5月17日(日)放送
危険学のススメ 〜畑村洋太郎の実験記2009〜

写真・左、中:機械式駐車場での事故の再現実験を行う畑村さん
写真・右:畑村さんが設計、開発にかかわった新型遊具のデモンストレーション

 

「失敗学」で著名な畑村洋太郎さん。彼がまた新たなプロジェクトを立ち上げた。その名も「危険学プロジェクト」。 

様々(さまざま)な事故の現場を全国各地で調査してきた畑村さんだが、最近「失敗学」では不十分と考えるようになった。いくら「失敗学」を説いても、結局「想定外」とか「また起こると思わなかった」という理由で、同じような事故が繰り返されてきたからだ。とすれば、起きた失敗に学ぶ受け身の姿勢ではなく、事故が起きてしまう前に、先手を打って危険の法則性を発見。将来起きる危険の芽を見抜き、その情報を発信していく必要がある。それが悲惨な事故を防ぐ唯一の手段だ。畑村さんはその考えを「危険学」と名づけ、取り組み始めている。

「危険学プロジェクト」では、新たに立体駐車場やエレベーターなどの実験解析や医療現場の事故分析を加え、身の回りのあらゆる危険のシナリオを想定。設計者やユーザーの心理、行動まで踏み込んだ上で、対策を提案する。その成果を公表し、危険知識を社会全体の共有財産にしていく。

さらに、事故が起きるシナリオを想定する中で、畑村さんは危険学の一環として、日本の将来を担う子どもたちを対象に、「身の周りの危険」や「危険の避け方」を教える「危険教育」にも取り組みはじめた。

番組では、畑村さんが取り組んでいる「危険学プロジェクト」の最新成果を紹介し、「隠れた危険のタネ」を浮き彫りにしていく。

安全を口で唱えるだけでは事故はなくならない。どのような危険が世の中にあり、どうすればいいか、具体的な対案を社会全体で考えないと真の安全は生み出せない。いたましい事故が繰り返される現代社会。事件事故と長年むき合い、「危険学」で社会に一石を投じる畑村さんの活動に密着する。
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