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福井人なら分かるはず アミ ヴィオ ワッセ これ何の名前?

ザウルス!今夜も掘らナイト 2022年9月2日放送
  • 2023年04月10日

その答えは「ショッピングセンター」。ほかにも、エルパ、サンプラザ、パリオ、ベル、メルシ、レピアと福井県には全国的には聞き慣れない名前のショッピングセンターがズラリ!一方で、隣の石川県や岐阜県にはある全国規模のショッピングモールはありません。いったいなぜ?今回はこの謎に迫ります。

独自のショッピングセンターを生んだ逆転の発想

謎を解くためにまず訪れたのは、福井市にある県内最大のショッピングセンター(SC)です。「エルパ」と呼ばれる区画には80を超えるお店が入ります。それらの店を見て回ると・・・

目を引いたのは、畳敷きのスペースに着物が並べられた店内。昔ながらの呉服屋さんのような作りです。果物売り場を見てみると、斜めの台に段ボール箱に入ったままの果物が所狭しと並び、青果店というよりは八百屋さんという呼び名の方がしっくりきます。それもそのはず、エルパに入っている店の8割以上が、もともと地元で営業していた商店なんです。

じつはここに、福井のSCの謎を解くカギがあるんです。このSCに開発当初から関わってきたという事務局長に聞きました。

佐々木国雄さん

佐々木国雄 事務局長
全国的に珍しいと思うんですが、ここは地元の商業者たちが集まって、自分たちで出店するために作ったショッピングセンターなんです。

なるほど!個性的な店構えのテナントが多かったのはそういう事情があったんですね。でもなぜ、昔ながらの商店街を守るのではなく、わざわざ自分たちでSCを作り、そこに移ることにしたのでしょうか?

時は昭和40年代後半にさかのぼります。当時、大手のスーパーが大型店を次々にオープンし、地方への参入を狙っていました。この動きに危機感を抱いたのが、福井でお店を構える地元の商業者たちです。独自の流通網を持つ大手スーパーが主体となって開発を行えば、できあがったショッピングセンターに地元のお店が入る余地はおそらくありませんでした。ならば!と生まれたのが、自分たちの店が集まったSCを作り、そこに大手の店舗を誘致するという逆転の発想です。これが福井では主流となり、全国でも「福井方式」と呼ばれるようになりました。現在、県内にある福井方式のショッピングセンターは9カ所。地元主導のショッピングセンターがこれだけ広がったのは、全国でも福井だけだといいます。

SC生き残りをかけて①  お年寄りに寄り添う

地元の商店を守りながら、大手のテナントも誘致し、お客様には買い物の選択肢を広げる福井方式。旧市街の商店街を飛び出し、郊外のSCに店をまとめたことで広い駐車場を用意することもできました。
いいことづくめに思えた福井方式ですが、個人商店の集まりなので「跡継ぎがいないと店がなくなってしまう」「お店の人たち同士の意見がまとまらない」などの弱点もあります。人口減少など時代の流れもあり、かつては17か所あった福井方式は今では約半分になってしまいました。

それでも各ショッピングセンターは、生き残りをかけて、地域に密着したユニークな取り組みを行っています。3つの事例を紹介します。
勝山市の中心部にある「サンプラザ」はオープンから45年、福井方式では現在営業している中で最も古いショッピングセンターです。

いまから16年前、全国のショッピングセンターに先駆けてサンプラザが誘致したのは、デイサービスなどを提供する介護施設でした。福井県内でも特に高齢化が進む勝山市、ならばとことん“お年寄りにとって居心地の良い場所”を目指そうと考えたのです。

介護施設の利用者は、スタッフのサポートを受けながらショッピングセンターで日用品を買いそろえることもできます。

利用者

ふつう1人では行かれんわね、危ないしさ。介護施設がショッピングセンターにあるっちゅうことは、自分にしてはありがたいことです。

何でも宅配で手に入る時代ではありますが、いろいろな商品を手に取って、比べて、選ぶ、そんな楽しみもあります。行動範囲が狭くなりがちなお年寄りにとって、自由に買い物を楽しむ時間は得難いものがあるようです。

他にも、このSC内の手芸店では週に3日、編み物教室を開催。地元の社会福祉協議会などの協力を得て、無料で利用できるカフェも開設し、お年寄り同士のコミュニティになっています。

②新商店を招き入れろ

地域のお客さんに寄り添うサービスもあれば、新しく商売を始めたい人に目を向けた取り組みもあります。 

エルパで開かれた体力作りのイベント

福井市のエルパは、SC内のイベントスペースを、月に1度、起業を考える人たちに無料で提供することにしました。この日開かれていたのは、キッズ対象の体力作りのイベントです。企画者にとっては、参加者の反応を見て改善点を探ったり、市場調査にもなります。

イベントを企画した男性
どこの馬の骨か分からないような人間に、こうやって福井の一番のショッピングセンターの立派な土地を貸してくださることに感謝しかないですね、本当に集客とかも僕らそんなにしなくても、歩くお客さんが来てくれるので、めちゃめちゃありがたいですね。

さらに去年、エルパ内のフードコートに新たに生まれたのが、チャレンジショップです。キッチンなどは備え付けで、飲食店を始めたい人が腕試しで出店することができます。初期費用はほとんどかからず、賃料も格安と破格の条件。スタートから1年あまりで20店舗近くが参加し、出店者だけでなく、お客さんからも好評です。(※現在チャレンジショップは終了しています)

こうしたチャレンジの場は、SCの利益には直接つながらないかもしれません。それでも、地域全体を盛り上げたい。そんなエルパの心意気を感じました。

③ご当地アイドル育成!

ショッピングセンターのアイドル「アミーガス」

最後に紹介するのは、“ショッピングセンター発”のご当地アイドル。結成10年の「アミーガス」です。北陸で最も長く続くご当地アイドルとも言われています。プロデュースしているのは、坂井市春江にあるSC「アル・プラザ アミ」です。

目指したのは単なるお店の宣伝グループではなく、本格的なご当地アイドルを育てること。専属のプロデューサーと契約し、演出やマネジメントを任せています。プロデューサーが作詞・作曲も担当し、この10年で50のオリジナル曲を生み出してきました。

週末はショッピングセンターでライブを実施、レッスン場にはアミの会議室を活用しました。衣装はSC内の衣料品店から提供されています。

森永康之さん

プロデューサー 森永康之さん
本当にショッピングセンターで練習してライブして運営費もいただいてみたいなグループは、多分この10年間で1つも出ていないと思います。日本中どこ探しても、相当レアなことをやっている。

活動当初は、アイドルファンからの人気の方が高かったというアミーガス。しかし、プロデューサーの森永さんは、一過性でなく長年愛され続けるためには、地元の人たちからの応援が必要不可欠だと考えました。そこでターゲットにしたのが地域の子どもたちです。「子どもたちの憧れの存在」になれるようなアイドルを目指してきました。

今では「憧れのアミーガスに自分もなりたい」と、実際にメンバーを目指す子どもたちも出てきています。現メンバーのみおさんもその一人です。

アミーガス
みおさん

お母さんとお買い物しているときに見かけました。すぐに目に入って、きらきらしているアイドルがいるなって思って、そこから私はアミーガスに入りたいと思うようになりました。

一方、元々アイドルを目指していたわけではないメンバーもいます。「とにかく楽しいことがしたい」「学校以外に居場所を作りたい」など加入した理由は様々。アミーガスは、そういった地域の子どもたちの新しい挑戦や活動の場にもなっています。

アミーガス卒業生
みゆいさん

もともと人見知りで学校も嫌いだったけど、アミーガスの活動を通して人見知りがなくなりました。ダンスや歌も初めてで、最初はめちゃくちゃ下手くそだったんですけど、自分なりに頑張って、自分に自信がつきました。

ショッピングセンターがプロデュースする全国でも珍しいアイドル。アミーガスは、地域の人たちに愛されながら、ショッピングセンターの知名度向上をリードしてきました。見守るお店の人たちも一緒に、歩んでいこうとしています。

理事長
佐藤克己
さん

アミの親しみやすさのすべてが彼女たち。アミのことを知らなくてもアミーガスは知っているということで、彼女たちを通してアミに来た方が結構います。ありがたい。これからも大事にしていきたいです。


地元の商業者たちが、生き残りをかけて自らの手で作り上げてきた「福井方式」のショッピングセンター。ここで買い物をすることで地元の経済が潤うだけでなく、それぞれのショッピングセンターのユニークな取り組みが、地域活性化にもつながっています。地域を持続させるための様々なヒントが、福井のショッピングセンターにはあるのかもしれません。  

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