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コロナ時代は“リモート映え”が大事?

2020年10月1日(木)

テレワークやオンライン会議などで胸から上、首から上だけが映る状況で自分を表現する機会が増える中、
顔の見え方や印象が改めて気になった人も少なくないのではないでしょうか。
そんな中、ビジネスシーンでは、思いがけない需要が生まれるなどさまざまな変化が起きています。


【「胸から上」で見極めろ】

ことしの就職活動は「胸から上」の勝負。多くの学生や企業の採用担当者の切実な心境です。

8月、福井市の福井銀行の会議室では採用担当者が就活中の学生たちとの面談を行っていました。学生がいるのは会議室ではなく画面の中。オンラインでの面談で、お互いに胸から上の部分だけが映った中でのやり取りです。

採用担当者は、福井にいながら東京や大阪など全国各地の学生たちと簡単に顔を合わせられる便利さの反面、これまでとは違う難しさを感じていました。画面越しの表情や声などを手がかりに、学生の人柄や性格をつかもうと努めていますが、画面に映っていない部分から醸し出される「雰囲気」や「たたずまい」がつかみにくいのです。

面談中、こんなやり取りもありました。


(学生)「部活は硬式野球部、アルバイトはホテルと居酒屋でやっています」

(採用担当者)「画面越しなので、自己紹介のときの反応とかをちょっとオーバー気味にしていただけますとありがたいです」


学生の側からも「画面越しで自分の熱や思いが面接官に十分に伝わっているか心配」という声を聞くことも多いといいます。

「お互いの雰囲気や空気感が伝わりづらいですね。パソコン画面越しよりも、面接が進んで実際に会ってみたほうが明るい印象の学生が多いです」(福井銀行 鈴木さん)

一方、採用担当者自身も「胸から上」で勝負です。新型コロナウイルスの感染拡大前に行ってきた会社見学会や先輩と語るイベントなどは、ことしは中止に。

学生たちと画面越しに接する採用担当者がまさに「会社の顔」となって会社の魅力をアピールしますが、画面に映る部分の見え方はいつも以上に気にかけているといいます。
「胸から上の印象で自分自身かつ企業の第一印象が決まってしまうので、身だしなみはすごく大切にしています」(福井銀行 鈴木さん)

【見え方重視”の流れは】

コロナ禍で急速に広がったオンライン面接やリモートワーク。あらゆる企業が導入できるわけではありませんが、日本社会全体としては定着しつつあります。

これまでは容姿に加え、その人が醸し出す雰囲気が第一印象につながっていました。ただ、感染が収束したとしても「リモート文化」はなくならないとも言われるなか、これからは、胸から上の映り方が重視される動きが続きそうです。

【コロナ時代の見せ方は】

こうした変化に化粧品業界も敏感に反応しています。福井市の繊維や化粧品を扱うメーカー「セーレン」は、オンラインで自社の化粧品のPRを進めています。

ある日、オンラインで行った、東京の女性誌の編集者との打ち合わせ。テーマは、マスクをした際や画面越しだからこその見せ方です。


「目元とか、見えるところが大事で、画面越しでも明るめに健康的に見せるメークテクニックの特集をしています。マスクのせいで肌荒れする人も多くなって顔のスキンケアにもいま非常に関心が高くなっているので」(女性誌の編集者)

福井のメーカーの担当者は、肌のつやをよくする基礎化粧品やクリームなど、画面に映る顔の印象をよく保つ商品をPRしようと、あらかじめ福井から送っていた商品を東京の編集者たちに手にとってもらい、質感や香りを試してもらいました。

「マスクをしていると、リモートの画面で見えるのは鼻から額の部分です。そこの乾燥やくすみがないようにしっかりお手入れをすることが今ますます大事になってきています」(セーレン 新家さん)

【“リモート映え”の需要】

こうした見た目への関心の高まりが意外な需要にもつながっています。

髪の毛を増やす「植毛」。東京や福岡などにクリニックを持つ医療法人では、これまでは年齢にともなって髪が薄くなった人の治療が中心で、40代から60代くらいの患者が多かったのが、ことし6月ごろからは20代や30代の若年層の患者が増えて、中には「リモート映え」を意識した患者が目立つということです。

「薄毛の治療というより、生え際とか額の形とか小さなパーツを整えたいという人が増えてきたんです。話を聞いてみると、リモートの画面の中では『鼻から上が9割』ということなので、仕事に直結する営業職などの方にとっては死活問題なんだそうです。中には眉毛の植毛を希望する人までいて、思いがけない需要に驚いています」(音田 総院長)

実際に、ことし5月に植毛をした関東地方の営業職の男性に話を聞くことができました。男性は決して髪が少なくはありません。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で対面での営業ができなくなり、オンラインでの取引先とのやり取りが始まってから、画面に映る自分の姿にショックを受けたと言います。

「これまでは自分が営業している姿なんて見たこと無かったんですが、生え際がすごく気になりました。マスクをしていると目から頭にかけてが第一印象で、どうしてもここばかり注目されてしまう。顔ばかりアップにされているのでつい気になってしまい、そこから自信なさげな印象になってしまいました。そうすると営業スタイルや売り込む商品にも自信がないようになってしまうんです…」(営業職男性)



【在宅勤務だからこそ】

男性はこれを機会に植毛にチャレンジしました。これまでは、しばらく患部が腫れるので仕事を休まなければならなくなるとちゅうちょしていましたが、今は在宅勤務で出勤せずにすむことも、気持ちを後押ししました。

高額な費用がかかりましたが、男性は自分の姿に自信を持てるようになり、気持ちにゆとりが出てきたと言います。今はオンラインでのリモート営業にも積極的に取り組んでいます。

「新型コロナウイルスの感染が拡大して大変な思いをしている人も多いと思いますが、今まで見えなかったことが見えてきたり、新しい事に気付かされたりして前向きに考えるきっかけやプラスの面もたくさんあるのだと今は思っています」(営業職男性)

コロナ以前には予想もしなかったさまざまな変化。この新たな動きが私たちの社会に何をもたらしていくのか、今後も見つめていきたいと思います。

記者紹介

宗像記者


記者 宗像 正勇

2007年入局。社会部警視庁担当を経て2018年から福井局。最近はオンライン取材も増えてマスクでの写真映りに気をつけている。

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