2021年10月

島の風土が生んだかんころ餅~長崎 五島市(福江島)~


今回の食いち!は、長崎県五島列島のかんころ餅をご紹介しました。
島の土産店には必ず並んでいる五島を代表する特産品です。
「かんころ」とは五島地方の方言でサツマイモを薄く切り、天日干しにしたもの。これに餅と混ぜて作ったのが「かんころ餅」です。収穫したサツマイモをカビなどがつかないように、島に吹く風と注ぎ込む陽光にさらし、丁寧に「干し芋(かんころ)」を作り、餅と混ぜあわせていきます。その昔、島では、サツマイモの収穫が終わる秋から冬にかけて各家庭で作られた保存食で、寒い冬のひととき、家族で楽しまれていました。
年々、家庭で作られる機会は少なくなっていますが、昭和29年から続く、福江島の老舗「真鳥餅店」3代目の眞鳥浩次さん(36)は伝統を守りつつ、バターやチョコレートを使ったアイデア商品も発売。コロナ禍で観光客が減少し売り上げは厳しいのですが、新たな「かんころ餅」ファンを増やそうと全国各地にPRに向かいます。
自社農場でのサツマイモの収穫から、天日干しの「かんころ」を作り、九州各地から取り寄せる厳選したもち米を使ったかんころ餅。昔懐かしい、伝統菓子を紹介します。

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■かんころ餅


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■2代目 眞鳥久之さん

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■3代目 眞鳥浩次さん

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■干し棚

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■かんころ餅

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■かんころ餅を使った新商品

■長崎 五島市の「かんころ餅」に関するお問合せ
▽真鳥餅店 電話:0959−72−2588


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こんにちは!中田理奈です。
今回の食いちは、長崎県五島市の「かんころ餅」でした!!

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サツマイモとお餅のコンビネーション、最高でした!
サツマイモもお餅も、どちらも大好きな私ですが、実はこれまでかんころ餅を食べた
ことはありませんでした。
なんとなく、名前から大福みたいな見た目を想像していたのですが・・・。
全然違いました!(笑)
見た目はお餅よりも、芋ようかんのほうに近かったです。

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焼いて食べることが多いということで、実際にいただいてみると、
外はカリッとしていて、中はしっとりでした!!
お餅を焼いたときのカリッとした食感に、中は芋あんのようなしっとり感があります。
そしてなんと言っても、焼き芋のようにサツマイモの味をしっかりと感じられました。
芋とお餅でできているので腹持ちもとてもよかったです。

本当に和菓子としておいしくて私は大好きだったのですが、これが保存食として長い間もつというのですから、いいですよね。

さて、今回、かんころ餅について教えてくださったのは、眞鳥さんご家族。
みなさん本当に優しくて、たくさんお話させていただきました!

2代目の久之さんは、サツマイモ畑に案内してくださったのですが、畑が本当に広くて、これ全部かんころ餅にするんですかと聞くと、他にも畑があるよと言われて驚きました(笑)
全部で6町(約6ヘクタール)ほどもあるそうです!
案内していただくときも、私を笑わせてくださったり、でもきちんとかんころ餅について教えてくださったり、おもしろくてかっこいい方でした^^
 
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さて、肝心のかんころ餅作りについては3代目の浩次さんに教えていただきました!
お話ししていると、かんころ餅への熱意がとても伝わってくる方で、今も新しい商品開発も行っているそうです。
さっそくかんころ餅を作る過程を見せていただいたのですが、あまり詳しくは言えませんが職人技がたくさんあり、中には習得に5、6年もかかるという作業もありました。
あのしっとりおいしいかんころ餅を作るのはそんなに簡単なことじゃないのだなあと痛感しました。

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最後の成形の際には、2代目久之さんの妻、紅美子さんに教えてもらいながら、私も挑戦しました!
これが実は、本当に難しくて・・・(笑)
できたてのかんころ餅はとてもやわらかいので、
どうがんばっても、ぼこぼこの不格好なかんころ餅になってしまうのです・・(笑)

紅美子さんはとても優しくて、ちゃんとできていると言ってくださいましたが、比べてみると、やはり私のものはお世辞にもきれいとは言えませんでした(笑)

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五島では、今もかんころ餅を家庭で作っているところもあるそうで、
島のみなさんとお話していると、大事なふるさとの味なのだなあと強く感じました。

これからの季節、芋がおいしくなってかんころ餅の季節です。
ぜひ皆様も、一度召し上がってみてはいかがでしょうか?

投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:18時30分 | カテゴリ:食いち! | 固定リンク

ワクチンが"打てない"~未接種で追い込まれる生活~


今回は、視聴者から届いた新型コロナワクチンに関する次のような悩みの声をもとに取材をしました。

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内容は、ワクチンを接種したくてもできない上に、未接種を理由に福祉サービスを受けられないというもの。取材班は早速、詳しい事情を聞こうと投稿者を訪ねました。

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投稿をくれたのは、福岡市に住む本田恵さん(仮名)です。
夫と共働きで、特別支援学校に通う高校3年生の息子の光輝さん(仮名)を育てています。

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光輝さんは知的障害があり、言葉を理解したり自分の気持ちを表現したりするのが苦手です。恵さんは息子がコロナに感染し重症化することを心配し、ワクチンを受けさせたいと考えていました。

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恵さんはかかりつけのクリニックに息子を連れて行きましたが・・・
「刺すときに暴れるんです。全身で飛びかかってくるんですよ。急にパニックになって。親子して疲労困ぱいみたいな。打てなかったです」。

それ以来、息子の光輝さんはワクチンと聞くだけで怖がるように。
恵さんは、ワクチンを打てないのはしかたないと考えましたが、息子の友達が接種したと聞くたび精神的に追い込まれていったといいます。
「子育てのしかたが間違っていたのかと思って。自分を責めるし、息子を見ると、何なんだろう私の人生と悩んだ」と話してくれました。

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さらに今月、恵さん一家の日常生活を脅かす新たな問題が起きました。

昼間は働きに出ている恵さんは、毎月2回、2泊3日で息子を福祉施設に預けてきました。それが恵さんにとって心のゆとりを取り戻す大切な時間でした。
ところが、その施設から思わぬ知らせが。

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「ワクチン接種を2回終えた人でないと、当面の間施設を利用することは認められない」というのです。

恵さんは、戸惑いを隠せない様子でした。
「えってなって、今まで(施設に)十何年通ってるから。うちの息子が注射受けられないのご存じですよねって」。

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なぜ、施設側はワクチンの2回接種を施設利用の条件にしたのか。
施設長の答えは次のようなものでした。
「施設では入所者の方で、基礎疾患をもたれている方や重度の障害がある方、そして高齢の利用者などがたくさん利用されています。ですので、実際に新型コロナウイルスが施設に入ったときに利用者の命に関わる問題となりますので、今回はこのような決定をさせていただきました」。

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施設側の決断の背景にあったのは、感染拡大への危機感でした。今年8月には全国の障害者福祉施設195か所で感染が発生し、大きな問題となっていました。(「福祉新聞」調べ)

 

施設側は取材に対し、「知的障害などがある利用者はマスクや手の消毒を徹底させることが難しく、感染リスクを抑えるためには必要な対応だ」と話しました。

ところが取材をした6日後。
施設が急きょ、短期入所の利用条件としていたワクチンの2回接種を見直したのです。

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施設長が再びインタビューに答えました。
「短期入所にあたって、ワクチンを接種するという条件は間違いだった。本当に利用しなければいけない方、利用したい方が福祉サービスの制限を受けてしまうということに配慮が足りなかった」。

施設側は私たちの取材を受けた後、今回の対応に問題がないのか、行政などに改めて確認を行ったといいます。

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厚生労働省は、今回の件について「ワクチン接種を2回終えていない」ことは、福祉サービスの提供を拒む「正当な理由」には当たらないという見解を示しました。施設側はこれを参考に対応を見直したのです。

施設側はワクチン接種による利用制限を解除した後、利用前に抗原検査や健康状態の確認をする水際対策を行うことで感染を防いでいきたいとしています。

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さらに、恵さんが暮らす福岡市でも大きな動きがありました。
市は今月11日、障害や寝たきりなどが理由で病院や集団での接種が難しい人たち対して、新たな対応を始めると発表しました。医療チームが自宅などの希望する場所を訪れワクチンを打つ「訪問接種」を行うことにしたのです。

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福岡市は、誰も取り残すことのないようワクチン接種できる機会を確保するための対応だと答えました。

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バリサーチ取材班は、急ぎ投稿者の恵さんを訪ね報告しました。
福祉施設による利用制限が解除されたことを伝えると、恵さんは大喜びの様子でした。
「うそー!ずっと電話してたんです、いろんな施設に。短期入所いけませんかって」。

最初に訪ねてから1週間。その間も恵さんは県内にある5軒の福祉施設に連絡を入れ、息子を預かってもらえないか相談を続けていたと言います。

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恵さんは安どの気持ちに、涙を浮かべていました。
「いろいろ大変やった。うれしい。もうずっと他の所に電話して。追い詰められて・・・」

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恵さんがNHKに最初に送ってくれた投稿にも、思い詰めた気持ちが綴られていました。
「いっそのこと息子と一緒に、とバカなことを考えることが多くなりつつあります」。

ワクチンひとつで生活が一変する現実があるということ。
ワクチンひとつで不利益を被ることがあっていいのかという疑問。
今回の恵さんの投稿と涙から、ワクチンを打たないことで追い詰められる人がいる現実の深刻さを突きつけられました。

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一方で、福岡市による「訪問接種」について利用するか聞いてみると、
「どうやろ。打てる自信がない、打たせてくれる自信がない」とのこと。
「自宅であっても、注射を怖がる息子にワクチンを打たせるのは難しい」。
そう考え、恵さんは福岡市のサービスの利用を一旦、見送ることにしました。

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今回、息子のワクチン接種に関してはすぐに解決といきませんでしたが、生活の要となる福祉施設が利用できるようになったことがせめてもの救いだと恵さんは話しました。
「なんかほっとした。でも誰のせいでもないと思う。私が悪いわけじゃない、あの子が悪いわけでもない。やるだけのことはやったと思うし、しょうがないよね」。

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今回、施設が対応を見直すもとになった厚生労働省の見解ですが、実はワクチンを打てない人に対し、「どう対応しなさい」というような明確な指針が出されているわけではありませんでした。ただ、福祉施設を運営する上での基本的な考え方に照らすと適切ではないということでした。今回、取材を通してコロナやワクチンという新しい事態にまだまだ対応が追いついていない面があるのだと実感しました。

また、接種することが義務ではない新型コロナワクチンによって私たちが不利益を被ることがないよう声をあげていくだけでなく、メディアとしてワクチンをめぐる社会の動きをしっかり検証していく必要があると思いました。

バリサーチでは、今後も新型コロナウイルスやワクチン接種について取り上げていきます。コロナやワクチンで困っていることがあればぜひ意見をお寄せください。

NHK福岡拠点放送局
ディレクター 佐々木健

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投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:18時00分 | カテゴリ:追跡!バリサーチ | 固定リンク

さくさくツーン!"からしれんこん"~熊本~


今回の食いち!は熊本県のソウルフード「からしれんこん」を紹介しました。
サクサクしたれんこんの食感と、からしみそのツーンとくる風味がクセになるおいしさ。お酒のおつまみにお正月のおせち料理にと、熊本の食卓には欠かせない味です。誕生はなんと今から約400年前。病弱だった肥後熊本藩の藩主・忠利の滋養のために作らせたのが始まりと言われています。明治時代になって庶民の間にも広がりました。
熊本市南区の上田健也さんと智子さん夫妻は3人の子どもと一緒に創業50年のからしれんこん店を営んでいます。材料のれんこんはなんと自家製。熊本で古くから栽培されてきた今ではほとんど作られていない珍しい品種です。粘土質の土壌の深い場所で育つため、収穫は機械が使えずすべて手掘りですが、甘みと歯切れの良さにほれ込んで作り続けています。れんこんの中に詰めるみそもおみそ屋さんに特注し、秘伝のレシピで粉がらしと配合。甘さの後に辛みがツーンと鼻に抜ける絶妙なバランスが、地元でも評判の味となっています。さらに、からしれんこんを使った子どもから大人まで楽しめる「ピザ風からしれんこん」の作り方も教えていただきました。

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■からしれんこん

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■二代目の上田健也さん・智子さん夫妻     

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■れんこんも自家製

  息子の恭平さんが畑を担当

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■たっぷり詰まったからしみそが
  味の決め手

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■紹介したからしれんこん店

▽上田からし蓮根店
住所:熊本市南区城南町下宮地905-3
電話:0964-28-3452
営業時間:午前9時から午後7時
定休日:木曜日、6月と7月は休業
※上田さんのお店では、インターネット通販や電話での注文を受け付けています。
県外への発送も可能です。

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■ピザ風からしれんこんの作り方
▽材料:からしれんこん、マヨネーズ、ケチャップ、チーズ、お好みでバジルなど
作り方:
①からしれんこんを1センチの厚さに切る。
②サラダ油をひいたフライパンに並べ、マヨネーズとケチャップを塗る。
③チーズをのせてふたをし、からしれんこんに焦げ目がつきチーズがとろけたら完成。好みでバジルなどをふってもOK。


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こんにちは!中田理奈です。
今回の食いちは、熊本県熊本市の「からしれんこん」でした!

食べたことがあるという方も多かったのではないでしょうか?
私は辛いものが苦手でこれまで食べたことはなかったのですが、今回の取材でからしれんこんもお店によって千差万別なのだと知りました。

辛いものが苦手な人にも、逆に辛みが強いものが好きだという方にも、それぞれの好みに合ったからしれんこんがあるかもしれません。

さて今回、からしれんこんについて教えてくださったのは、上田さん一家。
みなさんとても仲がよくて、すてきなご家族でした。

早朝、まだ薄暗い時間帯から、上田さんご夫妻がふたりで作業をされていました!
外には、食欲をそそる、揚げ物のいい匂いが・・・。
揚がったからしれんこんをはじめに見た時は、卵焼きみたいでした!(笑)

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■お店の前には香ばしいいい香りが…

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■上田さん夫妻が手際よくからしれんこんを揚げています

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■まるで大きな卵焼き?

早速揚げたてをいただくと、揚げたての衣に繊維質がたっぷりのシャキシャキれんこん、そして・・・からしみそ!
はじめに甘味が来たあと、ツーンとからし独特の辛みが鼻の奥に抜けます。

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■後からツーン!がクセになります

れんこんは繊維質がとても豊富でたくさん糸を引いていました。
辛い食べ物が苦手な私でも、とても食べやすくておいしかったです!

また、上田さんご夫婦のお孫さん、花瑠(はる)ちゃんは、ご家族がからしれんこんを作っているそばで元気に遊んでいました。
きっと、花瑠ちゃんのお母さんたちも、昔はこんな風に遊んでいたのかなあと想像できてほほえましかったです。
 
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■上田さんの息子の恭平さんと孫の花瑠ちゃん

  れんこん畑も遊び場です

そして、上田家オリジナルレシピ、「ピザ風からしれんこん」。
教えていただきましたが、簡単で、家でも作ってみたいと思いました!
いただいてみると、からしれんこんの辛みがマイルドになっておいしかったです!
れんこんのシャキシャキ感とチーズのふんわり感が、とてもよかったです。
甘辛いみそと、チーズの塩味もよく合いました!

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■チーズで辛みがマイルドに

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■花瑠ちゃんもパクリ!

花瑠ちゃんは、何度もおかわりをしていて、大好きなんだなあ、と、またほほえましくなりました^^
きっとお子さんでも食べやすくなると思います。
ぜひ皆様も作ってみてください^^

熊本を訪ねる機会があったらお気に入りのからしれんこんのお店を探すのも楽しいかもしれませんね。

投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:18時30分 | カテゴリ:食いち! | 固定リンク

室見川の川底が上がっている!?


今回は視聴者の方から届いたお便りをもとに取材しました。

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「川底が上がっている」とはどういうことなのか。
室見川といえば、週末の散策などで多くの人の憩いの場となっています。
その川で、いったい何が。取材班は早速、住宅地に近い川の下流に向かいました。

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この日も釣りやウォーキングを楽しむ人たちが多くいて、
いつもと変わらないように見えましたが、川に近づいてみると・・・。

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確かに川底が上がり、水面の上に出ているところがあちこちにありました。

近くに住む人に話を聞いてみました。
「砂がとにかく多くなりました」。
「またかというくらいしょっちゅう砂がたまっているよ、ここは」。

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室見川で何が起きているのか、その原因を探るため、
川の治水について研究している九州大学工科研究院の林博徳准教授を訪ねました。

林准教授は川底の上昇は、川の上流から流れてきた土砂がたまったものだといいます。
「地質的な特徴としては、砂分が多い地質になるので
昔からすごくたくさん砂が出てくる川であることは間違いない」。

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その上で、川に砂がたまる現象は、決して特別なことではなく、
上流から流れてくる土砂の量も以前と特に変わっていないと指摘しました。

「自然現象ですね。主に川の勾配で決まっていますけど
大雨の時とかあるいはふだんの流れで下流の方に輸送されて
それが河床に堆積するという仕組みは自然の現象ですので、
室見川でももちろん起こっていますし、
ほかの川でも同じように起こっている現象になると思います」。

自然現象とはいえこのまま放っておいて大丈夫なのでしょうか。
室見川を管理する福岡県を取材すると、川底の砂を取り除く工事を行っていました。

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工事前と工事後の写真を比較すると、
川の中に土砂がたまり植物が生い茂っていた場所が実は川だったことがわかります。
この写真は3年前の工事で、
4か月にわたって1.6キロの区間で土砂を取り除いたということです。
県はこうした工事を、場所を変えて毎年行っていて、
ことしも今月13日から始まっています。

県も対策を取り始めているにもかかわらず、
それでも住民の中から川の土砂に不安の声が出ているのはなぜなのでしょうか。
さらに取材を進めると、ある変化に気づいている専門家がいました。

室見川の生態系を研究している福岡大学の伊豫岡宏樹助教です。
地元の人向けに環境教室を開いていますが、
ここ最近、住民からよく聞かれる質問があるといいます。

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「『うちは大丈夫なんだろうか』とか、
『この間の雨ですごく室見川の水位が上がっていたんだけど大丈夫でしょうか』とか
そういう質問です。
九州の色んなところで災害なんかが起きていて、
『自分の家の近くの川は大丈夫だろうか』という気持ちが
多くの方に芽生えているというか、
そういう目で川を見る人が増えたような気がします」。

室見川の近くに住む毛利博義さんも、その1人です。
子どもの頃から慣れ親しんだ室見川の、3年前の光景が忘れられないといいます。

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毛利さんは平成30年7月の西日本豪雨のことが脳裏に焼き付いているといいます。
当時は県内も豪雨に見舞われ、室見川ははん濫危険水位を超えました。

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毛利さんは次のように振り返ります。
「あの時が一番、怖いという感じですよね。
ただその後も毎年1回程度はそれに近いような状況を
多くの住民が目の当たりにしていて、
非常に心配するという状況は増えましたね。特にここ数年はそうですね」。

この経験を踏まえて、毛利さんたちは
住民どうしで防災情報を交換するグループを作成しました。

大雨が予想される時は、
室見川の状況を撮影してお互いに注意を呼びかけるようにしたのです。

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毛利さんはこうした活動をさらに進めていきたいと考えています。
「災害が起きそうな時は見るべきポイントはあるんですよね。
そこがどうなっているか情報を集約して、
LINEなどでみなさんに告知できる仕組みは早急に作りたいですよね」。


川底にたまる砂に対して不安の声が上がったのは、
記録的な豪雨が続く中で住民の防災意識が高まったことが背景にありました。

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福岡大学の伊豫岡助教は、こうした住民の意識の変化が重要だと指摘します。
「河川管理者の方とかは
そういう大きな雨が降った時はすごく心配して川を見ていると思いますけど
地域の人たちもそういう気持ちが身近になったというか、
身近に感じられるようになったということがあるんじゃないかと思います。
身近な防災について自分たちで考え始めるのはすごく大事なことだと思います」。

こうした中、行政も防災面で新たな意識を持ち始めています。

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こちらは県内の主な河川を示したものです。

青色で示したものは国が管理する一級河川、
赤色で示したものは県が管理する二級級河川です。
今回、取材した室見川のように福岡県では、
人口が多い福岡市と北九州市の近辺を二級河川が流れていることがわかります。

このため県では二級河川の防災対策を強化しようと動き出しています。

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福岡県の担当者は次のように話しています。

「想像さえしない大規模で甚大な被害を及ぼす災害が全国各地で
頻発するようになってきていることが1つの転換の起点になっています。
実は二級河川の流域の方が、人口が多いのが福岡県の特徴かなと思っています。
ということは、県が管理する二級河川も
国が管理する一級河川と同等の対策をとることが
重要ではないかなと考えているところです」。

今回の取材を通して感じたのは、
ここ数年、記録的な豪雨が続く中で、
多くの人が災害への危機感を募らせているという現実でした。
背景にあるのは「気候変動」という待ったなしの課題です。
この課題を一歩でも改善に導けるよう取材を続けなくてはならないと強く思いました。

バリサーチでは今後も気候変動や防災対策について取り上げていきます。
お気づきのことがあればぜひご意見をお寄せください。

NHK福岡放送局
記者 野依環介

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投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:11時00分 | カテゴリ:追跡!バリサーチ | 固定リンク

漁師町に秋告げるカナトフグ~福岡市玄界島~


福岡市・玄界島に秋を告げる「カナトフグ」漁が始まった。トラフグほど有名ではないが、味はトラフグに負けず劣らず甘味と弾力があり、毒もなくて調理もしやすい。しかも価格はトラフグの5分の1ほどと、昔から地元で愛されるカナトフグの魅力を伝える。
全国で広く取れるカナトフグだが、玄界島の漁師たちは珍しい「フグかご漁」で漁を行う。漁師歴30年の井上幸喜さんは、衣装ケースほどの大きさの自作のかごを満載して出航。全長10kmにも及ぶ縄に200個のかごが付いた漁具を1日12時間以上休憩の間も無く上げ下ろしする。釣り針で取るのとは違い、フグを傷つけることがないという。
島の女性たちがつくるカナトフグ料理は絶品!お鍋にすれば、ほろっとほぐれるゼラチン質で淡白な身を味わえる。玄界灘、漁師町の秋の味覚を味わい尽くす。

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■玄界島で取れたカナトフグ

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■カナトフグ漁師 井上幸喜さん

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■フグかご漁で使われているかご

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■フグかご漁の様子

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■カナトフグを使った地元の料理


【問い合わせ先】
■カナトフグを販売しているお店について
▽鮮魚店 天竜 (柳橋連合市場内)
住所:福岡市中央区春吉1-6-3
電話:092-741-8256


■玄界島のフグかご漁について
▽福岡市漁協玄界島支所
住所:〒819-0205 福岡県福岡市西区玄界島21−3
電話:092-809-2036


※カナトフグは無毒ですが、さばくには「ふぐ調理師免許」が必要です。ご注意ください。


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こんにちは!中田理奈です!
今回の食いちは、福岡市玄海島の「カナトフグ」でした!

漁に同行させていただきましたが、本当に過酷でした・・・。
まず、準備をはじめたのが真夜中の3時。
その時点で、眠気をこらえるのが大変でした。
でも、漁師の井上幸喜さんたちは、
ふだん、そこから次の日の夕方ごろまで港に帰ってこないそうです。
頭が下がります。

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私にとって夜の海でのロケは人生初。
「大丈夫だろうか」と不安な気持ちで海に向かいました。
結果は・・・意外と大丈夫でした(笑)
というのも、船の外は本当に真っ暗で、空と海の境目がわからなかったんです。
海がどこかわからないので、怖くありませんでした!

そんな真っ暗闇の中で迎えたのが、玄界灘の日の出です。
その美しさに、感動しました。
 
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さて、肝心の漁です。
まだ暗いうちから作業が始まります。
重たいカゴを大量に海に仕掛けていき、さらにそれを引き上げなければなりません。
井上さんをはじめ漁師のみなさんの底知れない体力に驚きました。
引き上げたカゴの中には・・・カナトフグ、入っていました!
触らせてもらうと、硬いうろこはなく、ふわふわ、プニプニ。
見ているとかわいく思えてきました(笑)


漁のあと、漁師の井上さんのお母さん、時代さんたちに
カナトフグを使った地元料理を作っていただきました。

お鍋、フライ、おみそ汁の三品。
そのお味は・・・どれも本当に美味!

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カナトフグをお鍋にすると、お肉がほろほろ。
から揚げは、外はカリッ、中はふわっ。
一番好きになったのは、意外にもおみそ汁でした。
カナトフグのうまみがおみそ汁をより深みとコクのある味わいにしていました。

漁師さんやお母さんたち、玄界島のみなさんは、明るくて優しい方々ばかり。
みなさんからたくさんの元気をもらいました!
撮影にご協力いただき、本当にありがとうございました。

お手ごろで、いろんな料理が楽しめるカナトフグ。
みなさんもぜひ味わってみてはいかがでしょうか?

投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:18時30分 | カテゴリ:食いち! | 固定リンク

地名ショートバリサーチ#1


さて、今回は番組宛てに寄せられた3本の地名のナゾに迫る、
題して“地名ショートバリサーチ”でした。

まずは、こちらの投稿。

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『天神橋口』交差点は、『昭和通り』と『渡辺通り』が交わる場所にある、連日、多くの車が行き交う交差点。

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そこから東に向かって歩くこと5分。見つけたのは…「西中島橋」!

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では、肝心の『天神橋』はというと、そこから川沿いを南へ1分。

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ということで、投稿にあったように「天神橋口」なのに天神橋の入り口というわけではなさそう。

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この県道を管理する県に確認しても由来はわかないとのことでしたが、
取材班はここで、交差点のローマ字表記に注目しました。
TenjinとHashiguchiの間にスキマがありますよね。さらに、Hashiguchiの頭は大文字・・?
実は、ここにヒントがあったんです。

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福岡県立図書館にあった資料からおよそ100年前の福岡市の町並みを見てみると・・、
西中島橋のすぐ手前は、“橋口丁”と記されていました。

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福岡市の歴史に詳しい、はかた博物館の立石武泰館長に尋ねると、
「あの辺り一帯が橋口町という町だったんですね。これは江戸時代から唐津街道の一部で唐津街道の(西中島)橋がある町、入り口の町ということで橋口町。だんだん天神エリアが広くなったんで、天神エリアの橋口交差点というようなことで、そういった現代にわかりやすいかたちにされたんではないかと思います」。

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つまり、天神橋口とは『天神橋の(入り)口』ではなく、『天神』と『橋口』。
かつて橋口町があった頃の名残では?とのことでした。

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かつての天神町はごく限られた範囲だったんですが、町が発展するにつれ、どんどん天神と言われるエリアが広がっていったんです。
歴史を感じますよね。

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ショートバリサーチ、続いては大刀洗町の道路標示に関する投稿について。

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町を代表するのが、築100年を超える『今村天主堂』です。
2つの塔があるレンガ造りの教会で、国の重要文化財にも指定されています。

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その付近を調べると・・ありました!『あぶなかばい』!
周りは細い路地の住宅街。四つ角も多くあります。

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歩いてみると、『あぶなかばい』と書かれた道路標示は全部で3か所。
実は、この語りかけるような文言は周辺の住民の発案だったんです。

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発案者の元区長・青木秀夫さんです。
「この教会が6年前に国の重要文化財に指定を受けまして見学者が急に増えたんですよ。子どもたちが学校に通学するときにですね、車が多いもんですから危なくないようにという思いで」。
こうした要望を受けたのが、大刀洗町役場でした。

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大刀洗町役場の黒岩雄二さんがおっしゃるには・・。
「この道は町が管理する町道になります。この先に交差点があるんですけど、こういった交差点のところに対しての注意喚起ということでですね、(方言でも)特に問題はございません」。

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さらに、町のあたたかさをアピールするため、こんなポスターも作りました。

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黒岩さんは、
「農村の田畑が広がるのどかな町でありますが、町のことを少しでもわかっていただけるとうれしく思います」とのこと。

この『あぶなか・ばい』という道路標示は、「法定外表示」という法令に定めはありませんが、注意喚起を行うものとされています。道を管理する大刀洗町も運転にも支障がない文字数ということで方言を許可したとのことです。
また、その1年後にはカーブミラーも設置され、今村天主堂周辺での事故はゼロになったそうです。

 

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さて、最後は、ちょっとユニークな交差点についての投稿。
「みやま市高田町の国道208号線沿いに『キロメキ』という交差点があります。
すごく珍しい地名?交差点名だと思いますので、調べて頂ければ幸いです」(みやま市 まさぴろさん)

ということで調べましたが、こちらの由来は、道を管理する福岡国道事務所でもわからず、
資料も見つかりませんでした。

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そんな中で、みやま市文化財係の瓜生建さんが、地元の言い伝えを教えてくれました。

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「古くは雨が降るとみやまの大地はキラキラと光っていたと言われる。
おそらく、土の中の細かな石の粒子が光を反射していた様子が、
この“キロメキ”の由来なのでは」・・!!

ただ、あくまで言い伝えということで、情報がありましたら、ぜひお寄せください。
福岡の地名や名前に関する疑問は、まだまだお待ちしております!

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投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:10時58分 | カテゴリ:追跡!バリサーチ | 固定リンク

"幻の柑橘"木酢 ~福岡 筑前町~


今回の食いち!は、福岡県筑前町の特産品の木酢(きず)をご紹介しました。
筑前町では、魚の塩焼きと言えばカボス、すだちではなく“木酢”なんです。フレッシュな香りが強い旬が9月下旬から10月中旬と短く、筑前町でもわずか10軒ほどの農家でしか栽培していません。地元でしかなかなか手に入らないことから“幻の柑橘”と呼ばれるようになったんです。

木酢栽培農家・鈴木研治さん(62)の木酢園は、夜須高原の標高380mの山間部にあります。高原特有の寒暖差のおかげで、色鮮やかで果汁がたっぷりの木酢に育つんです。
鈴木さんは2代目。62年前に木酢栽培を始めたのは、父親の友文さんです。最盛期には、20tもの収穫がありましたが、友文さんが亡くなった後、広大な木酢園は10年以上放置され荒れてしまいました。
しかし、ふるさとの木酢園を何とかしたいと、3年前に大手食品メーカーを早期退職して筑前町に戻ってきた鈴木さん。一人で、下草刈りから始め、伸び放題の老木をせん定して、今では約2tまで収穫量を復活させました。さらに、大手食品メーカーで働いていた経験を生かして、収穫量の半分近くをマーマーレードやジャムなどに加工しています。3年間で加工品を13種類に増やしました。

筑前町の道の駅「筑前みなみの里」にはホテルニューオータニ博多の総料理長が考案した「木酢のソフトクリーム」、カフェには木酢のマーマレード・木酢の輪切りのシロップ漬けを使用したハーブティーなど、地元の特産品の木酢を多くの人に知ってもらおうという広がりを見せています。筑前町の“幻の柑橘”木酢、みなさんも一度味わってみて下さい。

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■“幻の柑橘”木酢

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■種も少なく皮も薄い木酢

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■木酢栽培農家・鈴木研治さん

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■木酢マーマレード

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■木酢のソフトクリーム

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■木酢を使ったハーブティー

■番組で紹介した福岡県筑前町の「木酢」に関するお問合せ
▽鈴木木酢園 電話:0946−42−2684
▽道の駅「筑前みなみの里」 電話:0946-42-8115


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こんにちは!中田理奈です。
今回の食いちは、福岡県筑前町の「木酢」でした!!

知らなかったという方も多かったのではないでしょうか?
私は今回初めて知ったのですが、その万能さに驚きました!

今回木酢について教えてくださったのは、鈴木研治さん。
冗談を言ってたくさん笑わせてくださいました(笑)

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そして、その冗談の延長戦なのか、緑の木酢の絞りたての果汁を飲ませてくださいました!
私、このときが初木酢で一気に飲んでしまって・・・
酸っぱすぎて、顔が変になりました(笑)
でも、とっても香りがよくて、後味もすっきりしていました!!!

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今回、鈴木さんが作っている木酢を使ってハーブティーなどを提供しているというお店にもお邪魔しました!
築110年の古民家を改装したそうなのですが、とっても雰囲気がよくて何時間でもいられそうでした!
そんな中、さらにリラクシング効果がありそうなハーブティーをいただきました(笑)
ティーに木酢のマーマレードを入れて、一緒にコンポートもいただきましたが、とっても良く合いました!!!
甘さと酸味のバランスがとてもよく、特に爽やかな香りがほんとうにほっとして癒やされました。

ハーブティーを作ってくださった西嶋和香子さんは、お店の雰囲気に似合うとても優しい方でした^^

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実は、最初に鈴木さんの木酢マーマレードを食べた時、おいしくて感動したそうで、その木酢を出したい!と、木酢に合うハーブティーを探したそうです。
木酢のおいしさが引き立つとってもおいしいティーでした^^

そして今回、私も木酢を使って家でも何か料理をしたいなと思い、いくつか作りましたが・・・
中でも、個人的に好きだったのは、木酢ケーキです!
 
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ふだんあまりレモンやカボスを使ったことがなかったのでレシピがあまり思いつかなかったのですが、レモンケーキのレモンの代わりに木酢を使えばおいしいのではないかと試してみました!
すると、レモンよりも柔らかい香りと、ちょうどいい酸味と甘さが、最高においしかったです!
果汁だけでなく、木酢の皮も使用したので、生地に緑の点々が見えて、見た目でも香りでも味でも、木酢を楽しめました!

お酒やお魚、お肉に甘いもの、これ以外にも本当に幅広い使い方ができると思います^^
ぜひ皆様も、今が旬の木酢、召し上がってみてはいかがでしょうか?

投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:18時30分 | カテゴリ:食いち! | 固定リンク

ワクチンを打ちたくない ホームレスの事情とは


福岡県では10月1日現在、半数以上の人が2回目の接種を終えています。一方で、ワクチンを受けることに不安があるという人も多いのではないでしょうか。

中でも、ひときわ厳しい現実の中で、打つことをあきらめたり、ためらったりしているのが、路上や公園で生活するいわゆるホームレスの人たちです。福岡市が把握しているホームレスの人たちの数は193人。市は積極的に接種を進めていますが、実際に打ったのは8人にとどまっています。

いったいどんな事情があるのか。ホームレス支援に取り組むNPOの代表、田中敦子さんに話を聞きました。田中さんは行政に協力するかたちで、ワクチンの接種を呼びかけています。
 
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福岡市はホームレスの人たちへのワクチン接種の条件を緩和し、居場所にしている公園などを居住地として記入し顔写真を撮って提出すればワクチンを受けられるようにしました。

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田中さんたちNPOは8月からその情報を伝え、申請の手続きをサポートしていますが、なかなか申し込む人がいません。田中さんが毎週行っている夜の街の見回りでも、希望する人はほとんど見つかりませんでした。

ホームレスの男性は次のように話しました。
「自分の身は自分で守るのを基本としています」。

断られてもなお呼びかけを続ける田中さんですが、そこには大きな理由がありました。
ホームレスの人たちは保険証や所持金がなく病院にいけない人も多く、せめて重症化を防ぐため、ワクチンを打ってほしいと考えているのです。

「巡回している中で行ったら先週までお会いした方が亡くなっていたりとか、そういうこともあったんですね。体が弱い方もいらっしゃるし、もし(コロナに)かかったら、死に至ることが多いので」と田中さんは心配していました。

なぜワクチンの接種を希望する人が少ないのか。田中さんはアンケートでその理由を探ることにしました。


田中さんが心を痛めたのが「どうなってもかまわないから受けない」との回答が複数あったことでした。

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ホームレスの人に詳しく聞くと「コロナでぽっくり逝けるならその方がいいからワクチンは受けない」と話しました。将来に希望が見いだせず、ワクチンを受けることに積極的な意味が感じられないのだといいます。

アンケートで田中さんがもう一つ注目したのは、住所や顔写真などの個人情報を知られたくないという回答でした。

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あるホームレスはその理由についてこう答えました。
「やっぱ抵抗ありますよね。こういう人間がホームレスにいるということを行政にも把握されたくないし、親とかも含めて知られたくない」。

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ホームレスの人たちが抱える事情について田中さんはこう話します。
「自分の今の状態を知られたくない。特に家族に知られたくないのがあって、身を隠して生きている感じなんですよね。個人情報がどこかに漏れるんじゃないかとか、自分が今こういう状態なの知られるんじゃないかというおそれがあってそこに抵抗を感じる方が多いようです」。
 
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ホームレスの男性が心配していたように、申し込みで書かれた情報が家族などに伝わることはあるのか福岡市の担当者に確認すると「接種の際の本人確認のためだけの情報として使いそれ以外の目的では一切使うことはない」ということでした。そうした情報が正確にホームレスの人たちに届けられていないという課題がある一方で、そもそも、行政やNPOなどの世話になりたくないと話す人も多く、ホームレスの人たちの「閉ざした心」を開いてく難しさも感じました。

今回、取材を続ける中で、ワクチンの接種を前向きに考え始めた人にも出会いました。10年前から路上生活を続ける60代の夫婦です。福岡市内を転々とし、夜は公園で仮眠をとる生活を続けてきました。

娘に迷惑がかかることを恐れ、生活保護は申請をせず、長らく田中さんの支援の申し出も断ってきました。ところが最近、コロナで炊き出しなどの支援が減った上に持病の悪化で、命の危険を感じるようになったと話していました。

妻によると「病院はお金がかかってしまうので悪くなったら、自分で吐いたり、頭のツボを押したり、自分で今までなんとかしてきた」といいます。
 
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そんな夫婦に、先月大きな転機が訪れました。田中さんに相談したことで、入居できるアパートが見つかり、路上生活を抜け出すめどが見えてきたのです。

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「もしワクチンしてなかったら、何日も熱が続いたり、せきが続いたり、本当に死ぬようなことになるじゃないですか。それを思うと、ワクチンを打っといた方が症状が軽くて済むから」と、田中さんはワクチンの接種についても持ちかけました。

田中さんの話を聞き、夫婦はワクチンの接種を決意しました。妻さんは「田中さんに勇気をもらった。ワクチンを受けたい。元気になりたい」と話していました。

ところが、その2日後。田中さんの携帯に夫婦から突然、連絡が入りました。ワクチンを受けるのをやめたいというのです。

夫婦を訪ね、直接理由を聞いてみると、ひどい副反応が出た場合に耐えられず、「路上で死んでしまうのではないか」と思い始めたというのです。

田中さんは、夫婦がアパートに入居し落ち着いた後、一緒に医師を訪ね、ワクチンについても相談をしてみようと夫婦に提案しました。妻は「ワクチン打っても大丈夫になるまでがんばって、それからワクチンを打ちたいと思います」と話していました。

田中さんは「これをきっかけに自分の体の状態をしっかりみてもらって、治療すべきものがあったら治療してもらう。ワクチン接種もそれが前提。これからも色んな面で相談に乗ったり、分からないことについて支援していけたら」と話していました。これからも夫婦を支えていく考えです。

ホームレスの人たちがワクチンを打ってもいいと思えるには、まず将来に希望が見いだせること、そして何よりも生活基盤が整うことが重要だと感じました。

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投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:18時55分 | カテゴリ:追跡!バリサーチ | 固定リンク

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