ふぐ

山口県
2011年12月16日 放送

憧れの高級魚「ふぐ」。縄文遺跡からふぐの骨が見つかるほど、日本人は古くからふぐを食べてきた。ふぐは、身が固く、脂肪もほとんどない珍しい食材で、海外では見向きもされない。一つ間違えば、毒にあたり、命を落とす危険もある。しかし、日本人は、ふぐの白身に秘められるうま味に取り憑かれ、死と隣り合わせの美味を味わってきた。
その成果のひとつがふぐ刺し。料理人はぎりぎりまで薄く引き、身の固さを歯ごたえの良さに様変わりさせる。下関の職人たちは、切磋琢磨の中から特別な技も生み出した。さらに、ふぐ鍋。身を固くさせるコラーゲンが熱でプリプリの食感に変わり、うま味に彩りを添える。
ふぐのおいしさを追い求める歴史は、一方で、毒との戦いでもあった。ふぐは食いたし、命は惜しし。ふぐ食べたさに迷信にすがった庶民。せっかく集めた大軍勢の力を、集団ふぐ中毒で削がれた豊臣秀吉。毒におびえながら食べた一夜を句にしたためた松尾芭蕉。明治に入り、ふぐ解禁のために、伊藤博文がうったと伝わる一芝居。滑稽にまで見える情熱は、現代科学では解明できない不思議な毒消しの知恵をも生み出した。
白身魚の美味しさを極める中、一分の隙もないまでに高められた日本人の食文化に迫る。

旅のとっておき

ふぐを担当した山口局の渡辺です。寒くなって鍋のおいしい季節ですね。ふぐは非常にチャーミングでその外見も愛でられている魚です。トゲのあるハリセンボン、おなかの大きいマンボウ、角ばったハコフグ、決して泳ぎは上手くないけれど一生懸命に小さなひれを動かすそのユニークな姿。水族館で見ると、思わず目を奪われてしまいます。続きを読む

ポスター
ふぐ
協力:下関市立しものせき水族館海響館/唐戸市場業者連合協同組合/高橋和子
Page Top