2月10日(日)放送
コメ作りは家族の絆(きずな)〜新潟・脱サラ農家 棚田の1年〜

写真左:戸邊秀治さん(56歳)
写真中:戸邊さんの子どもたち、達輝くん(中3)、康治くん(小5)、いつみちゃん(小2)
写真右:一家そろっての田植え

山間に棚田が広がる新潟県十日町市松之山。「日本の原風景」と言われるこの集落に6年前、自給自足の生活を目指して移り住んだ家族がいる。自動車メーカーに勤めていた元サラリーマンの戸邊秀治さん(56歳)一家。戸邊さんはエネルギーを大量消費する現代社会に疑問を持ち、30歳で退社。山形県の農家に4年間通い有機農業を学んだ。松之山に来た戸邊さんは、環境に配慮する農業に徹底的にこだわり、機械を使わない人力・無農薬・不耕起というやり方でコメ作りを始めた。昨年度、収穫したコメを初めて市場に出したところ、ヒョウタンからコマ。抜群の食味と安全性が評価され、キロあたり2800円という日本一高いランクの価格が付くという、本人も驚く事態となった。

戸邊さんは、他の農家と違って種籾(たねもみ)を農協から買わず、自前で田んぼに直播きする。農薬も化学肥料も使わずに育て、ほかの農家より1か月遅く田植えをする。この方が茎も太く大きく育っているので雑草にも負けず病害虫にも強いという。それはかつて実践されていた伝統農法。しかしムラ人たちは、「今さら手間のかかる無農薬栽培は出来ない」と冷ややかだ。

過疎と高齢化に悩む山村で、波紋を広げる戸邊さん一家。その生活もユニークだ。燃料は薪。水は山の湧き水を使い、お金をできるだけ使わない生活を目指している。子どもたちは薪割りや食事作り、掃除などを手伝い、自家米や自家野菜の夕飯を毎日そろって食べる。「学歴は必要ない」と、長男(21歳)は中卒後、将棋の道に入りプロ棋士となった。次男(17歳)は中卒後、調理師免許を取り、渋谷の飲食店で働いている。自立した二人を除く三人の子どもたち、そして妻。独自の信念を貫く戸邊さんの生き方は、家族に支えられている。

棚田が広がる豪雪地帯。四季折々の風景を織り込みながら、戸邊さん一家の暮らしと村人たちとの交流を一年間にわたって記録した。


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