案山子

2016年10月21日 放送

秋の実りの季節、日本の田園風景に昔から欠かせなかったのが“案山子”。人間の代わりに田んぼや畑ですずめやカラスなどの害獣を追い払うために作られた人形だ。かつては一本足で竹や藁で作られたものが定番だったが、昨今ではその効果を上げるため様々な素材や形状のものも出てきている。
そもそも案山子は古事記に登場する久延昆古(クエビコ)という神だといわれている。足が不自由で、全てを知り尽くしている知恵の神であり、田の神、五穀豊穣の祈願神だ。しかし、現在では農業従事者の高齢化や後継者不足などから農村地帯は荒廃し、近年ではその姿も見かけなくなってきている。それとともに、案山子が担う役割も様変わりしてきている。徳島県の限界集落では、66歳の住民女性が手作りした、かつての村人たちの暮らしを再現した100体もの案山子が集落に飾られている。当時の賑わいを懐かしみ作ったものだが、その光景が話題を呼び、インターネットで知った外国人などの観光客も押し寄せるようになっている。一方、山形県上山市で45年にも渡って続けられている“案山子祭り”では、農村から発信するメッセージが込められた案山子が多数出品されている。
秋の風物詩として、日本人が長年親しみ続けてきた“案山子”。秋の日本各地を巡り、時代を超えて私たち日本人が案山子に込めてきた思いは何なのかを探ってゆく。

旅のとっておき

7月~9月まで、案山子と人のドラマを追って各地を訪れましたが、たかが案山子、されど案山子、時に役立たずの代名詞のように言われる案山子ですが、日本のあちこちで、案山子に思いを寄せ、自分の人生を重ねるようにして生きる人たちと出会えた旅は、とても素敵な体験でした。以下に、裏話をいくつかをご紹介します。続きを読む

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