2021年6月11日

どうして?性暴力の加害者"支援"


バリサーチに1通の投稿が届きました。

「福岡県で性暴力の加害者相談窓口を設置したそうですが、
 どんな支援が行われているか調べてほしい」。

6/11のバリサーチは、この投稿を元に、福岡県が去年から始めた性暴力の加害者相談窓口を取材しました。

まず背景を聞こうと投稿者の女性に会うことにしました。

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【あおさんからの投稿】

投稿してくれたのは、ペンネーム「あお」さん。
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【投稿していただいた あおさん】

あおさんは、性暴力の被害者を支援しています。
投稿のきっかけは、
被害者でなく「加害者」の相談窓口ということに
違和感を持ったためだといいます。

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(あおさん)
「被害受けられた方は何年、何十年にもわたって
 そのトラウマを抱えて自費で治療を受けられている人もいる。 
 加害者を手厚く支援するより、
 被害者の負担を考えてそちらの支援をもっと増やした方がいいのではないでしょうか。
 犯罪を予防するニュアンスもあるのかなと思うのですが、
 実際どの程度効果があるのかなということも考えます」。

なぜ「加害者」の相談窓口なのか?

こうした窓口を自治体が設けるのは全国で福岡県が初めてです。

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窓口では、▼面談や▼カウンセリングに加え、
▼通院が必要な人に対する医療費の一部補助や、
▼仕事を失った人への就労支援なども行います。

手厚いとも感じる支援を行う背景には、福岡県の現状があります。

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人口10万人あたりの性犯罪の発生率で、
福岡県は全国で2番目に高い期間が長く続きました。

最新のデータでは8番目になっていますが、
依然として高い水準であることに変わりはありません。

あえて加害者の支援に取り組むのはなぜなのか、現場を取材しました。


訪ねたのは、県が運営する相談窓口です。

相談者のプライバシーを守るため、
どこに設置されているか場所は公表されていません。
取材は室内のみという条件で行われました。

取材に応じたのは窓口の担当で、精神保健福祉士の井上俊明さんです。
去年5月に窓口を開設して以来、問い合わせは88件にのぼるといいます。
その内容について井上さんのこう説明します。

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【県加害者相談窓口担当 井上俊明さん】

(県加害者相談窓口担当 井上俊明さん)
「一番多いのがスマートフォンを使っての盗撮してしまったという方、
 その次は相手の同意なく体をさわってしまったりする強制わいせつ。
 それから電車やバスの中で痴漢行為をしてしまったという相談が割と多いですね」。

さらに相談者にはある共通点がありました。

(県加害者相談窓口担当 井上俊明さん)
「再発してしまう、再犯罪してしまう。
 繰り返してしまうっていう方がこちらの相談に来るケースではほとんどですね。
 ご本人も悪いことをやってる認識はありながら、
 ご自身の意思ではコントロールできない状態なので、
 依存している状態になると思います」。

なぜ衝動をコントロールできないのか。

かつて、住宅に侵入し下着の窃盗を繰り返したという男性が
自分の経験が何かの役立てばと取材に応じました。

自身の生育環境に悩んできた男性。
犯行に及んだのは仕事のストレスが理由でした。

(男性)
「会社の中できつい思いをしているとか、
 たとえば、俺だけ『きつい』みたいなに思っていらいらして。
 その負荷を感じないためにする、
 そういう気分を変えさせてくれるものがずっと必要でした」。


男性に、被害者に申し訳ないという気持ちはなかったのかを尋ねると。

(男性)
「ないわけではないんでしょうけど、
 ほとんど意識にのぼることがあまりなかった。
 自分中心の考えしかなくて
 『ばれないようにすればいいだろう』という思いから始まるわけです」。

当時は相手のことを考える感情が欠けていたと振り返る男性。

5年前に逮捕されたことをきっかけに
専門家のカウンセリングを受け、再発を防いでいます。


県のカウンセラーの大黒剛さんは、
相手のことが考えられないという
多くの性犯罪に共通する「共感性」の欠如をどう補っていくかが
今回の取り組みの目的の1つだといいます。

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【県カウンセラー 大黒剛さん】

(県カウンセラー 大黒剛さん)
「自分が相手をどう見てるのかというところを知って、
 初めてコントロールができるという面があります。
 どうやって自分の感情を持っていけばいいのか
 本人も気づいていない部分をプログラムを通して気づくきっかけを作っています」。

カウンセリングはおよそ半年間かけて
20回にわたって行い、改善を目指します。

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加害者の生い立ちから振り返り、
相手を思う気持ち、その「認知の歪み」がどこで生じたのか、
要因となる出来事を見つけていきます。

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(県カウンセラー 大黒剛さん)
「これまでの人生の浮き沈みをグラフを使って振り返り
 一番下のところで何が起こったのか、
 どう傷つけられたのかなどを話し合っていきます」。

取材の最後にここまで加害者に手厚くサポートする必要があるのか、カウンセラーの大黒剛さんに改めて尋ねてみました。

(県カウンセラー 大黒剛さん)
「加害者たちはいつか社会に出て行くわけです。
 そこでしっかりとした生活をしてもらわないと
 もしかしたらまた同じような被害者が出てしまうかもしれない。
 犯罪を再び繰り返さないために自分たちが力を注ぐのは
 被害者のため、被害を生まないためです」。

取材をしながらどうしても気になったことがあります。
それは被害者の方たちが
この取り組みをどのようにとらえているかということです。

長年、被害者の支援に取り組んできた
「性暴力被害者支援センター・ふくおか」の浦尚子理事長に話を聞きました。

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浦さんは、
加害者を“支援する”ということばには違和感を覚える、と率直に話しました。

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その上で、被害者は、
▽また被害にあうのではないかという思いや、
▽加害者は更生しているのかという不安を持ち続けているため、
こうした取り組みで加害者が社会的な関わりを持つことは
被害者を守ることにもつながり得るとして、一定の評価はしています。


ただ、大きな課題もあると感じています。
それは今回の取り組みが凶悪な性犯罪に対処できるか、という点です。

実は県の窓口に寄せられている相談のうち、
凶悪な性犯罪の関係はまだ少ないというのが実態です。

県としてもまだ手探りの状態で、今後も取材を続けていく必要を感じました。

バリサーチでは性犯罪を生まない社会をどう目指していけばいいか、
視聴者の皆さまからの意見を募集しています。

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【福岡県性暴力加害者相談窓口】
092-289-9398(平日9時~17時)


【性暴力被害者支援センター・ふくおか】
092-409-8100 
24時間・365日(年中無休)

投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:20時20分 | カテゴリ:追跡!バリサーチ | 固定リンク

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