9月9日(土)放送
羽衣 島風に舞う
写真:上原美智子さん

 今年4月、蚕がはき出したままの糸を使って、世界で最も薄いとも言われる手織り布の製作が始まった。50分の一ミリの極細の糸。黒い布の上でかすかに見分けられるかどうかだ。織り手は上原美智子さん。沖縄本島南風原町に工房を構え、透き通り光り輝く絹織物を織り続けている。

 上原さんの織りは伝統工芸ではない。しかし、白い浜辺でかすかなシルエットを描いて潮風になびく極薄の織物は、「まさに沖縄の明るい光と優しい風そのものだ」と評されている。三宅一生やヨーガン・レールら一流デザイナーを引き付け、東京国立近代美術館のパーマネント・コレクションにも選ばれている。

 上原さんにとって絹布で沖縄を表現することは、事故で早世した兄への想いとも重なる。兄・金城哲夫は「ウルトラマン」のメイン脚本家だった。そして沖縄の文化を全国に発信したいと活動を続けていたが、37歳で早世した。上原は、沖縄を舞台に世界に類を見ない作品を作り出すことで、沖縄の美を人々に伝えたいと願っている。

 目で見ることさえ困難な細い絹糸を布に織り上げるには、さまざまな困難がつきまとう。番組では、絹織物に挑む上原さんの姿を取材。激動の沖縄史と切り離せない人生や家族の物語を交差させて、独自の作品世界を描いていく。

Copyright (C) NHK(Japan Broadcasting Corporation) , ALL rights reserved. 無断転載・転用を禁じます。