“センパイ”に聞いちゃいました!!

特別インタビュー

2021.11.08

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声優

伝えたい思いを大事に

鈴木崚汰さん

TVアニメなどで声優として活躍し、今年の「ティーンズラジオ2021」ではナレーションを務めていただいた鈴木崚汰さん。実は、千葉県立検見川高校の放送委員会OBで、1年生のときにNコン県大会に朗読部門で出場し優勝、3年生のときには、朗読部門で全国大会・優勝を果たしました。
「勝ち負けにこだわらず、伝えたい思いを大事に放送の活動に励んでほしい」と語る鈴木さんに、「Nコンでの思い出」や「Nコンでの経験で役に立っていること」などを聞きました。

現役時代に参加したNコンの思い出は?

放送委員会で活動した3年間は、どれも思い出深いですね。中でも一番の思い出は、3年生のときに朗読部門で優勝したこと。入学後、陸上部と放送委員会を掛け持ちして活動していましたが、1年生の時にNコンの県大会に朗読部門で出場して最優秀賞をいただきました。その勢いのまま全国大会の準決勝まで残って、あとから結果を詳しく聞いたところ、あと1点あれば決勝に進出できていたそうなんです。それがすごく悔して、陸上部をやめて放送委員会の一本に絞って活動するようになりました。

1年生のときに、いきなり大会で成績を残せたこともあって、「すんなり全国大会に行けちゃうじゃん」と、どこか朗読を甘く見ていたところがあったのだと思います。そんなおごりもあり、2年生のときは県大会で敗退…。高校卒業後、当時Nコン千葉県大会の審査員をされていたアナウンサーの方にお会いする機会があり、僕の印象を聞いたところ、「朗読を甘く見ていると思った」と正直に言われました(笑)。振り返ってみると、雰囲気だけでうまくこなそうとしていたのかもしれません。

2年生のときは、成績が残せなかったことで、「もう放送委員会をやめる!」と思うほど、かなり落ち込んでいました。声優の養成所に通い始めていた時期だったので、声優の練習のみに打ち込もうと考えていた僕を、仲間たちや先生が支えてくれました。みんなが背中を押してくれたこともあって、高文連(全国高等学校文化連盟)が主催する秋の大会に出場しました。千葉県の独自ルールだと思うのですが、1年生で全国大会に出場すると、次の大会では部門を変えなければなりませんでした。なので、僕はアナウンス部門で出場。アナウンスに取り組んだことで、朗読のときとは文章の見え方がガラッと変わったんです。朗読をする際には、「心情」「情景」「セリフ」の三つに分けて文章をとらえますが、アナウンスは「情報を伝える」ことがとにかく重要。そこを重点的に練習した結果、朗読のときにも地の文の読み方がだいぶ変わりました。3年生のときの全国大会での優勝は、この経験のおかげだと思っています。

実は、3年生の全国大会の準々決勝で、2回噛んだんです(笑)。普段は指定作品の読む部分を抜き出した「紙」を使って読んでいたのですが、千葉県の他校の先輩が決勝で「本」のまま読んでいて、それがかっこよくて僕もマネしてみたんです。普段の練習とは違うことをしたので、2回も読み間違えてしまって…。準々決勝後、顧問の先生に、「もう終わりましたー」と泣きながら言っていましたね。それでも何が起こるかわからないからと、準決勝前日の夜は、諦めずに進出していたときのための準備をしました。あとで聞くと、そのブロックを進出者中最下位で通過していたようです(笑)。

結果発表の「優勝」で自分の名前が呼ばれた瞬間は、すぐ顧問の先生と高校のみんなが座っている客席の方を見ました!登壇するときは、こみ上げてくるものがあったのですが、あんまり情けないところを見せられないと思い、気丈に振る舞いました(笑)。そして、幕が降りてから顧問の先生に会い、「ありがとうございました」と感謝の思いを伝えました。今思い出しても泣きそうになりますね。

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「練習方法で工夫されたこと」や「放送部時代の悩み」は?

検見川高校では、まず発声や滑舌練習をした後に、大会で読む原稿を各々で練習します。そして、視聴覚室に集まり、大会の流れで朗読の発表をして、それを録音。その後、みんなで講評し合いました。
また、個人的には登下校のときに、必ず過去の朗読のCDを聴くようにしていました。読み方が上手な方のまねをしたり、取り入れられることはとにかく吸収しようと必死でしたね。
県大会で成績を残せなかった2年生のとき、「成長したいなら、もっと難しい作品を読みなさい」と顧問の先生にアドバイスをもらい、「岬の風景」という文学作品に挑戦。感情が込めやすいエッセイと違い、文学的で独特な言葉遣いや当時の考え方を理解することは、これまで自分の中にはないものだったので、どう読むべきか感覚をつかむまですごく苦労しました。そんなときは、とにかく練習を重ねましたし、先生方に自分の朗読を聞いてもらって、アドバイスをもらうことを繰り返していました。
その反面、複数の先生に見てもらったことで、いろんな意見を全部受け入れようとして、頭が混乱…。どのアドバイスを取り入れるか取捨選択をすることはとても大事になってきます。僕は絶対的に信頼していた顧問の先生のアドバイスを一番の支えにしながら、自分が表現したい世界観に合っているかどうかというのを最終的な取捨選択の判断基準にしていました。

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当時を振り返って、今、提案する練習方法は?

僕が東京に出る前は卒業後も母校に行き、後輩たちにアナウンス・朗読それぞれの特徴を座学で教えました。1年生は入部してすぐNコンがあるので、基本的な概要を学ぶ余裕がないですよね。でも、まずは全体像を理解するところから始めた方がいいと思ったんです。

また、僕が今高校生だったら、全国大会に出場した先輩方などに、積極的に聞きに行くと思います。なかなか直接質問できる機会は少ないと思いますが、その糸口を見つけたら、積極的に聞きに行っても良いと思いますよ。

現在の仕事や人生で役立っていることは?

中学1年生のときに友達の影響でアニメを見始めて、声優という職業を知りました。親は安定を重視して、「声優を目指すのは、絶対にやめてね」と言っていたのですが(笑)、放送委員会で直にことばを発する経験をしたことや、大会で結果を出せたことが、声優を本格的に目指すきっかけになったと思います。

放送部の子たちの中には、声優を志望する子がたくさんいると思います。声優という職業には俳優やアイドル活動もあり、どんどん多様化しています。「声優になって、ライブ活動をしてみたい!」という方もいると思いますが、この仕事を目指す以上は、やっぱり基礎を一番大事にしてほしいですね。

今の芝居のベースができたのは、放送委員会での3年間があったからこそ。特にナレーションを担当するときは、アナウンスで身につけた技術が、今でも役に立っています。原稿をパッと見ただけで特に伝えたいことばがわかったり、読み始めの文頭の音がそろわないように意識したり。Nコンでの練習が僕の基礎を作ってくれました。

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現役生のみなさんへメッセージ

僕は、「努力は報われる」とは絶対に言わないです。優勝できるのは、どうしても一人なので、努力を惜しまずに練習に励む人たちが結果に結びつかない場面をたくさん見てきました。「放送」は、伝えたい相手がいて、自分の伝えたい思いがあって、成り立つと思っています。なので、勝ち負けにこだわるのではなく、まずは伝えたい思いを大事に、これからの放送部の活動に励んでください!
3年生は、それぞれの進路に進むと思います。放送部として3年間頑張ったことは、それだけで素晴らしく、無駄なものは何ひとつありません。自信を持って次の世界に踏み込んでほしいですね。

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