4月4日(木) 放送
「在宅医療専門医に聞く『健康』と『幸せ』」

角谷:
「幸福度日本一ふくいの謎」。今週と来週は2回連続で「健康」をテーマにお伝えします。

太田:
健康であることは、幸せに生きるうえで欠かせない重要な要素ですよね。
角谷:
そうですよね。こちらをごらんください。

角谷:
民間のシンクタンクが行っている「全国都道府県幸福度ランキング」で指標とされているデータを見てみますと、福井県は「平均寿命」が全国3位、介護の必要がなく健康的に生活できる期間を示す「健康寿命」も全国4位。
日本でも有数の長生き県、しかも、健康に長く生きる県民といえそうですね。
「健康」分野の指標全体の順位は全国8位。
福井県を「幸福度1位」に押し上げる要素のひとつになっています。
一方で、こうした「幸福度」の高さが実感にはつながってないという声も聞きます。


《在宅に見る「健康」と「幸せ」》
角谷:
「健康」を「幸せ」につなげるには、何が必要なのか、多くの人の人生と向き合ってきた医師に聴きます。
重い障害や病気を抱えながらたくましく生きる、「医療的ケア児」と呼ばれる子どもたち。また、人生の最終盤を穏やかに過ごす高齢者たち。
こうした人たちと在宅医療の現場で向き合う、福井市のオレンジホームケアクリニックの紅谷浩之医師です。

ー 住み慣れた自宅で最期まで暮らしたい。 そう望む高齢者を訪問する紅谷医師です。 自宅でのみとりも数多く支えてきました。
病院に入院している時と、退院して自宅に戻ってからでは本人の心のあり方が大きく変わるといいます。

紅谷医師:
病院の時はもう痛みさえ取れればどこも行きたくないと言っていた人でも、家に帰るとやっぱりちょっと旅行行きたいとかですね、ちょっと友達と買い物行きたいとかっていうふうに、本人の視野が広がるので。 はたから見ていると、病院で痛みと向き合って薬の選択ばっかりやっている時よりも、買い物に行ったり友達としゃべっている姿見ると、幸せそうだなと感じる。

ー 在宅医療に取り組む中で、「健康であること」と「幸せであること」は必ずしも一致しないことを実感してきました。

紅谷医師:
例えば比較的、他の患者と比べると軽度の症状でも、もうずっと自分は調子が悪いって言って落ち込んじゃって暗い顔をして友達とも会えずに過ごしている人もいれば、僕らからするとすごく重症な症状があって例えば寝たきりで、人工呼吸器が必要で、常時、車いすに乗っているような方でも友達とも会っていて、毎日充実していて幸せだよなんていう人もいると、健康=病気がないこと、ではなくて病気を持っていても“健康的”に幸せに暮らす人も出会うんですね。在宅医療やっていると。 ここに健康を定義する手法と幸せを定義する手法の違いみたいなものを感じますね。

《在宅医療 福井の状況は》
角谷:
紅谷先生は在宅医療の専門医ですけれども、在宅医療という点では、今、福井県、どういう状況にあるでしょうか。
紅谷医師:
僕らが始めた頃と比べると、在宅医療は広がっていると思うんですけれども、まだまだ十分にすべての人があたりまえの選択肢として在宅医療を持っているとは言いがたい状態だなと感じていますね。

ー 国のアンケート調査では、国民のおよそ7割が自宅で最期を迎えたいと答えていますが、福井でおととし自宅で最期を迎えた人の割合は11.85%。全国平均の13.24%を下回っています。

ー また、在宅で介護サービスを提供するホームヘルパーの数について、人口1000人あたりの数は福井は3.5人。 全国平均は5.9人で、最も多い大阪の12.5人と比べるとおよそ4分の1で全国45位。在宅での介護体制も他の県と比較して充実しているということではなさそうです。

紅谷医師:
これから高齢化時代になってくると、病気を持ち続けながら生き続ける人が増えていく時代だと思うんですよね。在宅医療っていうのは、重い病気を持っていても住み慣れた家とか生活の場、つまり「幸せが供給されやすい場所」で過ごすことを支える医療なので、在宅医療はそういう意味で生活と健康と幸せを支える役割としてますます重要になってくるとは感じています。

《紅谷さんが今注目の「ポジティヴヘルス」》
ー 高齢化がいちだんと進む中で、今、紅谷さんが注目しているのが「ポジティヴヘルス」。 オランダで提唱された健康についての新たな考え方で、健康と幸せをめぐるこれまでの考え方を大きく変える可能性があるといいます。

紅谷医師:
オランダではポジティヴヘルスという考え方があって、健康の再定義がされ始めている。 健康というものは他人に定義してもらうものじゃなくて、自分の中から沸き上がってくるような自分がどういうふうに生きていきたいかとかっていう思いのほうに定義が移ってきている。

紅谷医師:
つまり、お医者さんに行って検査してもらって、結果は健康でしたかって聞いて「健康でしたよ」って他人にもらうような健康ではなくて、そういう数字も参考にしながら自分自身がどう生きていきたいか、どういうふうに動いていきたいかっていうことをやれているかどうか。 そして自分がそこに満足、納得できているかどうかの方に健康の定義が変わってきたんですね。
そういう意味では、もう本当に終末期にあしたあさって亡くなるかもしれないという方でも、本当にすごい重病人のように寝ているわけではなく、 家族と話しているような光景があるのも僕はもう亡くなる直前とはいえ穏やかな時間だというふうに感じることがありますので。

紅谷医師:
健康=病気がないっていう公式は、もう過去のものになっていくんだと思うんです。 なので、たとえ病気を持っていても、どういうふうに生き生き過ごすかをみんなで考えていく。 そのための選択肢がいっぱいあって、会話が多くなっていく、自分が病気で不便なところもあるけども、みんなでいろんな話しながら、自分で決めた「これを今後やっていくんだよね」っていうふうに言っているその人がすごく健康的で幸せそうに現場で見えているのでそういう人が増えてくる時代になるといいなと思う。

ー 紅谷医師が考える幸福度1位とは。
紅谷医師:
あなたの県は幸せ1位と言われて実感ないなっていう社会じゃなくて、他人が何位とつけようか俺幸せだよねっていうふうに自分自身で言っていける、病気があっても障害があってももっと言えば亡くなる直前であっても幸せだと思えるっていう自覚できる、そういう幸せの指標でみんなが幸せと感じてるっていう意味で1位だといいですよね。

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