10月18日(日)放送
須賀敦子 霧のイタリア追想 〜自由と孤独を生きた作家〜

写真・左:イタリア時代に働いたコルシア書店の仲間たち(ミラノ)
写真・中央:東京の大学で教えている頃
写真・右:1961年(32歳)イタリア時代

 


夫・ペッピーノとの結婚式
(1961年11月)
須賀敦子が逝ってから10年以上が経つ。死後も全集や作品集が次々と出され、最近は20代、30代の若い読者が増え続けている。須賀は1953年、一人ヨーロッパへ旅たち、孤独と戦いながら東洋と西洋を自分の中に融合させた。60歳を過ぎて記した静謐(せいひつ)な文章でつづられた深い精神世界、幅広い教養と強じんな意志にみちた作品は、今、成熟よりスピードを求めるデジタル情報社会に生きる人々に「深く思考する」ことを思い出させる。

その須賀が人生の集大成として目指し、病に倒れ、書かれることのなかった小説「アルザスの曲がりくねった道」の草稿、創作ノートなどが近年明らかになった。そこからは、国境を越えて、孤独と向き合いながら生きる、厳しくも豊かな生き方を模索し続けた須賀の素顔が浮かび上がる。

須賀は複眼的視野で20世紀を思考し、その中でいかに生きるべきか、自問を続けた。江國香織や福岡伸一など須賀作品を愛する人たちや生前交流のあった友人たちの言葉を手がかりに、その魅力に迫っていく。

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