5月23日(日)放送
病院は建てたけれど 〜地域医療をめぐる混乱と模索〜
左写真: 十和田市立中央病院(写真奥)
多額の赤字を出し続け、市の財政破綻にもつながりかねないとして、根本的な経営再建に乗り出した

写真・左右とも:北欧調をコンセプトにした北秋田市民病院

 

立派な病院を新築したものの、肝心の医師が集まらず、オープン当初から巨額の赤字を計上する自治体が相次いでいる。医療崩壊に端を発する自治体の財政破綻が現実のものになろうとしているが、それでも大規模病院を新築しようという自治体は全国に後を絶たない。
今年4月にオープンしたばかりの北秋田市民病院。90億円以上をかけて21診療科320床の市立病院を新築したが、予定の半数の医師しか確保することができず、真新しい病棟の半分は空いたままだ。病院運営は秋田厚生連に委託されているが赤字は全額市で補てんするという約束で、建設費の償還に加えて年間3〜4億円と予想される赤字が市の財政にのしかかる。
十和田市では2年前に164億円かけて新築した市立中央病院の経営が悪化。毎年10億円もの赤字を出し続け、銀行からの借入でようやく経営を維持する自転車操業に追い込まれている。このままでは市の財政を圧迫し、市自体が財政再建団体に転落しかねないと、この2月から経営検討改革委員会を立ち上げ、根本的な経営再建に乗り出した。
こうした赤字病院の建設が続く背景には、ダムや道路などの公共事業に逆風が吹くなかで、「医療の充実」という謳い文句には異論が出にくいため、「公共事業最後の聖域」として期待されているという現実がある。そのため、過大に見積もられた需用(患者数)に基づいて、医師の確保のめどもないまま、各地で「身の丈を超えた病院」が建設されるのである。
番組では、外部の専門家を招き経営改革に乗り出した十和田市のケースを中心に、病院建築ラッシュが加速する「医療崩壊」の現実にスポットを当てる。

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