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「デジタル教科書」 学力テスト上位の福井県を取材!

  • 2024年04月22日

    デジタル教科書の導入が進められています。福井県では、これまで数学・算数と英語で導入してきましたが、2023年度から一部の学校で、新たに国語・社会・理科でも取り入れました。

    2023年の秋。情報通信技術を活用した教育(ICT教育)に熱心に取り組んでいる福井県永平寺町の松岡中学校を取材しました。

    はじめに見せてもらったのは、3年生の理科の授業です。

     

    生徒たちは席に着くと、タブレット端末を取り出し、慣れた手つきで電源を入れていきます。この学校では、すべての生徒にタブレット端末が支給されています。このなかにデジタル教科書のデータが入っています。


    教員「では、実験の準備を始めてください」

    授業が始まってすぐに、浮力の実験が始まりました。どんな実験なのか、どんな手順で進めるのか。教員からの説明はありません。しかし、生徒たちは戸惑うことなく、どんどん実験を進めていきます。

     


    なぜ、すぐに実験を始められたのか。それは、デジタル教科書を使って、事前に実験の動画を見て予習してきたからだといいます。

    デジタル教科書

    デジタル教科書を使った授業をより効果的にするため、タブレット端末を使って実験の様子を撮影します。

    そして、記入欄に実験結果を入力していきます。

    この日の授業で一番時間が割かれていたのが生徒同士の討論です。実験が終わると、生徒たちは実験結果から分かることを話し合いました。
    入力した実験結果はタブレット端末ですぐに一覧化されることから、意見をまとめる上でも参考になるといいます。

     

    デジタル教科書を使っている生徒たちに、感想を聞いてみました。

     

    理科は実験をよくするので、実験の動画を見ると理解しやすいです。線を引いたりすることも紙よりも自由にできるので予習する上で役立っています。

     

     

    動画を見てから授業を受けたほうが内容の理解がはやくなり、予習や復習もやりやすくなりました。デジタル教科書は合間の時間にぱっと開けます。紙の教科書を使った学習よりもモチベーションが上がると思います。

     

    授業を行った教員も、デジタル教科書は製本された教科書と違って、動画を見ることができるため、より効果的な予習につながると指摘します。そのため、授業では話し合いの時間を多く設けることができているといいます。

    伊藤拓哉 教諭

    伊藤教諭

    デジタル教科書の導入により、家庭学習でできる範囲が広がりました。そのため、学校では実験の時間を多く取れたり、今まで説明していた時間が考察の時間にあてられたり、あるいは、発表の時間にあてられたりするところが一番のいい点だと思います。教師側の説明が減り、子どもたちの活動量が上がっていく。タブレット端末を文房具のように使うことを目標としています。


    すでに2021年からデジタル教科書を導入しているという英語の授業も見せてもらいました。

    授業が始まる前から生徒たちは聞いた英語を真似して発音する「シャドーイング」と呼ばれる学習方法に取り組んでいました。デジタル教科書を使って、自宅ではネイティブの音声を聞き、それに合わせて発音の練習ができるといいます。

    「シャドーイング」で使うデジタル教科書


     

    採点機能


    発音の採点機能も備わっています。AIがネイティブの発音にどれだけ近いかを瞬時に判定。発音の正確さがパーセンテージで表示されます。単語をクリックすれば一語一語、発音を確認することもできます。


    デジタル教科書は、製本された教科書にはない機能があって便利な一方で、現場で使っている教員は、活用方法にはさらなる工夫が必要だと指摘します。

    杉若航平 教諭

    杉若教諭

    英語は、日本語訳せずに、英語として理解することが大切です。自分で発音する練習が真の英語力につながると感じています。デジタル教科書は、使い勝手はいいですが、使う場面は結構限られていると思っている部分もあります。

    授業で生徒が作成したプレゼンテーション


    このクラスでは取材当時、デジタル教科書は発音を確認するなど、予習のみに使用しているということでした。

    授業の最大の目標は自由に英語を使えるようになること。生徒同士の会話や意見発表などを通じて学ぶことが何よりも大切だといいます。
    便利なデジタル教科書に頼りすぎずに授業を組み立てる工夫が必要で、適した活用方法を今後も模索していきたいとしています。

     

    杉若教諭

    デジタル教科書を使うことで、生徒の興味・関心が高まる部分もあります。ただ、今は使用場面が限られている部分があるのも事実です。教員も子どもたちから「こんな使い方を知っているよ」というのを聞いて、参考にしている部分もあります。今後もより良い使い方を考えていきたいです。


    2024年度から本格的に導入が始まった注目のデジタル教科書。活用方法についてもっと情報交換が進み、その強みをいかした活用方法が広がることが必要だと感じました。
     

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