いいなあ。

小さな穴からのぞいてみた。
猫が気持ちよさそうに眠っている。
あの猫はいいなあ。
のびのできる脚を持っていて、脚を持っていて。

小さな穴からのぞいてみた。
女の子がお父さんの方に駆けていく。
あの子はいいなあ。
お父さんにぶら下がれる腕を持っていて、腕を持っていて。

小さな穴からのぞいてみた。
ランニングを終えた男の人が、公園の水飲み場に歩いていく。
あの人はいいなあ。
蛇口をひねることのできる指を持っていて、指を持っていて。

朗読

北川きたがわ 力也りきや

東京都 65歳 
肢体不自由

ふと気がつくと脚下あしもとに小さなバスケットが一つ。中で赤ちゃんが眠っていました。
私だけが産声に気づいたらしい。私はこの子が世に出る手伝いをすることにしました。それが「いいなあ」です。
この子が多くの人と出会い、その人たちが別の「いいなあ」を世に授けてくれるといいなあ。