか
そういう質問です。
九州の色んなところで災害なんかが起きていて、
『自分の家の近くの川は大丈夫だろうか』という気持ちが
多くの方に芽生えているというか、
そういう目で川を見る人が増えたような気がします」。

室見川の近くに住む毛利博義さんも、その1人です。
子どもの頃から慣れ親しんだ室見川の、3年前の光景が忘れられないといいます。

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毛利さんは平成30年7月の西日本豪雨のことが脳裏に焼き付いているといいます。
当時は県内も豪雨に見舞われ、室見川ははん濫危険水位を超えました。

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毛利さんは次のように振り返ります。
「あの時が一番、怖いという感じですよね。
ただその後も毎年1回程度はそれに近いような状況を
多くの住民が目の当たりにしていて、
非常に心配するという状況は増えましたね。特にここ数年はそうですね」。

この経験を踏まえて、毛利さんたちは
住民どうしで防災情報を交換するグループを作成しました。

大雨が予想される時は、
室見川の状況を撮影してお互いに注意を呼びかけるようにしたのです。

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毛利さんはこうした活動をさらに進めていきたいと考えています。
「災害が起きそうな時は見るべきポイントはあるんですよね。
そこがどうなっているか情報を集約して、
LINEなどでみなさんに告知できる仕組みは早急に作りたいですよね」。


川底にたまる砂に対して不安の声が上がったのは、
記録的な豪雨が続く中で住民の防災意識が高まったことが背景にありました。

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福岡大学の伊豫岡助教は、こうした住民の意識の変化が重要だと指摘します。
「河川管理者の方とかは
そういう大きな雨が降った時はすごく心配して川を見ていると思いますけど
地域の人たちもそういう気持ちが身近になったというか、
身近に感じられるようになったということがあるんじゃないかと思います。
身近な防災について自分たちで考え始めるのはすごく大事なことだと思います」。

こうした中、行政も防災面で新たな意識を持ち始めています。

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こちらは県内の主な河川を示したものです。

青色で示したものは国が管理する一級河川、
赤色で示したものは県が管理する二級級河川です。
今回、取材した室見川のように福岡県では、
人口が多い福岡市と北九州市の近辺を二級河川が流れていることがわかります。

このため県では二級河川の防災対策を強化しようと動き出しています。

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福岡県の担当者は次のように話しています。

「想像さえしない大規模で甚大な被害を及ぼす災害が全国各地で
頻発するようになってきていることが1つの転換の起点になっています。
実は二級河川の流域の方が、人口が多いのが福岡県の特徴かなと思っています。
ということは、県が管理する二級河川も
国が管理する一級河川と同等の対策をとることが
重要ではないかなと考えているところです」。

今回の取材を通して感じたのは、
ここ数年、記録的な豪雨が続く中で、
多くの人が災害への危機感を募らせているという現実でした。
背景にあるのは「気候変動」という待ったなしの課題です。
この課題を一歩でも改善に導けるよう取材を続けなくてはならないと強く思いました。

バリサーチでは今後も気候変動や防災対策について取り上げていきます。
お気づきのことがあればぜひご意見をお寄せください。

NHK福岡放送局
記者 野依環介

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