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隣人として。

2023年05月19日 (金)

留学生も政府関係者も、
日本とのつながりによって迫害されているんです。


アナウンサーの廣瀬雄大です。
専門家から出たこの言葉に、改めて大きな衝撃を受けました。
そうだ、私も決して無関係じゃない―。

日本からずっと西にある、アフガニスタン。
2021年8月にイスラム主義勢力・タリバンが権力を掌握してから、2年近くが経とうとしています。
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外国の大使館で働いていた、かつて海外の大学で学んでいた、などという理由から、多くの人が迫害を受けるようになり、欧米や日本へ逃れています。
私たちの住む、九州にも。

そんな彼らの現状を取材すると、祖国から脱出する際にも、そして日本に来てからも、多くの困難に直面する現状が見えてきました。

ひとつは、そもそもの日本への脱出について、政府の支援が限られていたこと。かつて留学していた大学や、民間のNPOなどを頼って日本に逃れた人も多いといいます。


支援にあたっている団体の代表は。
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瀬谷ルミ子さん NPO法人REALs理事長
殺される可能性がある人たちがいるわけで、そういう人たちは一時的にでも安全な国に出ないといけない。
一番大変なのは査証(ビザ)を出すこと。それは、私たちは政府ではないので、できない。

アフガニスタンからの避難民は、就労や留学などのビザを取得しなければ日本に入国できないため、大学が一時的に教員として雇用したり、支援者が働き先を用意したりするなど、さまざまな手を尽くして、なんとか日本の地を踏めるようにしているのです。

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さらに、入国後も、安定した生活を手にするのは大変です。
かつて数年間留学していたと言っても、大学時代は英語メインの環境にいたため、日本語が話せない人も少なくないのです。

こうなると、難しいのが就職です。
大学が企業とのマッチングなども支援していますが、言葉の壁は厚く、高いのが実情。
日本の大学で学び、アフガニスタンでは政府の高官も務めたほど高度な知識や技術を持っているのに、就職先が決まらない人も…。

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避難民の男性
この状況で(未来を)想像するのは難しい。いまの状況にはいたくない


民間による支援には、限界があると専門家は指摘しています。

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千葉大学 小川玲子教授
大学の方ではかなり努力をしているところなんですが、残念ながら政府からの反応はないというような状況です。

やはり、初期の日本語教育がちゃんとなされていない場合、就労が安定しない。家族全体の生活が非常に低くなってしまいますし、子どもも低学歴とか不就学とか、そういうところに結びつくことが懸念されます。

 

自分の国に戻れば命が危ない。でも、日本で安定した暮らしを手にできない。
さらにその影響が、世代を超えていく可能性もある。

こうした現状を聞くと、胸が痛くなりますが…ハッとさせられたのが、冒頭の言葉でした。
祖国で迫害を受け、日本に逃れてきたのは「もともと日本とつながりがあった人たち」だということ。
アフガニスタンと聞くと、ともすれば遠い異国の話とも感じてしまうかもしれませんが、そうではないのです。


小川さんは、私たちにも出来る支援が「たくさんある」と言います。

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千葉大学 小川玲子教授
日本語支援やバザーをするってことでもいいと思いますし、さまざまな場面で日本社会との接点を作っていただくのがとても大事だと思います。

いまからでも遅くないと思います。私たちとして何ができるか考えないといけない。


日本と関わりがあって逃げてきた人たちは、いまや日本に住む地域社会の一員。
遠くの国の話ではなく、隣人の話として、改めて考えていきたいと感じます。
そうした支援の第一歩は、まずは、知ることからかもしれません。

この問題については、
ザ・ライフ 『東の果てまで逃げて 〜アフガン避難民の1年半〜』
(番組ページはこちら https://www.nhk.jp/p/ts/9RZY9ZG1Q1/episode/te/EVLZ95LY1L/
5/20(土)午前7:35~ でお伝えします。
土曜朝の放送です。ぜひご覧ください。

 

アフガニスタンからの退避に関しては、日本の支援団体などがサポートを続けています。
以下の団体では、寄付や支援などを募っています。

認定NPO法人 REALs
紛争地域からの国外退避や、シェルターの提供、医療支援などを行う

一般財団法人 パスウェイズ・ジャパン
日本にいる避難民への、奨学金や就労・自立支援などを行う


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